童森町の管使い 作:ユッケ
さて、早く本命の作品を書かないと……。
第1話 〜俺と彼の間柄〜
「いらっしゃいませー!」
開いた自動ドアの先でネオンが眩しく光を放つ。
暴力的なその光は、コンビニバイトで夜勤の眠気に耐える俺の目にはややキツイ。
それでも明るい声を意識しつつ、来店した客に向かって歓迎の声を飛ばした。
「うぅ、管内君〜……。」
しかしそんな俺に返ってきたのは呻くような声で、力無くうな垂れた客が俺の名を呼ぶものだった。
名を呼ばれた俺はその客が気になり、よく見れば、たった今来店した客は俺の知り合いであるという事に気付く。
「って、鵺野先生じゃないですか。まさか……また、ですか?」
その人物は、童森小学校で教員を務めている鵺野鳴介先生だった。
聞いた話では、担任しているクラスの生徒達にはぬ〜べ〜という愛称で呼ばれているそうだ。
「頼む! もう管内君しか頼れないんだ!」
そう言って、鵺野先生は此方を拝む様に手を合わせた。
……この様子だと、かなり折半詰まっているのだろう。通りで最近パチンコ屋で見ない訳だ。
「……はぁ。また生徒たちにラーメンでも奢ったんでしょうけど、せめて自分の食費ぐらいは確保しましょうよ。」
そう言いながらバックヤードに足を運ぶ。
今日はあまり数がないが、明日までなら乗り越えられるだろう。
少ないそれらをビニール袋に詰め、そんな事を考えながら鵺野先生に手渡した。
「はい、どうぞ。今日は弁当が一つとパンが3つだけです。……また明日も夜勤なんで、廃棄弁当があればまた融通しますよ。」
周りに聞こえないよう、こっそりと告げる。
こうして廃棄弁当を譲るなんて事はあまり褒められたものじゃないからな。
「あ、ありがとうっ! これで飢え死にしないで済むよ!」
だというのに、鵺野先生は大声で感謝の言葉を口にした。
「ちょ、ちょっと⁉︎ 声が大きいですって⁉︎ これがバレて、バイトクビになったらどうしてくれるんですか!」
俺は叫ぶような囁き声でそれを咎める。
しかし、後半辺りではその勢いでまさに叫ぶ様なボリュームになってしまっていた。
ふと店内を見渡すと、俺たちの他に1人だけ居た客がジトッとした目で此方を見つめていた。
「あ、あはは……何でもありませんよー?」
冷や汗を流しながら苦し紛れの言葉を口にする。
しかし、客の視線は此方から離れる様子はない。
……この事を店長に知らされたら雷を落とされてしまうな。
「鵺野先生、勘弁してくださいよ。……これじゃあ明日の分は渡せないんで、自業自得だと思って諦めてくださいね?」
「す、すまない。つい嬉しくて……。でも、これを貰えて本当に助かったよ。」
そんな事をひそひそと話していると、俺たちは同時に異変を感じ、バッと自動ドアの方を向いた。
「霊……ですね。」
「ああ、地縛霊だ。」
そこには臓器を腹から零した、やせ細った男の霊が立っていた。
霊は恨めしそうな顔で、鵺野先生に渡した廃棄弁当を見つめている。
「うーん。死因とは関係なさそうですけど、霊の癖に食料に未練がありそうですね。……とりあえず成仏させてやりますか?」
「そうだな。俺の弁当をみすみすやる訳にもいかないし。」
「……気にするのはそこですか?」
鵺野先生に呆れながらもコンビニを出る。
そして外に居る霊に歩み寄り、小さく念仏を唱える。
「南無大慈大悲救苦救難広大霊感白衣観世音……」
そして、手首に付けている数珠を外して掌に巻き、霊の頭にそっとそえた。
「……さぁ、成仏しな。」
すると俺が触れた場所から、霊の身体が徐々に消えていく。
無事、男の霊は成仏してくれたようだ。
どうやらあまり強い未練があった訳でもなかったらしい。
「ふぅ。……どうでした? 俺のお経は。」
「丁寧なお経だったよ。あれなら安らかに成仏出来たろう。」
鵺野先生にお褒めの言葉を貰えた。
以前童森町に引っ越してきた頃に、パチンコ屋で初めて会った鵺野先生が霊を成仏させていた方法を見よう見まねでやっているだけなのだが、俺のお経も中々様になってきたようだ。
鵺野先生とは歳も一つしか変わらず、互いに霊能者であるという共通点もあるので親しくさせて貰っている。
彼の方が歳上なので、タメ口を使う気はないが。
……だが、俺の
彼は、俺の数少ない友人と呼べる1人なので、出来るだけ敵対はしたくないが……いつかきっと戦う事になるだろう。
覚悟はしておかないと、な。
「そういえば……今日もまた君の
そんな事を考えていると、不意にそんな話題がふられた。
確かに、今日もアイツは美樹の身体に取り憑いている筈だ。なんせ、昨日の夕方に溢れんばかりに“補充”したばかりだからな。
「……ええ、今は美樹の中が落ち着くようです。前にも言いましたが、アイツは特に害はないので見逃してやって下さい。」
「いや、害が無いのは分かっているよ。取り憑いている内は美樹を守ってくれているから、むしろ有難いぐらいなんだが……しかし住処が、その……な?」
まぁ、教師としては受け入れがたいよな。
教え子の
「そうですけど、あくまで霊体ですし……。悪い影響もないですから、そこは大目に見てやって下さいよ。明日は土曜日ですから美樹には鵺野先生の目が届かないでしょうけど、アイツが一緒ならまず安全ですから。」
「うーむ……それもそうか。しかし、あの管狐はあまり管内君の指示を聞かないんだろ? それが心配なんだ。」
「お恥ずかしい限りです。なんせ、アイツは俺の手に余る妖力がありますからね……。」
アイツの妖力なら、本来俺の霊力では到底太刀打ち出来るものじゃない。
……俺とアイツに魂の繋がりがなければ、瞬く間に食い殺されている事だろう。
「確かに凄まじい妖力を持っている。あの
「あれ? 言ってませんでした? アイツの名前は
「ああ、勾弧! いや〜しかし、あれが狐だとはね。身体も細長いから、最初は蛇の妖怪かと思ったよ。気になって調べてみたが、文献にある管狐の中にはあんな容姿をしている者は居なかったしな。」
俺の管狐である、勾弧。
アイツは一目見ただけなら、間違いなく凶悪な蛇妖怪と呼ばれるだけの姿をしている。
所々ヒビ割れた、全身を覆う勾玉のような鱗。
瞳は白目で、小さな前足はあるもののまさに蛇のような長い胴体に、鋭く細長い牙まである。
だが、そんな勾弧でも間違いなく管狐だ。
個性は強いがその反面、管狐としての特徴もちゃんと有している。容姿で言えば小さな前足がいい証拠だ。
それに勾孤は、従来の管狐とは違って女の膣に住み着きこそするが、考えようによっては膣内を管として捉える事も出来る。
そして、管狐がそれぞれ個体が違いのある特性を持つという点でもそっくり当てはまるのだ。
……かなり癖のある特性ではあるが。
「何にしても、明日美樹と会う予定なんで勾弧の様子を見ておきます。こうして定期的に見ていれば、何の心配もありませんから安心して下さい。」
「明日会う? あ、そういえば管内君は美樹の家の近くに住んでいるんだっけ? ……しかし、2人はそんなに親しい仲なのか?」
美樹との仲は、間違いなく良好だ。
だが、俺たちの
「……まぁ、仲は悪くはありません。意外と勉強熱心なんで、美樹には
「そ、そうか? ふふふ、管内君は中々分かっているじゃないか!」
そう言って胸を張り、鼻高々といった様子を見せた。
……誰だって褒められたら嬉しいものだよな。
「仕方ない。とにかく管内君がそう言うなら信用するよ。じゃあそろそろ帰る。いつも弁当ありがとう。」
ビニール袋を持ち上げながら鵺野先生はそう言ってコンビニを去って行く。
「いえいえ。でも来月からは、食費分は残す様にした方がいいですよー。」
俺は去りゆく鵺野先生の背中に、そう声をかけた。
そして、ようやくコンビニ店内に戻ってみると……
「あ、すみません! お待たせしてしまって!」
レジにさっきジト目を向けてきた客が並んでいた。
どうやら待たせてしまったらしい。
俺は慌てて、商品の清算に取り掛かる。
しかし長らく待たせた所為で、その後暫くガミガミと叱られてしまい、鵺野先生に恨みの念を送る事となった。
……ああ、早く明日にならないものか。
早く美樹と会って、この鬱憤を余す事なく体内に
【主人公】
名前:
年齢:24歳
職業:フリーター
特殊な管狐を従える霊能力者。
とある事情で、より多くの子孫を残す事に執着している。
【管狐】
名前:
容姿:最凶妖怪オロチの出来損ない
住処:若い女の膣内
主人公を主とする管狐。
ゆきめ以上、絶鬼未満の妖力を誇り、更に複数の特性を持つ。