Twins Knight Saga ~双子の勇者の転生戦記~ 作:破戒僧
第10話 純度10 ★
「『サイミール』?」
アイクがきょとんとした声で聞き返す。
ある日の朝食の席。アイクとイオンは、ミリスお手製のグラタンに舌鼓を打っていた。その席で、イーラがふいに『話がある』と言ってきたのだ。
「そ。ここから東にある、このあたりで最も大きな通商都市よ」
「そこに行けっつんすか? 俺らに」
「うん、実は……そこで近々、毎年恒例の大きな商談があるの」
そう言って、イーラは詳しい事情の説明を始めた。
このあたりは知っての通りの田舎町であるため、故に物品の流通に関する商談は極めて重要である。普段の商談は定期的に行われ、オッドかイーラと、村役場の係の者達数名、時には商品を取り扱う業者も立ち会って代表として出席しているらしい。
近く行われるのはその商談の類の中でも特に重要なもので、東の通商都市『サイミール』にて行われる、通称『総会』と呼ばれる、かなり大きなものらしい。ここ数年は毎年、イーラが出席しているとのことだ。
総会はその先一年のおおまかな物流を決める重要な商談で、聞く限りは大体の話でよさそうに聞こえるのだが、食料や生活物資はもちろん、警備や各種施設などの割り当てや、果ては『アンプル』の購入契約まで、あらゆる重要事項を決定する極めて重要な会議といえる。その商談に、アイクとイオンも参加するようにと言われたのだ。
「何でまた俺らが……熱っ!! ……そんな行事に?」
総会の重要度はわかったが、その会議と自分達との関係性がよくわからず、グラタンをほおばりながらアイクが首をかしげる。その横でイオンは、何か考えている様子でスープに口をつけていた。
「えっとですね、お2人を、領主様に紹介したいんです」
「……領主様?」
ミリスのその言葉に、イオンが反応した。
「サイミールは通商都市であると同時に、フローネ地方を含むここら一帯を統べる中心都市なの。そして、そこにはサイミール領の現領主・エラ様がいらっしゃるのよ」
「県庁所在地と……県知事みたいなもんか」
随分と噛み砕いた例をアイクが述べる。
「つまりはお偉いさんってわけだな。でも何でわざわざ俺らなんかを…」
「僕らが『純系』だから……ですか?」
アイクの台詞を途中で遮って、イオンがそう言った。
アイクとミリスは若干驚いたが……どうやら正解だったらしい。イーラはそれを聞いて、にやりと笑みを浮かべた。
「何だ? 結局……俺達って、その『純系』だったの?」
そういやあれっきり話してなかったけど、とアイクが尋ねると、イーラは懐から一枚の紙を取り出した。英語だが……『検査結果』と書かれている。
「ご名答。2人とも……ばっちり『純系』だったわよ。間違いないって」
「はぁ……そうっスか……」
「や、やっぱり、そうだったんですね……」
「……以前『純系』は至宝だとか大層なことを仰ってましたからね。そんなのが田舎に2人も現れたら、その土地のボスに報告しないわけにはいきませんか…」
「……なんだか出土した古代の化石かなんかみたいな言われ方だな」
もの扱いかよ、と不満そうにアイクが言った。するとイーラは、
「おおむね正解だけど……ちょっと違うかな」
「「「へ?」」」
割って入ってきたイーラの言葉に、思わずアイクとイオンが、ミリスまでもが『聞いてないよ?』とでも言いたげに聞き返す。
「……違うって何が?」
「確かにあなた達に行って欲しい目的の1つはそれだけど……それだけでもないのよね」
そう言ったイーラを、イオンが何かを感じ取ったような細い目で見つめる。
答えを返したのは……イーラではもなく、同席して食事をしていたオッドだった。
「……今、都で精の供給役を担っている男がいるんだが、ちょっとそれがね……」
「あ、なるほど……」
それを聞いて、ミリスが何かを悟ったらしい。顔にはなぜか苦笑いがにじんでいた。
「精の供給? 何それ…」
「『アンプル』に使用する精液の供給源となる男性のことですか?」
アイクより先に、イオンが一息に言い切った。
「ふむ、やはり鋭いね、イオン君」
「どうも」
当たっていたらしい。オッドは感心し、イオンを褒めた。
それに対してイオンは礼を言ったが、その目は未だ隙を見せず、オッドとイーラをにらんでいる。しかし、その態度も2人はかえって気に入ったようだ。
「そのとおり。今、サイミールには、アンプル用の精液の供給の役割を担う、君達のような『純系』の男が1人いるんだよ」
オッドは口を拭き、豪放海楽な彼にしては珍しく、神妙そうな言い方で言った。
自分たち以外の『純系』がいる。考えはしても、探したり会うことなど考えてもみなかっその存在に、2人はドキッとした。正直なところ、興味はある。
「ところがその男がこれまた傲慢な男でね……純系であることを鼻にかけて、あれもこれもやりたい放題なんだ……」
オッドは『嘆かわしい』とでも言うように、深くため息をついた。
「都にもアレに反感持ってる連中は多いんだけど……いかんせん貴重な『純系』だからね。口出しできないの。一応他にもいるんだけど……『純度』はあいつが1番だから」
「にしたって、ブボウは純度4で、他は3か2でしょ? ほとんど違わないのに……」
「純度は1でも違えば、その能力は大きく違ってくるわ。仕方ないわよ」
「あの、ちょっと待って」
ここで、アイクが割って入った。というのも、
「えっとさ、『純度』って何?」
「『ブボウ』っていうのは……その純系の男の名前ですか?」
「む、そうか。そういえばロクに説明していなかったね」
気づいたようにオッドがつぶやいた。
「『純度』というのは、言うなれば純系のレベルだよ。高ければ高いほど、そのものが供給する精液のレベルも高い……。つまり、より妊娠の確率も高まるというわけなのさ」
「純度の数値は1から10まであり、そのままその純系の評価に直結します。レベルが高いほど優秀な純系であるとして、各地で賓客として礼遇される……」
「つまり、高いほど偉いってことか」
アイクが簡潔にまとめそうになったが、簡潔すぎるということでもう少し詳しく説明してもらった。
で、もう少し詳しく聞くと、
☆
・純度0
正式には存在しない。つまりは『不能種』のことで、妊娠の確率はほぼ0(約0.0000013%)。
・純度1
一応『純系』だが、『不能種』と大差なく、あまり重要視されない。一応、精子はアンプルの材料にはなりうるものの、品質はあまりよくない。
・純度2
同じく、重要度は低い。が、受精の確率や、精子の品質は、前の2つよりはかなり高い。
・純度3
能力は決して高くはないが、それ以下の純系よりは高い。やはり重要度は低いが、資金繰りの困難な地方では優遇されることも。これ以降、純系に固有の『特権』の所有が認められる。
・純度4
これ以下の純系に比べるとだいぶ高く、重要視されることも多くなる。しかしやはり精度は依然として低く、都市部での重要性は高くはない。
・純度5
純度4以下と比べるとかなり優秀。都市部でも礼遇され、発動できる特権も増える。
・純度6
一般に『一流』と呼称されるレベル。かなり能力や精子の品質が高く、純度6以上は5以下とはかなり印象や重要度が変わってくる。が、そのぶん現存の固体数が少なくなる。
・純度7
能力はかなり高く、国によっては貴族と同等かそれ以上の権力を有する。特権も高級だが、数はやはり少なく、自治体同士で争奪戦が起こることもある。
・純度8
貴族以上、皇族に次ぐ程の力を持つ。1人いるかいないかでその国自体の評価が大きく変わってくる。数はそれまでよりもさらに少ない。
・純度9
最上級の純系。一国の命運を左右する鍵になることもあり、所有する国は全てが大国として知られる。国家レベルでの争奪戦が起こることもある。存在する個体数はごく僅かで、フェルガルド全体でも10人いるかどうかといったところ。
・純度10
一応設定されてはいるが、既に絶滅した存在とされ、文献に記載されているのみ。もし現存するとすれば、純度9をも凌ぐ世界最高ランクの至宝といって差し支えない。
☆
「なるほど……大変よくわかりました」
一通り聞き終えたイオンが、顔色一つ変えずにそう言った。
「それでつまり……そのブボウという男の純度は『4』…決して高くはないにせよ、地方にとっては貴重な純系というわけですね?」
「ふむ、先ほども言ったとおり、他の純系は純度3か2だ。純度が1違えば、印象が大きく違う。そしてこのサイミール領には、ブボウ以上の純度の持ち主はいない」
「つまり……実質のところ、ブボウがこのサイミールの支配者となって実権を握ってしまっているんです……。それをいいことにやつはワガママのし放台で……勝手に都合のいい法を作ったり、貢物を要求したり、毎晩抱く女を変えたり……」
しょんぼりとした雰囲気の中、ミリスがそうぼやいた。
アイクはそれを聞いて、親指を立てて首のところをシュッと横に斬る仕草をする。
「そんなに嫌なやつなら、クビにしてよそから新しい『純系』を呼べば……」
「そうもいかないんでしょう」
アイクの提案を、諭すようにイオンが遮った。
「何かの理由……おそらくは財政上のものと予想しますが……それにより、領主様とやらは新しく純系を雇うことができない…ゆえに、ブボウの傍若無人を止めることができない……違いますか?」
「その通り」
イーラが頷いた。そして、オッドが引き継いで続ける。
「何を隠そうそのワガママのおかげで、とてももう1人、純度4以上の純系を雇うほどの財力はないんだ。それにそんなことをすれば、ブボウの態度もさらに悪化するだろう」
「んじゃ、まずそのブボウってのをクビにすればだいぶ余裕も……」
「ところがそうもいかないの」
そこから、イーラが引き継いだ。
「対応が遅すぎたの。長年続いたブボウの圧政の影響で、このサイミール地方の評判は落ち気味でね……もちろん、空気がきれいだったり、おいしい作物が取れたり、いい所もたくさんあるし、何より特産品の蜂蜜は、アーサランド全土で愛されている嗜好品よ。……それでも、純系を募集してすぐにここに来てくれるような環境じゃないの」
「純系がいなくなれば、アンプルの供給やその土地の評判に直接ひびが入る。純系の精液の使用用途は、アンプルだけでもないしね……。仮にブボウを更迭するならば、即刻次の純系を手配しなければならんのだが……」
「残念だけど、その欠員を埋める他の純系たちが即断で来てくれるほど、ここの状況はよくないわけ。かといって事前に話を進めようとすれば……」
「そいつに感づかれる……で、邪魔される……か。いてもらっても困るけど、いなくなられてももっと困る。そのうえ助けも来ないんじゃ、八方ふさがりだわな」
状況を理解した二人が、思わずため息をつく。
「そのとおり。ブボウはそれを知っておるがゆえに、圧制に手加減がない。領主様も、頭を痛めておられるんだ。おいたわしや……」
頭を振りながら、オッドはそう呟いた。するとアイクは、珍しく鋭い目つきになって、前に身を乗り出して言った。
「で、俺らは何をすりゃいいんだ?」
「あら、協力してくれるの?」
「最初からそのつもりでしょーが、白々しい。そんくらい、イオンじゃなくてもわかるぜ」
微妙にほめられない台詞とともに、アイクがにやっと笑う。その笑顔には、うまく説明できないが、どこか頼もしいものがあった。
イーラもそれを感じ取ったのか、はっきりと話し始めた。
「単刀直入に言うわ。アイク君、イオン君、君たちの『純度』は……『10』よ」
「? それは絶滅したんじゃねーんすか?」
不思議そうにアイクが問う。
「それはこの世界に限っての話。確かに、この世界には純度10は存在しないけど……」
君たちが来たのは別の世界なんでしょ、と言いながら、イーラは手に持っていた紙を広げる。
そこには2人分ともに……『検査結果:純度10』の文字。
「ほらね?」
イーラ、満足げにニヤリ。その横で、ミリスが息をのむ。
「領主様がブボウをどうにもできないのは、アレより純度が高く、かつサイミールに協力的な純系を見つけられないから。でも、もし君ら2人が協力してくれるなら…」
「対抗する術はある……ってわけか……」
アイクはそこでにやりと笑った。
「行ってくれる? 2人とも」
その問いに……アイク達は迷うことなく答える。
「ああ! 確かに急ではあるけど……この世界でやっていく分には、都合がよさそうだ。どの道そんな話聞かされて黙ってたんじゃ、明日の飯がまずくなるしな!」
「つまり、僕らはミリスさんと共にサイミールへ行き、総会に出席すると同時に、純度を盾にやりたい放題やっているブボウの更迭を手伝えばいいわけですね?」
と、一息に行った。
「……その通り! やはりイオン君、よくわかってるわね」
「おいおいイオンだけじゃないって!! 俺も理解して……ん?」
ここで違和感に気づいたアイク。そしてもう一人、ミリスもそれより少し早く気づいていた。
「あれ? お姉ちゃん……今、『私』って言った?」
ミリス?
ミリスと一緒に?
イーラとではなく?
「あれ? 毎年総会(それ)に出席してるのってたしか…」
「やだ、お姉ちゃんってば違うじゃない! イオンさん、一緒に行くのは私じゃなくてお姉ちゃんで…」
「いや、あなたであってるわよ、ミリス?」
やだも~……と軽めのテンションで言うミリスを、イーラはばっさり切り捨てた。
「……へ……?」
「聞こえなかった? ミリス、『総会』には今回、あ・な・た・が・出・る・の!」
きっぱりとそう言われ、ミリスが一瞬固まる。思考が停止していると見てよさそうだ。
で、つぎの瞬間、
「ええええぇぇぇぇぇえ―――――――――――っっっ!!?」
屋敷中に響き渡るんじゃなかろうかという大声でミリスが叫んだ。
「ちょちょちょちょちょちょ!! 何で? 何で私!? 何で私が『総会』に!?」
「ミリス、もうお前も17だ。フローネの長の家に住む者として、商談のひとつも経験しておくべきだろう?」
と、オッド。
「何言ってるの!? だからっていきなり総会はないでしょ!! わたし普通の商談だってやったことないのにそんな……」
「ほら、私の商談に何度か立ち合ってるし、やり方大体わかるでしょ?」
「何言ってんのよお姉ちゃん!! 無理無理無理!! 絶対無理!!」
「つべこべ言わずに行く!! 何事も経験よ。あんたセックスだってぶっつけ本番、しかも中出しの3連チャンで入ったでしょ?」
「それ今関係ないでしょ!?」
卑猥なやりとりを若干混ぜつつも、『行きなさい!』『無理!』で平行線をたどる両者の議論。ここだけ見れば、教育に熱心なママと反抗する娘とのやり取りに見えなくもない。こういうのってどこにでもあるんだなあ……と、アイクは遠い目になる。
「『総会』だよ!? 私みたいな未経験者に一任しないで、ここはお姉ちゃんが行……」
「だから、ミリスに経験をつませるためだって何回も……」
「じゃあせめてお姉ちゃんかお父さんもついてきてよ!」
「それじゃ緊張感無いでしょ? 手探りでもいい、自分で身をもって経験したことの上に実力は形作られるもんなのよ。あ、私今いいこと言った!」
「でもでも、失敗したらどうするの!?」
ネタ丸出しなイーラの自画自賛を無視して(というより、構っている余裕がないと見える)、泣きそうな顔でミリスが叫ぶ。
だが確かにそれはそうだ。これほど重要な会議、経験のためとはいえ、経験の浅いミリスに任せるのは少々無理があるのではないか。そうアイクが言おうとすると、
「確かにな。けど、今回に限っては、総会はかなり簡単だと思うよ?」
「「え?」」
アイクとミリスが同時に聞き返す。『何で?』とでも言いたげな顔だ。
その二人の顔を見渡し、声の主のオッドは顔に薄笑いを浮かべて言った。
「さて、私がこういった意味がわかるかな? イオン君?」
言うと同時にイオンの方を見る。イオンは『そうきたか』といった雰囲気の顔で、
「……ブボウの更迭に成功すれば、一躍して僕らは……否……フローネの代表は各地方の英雄と言っていい注目を集め、領主様とやらにも、かなりいい心象を与えられるでしょう。加えて僕らは純度10の純系……これから先の出世は約束されたようなもの。当然、別の地方のみならず、領主サイドも僕らに取り入ろうとする。彼らは黙っていても、他の地方に負けないために、さぞかし僕らに有利かつ魅力的な条件を並べてくれるでしょうね」
「見事だ! さすがはイオン君!!」
イオンは一息に述べ、それを聞いたオッドはいつもの明るく豪快な雰囲気に戻ってわっはっは、と笑い、感心を見せた。ぱちぱちと拍手までしている。
「そういうことさ。裏を返せば、皆が油断しきっている今回ほど楽に商談を進められこともあるまい。ミリスの未熟さの分を差し引いても、十分に釣りがくる。それに……」
オッドはそこでイオンを見て
「イオン君ほどの人がついていれば、妙な商談に流されることもなさそうだしね」
にっこり笑ったまま、しかし確かな信頼をこめた視線を送った。
なるほど、どうやらアイクとイオンの品定めまでもしていたらしい。だが、確かにイオンの洞察力なら、怪しい商談を見抜くことぐらいわけは無い。
「へ、そのくらい俺にもできるっつーの」
旗から見ると負け惜しみにしか聞こえない台詞をアイクが言った。アイクは少々一直線なだけで、あながち嘘ではないのだが、オッドに信じてもらえたかは微妙である。
「精一杯やらせていただきますよ……ただ、それに関する資料などを拝見できますか? 予備知識無しではさすがに不安です」
「うむ、話が早い。イーラに後でノウハウを教授させよう。ミリスもそれでいいね?」
「え……あの……」
「2人がここまで協力してくれるって言ってるのに、あんたが尻込みしてどうすんの」
「………………はい……」
とうとう折れたらしく、観念したように頷いた。
「うむ、じゃ決まり! 三人とも、頼んだぞ!」
話がまとまり(約1名は無理矢理)、イーラはこれ以上妙な質問や反論が出てくる前に、会議(朝食)の席を閉めた。
「ところでイオン、お前……何で行くのがイーラさんじゃなく、ミリスだってわかったんだ?」
「ああ……先日、イーラさんの書斎にお邪魔した時……壁の黒板(ブラックボード)に、ミリスさんの予定の欄が、数日後から『しばらく留守』になってたんですよ。それに、イーラさんの欄は、きっちり1カ月以上先まで予定が入ってたし……それで、『ああ、この人ミリスさんをどこかに行かせる気だな』と」
「へー……」
☆
ある日の夜
サイミールのとある館にて……
「はぁっ……ん……くふぁあ……! いあ……んぅっ!!」
ランプしか明かりのない暗い部屋の中で、1人の女性のあえぎ声が響き渡っていた。
豊満な体のその女性は、首につけられた鎖つきの首輪でつながれ、手錠で両手を後ろ手に固定されていた。他には何も身につけていない。服さえも……ゆえに、裸である。
その女性を押し倒し、1人の男がその肉棒を女性の秘裂に突き刺し、淫靡な音を立てながら抜き差ししていた。
これぞメタボ、といったかなり太めの体形。オッドよりもでっぷりしていて、ウエストは相撲取りのそれほどもあろうかという大きな腹。背はそれほど高くないがために、その大きさが余計に際立つ。
頭の髪は薄く……数年後には禿げ上がるだろうと予測できる程度。
男は下半身裸で、汗だくになりながらその女を抱いていた。
――――ぐぷ……じゅぷ……ずっ……ずっ……ずっ……
「ふふふ……相変わらず締まりのいいマンコだな」
「あはっ、ありがとう……ございます……! ブ……ボウ……さまっ! あ、ぅ……ブボウ、さまの、おちんぽもっ! 今日も、ご立派で……―――ぇ!!」
ひときわ強くペニスを突きこまれ、女性は体をのけぞらせる。
「ふんっ! ワシの、チンポが、いいのは、当たり前だろうっ! このバカめ!」
腰を振る速度を速め、ブボウ……と呼ばれたその男は女性を更に激しく攻める。
その動きは荒々しく、女性を気遣っているような仕草は全くといっていいほど感じられない。自分の快楽を最優先しているといった印象の動きだ。
そして、何か工夫した動きなどを使っている様子も……特にない。
「あはぁっ! あっ……そ、そんな……は、激しっ! あはぅ……あっん!! し、失言、を……お、お許しくだ、さ……」
「いいや許さんぞ、罰として……ワシの精液をたっぷりと注ぎ込んでやる! 全部そのいやらしいマンコで受け止めろよッ!」
言うなり、ブボウはその肉棒を一番奥まで押し込み……そこで精液を放った。
ごぼ……どびゅっ! びゅっ……びゅる……びゅっ!
「はっ、あっ、あぁあ―――――っ!! で、出てる……出てますぅ……! ブ、ブボウさまのおちんぽから……精液、がっ……!!」
「ぐうふっ、ふぅ……ふぅ……はぁっ! さあ、嬉しいだろう? ワシの精液……その子宮でたっぷりと味わうがいい」
勢いよく精液は吹き出し……しかし、数秒ほどでそれはおさまった。
言うほど多くもなく、長くも続いてはいなかったのだが……女性はよほど執拗な攻めを受けたか、薬を使われてているらしく―――もしくはその両方か―――その射精で何度も絶頂していた。
「はぁ……も……ぁ……も、もう……だめ、です……あぁ……っ」
射精の余韻を楽しむかのように、肉棒を秘裂の中でゆっくりと数度動かした後、ブボウはそれを引きぬいた。そして、女性が快感のあまり気絶したことを悟ると、ふんっ、と鼻を鳴らして立ち上がった。体力が無いのか体が重いのか、ふらっと一瞬よろける。
そのタイミングに合わせたかのように、部屋のドアが開き、黒服の男たち数人が入ってくる。彼らのほとんどは、だまって部屋の掃除と気絶した女性の回収にかかった。
動かずに残った1人は、何やら手帳のようなものを取り出す。
どうやら秘書のような役割を担っているらしい男は、それをパラパラとめくって、
「ブボウ様、この後のご予定ですが……午後6時より、会食となっております」
「1時間遅らせろ。少し疲れた」
「しかし、同席される2町の代表は既に到着されていますが……」
「待たせろ、ワシの都合が優先だ」
ではそのように、と、黒服の男は手帳に何やら書き足した。今言われた内容だろう。
下半身裸、尿道に残った精液が先端からぽとぽとと垂れ流されたのままのブボウは、今行った傍若無人なやり口を気にすることもなく、ふむ、と何やら考えていた。
「そろそろ、今飼っている女どもも飽きてきたな……」
「では、売り飛ばしますか?」
「ゆくゆくはな。時にジョー、あの領主の娘だが……そろそろ食べごろではないか?」
「アリアさまですか? 今年16ですので……そうですね。問題ないかと」
「そうか、なら……次の『総会』が楽しみだな……ぐふふふ……」
下品な笑い方を隠そうともせず、ブボウは下半身裸のまま部屋を出ると、恥ずかしげもなく屋敷の中を歩いて自室に向かった。
今度抱くつもりでいる、若い娘のことを考えて舌なめずりしながら……。