◇
「んっ……あっ……んんっ……!」
くぐもった、快感を押し殺そうとする声が部屋に響く。年頃の女子が好みそうな、可愛らしいペンギンのぬいぐるみやファンシーな置物に飾られた部屋のベッドの上で、1人の少女が己の身体をまさぐりつつ、悩ましげに吐息をこぼしていた。
「ああっ……はあっ……。胸も……あそこも……あっ、ああんっ……」
流れるように背中にまで伸びた青く長い髪に愛嬌のある可愛らしい瞳。見るからに清楚でありつつもどこか儚げな雰囲気を纏わせたその少女――
「気持ち……いい……。んっ、はぁっ……。あうぅんっ……!」
割れ目をなぞるように動いていた指が、敏感な肉芽に触れる。瞬間、身体がビクッと跳ね、じわりとショーツへと染みが広がっていた。
(ダメ……。やめなくちゃってわかってても……身体が疼き出すと……もう、こうするしか……!)
自分への言い訳をそう心の中で述べて、なおも自慰へと耽っていく美少女。ぎゅっと双丘の片方を握りつぶすように五指に力を込めると、再び身体が小さく跳ねた。
今こうして自分の身体を弄っている真衣だが、本来淫乱な体質などではない。少し前までは自慰すらまともにしたこともないような、可憐でありながら少し病弱な普通の少女だった。しかしある日、彼女の環境を一変させる出来事が起こる。
それが「ガイスト」と呼ばれる、人間に憑依して魂を食らう異形の化け物との遭遇であった。騒霊であるガイストは憑依した人間の負の欲望を増大させて姿を変え、本能の赴くままに女性を襲う。そしてその行為によって「食事」として魂を食らっていくのだった。
真衣は双子の姉である石神
しかし真衣自身は、そうはいかなかった。厳しい戦いは常勝からはほど遠い、茨の道の連続。彼女の純潔は戦いに敗北した際にガイストによって奪われ、その身には数々の凌辱の記憶が刻み込まれてしまっている。どれも意思に反する、乱暴で荒々しい行為だった。
そんな強姦まがいの行為であっても、浴びせられた媚薬や性的経験がほぼ皆無であった身体への刺激は、
「んんっ! あんっ、はっ、ああぁっ……! ダメ……そんな……激しく……!」
固く目を閉じたままの真衣は、誰に対しての拒絶かわからない言葉を紡ぎながら、なおも指を動かし続ける。瞼の裏の彼女のイメージ、そこでガイストに犯される自分の姿を想像してオナニーをしてしまっているのだ。
疼きの症状が出始めた当初は、妄想もまだまだかわいいものだった。テレビで見るようなかっこいい有名人や、学校内で人気の男子生徒、偽りの姿とはいえ以前会ったことのある丸眼鏡をかけた一見軽薄そうな青年など、一般の男性と肌を重ねる様子を思い浮かべて身体をまさぐるだけで火照りは収まってくれた。
しかしすぐにそれでは満足できなくなった。次第に妄想はエスカレートし、自分1人で複数の男性を相手にする想像や輪姦まがいに乱交されてしまう想像、そしてついには敵であるガイストに犯される想像までしてしまう有様だった。
「あっ、はっ、あんっ! 中に……入って……!」
下着越しに指が淫裂へと押し込まれる。それだけでまたも身体は震え、口から艶かしい吐息がこぼれていた。
「ダメ……
言葉に反し、動かされる指の動きは早さを増していく。
ガイストの中でもとりわけ強力な存在であった「砕牙」に犯されている自分をイメージして、ますます身体が昂ってしまう。ローブを身に纏った姿、仮面で隠された顔、飄々とした軽口……。記憶から呼び起こされる宿敵に犯されているという背徳感がスパイスとなって、より彼女を興奮させていく。乱暴に胸を揉まれて懇願の言葉を無視して秘所をかき回され、同時に得意の話術で翻弄されていく。そんな自分を思い描くたび、なおさら真衣の心は快感に酔いしれてしまうのだった。
「痛っ……。胸、そんな強く……! あっ、あそこも……あんっ、ふうっ、あふぅんっ!」
気づけば形がひしゃげるほどに胸を揉みしだき、右手は下着の中へと潜り込んで直に性器へと触れていた。愛液でぐしょぐしょになった
「あっ、ああっ! 中……すごいぃ……! あくぅっ、はうっ、ひうぅんっ!」
布を介さない、直接の刺激はこれまでより甘く身体に響き渡った。乱暴にすることでより快感を覚えてしまう気がして、段々と歯止めが利かなくなってくる。
真衣自身、マゾヒズムの気があるということを自覚せずにはいられなかった。砕牙に敗北し、衆人環視の中でアナルを犯され、「お尻じゃなくてあそこに欲しい」と浅ましい欲望を口にした挙句、失禁までしてしまったという惨めな記憶が呼び起こされる。当時は嫌悪感しかなかった。だが今になって考えれば、あの時は今の比ではないほどに快楽を感じることができたとも思えてくる。
自慰では決して得ることのできない、深く暗い、それでいて甘美にさえ思えてしまう悦楽。そこに少しでも近づきたいと乱暴に自分を虐め、そんな状況を妄想し、なおも自慰へと耽っていってしまう。
「もう……もうやめて砕牙……! これ以上されたら……私……あああっ!」
心とは真逆のことを口にしてなおもエクスタシーを感じていってしまう真衣。心臓が早鐘を打ち始め、元々身体が弱い自分は壊れてしまうのではないかと思いつつも、むしろそれすらも己を興奮させる材料へと昇華させていく。
『んー。やめて、とか言ってる割に結構ノリノリじゃない。自分で腰振っちゃってさ』
聞こえないはずの声が脳内で勝手に再生され、想像した声の通りに腰が跳ねる。息が荒い。もうすぐ、待ち望んだ瞬間がやってくる――。
「あっ、あっ、ああっ! イクッ……私……イッちゃう……っ! あんっ、んんんんっ……!」
胎内を擦り上げていた指が一層深く押入れられた瞬間。
「イッ……イクぅッ……! ああっ、あああああああっ!」
全身を強張らせ、数度腰を突き出すように震わせた後で、真衣はベッドへと四肢を脱力させた。ようやく訪れてくれた絶頂の余韻に浸りつつ、荒く肩を上下させる。どうにか疼きは収まってくれた。だが同時に、やはり以前感じた快楽にはほど遠いという、どこか不満の思いも覚えていた。加えて、またもこうして自慰を、それもガイストに犯されるところを妄想してしてしまったという後悔が襲ってくる。
(仕方……ないよね……。だって、身体が熱くて熱くて我慢できないんだもの……。彩ちゃんにも……こんなこと相談できないし……)
言い訳をしても自責の念は消えなかった。それでも身体が疼くたびに自慰に耽ってしまうのがもう日常となってもいる。こんなことを続けていていいのだろうか。どうにかして我慢を、それが無理なら誰かに、特に双子である彩辺りに覚悟を決めて相談でもした方がいいのではないだろうか。
真衣がそんなことを考えながら大きくため息をこぼし、乱れた衣服を直しつつベッドから立ち上がった、その時だった。
「……ッ!?」
キーンという耳鳴りのような音が響いた。エクストラソウルズである彼女にはこれが何を意味するのかわかっている。それが行き着くところは、すなわちガイストの出現。
「そんな……これって……!」
嘘だと思いたかった。ガイストは倒して平穏を取り戻したはずだった。しかし真衣の嫌な予感は的中だと言わんばかりに、彼女の部屋に足音が近づいてくる。
「ごめん真衣ちゃん、入るよ! 今の……!」
ノックも無しに部屋の扉が開けられた。つい今しがたまで自慰をしてしまっていたことを思い出し、服が乱れていないか、部屋の臭い等は大丈夫かと心配になった真衣だったが、相手のその表情に、そんなことを気にかけている余裕すらないように感じていた。
顔を出したのは真衣にとって双子の姉に当たる彩。内気で身体が弱い真衣と対照的、明るく活発な少女である彼女もまた、「ルビーソウルズ」として戦ったエクストラソウルズだった。トレードマークである山吹色のポニーテールを揺らしつつ、しかしその表情は普段の天真爛漫さに影を差すように険しかった。
「やっぱり彩ちゃんも感じたの? これ……『神隠しの結界』……だよね?」
「神隠しの結界」とはガイストが獲物を襲う際、邪魔が入らないように作り出す、周囲から隔絶された空間のことだ。エクストラソウルズである2人には知覚出来るし、変身後の力を使えば破壊することで侵入も出来るが、一般の人間にはそれらは全く不可能だった。もっとも、獲物となって最初からその結界内に取り残されたとなれば話は別だが。
「でもどうして……!? ガイストは私達が倒したはずなのに……!」
「ボクもそれは疑問に思うけど……。真衣ちゃん、考えるのは後にしよう。とにかく今は結界のところに行くのが最優先だよ。もしガイストがいるなら、ボク達が戦わなきゃ犠牲になる人が出ちゃう!」
まっすぐな彩の言葉に真衣も頷く。ガイストに襲われるということがどういうことか、身をもって経験している2人に迷いはなかった。久しぶりとなる変身に少し緊張しつつも、真衣は1度大きく深呼吸し、変身のためのキーワードを高らかに口にした。
「ソウルコネクト、サファイアリインカーネーション!」
眩い光に包まれ、「石神真衣」が「サファイアソウルズ」へとその身を変えていく。蒼玉、あるいは青玉とも呼ばれる鉱石のサファイアに相応しい青を基調とした、可愛らしくフリルが施されたコスチューム。露出の少ないファンタジー風な上半身の衣装と対照的、スカートからは肉感的な太股が覗き、膝上までのオーバーニーソックスとロングブーツに包まれている。そして頭にベレー帽のような帽子と、手には魔法攻撃を助けるための武器でもある長いサファイアロッド。
変身を終えサファイアソウルズとなった真衣は、目を開けて久しぶりの感覚と自分の姿に心の底から湧き上がるような力を感じていた。少し前まで淫らな思いを抱いてこの部屋で行っていたことなど忘れるような、強い意志が生まれてくる。
「よかった……。久しぶりだけど、変身できた……」
「じゃあ次はボクの番だね。……ソウルコネクト、ルビーリインカーネーション!」
今度は彩の身体が光に包まれた。やがてそれが収まり、ルビーソウルズとなった彩の姿が現れる。赤を基調とした、サファイアよりも動きやすさを重視されたようなコスチューム。加えて黒のスパッツとニーハイブーツの間から見える健康的な脚が
、いかにも活発な彩を反映しているようにも見えた。武器であるブレードの付いたトンファーを握り締め、ルビーは険しい表情のままサファイアへと声をかけた。
「よし……! 行こう、サファイア!」
「ええ、ルビー!」
エクストラソウルズに変身した互いの名を久しぶりに呼び合う。そのまま、2人は窓から異変が起こり始めた夜の街へと飛び出して行った。
◇
結界の方へと移動を始めてしばらくして、おおよその目的地を察してサファイアが声を上げた。
「ねえ、もしかして結界を張られたのって……」
「学校……なの?」
2人が通い慣れた学校に近づくにつれて、結界が近づいている気配をより強く感じる。やはり結界が張られた場所は学校に間違いない。ということは、ガイストは生徒の誰かに憑依した、あるいは生徒の誰かを獲物と考えたということだろうか。
「え……これ……!?」
しかし目的地にもう間もなく到着、というところで、2人は別な違和感を感知していた。先ほどまでと違う耳鳴り。これは――。
「もしかして……もう1つ結界が!?」
「そんな! ガイストが2体もいるってこと!?」
サファイアに続いてルビーも驚愕の声を上げる。これまでの平和は偽りだったと嘲笑うような、2箇所同時での異常。ガイストが現れたというだけでも問題であるのに、それが複数というのは完全に想定外だった。
「……ルビー。二手に分かれましょう」
「えっ!?」
やや思慮したものの、サファイアの決断は早かった。
「被害を最小限に抑えるには、それが1番だと思うの。おそらくだけど、現れたガイストはまだ低級……さほど強くはないはず……。だって、この街にはしばらくガイストがいなかったわけだから」
「それは……確かにそうかも。でも、もしボク達を分断させるための罠、とかだとしたらどうするの?」
「大丈夫……だと思う。ガイストがそこまで連携するとは考えにくいし、さっきも言った通りこの街にはしばらく低級のガイストすら存在していなかったんだから。それに……罠だとしてもきっと何とかなるよ。……だって私達は、エクストラソウルズなんですもの」
一応の理由はあったものの、最後は根拠も無いサファイアの言葉だった。が、ルビーは納得したように小さく笑っていた。
「……そうだね。なんか、反論の言葉も見つからないや。オッケー、二手に分かれよう」
「ルビーはこのまま学校の方をお願い。私はもう一方を当たってみる」
「わかった。……気をつけてね、サファイア!」
その言葉をきっかけに、2人は別れた。自分を信じてくれた双子の姉に、サファイアは心の中で感謝し、同時に嬉しく思っていた。
彩はずっと身体の弱かった自分を守ってくれてきた。そんな関係を嬉しく思う一方、真衣は常に申し訳なさも覚えていた。それがエクストラソウルズとなったことで、ようやく肩を並べられたように感じていたのだ。そして今も、自分を信じてくれた。
(ありがとう、彩ちゃん……。もう私は彩ちゃんに頼りっきりじゃないんだ。だから一緒に、エクストラソウルズとしての使命を果たして、またこの街に平穏を取り戻そう……!)
強い意志のまま、サファイアはもう1箇所の結界の方へと向かう。どうやら街の中の森林公園が目的地となるようだと目安をつけ、移動の足を速めていた。
◇
森林公園に到着する少し前に、サファイアは結界の気配が1つ消えたと感じた。ルビーが結界を破って内部へと侵入したのだろう。
「私も……急がないと……!」
さっきルビーが言った「罠」という話に対し、可能性は低いといったものの無いとは言い切れない。状況がどうなっているのかをなるべく早くに把握すべきといえる。
「あった……。はあっ!」
やがて神隠しの結界を見つけたサファイアは手に持つロッドで結界を破り、中へと侵入した。襲われている人はいないか、辺りに注意を払いつつ探し回る。
(誰もいない……? 襲われている人も、結界を張った張本人も? だとすると……もしかして本当に罠?)
既に夜も更け切った森林公園は不気味な静けさに包まれ、ひと気は微塵も感じられない。それでも結界が張られた以上、ガイストがここにいるのは明らかなはずだ。なのに、襲っている気配も、現れる気配すらも無い。
(結界を張るだけ張って私達を分断したとか……? いえ、低級のガイストがこの街にエクストラソウルズが2人いるなんてわかるはずもないし、そもそもそんな知恵すらあるはずが無い……。とはいえ、ここでいたずらに時間を食ってしまっては……)
サファイアの心に焦りが生まれる。自分がこうしている間にも、もしかしたらルビーが窮地に立たされている可能性はありうる。こうなれば時間が惜しいと、危険を承知で彼女は人目につきやすい通りへと身を晒し、口を開いた。
「私は可憐なる青き清流、サファイアソウルズ! もし私をおびき出すのが目的なら、この通り私はここにいます! さあ、結界を張ったガイストは出てきてください! この私が浄化してあげます!」
少々恥ずかしいとも思ったが、そんなことを言っている場合では無いと挑発気味に名乗りを上げる。だが返って来るのは静寂と、風に揺れる木々の僅かなざわめきの音だけ。
もしかしたら無駄足を踏まされただけで、ルビーの方が本命だったのかもしれない。そんな風に考えをまとめ、サファイアが公園から立ち去ろうとした、その時。
「ふうん。来たのは真衣ちゃんの方だったか」
風に乗って耳に入ってきた、聞いたことのある声に彼女の身体がビクンと震えた。変身前の自分を知っている。いや、それよりこの声を聞き間違えるはずがない。
「う……そ……」
確かに倒したはずだった。この街へと災厄を持ち込み、事実上ガイストの親玉として暗躍していたが、最後はエクストラソウルズによって浄化させられた、その存在――。
「今の声……砕牙なの!? あの時確かに浄化したはず……! どこ、どこにいるの!?」
奇襲にも対応できるよう、サファイアはなおも神経を張り巡らせ、いつでも魔法を発動できるようサファイアロッドに魔力を充填する。しかし先ほどの声は幻聴だったかのように、辺りに響くのは木の葉が揺れる音だけだった。自分をからかっているのかとサファイアが僅かに苛立ちを覚えたところで。
「ここだよ。君のすぐ後ろ」
言葉通り、息も届くような背後から聞こえてきた声に、反射的にサファイアは前へと飛び退く。併せて背後に向かって呪文を唱えていた。
「キャスト・アイシクルエッジ!」
現れた4本の氷の刃がくるくると宙で回転し、先ほどまで自分が立っていた箇所のすぐ後ろ目掛けて飛来する。だがそこに立っていた人らしき影は、ローブの裾から何かを出しかと思うと同時にそれら4本全てを薙ぎ払っていた。
その相手の姿に、サファイアは目を見開かずにはいられなかった。ローブを纏い、顔には仮面の、以前と同じその姿。
「なん……で……!」
「酷いなあ。折角の感動の再会だっていうのに、いきなりの挨拶がこれかい?」
驚愕の表情を浮かべるサファイアと対照的、その場に立っていた影――砕牙は、表情こそ仮面で計り知れないものの、声はどこか楽しそうでさえあった。
「どういうことですか!? あの時確かにあなたは浄化されたはず……! 答えてください!」
「まあまあ。そんなに怒っちゃせっかくのかわいい顔が台無しだよ? ……簡単な話さ、俺がよくやる、ちょっとした手品だよ。この手のは得意技だからね。それは君もよく知っているだろ? ま、おかげでしばらくは人目につかないように細々と魂を食らって身体を回復させなくちゃいけなかったんだけどね」
「くっ……!」
倒したと思っていた相手がまだ健在だったと知り、サファイアの心に動揺が広がる。同時に、この場に結界を張られたにも関わらず被害者がいないことと、何よりこの場にいたのが策略を張り巡らせるのが得意な砕牙であるということで、ある結論へと辿り着いていた。
「まさか……今夜の結界は偶然2つ張られたわけじゃなくて……!」
「そ。俺の指示さ。安心していいよ。向こうにいるのはまだまだ弱い、憑依したばかりの低級のガイストだ。ルビーと真っ向切って戦ったら手も足も出ないだろう。……でもそっちはどうでもいいんだ。俺の目的は、この街にいるとわかっているエクストラソウルズ2人の分断。そしてその思惑通り2人は別れ、君が俺の元に来た、というわけさ」
グッとサファイアは歯を噛み締めていた。狡猾なこのガイストの思惑通りに動かされてしまった。それでもルビーが戦っているのは低級ガイストとわかっただけで、焦燥は少し和らいでいた。ならば、自分は相棒であり姉でもあるルビーが来るまで無理をしない程度に戦えばいい。そう思ったところで――。
「ルビーは安心だ。相手にやられることは無い。そんな風に考えて安心してるみたいだね」
心を見透かされたかのように告げられた言葉に、心臓を鷲掴みにされたような錯覚を覚えた。
「な……」
「顔に出てるよ。実にわかりやすい。……でもさ、何か勘違いしてない?」
「勘違い……?」
「ああ。今君が心配するべきは双子の姉の方じゃなくて……君自身の方だよ」
ゾワッと禍々しい気配が砕牙から広がる。肌が泡立つほどのその殺気に、思わずサファイアは気圧されていた。
「俺って現場向きじゃないのは自分でもわかってるんだけどね。……でも以前苦渋を飲まされた相手だ。雪辱は果たしたいわけさ。それに、いくらそれなりに回復とはいえまだまだ魂は食らいたい。確かにエクストラソウルズは危険な相手だが……その分、食らえる魂は実に極上だ。……つまり今日の俺は本気なんだよね。そんな俺をさて置いて相棒の心配とは……随分となめられたもんだな、ってね」
「……ッ!」
従来の砕牙が常に纏っていたような軽い空気が感じられない。故に相手はこれまでにないほどの凄みで迫ろうとしていることがわかる。それこそ、空腹の虎がようやく獲物を見つけた時のような、身が竦み上がるほどの気迫。
(怖い……! もしこんな状態の砕牙に負けてしまったら……私、どうなっちゃうの……?)
ガイストに敗北することは、すなわち陵辱が待っていることを意味する。過去の戦いで幾度もの敗北を経験しているサファイアは、そのことはよくわかっていた。負けるようなことがあればその身を犯されて強制的に乱れさせられ、望まない絶頂を迎えさせられてしまう。ましてや、今の砕牙はこれまで以上の責め苦を強いてきかねない――。
(だ、ダメっ……! 今負けることなんて考えちゃ……!)
サファイアは慌てて頭を振って考えを消そうとした。自慰の際に妄想している「ガイストに犯される」というシチュエーション。それが実際に目の前に迫っていること、今まで以上の被虐に晒されるかもしれないことにどこか期待してしまっている。そんな心を己の中に感じ取った気がしたからであった。
(私はエクストラソウルズ……サファイアソウルズなんだから! ここで砕牙を倒す、今度こそ浄化させる……!)
決意も新たに戦闘に移るべく、彼女が目の前の敵を睨みつけようとしたところで――。
「やけに余裕だね。俺を目の前にして何やら考え込むなんてさ!」
前に突き出された砕牙のローブの裾から、何かが飛び出してきたように見えた。
「きゃっ……!」
慌ててその場を飛び退き、どうにか攻撃を回避する。伸びてきたのは触手だった。牙を剥いた蛇のようなそれは、コスチュームの肩の部分を掠め、すぐに元の裾の中へと戻っていく。回避で崩れた姿勢を戻しながら、サファイアは魔法を発動させるべく相手へとロッドを向けて口を開いた。――のだが。
「くっ……! キャスト……」
「あー、そっちに避けちゃったか」
反撃のために呪文を唱えようとした矢先。聞こえてきた砕牙の声と背後から迫りくる気配に、サファイアはそれを中断し、背中へとロッドを振るう。確かな手応えと共に、事前に砕牙が地面か木々の間にでも仕掛けていたのであろう、触手が数本地面へと落ち、黒い霧になって消えた。
「よく止めたけど、残念。チェックメイトだ」
さらに声と共に砕牙本体からの触手が近づいていると判断。防御しようとロッドを持つ右手を振るおうとするも――。
「ああっ……!?」
数本を切断はしたものの、全ては叶わなかった。残った触手が右腕へと絡みつき、自由を奪い始める。
「きゃ、キャスト……!」
「遅い遅い」
さらに砕牙から伸びる触手。今度はサファイアの首へと巻きつく。
「あ……がっ……!」
「言ったよね? チェックメイトだって」
ギリギリと気管が締め上げられ、苦悶の表情と共に残った左手でそれを振りほどこうとする。しかしそれもどこからか伸びてきた触手の拘束によって阻害され、さらに胴と両脚も戒めの肉の縄によって縛り上げられてしまっていた。
「しっ……しまっ……あぐっ!」
空中で張りつけにされたように雁字搦めとなった全身が圧迫される。呼吸もままならない捕らわれの少女は、もう腕に力を入れることも不可能だった。するりとロッドが滑り落ちてしまう。
「呆気なかったね。まさかこうも面白いほどに俺の仕込んだ罠に飛び込んで来てくれるなんて。打倒エクストラソウルズってことでそこら中に触手を仕掛けておいたけど、これじゃあそんな必要も無かったかな」
「くっ……うぅ……」
もはや蜘蛛の巣にかかった蝶も同じ。もがこうとしても関節が悲鳴を上げ、身体がきつく絞り上げられる。耐え難い苦痛に顔が歪み、抵抗らしい抵抗も出来なくなってしまっていた。
「まったく、油断しすぎだよ。俺ぐらいだったら1人で倒せるとか思ったの? それとも、エクストラソウルズなんだから負けるはず無い、なんて根拠も無い自信とか持っちゃってたり?」
「う……ぐっ……。あうっ……
投げかけられる挑発の言葉に、何も返すことが出来ない。とにかくどうにかしないといけない。頭を働かせようとするサファイアだったが。
「さてと。こうやって捕らわれの美少女の生きたオブジェを眺めてるのも楽しいかもしれないけど。ルビーに邪魔なんてされちゃたまったものじゃないからね。折角の獲物だ、ありがたく頂戴させてもらうよ」
仮面に隠されていなければ、その顔は舌なめずりをしているだろうと思えるほどに、砕牙の声は愉悦に満ちていた。ゆっくりと近づいてきた人の姿をした異形は、乱暴にサファイアのコスチュームの胸と股間の部分を破る。
「い、いやあっ!」
恥ずかしい場所が晒され、サファイアが悲痛な声を上げる。身体を隠そうとするも当然それは叶わず、戒められた四肢が僅かに動く程度だった。
「それじゃ……。ん?」
砕牙の手が股間に触れると同時。漏れた訝しげな声に、サファイアはハッとした。変身する前、彼女は部屋で自慰をしてしまい、そのままこの場に赴いている。つまり――。
「あらら、もう濡れてるんだけど? もしかして俺と再会できたのが嬉しくて、それで濡らしちゃったとか?」
「ち、違います!」
「じゃあここに来る前にオナニーでもしてたかな? いやらしい子だね」
「う……」
ずばり言い当てられたことで反論の口が止まってしまう。その様子に、砕牙は小馬鹿にしたように鼻で笑っていた。
「何だ、もしかして図星かな。……じゃあオナニーじゃ得られない快楽を与えてあげるよ」
「いっ、嫌っ! そんなのいりません!」
「そう言われても、こっちも今目の前にごちそうがあるわけだしさ。据え膳食わぬはなんとやら、だっけ。まあいいや。さっさと始めさせてもらうよ」
言うなり、サファイアの身体中に巻きついていた触手が動き出した。足を持ち上げられ、宙でM字開脚のような姿勢を強要されてしまう。
「あっ……こんな……格好……!」
以前に砕牙と戦って敗北した時に、衆人環視の中この姿勢でお尻を犯されてしまったことを思い出す。自慰の時に何度か妄想してしまったこともある。そんな考えを頭から消そうと、彼女は固く唇を噛み締めていた。
「随分と必死だね。そうでもしないと、いやらしい女の子だってことがばれちゃうからかな?」
「なっ……! 勝手なことを言わないでください!」
「でも嫌でもわかることになるかもね。……これからどんなに抗おうとしても、それが出来ずに何度もイクことになるんだろうからさ」
そう砕牙が言い終えると同時。サファイアは自分の下腹部に熱い痛みが走っているのを感じていた。
「あああっ! 痛……いぃ……!」
見れば、砕牙の男根が秘裂を押し広げて突き刺さっていた。自分の指では決して得られない、久しぶりに味わう男性器の挿入の感触。太く、逞しく、そして無遠慮に膣内を蹂躙される感覚に、サファイアは目を見開いて口から絶叫を
「あっ、あっ、あああああぁっ!」
無意識のうちに膣壁がペニスを締め上げる。それが心地よいのか、砕牙は低い声で笑っているようだった。
「こりゃいいや。本当に犯されるのを待ってたか」
「そんな……こと……ひぃあああああっ!」
「声も随分と甘いじゃない。……ま、オナニーしてるぐらいだからそれもそうか」
反論しようと口を開いた矢先、一旦腰が引かれ、再び膣奥が抉れる。反射的に腰は跳ね、触手に縛りあげられた身体を軋ませて、全身が打ち震えていた。
「あぐううううぅっ! そ、そんな……激し……っ! んんんんっ!」
「虐められる方が好きでしょ? 人前でお尻を犯されてお漏らしして、しかも『あそこを犯してー』なんておねだりするようなマゾだもんね」
「ちっ、違います! うくぅっ……うあぁッ……! 私……マゾなんかじゃ……! あああっ……やめっ……やめ……てぇっ……!」
「んー。やめて、とか言ってる割に結構ノリノリじゃない。自分で腰振っちゃってさ」
少し前に自分が妄想していたようなセリフを囁かれてハッとする。妄想の中で砕牙に犯されたあの時を、今自分は実際に体験している。
そう思ってしまっただけで、子宮の奥が疼き始めていた。どんなに激しく、卑猥な妄想をして自慰に耽っても、心の底から満足することは出来なかったというあの思い。もしかしたらその渇望が、今満たされるかもしれない。そんな思いがふと脳裏をよぎってしまう。
(ダメ、ダメっ! こんなことを考えてたら、砕牙の思う壺じゃない! 私はいやらしくなんか……あっ、ああっ……!)
心を奮い立たせようとするも、否定しがたい快楽の混じった痛みにあっさりと中断させられてしまう。砕牙は無遠慮に腰を打ちつけ、さらに露わとなった形の良い乳房へも手を伸ばしてきた。
「あうぅっ……。胸……そんな乱暴に……!」
「こっちもいい具合だな。乳首はもうビンビンみたいだし」
「そんな適当なこと……うっ、ううっ……!」
「適当じゃないんだけどな。ほら、こんな風に摘むことも出来る」
鋭敏な桃色の頂が力任せに押し潰された。瞬間、胸の先から全身へと電流が走り抜けたような感覚が襲い、サファイアは声を詰まらせる。
「……ッ!」
そして、次に。
「あっ、ひぃあああああああぁッ!」
訳もわからないままに、悲鳴を上げていた。暴虐に晒された乳首はジンジンと痛み、だが次第にそれが甘い疼きへと変わっていく。痛みしか感じないはずの今の行為でさえ快感に捉えてしまっているのではないかと、内心では怖れが広がりつつあった。
「いい声で鳴くじゃないか。ほら、こういうのはどう?」
今度は指の腹で
「うッ、くぅ……。あ、あ、ああっ……」
口からこぼれたのは甘い声だった。気づけば完全に砕牙のペースに乗せられ、身も心もメロメロに蕩けて、次々に訪れる悦波に流されそうになってしまっている。これではまずい。サファイアは懸命に歯を食いしばり、どうにか耐えようと自分に言い聞かせていく。
「んっ、んんっ……! くうっ、んくっ……」
「へえ、頑張るね」
砕牙は賞賛の声を上げていた。だが、声色は言葉と裏腹、小馬鹿にしたような色が滲んでいる。
「耐えていればルビーが助けに来てくれるかもしれない。そう考えているわけだ」
「あなたの……くうっ、思い通りには……あっ、なりません……!」
「うんうん、いかにもなセリフだ。まさに予想通り。……じゃあこうしよう。ルビーが来るまでの間、イクのを我慢できたら、解放してあげるよ」
「なん……んんっ、ですって……?」
余裕から生まれる余興だろうか。砕牙の提案に、サファイアは意図を図ろうとする。が、胸を刺激され、膣内を抉られ続けているこの状況、考えようとする矢先に思考はばらばらになってしまい、頭が働いてくれない。
「まあいいや。その方が俺は楽しめそうだから、勝手にそうさせてもらうね」
「な、何言って……ああっ! ひゃああああんっ!」
ペニスを打ち付ける動きが激しさを増した。これまで以上に果てさせようという気概を感じるその動き。
(う、くうっ……! 流されちゃ……ダメ……! 砕牙が何を考えているかわからないけど……彩ちゃんが来るまで私が耐えるのは……変わらないんだから……!)
心を決め、必死に絶頂の波を押さえ込もうとする変身ヒロイン。荒々しく揉みしだかれる胸と抽送を続けられる膣。両方から襲い来る衝動を堪え、どうにかして双子の姉の到着を待とうとする。
「なかなかしぶといな」
しばらくペニスの抽送を続けていた砕牙だったが、ふとそう呟いた。今度はどこか感心か、もしくは焦りが含まれた色だった。
「当然……ああっ、です……! 私は……エクストラ……あぐっ、ソウルズ……。この程度の辱めになど……屈しません……!」
「いいねいいね。そういう心をへし折るのがいいんだよ。とはいえ、あまり遊びすぎて時間を食いすぎてもまずいだろうし、それじゃあそろそろ……本気でいこうかな」
「本気……いつっ!」
まだ本気ではなかったという事実を突きつけられて血の気が引くと同時、首筋に痛みが走っていた。針か何かを刺されたような鋭い痛み。それ自体は大したことは無かったものの、サファイアの頭の中にあることが予想されて、青い顔のまま口を開いていた。
「ま、まさか……今の……!」
「さすがのサファイアソウルズも、女を乱れ狂わせる媚薬を打たれたとなったら……果たしてどうなるか見ものだね」
予想通りの答えだった。かつて幾度と無く苦しめられ、最近も後遺症として残っているようにすら感じるガイストの強力な媚薬。そんなものが打ち込まれてしまったとなれば、時折疼きを覚えて自慰に耽ってしまうような自分は一体どうなってしまうのだろうか。
「ううっ……あっ、はあッ……!」
効果は突如として表れたようにも感じた。砕牙に貫かれ続けている秘所が一層の熱を帯び、愛液が滲み出る。ますます余裕を失った美少女の口から甘い色の混じった喘ぎ声が漏れていた。
「あっ、あぁっ、あああぁ……!」
「いい具合になってきたな。あそこももうトロトロ」
「そんな……くうっ……そんなわけが……」
「無いって? じゃあ聞こえるようにしてあげるよ。ほら」
グチュッ、という蜜がかき回される音と共に膣奥へとペニスが捻じ込まれた。乱暴な抽送にも関わらず、身体中に響いては快楽へと変化していこうとする。それでも必死にサファイアは口を真一文字に結び、声を漏らさんと抗った。
(ダメ……ダメぇッ! 感じちゃダメ……! 声なんか出したら砕牙の思う壷じゃない……! で、でも……ああっ……媚薬なんて使われたら……我慢……できない……っ!)
接続部から執拗に淫靡な水音を響かせられると、今しがた持とうとした抵抗の心が次第に弱くなっていった。閉じていた口が段々と開き、またも甘い喘ぎがこぼれてしまう。
「んっ、んんっ……! あんっ、ああっ、ああぁあ、あくうううぅっ!」
「もしかして声我慢しようなんてしてたわけ? でも全然ダメだったね。それに……身体もそろそろ限界でしょ? さあ、美味な魂をごちそうしてくれよ」
全て砕牙に指摘された通りだった。押し殺そうとした声も今は止め処なく口から溢れ、休むことなく膣壁を擦りあげられて膣奥を小突かれ続けたことで胎内は蕩けたように心地よさを覚える。
「嫌っ……です……! 絶対……んんっ、絶対に……イッたりなんて……あっ、あああああっ!」
「我慢は体に毒だよ。ま、魂を食われるのはもっと毒なんだろうけど」
軽口を叩かれても、反論する余裕すらない。代わりに止められない嬌声が口を衝いて出てきてしまう。
「はあっ、はあっ……! あっ、んんっ、あくうっ……! だ、ダメ……私……もう……!」
「思ったよりは頑張ったけどここまでだな。それじゃ、魂を頂くとするよ」
とどめとばかりに砕牙の責めの荒々しさが増した。絡み合う粘液の音に加え、激しく腰を打ちつけれられることで肉がぶつかり合う音もサファイアの耳へと届き、彼女が隠そうとする被虐心を煽り立ててくる。無遠慮に揉まれる胸も痛いだけでなく、痛みが快楽に変わろうとしているようだった。そして、やはり抉られ続ける膣から訪れる衝動は最も強力で甘美だった。もはやゾクゾクと絶頂感が全身で暴れまわっていることを否定できない。
「イか……ないぃ……! イキたく……ないっ! ああぁっ! あっ、いや、いやっ、いやあああああっ!」
「限界でしょ? ほら、さっさとイッちゃいなよ」
一層深く砕牙のペニスが抉りこまれた。同時に、これまでかろうじて抑え続けた快楽が爆発し、決壊して溢れ出た悦楽の波によってサファイアは強制的に絶頂へと押し上げられた。
「イクッ……! ダメ、ダメえッ……! あっ、あっ、ああああああああああああああぁっ!」
胎内で熱い精が爆ぜるのに合わせ、サファイアも全身を打ち震わせて絶頂を迎えた。押さえ込もうとした分、反動で一層深く極めてしまうオーガズム。自慰では決して到達することの出来ない快楽に酔いしれ、満足感を覚えようとする。
が、同時に魂を食われたことにより、熱い身体と対照的に心が冷えついているようでもあった。以前にガイストと戦って犯された時にも数度体験した感覚。しかしその恐怖感を覚えて当然の感覚さえ、背徳的な快楽と錯覚しそうになってしまう。
そんな心の一方、しばらく続いた絶頂を終えた身体は痙攣を繰り返し、膣口がオスを求めて肉槍を絞り上げていた。欲望に忠実に精を貪ろうとしていく。その余韻だけでまた軽く気をやってしまい、敗北の変身ヒロインは目尻に涙を浮かべながら、甘美な恥辱を受け続けることしか出来なかった。
「あ、あぁ……。はぁ……はぁ……。く、うぅっ……」
「さすがエクストラソウルズの魂は美味だ。ハイリスクハイリターンって奴だね。まあ今回はローリスクでごちそうにありつけたけどさ」
砕牙の言葉も今のサファイアには届かない。焦点の合わない瞳で宙を見つめ、ぜえぜえと肩で呼吸を繰り返すことしか出来なかった。
長く膣内を蹂躙し続けていた肉塊が引き抜かれる。触手に捕らわれた変身美少女の股間から精液と愛液の混じったものが糸を引いて零れ落ち、地面に小さな水溜りを作っていく。
そんな様子をしばらく満足そうに眺めていた砕牙だったが、低く笑ってから言葉を続けた。
「本当に良質な魂だったよ。君達に敗れてからずっと待ち望んでいた食事だ。勿論まだまだ続けさせてもらう。ゆっくり、そしてじっくりと楽しみたいところだけど……」
首元へと巻きついていた触手が蠢き出した。最初に捕らえたとき同様、首を絞る上げるようにギリギリと締め上げ、気道を塞いでいく。
「がっ……! あ、あっ……!」
「ここで続けちゃルビーが邪魔をしに来そうだからね。場所を移させてもらうよ」
どんなに口を動かしても呼吸が出来ない。酸素不足に陥り、視界がぼやけて朦朧として、やがてサファイアの意識は途絶えた。気を失い、ガクッと項垂れた敗北の変身ヒロインを見下ろすと、砕牙は満足そうに笑い声をこぼしたのだった。