次の日。
アリーは自分が子供の時からずっと、
美味しいパンを焼き上げる
パン職人ホルドに言いました。
「ホルド、お願いが有るの
パンを焼いて欲しいの、子供達にあげるパン」
ホルドは驚いきました。
アリーは小さな時から大好き、
しかし、我儘姫大好きなパンはいつも一人占め。
他の誰かが食べてるのを見るだけで、
いつも泣き喚いていました。
そんなアリーが、人の為にパンを焼けとは
それは驚くでしょう。
「お任せ下さい。アリエイル様」
ホルドは10人分程のパン焼きあげました。
アリーの元に丁重に運んで来ると、
アリーは少し千切って食べました。
それはそれは美味しいコッペパン。
とてもとても美味しいコッペパン。
国内1のコッペパン。
「いつも通りの、美味しいパンだわ!
ホルドのパンは世界1ね!ありがとうホルド!」
アリーがホルドの両手を握り、縦に振りながら
感謝の言葉を言いました。
ホルドは涙を流しました。
彼は、アリーにパンを焼いて十年以上です。
しかし、我儘姫。
当たり前の様に食べて、それで終わり。
感謝の言葉など1度も有りませんでした。
そんなアリーがありがとう言ってくれた。
事に胸を打たれたのです。
「最高の誉れです。アリエイル様」
両膝を着き平伏せるホルド。
アリーはちょっぴり照れて、
パンを衛兵に運ばせます。
アリーには変化が有りました。
この数日で少し優しさを知りました。
そしてソフラと共に城を出ます。
向かうは貧民街、先生の所です。
アリーが先生の所に着く頃、
やはり勉強中でした。
「先生、どうして色んな国で、せんそーしてるの?」
中から子供の声が聴こえます。
「また、難しい質問ですね。
人間は、とても愚かな生き物です。
愚かとは考えが足りない事です。
何も考え無いで戦を起こし、
人間同士で戦い。死んで行くのです。
先生の国も近隣の国に戦いを挑み、
そして、滅んでしまいました。
その時に死ぬのが人間だけでは無いのです。
森が死に森に暮らしていた。
生き物達が死にます。
川が汚れ、川の生き物が死にます。
田畑が死に人が死に、
建物が壊され、
生き残った人が死にます。
更に死ぬのは、力の弱い者から、
死んで行きます。
それでも人は力を見せ付けて
人を支配しようとします。
そうして、人を支配し奴隷にしたり、
色んな物を奪い、
無理矢理働かせ
国を大きくするのです。」
「この国でもせんそーは起きるの?」
「この国の王はとても、頭が良い王様です。
人が人を支配する事の愚かさを
知っています。
この国には奴隷は居ませんから、
皆が王様を慕っています。
ただ王様もまだまだ民が本当に
平和に仲良く、
平等に暮らせる方法を考えてる途中で、
私達を平等に暮らせる未来をきっと
作ってくれます。」
「う~ん、質問したけど難しいや。」
「そうなんです。
国はとて難しいのですよ。
でも、皆さんがこうしてしっかり、
勉強して、
国の事を考え、
人の事を考え大人になり、
皆の生活を豊かにして行きましょう。」
「は~い!」
外で聴いていたアリー、
やはり、難しいのでしょう。
アリーにはさっぱり解りません。
そうしていると、建物から先生が現れました。
「アリエイル様、またいらしたのですか?」
先生にはすぐに気配がバレました。
「あの、今日は此処に居る子供達に
パンを持って来たの・・・」
アリーは小さな声で言いました。
先生と目を合わせられません。
恥ずがしがっているのか、
照れくさそうです。
アリーは褒められると思っていました。
「アリエイル様はそのパンは、此処の子供達だけ
ですか?」
先生が問いました。
アリーは頷きました。少し不思議そうに、
「解りました。まぁ中にお入り下さい。」
アリーが中に入ると、綺麗なお姫様に
子供達は昨日と同じ様に大騒ぎ。
しかも今日はとてもとても美味しいコッペパン
が有ります。
「皆さん、今日はアリエイル様がパンを
持って来て下さいました。
アリエイル様に感謝致しましょう。」
「お姫様~ありがとう~」
子供達は大喜びです。
皆がパンに注目した時に先生は
言いました。
「そのパンは今此処にいる人にしか有りません。
それを皆さんは一人で、食べますか?
帰って家族と食べますか?」
先生の発言にパンに手を伸ばそうしていた。
子供達も戸惑います。
アリーも考えます。
「アリエイル様のした事は、きっと
一時的な物でしょう。
此処に居る子供が全てではありません。
まだ恵まれない子供は沢山居ます。
今日此処に居る子供達も
今日はパンが有りますが、明日はパンが
有りません。今日のパンは
有っても、明日のパンは無いのです。
とても、感謝はしています。
しかし、それが正解でも有りません。
アリエイル様はこれからの事を
考えて下さい。皆さんは
一人で食べるべきか、
家族や友達と食べるべきか
考えて下さい。
それではアリエイル様に
今一度感謝をして頂きましょう。」
先生がそう言うと、子供達は直ぐには食べません。
持って帰るつもりです。
そして、アリーに一人づつ順番に、
感謝の言葉を言いました。
アリーは苦笑いです。
己の浅はかな考えに悩みました。
(私は本当に大事な事が解って居なかったわ。
私は先生に褒められたいだけだった。)
アリーは考えました。
明日からの子供達の事。
この貧民街の事。
アリーはアリーなりに考えました。
しかし、答えは解りません。
どうしたら良いのか解りません。
「先生、私はどうしたら良いの?」
先生は答えました。優しい笑顔で、
「それは、王族のアリエイル様が
自ら考えて答えを出さなければなりません。
しかし、その事を考えるアリエイル様は
立派なお姫様です。自分の事しか
考えれない。我儘姫では決して有りません」
先生は頭を深く下げて感謝しました。
子供達もマネして、頭を下げました。
「先生も、皆も辞めて下さい。
私はまだ何もしていませんから、それより
皆、昨日みたいに抱っこさせて頂戴。」
アリーがそう言うとアリーに子供達が
集ります。
良い匂いで、綺麗なお姫様。
子供達皆が抱っこをせがんで来ます。
アリーは抱き上げます。
腕も重いはずです 、痛いはずです。
でも子供達を笑顔を見るとアリーは、
腕の事等忘れます。
アリーは優しさを知りました。
大きな優しさを知りました。
アリーは長居は出来ません。
帰り道パンを持って来た。
荷馬車にアリーは一人隠れる様に乗り込みました。
「お姫様~優しい。だ~い好き~
抱っこもパンもありがと~」
一人の子供が言った言葉が胸に突き刺さり、
アリーは泣いていました。
今までの自分の我儘な行い。
本当の優しさでは無かったパン。
自分の浅はかな考えを
後悔しています。
(私は本当にどうしようも無い我儘姫だった。
先生の言葉、子供達の言葉、純粋な言葉に
私は恥ずかしかった。皆の言葉は
私を癒してくれる。)
「ソフラ!ソフラ!」
馬車の外のソフラに話し掛けるアリー、
「はい!アリエイル様」
「一緒にこれからの事を考えてくれる?」
「お任せ下さい。アリエイル様」
ソフラがそう言うと、アリーはまた泣き出しました。
泣き方が下手な子供泣きで・・・