※この作品はR-18です。

Twins Knight Saga ~双子の勇者の転生戦記~   作:破戒僧

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第42話 黄昏時の襲撃

 

 

アイク達がアシルスに到着してから……2日後の夕方。

 

「さて、以上が……私どものほうで提案させていただく取引の条件になります」

「ええ……確かに、確認させていただきました」

 

場所は……アシルスの会議所だ。

その一室で、イオンとミリスは、オールとその部下数人の同席する会議室で、商談を行っていた。視察も終わり、さらに薬湯のおかげか……ミリスの酔いも完治した。しっかりとした判断力の元で、書類を精査しつつ商談を進めていっている。

言い方は悪いが、商売人としては確かな才能を持つミリスは、イオンと協力しながら商談を進めていく。

 

「これは……そうですね。特に問題ないと思います。イオンさんは……どう思いますか?」

「ええ、僕も問題ないと思いますよ?」

「それはよかった。では……イオン様、ミリスさん、食品関係の契約ですが……以上の内容でよろしいですね?」

 

ええ、はい、と首肯を返し、商談は最初から最後まで、なんら滞ることなく終わりを告げた。

契約の内容確認はすでに終了。互いに書類にサインし、契約が取り交わされた。

ふぅ、と息をつき、イオンは仕事が一段落したことに安堵する。

 

「さて……これで、フローネとアシルスの間に、通商契約が取り交わされたことになりますね」

イオンの言葉に、双方の代表は満足げな笑みを見せる。

「ええ、ありがとうございました。私たちのフローネもこれで、より一層豊かになると思います」

「いいえ、こちらこそありがとうございます。フローネといえば、今何かと話題の地域ですからね。そこの、純度10のお2人にもご満足いただけて、私どもとしてもうれしい限り。この契約は、このアシルスにも大きな福をもたらしてくれるでしょう」

 

実際そうだと言える。今やフローネは、『純度10の純系を有する村』として、サイミール地方全土に存在を認知される一大スポットなのだ。当然、外部から交流を持とうとする都市も数多くあるが……そのほとんどは、まずそこのトップに礼儀を通すべきという判断から、サイミールのエラのところで交渉は足止めを食っている。

 

そんな中、それらのステップを全てすっ飛ばして友好的な契約を取り付けたわけであるから、アシルスの優位性は高い。今後、フローネに次いで注目される都市となるだろう。

そして、そことの商談を見事に裁ききってみせたミリスも……見事と言うほか無い。勢いが多分を占めていたかに見えたイーラの見立ては、確かだったことになる。

 

……が、契約はこれだけではない。

 

まだ……どうにかしなければならない案件がいくつかあるのだ。

それらに関連する書類を、オールは次の封筒から出した。

 

「さて……残る契約案件は、このアシルスで産出いたしました『真珠』や『海産鉱物』の商取引と……」

「イオンさんとアイクさんの……『純系』の精液に関する取り扱い権限……ですね」

「ええ、おっしゃるとおり……こちらも、どうぞよろしくお考えください」

 

そう言って、オールは封筒に入った書類を差し出してくる。

食物などを主とする契約はすでに取り交わされた。これからは、専門の『魔術』で防腐加工された新鮮な魚介類がフローネに届く。そしてアシルスにも……フローネ産の蜂蜜や山菜といった、豊かな山の幸が運ばれることにあるだろう。

 

が、今言ったとおり……真珠や鉱物の商取引契約は……まだだ。

 

そしてもう1つ、精液の『取り扱い権限』。これは、『純系』であるアイクとイオンの精液を買い受け、それを使って商売を行って利益を得るための権限だ。

この権限がなければ……たとえ顧客としてその加工品である『アンプル』を買うことはできても……それを加工したり、転売したり、ましてや直接精液を輸入することなどはできない。許されないのだ。

 

ちなみに、他の地域に輸出される『精液』というのは……アイク達の精液をサイミールに入荷後、研究所で培養し、量を増やしたものになるの。品質は落ちるがより多く手に入ることから、この手法が使われており……それゆえに、もともとの原液を出す純系の『純度』は重要なのだ。

 

ブボウの失脚後……ブボウのではなくアイク達の精液のこの『取り扱い権限』を持っている都市は、フローネ、サイミール、レインゲートのみだ。ここで商談を締結させることができれば……アシルスは第4の先駆都市となれる。

その事実を、そしてオールたちの目的を吟味した上で、イオンは考える。そして、ふと思い当たったように口を開いた。

 

「……精液のことに関しては、資料を読ませていただいた上で、後々よく考えさせていただきますが……真珠に関しては、見本などを見せていただくわけには行きませんか?」

「ああ、かまいませんよ。おい、見本をもってきてくれ」

オールはそういって、近くにいた部下に指示を出す。

「え、しかし……収穫済みの真珠は全て、商品用に梱包してしまいましたが……」

「そうなのか? なら……その中から1つ開封して、中の真珠を見せて差し上げなさい。代金は私が払おう」

「あ、はい。そういうことなら」

そう言って、部下の男はかけていった。

数分もしないうちに戻ってくると……その手の中には、小さな箱が1つ。

イオンたちの目の前でそれを開けて見せると、中には……小ぶりだが、確かな輝きを放つ真珠が安置されていた。

「わあ……綺麗……」

「拝見します」

 

女の子らしい感想を漏らすミリスの横から、イオンはそう言って、ポケットから手袋を出して装着した。そして……手袋をしたその手で真珠を手に取り、目の前に運ぶ。

この様子をミリスは不思議そうに見ていたが……これは、真珠を扱う際には正しいやり方だ。

真珠はもっともデリケートな宝石の1つである。表面が炭酸カルシウムでできているため、直接触ってしまうと手の皮脂によって劣化し、その輝きが失われてしまうのだ。それを防ぐために、手袋か布などを使って取り扱う必要がある。

そうしているイオンは……

 

なぜか、妙に厳しい目になっていた。

 

「……? あの……イオン様? いかがなさいました?」

「!」

 

と、眉間にしわがよっていたことに気づいていなかったらしいイオンは、

 

「あ、いえ、別に……このサンプルですが、お借りしてもよろしいですか? 宿に帰って、じっくり鑑定したいので……」

「? ええ……かまいませんよ。では、残りの商談は……明日ということで」

何か気になる響きを残しつつも……その日の会議は、そこで終わった。

 

 

☆

 

 

同じころ、

 

「ふぅ……ゲリックさん! コレが最後っす!」

「おう、じゃあそれ馬車の中に運んで、全員そろい次第、出発だ!」

 

「! あ、ウルカ君! おーい!」

「……! ユキ……さん?」

 

商談をイオンとミリスに任せ……みやげ物を物色するために村を回っていたアイクとユキは、その途中で……仕事中と思しきウルカに会った。

色黒の肌に汗をにじませて、荷物を運んでいる最中らしい。

視察の時は今日はいなかったため、ろくに話す機会のなかったユキは、懐かしそうに彼に駆け寄った。

 

「元気そうね? 元気だった?」

「いや、言ってること変だし……」

 

ウルカ、苦笑い。しかし……特に驚いた様子もない。ユキが村にいたときから仲がよかったというのは、本当のようだ。

その手元の荷物に、アシルスの商業組合のエンブレムがつけられているのを見て、

 

「あ……お仕事中だったんだ、ごめんね止めちゃって」

「あ、いや、全然大丈夫だから」

 

そう言うと、ウルカは

近くにあった馬車……目的地だったようだ……にそれを積み込むと、再びユキのところへ戻ってくる。

 

「ユキ……さん……も、元気そう……だな」

「あはは、私はいつだって元気よ。それだけが取り柄だし。っていうか……『さん』はつけなくていいわよ?」

「あー……おう。けどまあ……一応『純系』のお供で来てるわけだし……」

 

おかしそうに笑いつつも、照れたようなしぐさを見せるウルカ。

ちなみに、彼がユキを『さん』づけで呼ぶのは、オールの指示を曲解してのことだ。

ウルカの口調は、荒っぽいと言うか、雑な口調と言えてしまうため……『純系』であるアイク達に失礼な印象を与えないよう、一応、そういった口調で話すように……と、父であるオールから言われていたのだ。

 

それを少々気にしすぎて、今まで……ユキがこの村にいたころは、ウルカはユキを呼び捨てにしていのだが、今は敬称になっているのである。

しかも、話し方は普段のままのため……バランス悪し。

 

「もう……そんな気使わなくていいのに。前までみたいに、ざっくばらんにしてくれて大丈夫よ? なんなら……アイク達の前でも」

「い、いや、それはまずいって! 怒らせでもしたら……その……」

「おいウルカ? 何やってんだ、いくぞ!」

 

と、ふいに馬車の方から……ウルカを呼ぶ声がした。

 

「あ、ハイ! 今行くっす!! ごめん、じゃあ俺、コレで」

「私も帰らないとね。それじゃあ」

 

そういって、2人は別れ、別方向に歩き出す。

と、その別れ際……ウルカは一度振り向いて、

 

「あの……ユキ、さん?」

「? 何?」

「その……今夜は冷えそうだから、早めに帰って……外、出歩かないほうがいいぜ」

 

そういい残して、走っていった。

 

「……? 今日、そんな寒いかしら……?」

「変な話だな。海沿いなら、そんなに昼夜で寒暑の差なんざねーだろうに」

「あ、アイク、おかえり」

 

と、その背後に……近くにあった土産物店の中で試食を全制覇したアイクが現れた。

その中で気に入ったものいくつかを買ってきたらしい。両手に……結構な量の土産物袋を抱えている。

不意に現れたにもかかわらず、ユキは別段驚かなかった。

 

「いるとウルカ君が敬語になっちゃうから、隠れててくれてたんでしょ? ありがと」

「さぁな。ともかく……ホントに冷えてきても洒落にならねーや。帰るぞ」

照れ隠しにも見える話し方で、アイクはすぐに後ろを振り返る。

と、その時、

 

「…………ん?」

 

視界の端に何かが映ったらしく……歩みを止めてアイクは横を向いた。

その視線の先には……

 

(あれは……孤児院の時のおっさん、か?)

 

反対車線の、さらにかなり坂を下ったところに……あの時、一時的にだが行動を共にし……護衛を引き受けた、裕福な身なりの男性……それが、一瞬だが見えたのだ。

名前は確か……バリゲ卿、と呼ばれていたはず。

その男は馬車に乗っていて、本当に彼だったか……今は確認することもできないが。

 

(なんで、ここに……?)

 

仮にもし彼だったとして、ビジネスの一環で来たのだろうか、とも思ったが……アイクには1つ、気になっていることがあった。

あの時、バリゲ卿の付き添いでいった孤児院……そこで出会った子供達……。

そして……その中で最年長で……生活費のために体を売って生計を立てていた……自らも抱いたことのある美少女……カナのことだ。アイクは、彼女と……その下の子供達の身を案じていた。

サイミールのエラ、レインゲートのデイリー……各方面に協力してもらって、その行方を探っているものの……依然として手がかりはない状態が続いていた。

唯一入ってきた情報では、その前後の時期に、ある奴隷商人のグループが活発に動いていた、という話があるが……関連は定かではないし、関連してほしくない、とアイクは思っていた。

もし本人だったなら、事情を聞こうかとも思っていたのだが……今では確認もできない。

気になったものの……アイクは忘れることにして、そのままユキと共に帰路に……

 

「ってアレ? ユキ?」

 

と、アイクが振り向くと……なぜか、ユキはアイクとは逆方向に走り出そうとしていた。

 

「あ、ごめんアイク、ちょっと用事思い出して……先に帰ってて?」

「? まあ、いいけど……早めに終わらせてこいよ?」

「わかってる! ご飯取っといてね!」

 

そういい残し、ユキは夕暮れが闇に変わりつつある村を駆けていった。

 

 

 

 

…………その夜、事態は急変する。

 

 

 

 

☆

 

ユキたちと話した後のこと。

ウルカは、近々……都に向けて発送する商品の『真珠』を運ぶ仕事で、馬車に乗って夜道を進んでいた。

服装は……動きやすいように、いつもの漁師の服だ。丈夫なズボンに、うえは堪能トップと、ポケットの多くついた皮製のノースリーブベスト。

向かう先は……村のはずれにある中継所。そこに、今積んでいる荷物を運んで……戻ってくる。それが予定だった。

順調に運べば、数時間で終わる仕事だ。少し遅い夕食には間に合うだろう……という見立てだったが……

……その予想は、外れた。

 

盗賊の襲撃という、思わぬアクシデントによって。

 

「ひいいっ!? や、やめてくれ!」

「い、命だけは! 命だけは助けて……」

 

ウルカの目の前では、武器を持った盗賊たち数十人が……馬車を取り囲んでいる。

それに脅され、戦意を喪失した商業組合のメンバー達は……皆、大人しく、投降している。ウルカも……その1人だ。

盗賊たちに武器を向けられ……いつもの彼には見られない表情で、小刻みに震えていた。

視線の先では……盗賊たちが、馬車の中の荷物を見定めている。

「よし、予定通りだ」

「じゃあ、さっさとこれらをいただいてとんずらしますか!」

「オラァ漁師ども! 妙なまねしたら殺すからな!!」

吼えながら、盗賊たちは馬車をそのまま、馬ごとのっとっていく。

この時点で……ウルカたち商業組合の敗北は確定だ。ろくに戦える護衛もいない上に、盗賊は数十人。どうやったって勝ち目はない。

この場を無事に済ませるには……積荷を渡して、命を見逃してもらうしか道はないのだ。

悔しくはあるが、命は惜しい……漁師達が涙を呑んでいたその時、

 

「やれやれ……とんでもない場面に出くわしちゃったわね……」

 

上空から……なにやら緊張感のない声が聞こえた。

 

「「「誰だ!?」」」

 

直後、

 

「『ルミナス・ハーティエルアンクション』!!」

 

馬車の周り一帯に桃色の光が降り注ぎ……馬車に乗り込もうとしていた盗賊たちの幾人かを直撃した。

 

「「「ぐああああっ!?」」」

 

光を食らった盗賊たちは……どういうわけか体が強張って動けなくなり、その場に崩れ落ちた。

大慌てになる残りの盗賊たちと……少しはなれたところにいる、ウルカ達。その間の地点に、空から、金色の衣をまとった……ユキが着地した。

 

「な、何だてめぇは!?」

 

パニック寸前の盗賊が、武器を向けながらユキに……昼間とは違い、戦闘体制で変身済みのユキに問いかける。

その後ろでは、

 

「ゆ……ユキ!?」

「ユキちゃん……かい!?」

 

ウルカを含む漁師仲間達が……目を丸くして、今の急変した状況を見ていた。

それはそうだ。実は、ユキがまだこのアシルスにいたころは……ここまで派手な技を使うことはなかった。

が、レインゲートに行って彼女なりに修行し……アイクたちと出会ってからはもっと修行し……ユキは強くなった。その彼女のこんな姿……アシルスの漁師達は初めてみる。

彼らが状況を把握しきれないうちに、盗賊たちは早くも、文字通り振って沸いた敵に対して襲い掛かる体制に入りつつあった。それを察したユキは、

 

「みんな早く逃げて! こいつら私がやっつけとくから!」

「で、でも……」

「いいから……ってああもう来たしっ!」

 

振り向くと……あと数メートルのところにまで、盗賊たちは迫ってきていた。

ユキはその者たちに手のひらを向け、

 

「『サンシャインインパクト』!!」

 

ドガアァァン!!

 

「「「ぐわあああっ!!」」」

 

まとめて吹き飛ばす。

 

「早く!」

「お……おう!」

「す、すまねえユキちゃん! てか、強いんだな……」

 

と、ようやく状況把握したらしい漁師達十数名は、走って街に逃げていく。

 

「ゆ、ユキ……」

「ウルカ君も早く! 巻き込んじゃわない自信ないわよ!」

「お……おう……っ!」

 

と、少し遅れてだが……目の前で起こっている出来事に唖然としていたウルカも走り出す。なぜユキがここに来ているのか……それが気になっていた様子だが……。

その背中を見送って……ユキは盗賊たちの残りに向き直った。

見ると……さっきのピンク色の光線で捕縛した者たちの高速も解けつつあったので、やや手勢が増えている。

しかし……ウルカたちが逃げた今、ユキに手加減する理由はない。

 

「さて……じゃあ、暴れますか!!」

 

「「「うらあああっ!!」」」

 

飛び掛ってくる盗賊達に向けて、ユキは構える。

 

「はっ!」

 

ゴゴゴッ!

 

「ぐっ!」

「がぁ……っ!」

 

見事な体さばきでかわしながら、アイクに習っていた体術でユキは戦う。

精度も威力も師匠・アイクには劣るが……根本的に身体能力が強化されている彼女なら、この程度の盗賊たちを相手にするのはわけはない。

それに、多少武に心得のある者がいても……

 

「うらああああっ!」

「『(略)インパクト』っ!」

 

ドゴオン!

 

「ぐああっ!」

「くそっ……舐めるなァ!!」

「うっさいわね……『プ○キュア・レモネードフラッシュ』!!」

 

キュイイン、キラキラキラ……ドガガガッ!!

 

「「「ぎゃああああ―――っ!!」」」

 

広げた両手から光り輝く蝶が大量に飛び出し、盗賊たちを一掃する。気絶程度の、怪我もしない威力だが……十分だ。今の攻撃で盗賊の数は半分ほどに減った。

そこにさらに、ユキは奇襲目的で背後に回りこんでいた2人を裏拳で昏倒させる。

 

「くそ……なんだってんだ……話が違うぜ!」

「何でこんな邪魔者が……てか、強すぎだろ!?」

(……まあ、私がたまたまここに来てたのが運のつき……か)

 

会話の内容から、不測の事態であるユキの乱入にパニックの盗賊たち。しかし……それも自業自得と言える。盗賊などと言う行為を働いている自分達が悪い。

もはや、戦局は一方的だ。ユキに負けはない。

 

……と、思われたその時、

 

「動くなぁ! 動いたらこいつを殺すぞ!」

「っ!?」

 

その声にはっとしたユキが振り向く。

すると……そこには……

 

「……っ!? ウルカ君!?」

「……ゆ、ユキ……ごめん……!」

 

盗賊の1人につかまり……刃物を突きつけられているウルカの姿がそこにあった。

 

(逃げられたと思ってたのに……仲間が回りこんでたの……?)

 

「女! 大人しくしろ! こいつの命がどうなってもいいのか!?」

 

無事に逃げおおせたと思っていたウルカは……盗賊に捕まり、人質になっていた。

この事態にはさすがにユキも動揺する。盗賊たちは、今までのユキ自身の猛攻によって興奮状態にある。下手に動けば……ウルカの命が危ない。

どうにか状況を挽回できないかと機会をうかがっているが……その間に盗賊は焦れたらしい。

ナイフでウルカの首筋をちくちくと突き、

 

「大人しくしろ!」

 

と、ほえる。

 

「ぐっ、う……ゆ、ユキ……」

 

口元からもれ出て聞こえる、ウルカの苦しそうな声。

このままだと……ウルカをも巻き込んでしまう恐れがあり、攻撃ができない。かといって、打撃や……『太陽拳』などを使おうとしても……モーションの間に、盗賊がウルカを殺しかねない。

そう思ったユキは……

 

「……わかったわよ、降参」

 

ウルカの命を第一に考え……変身をといた。

それを武装解除と認識した盗賊たちは……すぐさま縄を取り出して、ユキに駆け寄った。

 

(……仕方ないわね……一旦はこうして、機会を待つしかないか……)

 

盗賊達に縄をかけられ、目隠しをされながら……ユキはため息をついた。

 

 

 

 

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