※この作品はR-18です。

Twins Knight Saga ~双子の勇者の転生戦記~   作:破戒僧

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第48話 双龍激昂

 

 

『命まで奪いはしない』

『生きて償え。それが……罰だ』

『さっさと帰れ、俺の気が変わらないうちにな』

 

……少年向けの漫画、小説では……これらに類する表現が多く見られる。

主人公は、ヒーローは、正義の味方は……無駄な殺しを好まない。それは道徳的・良心的理由でもあるし、その者の美学が理由に挙がる場合もある。

特に……未成年が主人公の場合、こういった展開は多い。王道と言ってもいい。

 

……が、

 

今のこの2人に……そんな社会通念は通用しないことを、先に述べておく。

 

☆

 

「うぉらぁぁああああぁあああぁあっ!!!」

 

ズバババババババババッ!!!

 

「ぎゃああっ!」

「に、逃げ……ぐあああっ!」

「ひぃっ! な、何だコイツ!?」

 

侵入者を返り討ちにするつもりで、武器を手に終結した盗賊たちは……ものの数分で手のひらを返し、我先に逃走しようとあわてていた。

 

その、恐怖を多分に含んだ視線の先には……

身の丈ほどもある巨大な、包丁のような形状の刀……『斬月(ざんげつ)』を振り回し、鬼の形相でばったばったと容赦なく盗賊を斬り払う、アイクの姿があった。

 

「てめェらもう絶対に許さん!! ユキだけじゃなくカナまであんな目に遭わせやがって!! 全員残らず地獄に送ってやるから閻魔様への言い訳考えとけゴルァ!!!」

 

言うなり、凄まじい速さで跳躍すると、アイクはその一閃で数人の盗賊を一度に斬り倒す。反撃しようとする者が数名向かってくるが、いとも簡単に攻撃をかわされ……同じようにしてその刃の餌食になった。

 

さらにアイクは、体重も武器の重さも感じさせない体裁きで敵陣を舞う。

 

そして片腕で刀を振り回し、剣も、鎧も、盾も、壁も、床も、天井も、何もかも分別することなく、強度も防御力も一蹴し、振り回した先にあるもの全てを斬り刻んだ。

空いているもう一方の手……左手には『腕輪』がはめられており、凄まじい威力の遠隔系攻撃を、必要に応じて体術をも使い、敵を粉砕する。

 

今も……回し蹴りで敵の鎧をありえない形に変形させながら、左腕から放った連続気功弾で数人をまとめて消し飛ばした。

正に鬼神。もしくは夜叉。普段のフランクなアイクの面影は、微塵もない。

火山の噴火にも等しいその怒気は、オーラと呼んでもいいほどの威圧感を周囲に撒き散らし……敵の攻撃すらはじかん勢いだ。

 

「畜生っ! 死ね!」

「てめェがな!」

 

かけ声と共に飛んできた矢を、アイクは素手で叩き落とし、お返しに『気円斬』を投げつける。円盤状のエネルギーの刃が命中し、構えていた弓ごと男を真っ二つにした。

 

その間に接近してきた剣を持った連中は、その場で高速回転して『斬月』で一掃する。

そして逃げる者がいるのを確認すると、今度は天井にエネルギー弾をぶつけて周囲を根こそぎ崩れさせ、自分はそれを突き破って脱出した。崩れた瓦礫の重さと量から考えても……下敷きになった盗賊たちの命は絶望的だ。

そして、外に出たアイクの目には……森の中へ逃げようと必死になって逃げていく盗賊たちが見えた。

 

「逃げられると、思ってんじゃねえぞ……!」

 

アイクはそれら全員を正面に見据え……両手で剣をもって大上段に振りかぶる。風もないにもかかわらず……アイクの学ランのすそがユラユラと揺らめく。

そして……精神力を剣に集中させると、

 

「『月牙天衝(げつがてんしょう)』!!!!」

 

ドガアアアアアアアアッ!!!

 

振り下ろした剣から巨大な光の斬撃が放たれ、その方向にいた盗賊たちを一掃した。

 

「おぉし、次ィ!!」

 

☆

 

一方、

アイクが夜叉なら……こちらは羅刹か。

 

今さっきまで彼が通っていた通路に残っているのは……もともとは人間だったもの。

しかし今は……無残にも砕かれた氷の欠片。

または……闇のエネルギーの奔流で、体が粉々に砕け散ったあとの塵芥。

行くところ行くところ、そんな光景が続く。

 

「うらあああああっ!!」

「……『氷爆(ニウイスカースス)』」

 

バキィッ! ガシャアン!!

 

冷機と衝撃を一度にたたきつけられ……襲い掛かる盗賊たちは凍りつくと同時に砕け散った。そのまま、今までにそうなった連中の仲間入りをする。

 

「し、死ねえっ!」

「くらえェ!」

「うるさいですよ……『フリーズランサー』」

 

感情のこもっていない、氷のように冷たく鋭い瞳で……イオンは裁定を下す。

かざされた左手から何本もの氷の槍が飛び出し……盗賊たちを残らず串刺しにした。

 

「ひいいいいっ! に、逃げろ!」

「人間じゃねえ、化け物だアイツ!!」

「……失礼な、誰が化け物ですか」

 

哀れむような言い方で言いつつ、イオンの手元に……先程まで以上の冷機が収束する。

 

「それにしても、本当にうるさい人たちだ……ちょっとくらい上品に、静粛にしていることができないんですかね…………どうせ全員死ぬのに」

 

そして、

 

「……『ヒャダイン』」

 

四方八方に氷の槍が、というよりも尖った氷塊と呼ぶに等しいそれらが降り注ぐ。

それらは盗賊たちをえぐるように串刺しにし、さらに圧倒的な冷気で血ごと凍りつかせる。もはやそれらは、よくできたオブジェだ。若干……趣味は悪いが。

 

兄とはまるで対照的なこれが、彼の激昂状態だ。

アイクの怒りが火山の大噴火なら、イオンの怒りは絶対零度の吹雪。氷のように冷たい、冷酷非道な鬼神となって敵を討つ。どんなに頭を下げ、目に涙を浮かべて懇願しようと、彼の心には何も届かないのだ。

 

ほとんどやけになっている、残りの盗賊が……リーチを頼りに槍や弓矢でかかってくるのがイオンの視界の端に映ったが……今の彼には、それらも蝿や蚊と変わらない存在。

面倒そうに、腰の剣をすらりと抜くと……その姿は短い小太刀。

そしてそれを閃かせ、かかってきた数人をまとめて斬りつける。

 

スパパパパパパッ!!

 

「が、っ!」

「痛いっ!?」

 

しかし傷は浅く……斬り伏せられた盗賊たちは、慈悲がかけられたのかと気が緩む。

そして、そのまま死んだフリで乗り切ろうとした次の瞬間……それが間違いだと知る。

 

「ぐ、あ……っ!?」

「く……苦しい……」

 

(((ま、まさか……毒を……!?)))

 

ご名答。切り傷をつけられた者たちは、イオンの抜いた刀に付着していた毒にやられ……身を切られるよりも壮絶な痛みと苦しみを味わっていた。

皆、泡を吹き、白目を剥き……見ていられないほどにもだえ苦しんでいる。

 

「こ、殺して……いっそ、ひと思いに殺してくれ……!」

「やだなあ、何言ってるんですか? ちょっとでも長生きしていた方がいいでしょ? せっかく急所を外してあげたんだから……人の好意には素直に甘えるものですよ」

 

無慈悲な声で懇願を一蹴すると、イオンは剣を鞘におさめる。

そして、逃亡を始めた残る盗賊たちに向き直ると、何事かつぶやく。

 

「『ブラッドランス』追尾(ホーミング)タイプ……発射」

 

直後、イオンの周囲には漆黒の魔法陣が浮かび上がり……赤みを帯びた黒い魔法の槍が次々と飛び出す。その槍は……命ある者の存在を察知し、誘導弾の要領で次々に生者に襲い掛かり、体を貫き、命を奪った。

するとその直後、

 

ドゴオオオン!!

 

「……おや?」

 

爆音と共に巨大な光が目の前を通り抜け……壁に大穴が空いた。

そしてその向こうから……

 

「やっぱりお前かよ! ったく……趣味悪い技使ってんな……」

「……兄さんが一番騒がしいですね、まあ、仕方ないか」

 

外にいた盗賊をあらかた片付けたアイクが、中の盗賊を狩っていたイオンと……合流した。烈火の怒気と冷徹な怒気が入り混じり、奇妙な気圏があたりに広がる。

 

「何使おうとかまわねーけどな、お前もうちょっと回りに気ィ使えバカ。俺のほうに何本か飛んできたぞあの黒い槍」

「通路ふっ飛ばした兄さんが言いますか……まあいいや、気をつけますよ。それで兄さん……どんな感じですか?」

「ん、ああ……大体外は終わったし、ユキの匂いがついてる奴も全員斬った。けど……ところどころ隠れてる奴とか、逃げてる奴とかいてな……」

 

アイクは嗅覚を強化し、盗賊たちの中で……ユキの体の匂いが少しでもする者をさがしていた。すなわち……ユキをレイプした可能性のある者全員だ。逆上しつつもその機転が利いているあたり、底知れなさがわかる。

すると、それを聞いたイオンは、

 

「それは面倒ですね……逃げられても面白くありませんし、僕が引き受けますよ」

 

言うなり、たった今アイクがあけた大穴から外に出た。そして跳躍を繰り返し、アジトの建物の……高いところまで登る。

 

そして、『腕輪』をつけた腕を宙空にかざすと……何もない所から、本を一冊取り出した。

百科事典ほどの大きさと厚さの本だ。表紙に……なにやら不気味なマークもついている。

イオンはその本を開き、ぱらぱらと適当にページをめくる動作をして……

 

「どの道……僕は、死なすだけじゃ物足りないと思っていましたので」

 

直後、足元に魔法陣が浮かび……本も光りだす。

 

「魔法律第……まぁ何でもいいや。ともかく、強盗、障害、強姦、誘拐、監禁その他もろもろの罪により…………『魔列車』の刑に……処す」

 

そして、

 

ガタンゴトン……ガタンゴトン……

 

機械的な音を響かせて天空から……空中を走って、巨大な汽車が舞い降りた。

そして、その扉から、窓から……不気味な白い『手』があちこちへ伸び、逃げる者、隠れている者も残さず探し出し、車内に引きずり込んでいく。

 

「うわああぁああっ!! や、やめやがれ化け物!!」

「た、助けて……っ!!」

 

そしてその『手』は……時折、何もないような虚空をつかみ、『何を』を車内に引きずり込んでいく。

その『何か』……それは、死者の『魂』だ。『魔列車』は手を伸ばし、周囲に漂う盗賊たちの魂を残らず引きずり込んでいるのだ。

 

「『魔列車』に一度捕まったら脱出不可能……。生者だろうと霊魂だろうと、そのまま地獄に連行され……地獄の寒空を文字通り永遠にめぐり続ける……死んだくらいでユキをレイプした罪が消えるなんて思わないことですよ………………ん?」

 

そのようすを見下ろしながら……イオンはふと、その目にあるものを捕らえた。

 

「……兄さん、ちょっと」

「あん? どうした」

 

そしてそれを……地上から見上げているアイクに伝える。どこに、何があったかを。

それを聞いたアイクは……凶暴な笑みと共に、その方向へ向けて走り出した。

 

☆

 

「くっ、くそ……どうしてこんなことに……!?」

 

全てうまくいっていたはずの計画……それが、一夜にして破綻していくその様子に、ゲリックはショックを受けていた。

 

数時間前まで、ゲリックは順調に進みつつあるこの計画の成功を確信し、酒を飲み、料理を食らい、そして捕虜となっていたユキの体を堪能し……まさに有頂天だった。

そこから、たった2人の襲撃者によって……計画が破綻するどころか、率いてきた盗賊団そのものが完全に粉砕されてしまったのだ。

信じられない剛力、目を疑う威力の魔術、全てを断ち斬る剣に、鎧を砕く拳。

今、階下では、奇妙な乗り物のような何かが(ゲリックは列車を知らない)、生き残りの盗賊たちを蹂躙している……ゲリックには見ているだけで気持ちが悪くなる光景だった。

頼みの綱、後ろ盾のバリゲ卿とも連絡が取れない。これでは……爵位特権で守ってもらうこともできない。

 

そう悟ったゲリックは……最後の手段として、このアジトに隠していた『魔法気球』を使って逃げることにしたのだ。

随分前に盗賊が襲った商人が持っていた、珍品中の珍品だ。魔術師のみが乗りこなすことができ……通常の気球の数倍の速さで空を飛んで逃げることができる、風の魔力を帯びた強力なマジックアイテム。

ゲリックはそこに、詰め込めるだけの宝と、自分を含め7人……操縦者の術師と、盗賊のリーダー、そして部下4人を乗せ……全速力でそこを離れていた。これを使えば……いくらなんでも逃げ切れる、そう……判断して、だ。

コレなら逃げ切れると、そう、思っていた。

 

……離陸から数分後に、彼に遭遇するまでは。

 

「おいゲリックの旦那! どうするんだ一体コレ!?」

「知らん! それよりも今は……一刻も早くここを離れないと殺される! おい術師、もっとスピードを出せ!」

「も、もう無理ですよ! これ以上は……」

 

「そうそう、そんなに急ぐこたぁねーだろ、オッサン」

 

(((………………え!?)))

 

その声に、ゲリックの背筋に凄まじい寒気が走ると同時に……

 

ズバババババッッ!!

 

何かが一閃し……盗賊の手下が4人とも、そして術師の手下が……何かに切り裂かれ、血を噴出して死んだ。

そして、その血が滴る刃を手にした状態で……エリックからよく見える位置の空中に、アイクがふわふわと浮いていた。

 

「ひいいいいっ!?」

「よぉ……下衆野郎。ユキが……世話になったな」

 

そう言うアイクの左手―――剣を持っていない方の手―――から、先程まで自分の隣にいた盗賊のリーダーがぶら下がって宙吊りになっていた。

上空数十メートルの地点で頭を下にして足をつかまれ、宙吊りにされている盗賊のリーダーは、何か言おうとしていたが……その前に、アイクの手から青い炎が噴出し……その男の体を見る見るうちに包んでいく。

 

「あっ、が……ぎゃああああああああああああああああああっ!!!?」

「…………燃え散れ」

 

熱と共に激痛を与えて身を焼く青い炎に包まれた男は、耳を塞ぎたくなるような絶叫をしている。アイクはそれをぽいと投げ捨て……男は真っ逆さまに落ちていった。

しかし、その体が落下して地面にたたきつけられる前に……体は完全に燃え尽きた。

その信じがたい光景を前に顔面蒼白になっているゲリックに、『舞空術(ぶくうじゅつ)』で浮いているアイクは、

 

「さて……覚悟はいいな?」

「ま、待て! 待ってくれ! は、話せば……話せばわかる! こ、ここは平和的に……取引でこの場を……」

「……ったく……パターン過ぎて逆に笑えるな、コレ……あ」

 

と、アイクは何か思い出したように、

 

「そういやよぉ……ゲリックさん、あんたにユキから1つ『伝言』預かってんだわ」

「………………は?」

 

恐怖で汗だくの顔で、きょとんとして自分を見返してくる面白すぎる見た目のゲリックに、アイクは一瞬間を置いて……ユキの伝言を伝えた。

地下牢で自分を犯し、散々に辱めたゲリックへの、その内容とは……

 

「『下手クソ』……だってよ」

 

「………………は?」

 

それを伝えた直後……アイクの姿がブレて、ゲリックの目の前から掻き消えた。

凄まじい速さで動いたアイクは、その気球の真下の地面に着地すると……決め台詞系の展開のために、ゲリックを前にして今まで押さえ込んでいた怒りを爆発させる。

 

歯軋りが聞こえるほどに強く奥歯をかみ締めながら……それをそのままエネルギーに変え、手のひらに収束させる。その手のひらを向かい合わせ……アイクはあの『かめはめ波』に似た構えを作るが……これは、それとは違う技。

 

ギュイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!!

 

犯されたユキの分、

自分と同じくユキを愛する、イオンの分、

それらの思いと、はらわたの煮えくり返るような激情の全てを力に変え、怒りに任せて最大限にパワーを高め、そして……

 

「宇宙の……チリになれえェ―――――――っ!!!!」

 

超巨大な破壊光線『ギャリック砲』が、その両手から発射された。

 

ドゥッ、ズドオオオオオオン!!!!

 

自分の身長よりも直径の大きなその渾身のビームは、凄まじい勢いでもって『魔法気球』に衝突し……粉々にそれを砕く。

 

「――――――ぁ――――――」

 

悲鳴を上げる暇もなく、ゲリックは、気球や、他の手下達ごと、エネルギーの奔流に飲み込まれて、粉々以上に粉々になった。

 

凄まじい爆発と轟音が轟き、ようやくおさまったころ……そこには何も残っていなかった。

骨の欠片どころか、遺灰さえも蒸発してしまい、ふってこなかった。

そんな光景を見て、アイクはただ一言……戦いの終焉を告げる意味で、こう吐き捨てた。

 

 

 

「けっ、汚ねえ花火だ」

 

 

 

 

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