Twins Knight Saga ~双子の勇者の転生戦記~ 作:破戒僧
「さて……と」
夜。
場所は……アイク達が騎士団に色々と説明を受けた、廃墟の町から山を下りたそこ……占領された港町『テイロス』である。
その町のはずれの建物の影で、イオンは隠れながら様子を伺っていた。
もっとも……伺う必要もないほど、露骨に様子はわかるのだが。
「右も左も、どこもかしこも……同じ服装の奴ばっかりだな……」
前日、開けた戦場で200人ばかり叩きのめした、灰色の鎧の帝国兵……それが町のあちこちに、武器を持って徘徊しているのだ。
その街中に、なぜイオンが潜入しているか……それは、ここへ忍び込む前に話し合った……作戦の内容に起因する。
テイロスの町は、すでにほぼ完全に帝国軍に占領されてしまっている。
その状況下……闇雲に動き、でたらめに戦っても、こちらにいいことはひとつもない。消耗するだけだ。
ゆえに……ここでアイク達は、目的を2つに絞ることにした。
1つは、敵将……モーガンの打倒。
もう1つは、囚われの身になっているであろう、町の者たちの救出だ。町の人間のほとんどは、混乱しつつも逃げられたらしいが……中には逃げ遅れて帝国兵に捕まってしまったものもいるらしい。
その者たちが囚われているであろう場所も、ギオからの情報で一応予測はついている。……数が少々あるため、絞り込むまでにはいたれなかったが。
それを元に……作戦は、
1、アイクとイオンの2人でテイロスに潜入。二手に分かれて住民を捜索。
2、人質救出。こっそり町外に誘導し、王国騎士団に引き渡して安全確保。
3、モーガンを倒す。
どんなに強大な軍隊でも、頭をつぶせば崩壊は早い。
そしてその際、人質に使われたりと厄介なことにならないように、囚われの身の住人達はあらかじめ解放しておく。
その後、敵の親玉であるモーガンを倒し……その声明でもって敵軍に降伏を勧告。以上が大雑把な計画内容だ。
なお、今回ユキは……万が一の事態に備え、控えの戦力兼王国騎士団の加勢として、陣営に残しておく。
そしてアイクとイオンは、複数ある人質監禁場所の『心当たり』を端からあたるため、それぞれ町の反対側から潜入し……そのミッションにあたる。
「さて……行くか……。まずは、この近くの……あそこだな」
夜の闇にまぎれながら、イオンは音もなく屋根の上に飛び乗り……しゅたたたたたっ、とでも効果音がつきそうな走り方で華麗に屋根伝いに走っていった。
「しかし、こんなスパイみたいな……我ながら、この異世界に順応してきてますね……」
☆
そのころ、
港町『テイロス』の中心部にある、いわゆる役所のような建物。
役所と言うには少々立派で、少々物々しい……軍隊の基地のようにも見える建物だ。大きさも、サイミールやアシルスの組合会議所の倍近くある。
その建物は……今は、帝国軍の指令本部と化していた。
その最上階にて、ある男が……女を1人閨に連れ込んでいた。
「んはぁっ、うぅ……い、いいです、モーガン……様っ! お、奥に、あたって……!」
黒髪に長髪の、呼称の仕方から……その部下か何かと思しき女は、仰向けに寝ている男の上にまたがるようにして……自ら腰を動かして、男の剛直を膣内でしごきあげている。
「ふむ……お前の中も、なかなかいい具合だな」
「あ、ありがとう……ございますっ……!」
快感に恍惚の表情で、女は男……モーガンに奉仕していた。
ベッドの上で、水音を響かせながら……愛液に濡れ、出たり入ったりする肉棒。その持ち主は、自分も微妙に腰を動かしつつ……あまりがっつくような態度は見せないまでも、このセックスを楽しんでいるように見えた。
男の陰毛が、女の膣口でチクチクと感触を残し、それもひとつの快感と思えている中……次第に、その限界も近づく。
それはモーガンの方も同じなのか、不意に女の腰をつかみ、自分から積極的な動きで腰を動かし始めた。
肉棒が子宮口を突き上げ、女性は急激に絶頂に近いところまで連れて行かれる。
「はあああぁっ! い、ぁあ……も、もう……ダメで……っ!」
「くっ……出すぞっ! 全て……膣内で受け止めろ!」
「は、はいぃっ……! な、中に……全部……っ! モーガン様の精液、私に全て注いでくださいませぇ……っ!」
びゅるるっ! どくびゅるるびゅるびゅぷっ!!
肉棒が躍動し、そこから白濁の粘液が女性の膣内に放たれる。
その全てを、こぼさずに子宮にて受け止めた女性は……熱い射精の感覚に絶頂を迎えたのだろう、体を、膣をびくびくと痙攣するように震わせ……脱力して、モーガンの胸の上にそのまま倒れこんだ。
モーガンの方も、射精に体力を使ったのか……やや息切れし、それでも表情を崩すことはなく、その場に寝たままである。
少しして、女性は起き上がり……膣からペニスを抜くと、それに顔を近づけた。
「きれいに、させていただきます……んちゅ……」
と、女性がモーガンのペニスに舌を這わせ始めたちょうどその時、
「……お楽しみの最中でしたか」
と、部屋の入り口から……冷静な声が聞こえた。
モーガンが裸のまま、ゆっくりと上体を起こすと……入り口のところには、別の女性が立っていた。
部屋の外から入る逆光で、表情は伺えないが……ロングの髪型だけはわかる。セックス後のモーガン達の痴態を前にしても、あわてている様子は一切見せていない。
「……隠密部隊の者か」
ふぅ、とモーガンは息をつく。状態を起こしたことで……その顔は部屋の外からの光に照らされ、よく見えるようになった。
筋骨隆々の肉体に、灰色でオールバックの髪。顔も全体的に四角く、一言で言えば『体育会系』といった印象だ。ダンディ、と言ってもいいかもしれない。
「ああ、まあな……精神の疲れを癒すには、酒とタバコと女が一番だ。お前の部下の女を借りたが……何か問題でも?」
「いえ、何も。夜のお相手も、我々『隠密部隊』の役目ですゆえ」
感情の起伏が感じられない声で、女は返す。
「それで、何の用だ? 混ざりたい……というわけではなさそうだが」
「はっ、報告事項が。昨日『王国騎士団との戦闘に突入する』との事後報告があった、山中散策担当の200人からなる部隊ですが、先程、全滅の知らせが」
「…………何?」
モーガンは目を細め、声のトーンが低くなる。
「……敵の残存兵数は、負傷兵合わせて700弱と聞いていたが……総力戦の末に、か?」
「いえ、生き残りで落ち延びたものの話では……驚異的な戦闘力の者が少数で、部隊を壊滅させた……と」
「……! 聞き捨てならん報告だな……」
モーガンは顔を険しくすると、ペニスを舐めている女性を押しのけ、ベッドから降りた。近くにおいてあった服を身に着けながら、続けて報告を聞く。
戸口の女性は、書類らしきものをペラペラとめくりつつ、
「その後、王国騎士団に特に動きは。廃墟となった山中の町に引き続き滞在している模様です。いかがいたしましょう?」
「……その報告の内容が気になるな……急くことはできんか。兵力を投じて一気に決着をつけようとも思ったが、一旦見送ることにする。引き続き監視に当たれ。それと、お前達に頼んでいた本来の任務……付近の町の防衛設備の調査も、忘れるな」
「はっ。必要なら、戦いに加勢せよ……とも言われておりますが?」
「確かに貴様らの戦闘力は高いが……おおっぴらな戦闘専門の我々とでは分野も闘い方も違う。逆に連携が取れまい、遠慮しよう」
その返事を聞くと、女性は一礼し……その部屋を去った。去り際に、そのふわりとした髪が一瞬きらめき……明るい藍色のそれだと見て取れた。
モーガンは服を着ると、今まで抱いていた女に『もういいぞ』と帰るように言う。
その女が部屋を出た後で……部屋の中央に置かれているソファに腰かけ、テーブルの上から葉巻を取る。それをふかしつつ、つぶやくように言った。
「……やはり、先程の報告が気になる……いい予感がせんな……」
葉巻が燃え尽きるまで、窓の外に見える、テイロスの町を見下ろしながら……モーガンは、圧倒的に自分たちが優位な戦況にも油断せず、警戒心を強めていた。
☆
さらに同時刻、
「さて……ここはどうかな……?」
こちらは……イオンとは別方向から進入した、アイク。
イオンよりは少々大雑把ながら、なんとか誰にも見つからずに、渡された町の見取り図に従って、捕虜が捕まっていると思われる『候補地』をめぐっていた。
ここまで、候補地3箇所をあたったアイク。1つは空振りだったが、残り2つは……監禁されていた捕虜を、どうにか救助することに成功していた。
しかし、帝国兵たちに見つからないような場所に隠れさせただけで……町の外に連れ出してはいない。タイムロスが起こるからだ。
連れ出す間に、捕虜が消えたことが帝国側に知れれば……警戒態勢をしかれる。それなら、後でまとめて連れ出すほうがロスがない。
そしてラスト1箇所、ここは……
『おらおらっ、移動だ! さっさと歩け!』
ヒュン、ピシィッ!
『きゃああっ! 痛いっ!』
空を切る鞭のような音と、女性の悲鳴……。
アイクの耳に、そんな音が聞こえてきた。どうやら……あたりらしい。
気づかれないように屋根に上がり、窓から中を見る。
そこには……囚人服を着せられた、町の住人と思われる捕虜達が……手錠でつながれて、帝国の兵士達に監視されながら、一列であるかされていた。
どうやら……通路内を移動中のようだ。
先程の鞭の音は、疲れで進行速度が落ちたことに兵士が苛立ってのそれか。
見ると、兵士達は手に手に鞭を持ち、行列のあちこちには……血がにじんだ、痛々しいミミズ腫れをのぞかせる者がいる。
耳をすますと、兵士達の声が聞き取れた。
「でもよぉ、何でいきなり移動なんだ?」
「なんでも近々……王国騎士団を全滅させた後で、その町の連中も捕虜として入れるから、収容スペースを有効活用するんだと。他の所に入れてる奴らと、合流させるらしい」
「そうか……じゃあ、2番と3番の収容所の連中も集めるのか」
(2番と3番……ここが1番だとすると、少なくとも残り2つある、か……)
と、アイクが悟った時、突然……その列の中盤にいた1人の老人が、がくっと膝をついて倒れた。体力が持たないのだろう。
息を荒くする老人のもとに、周りの捕虜達と、気づいた兵士が近寄る。
「おいこら、さっさと立って歩け!」
「無理を言わないでください! お爺ちゃんはただでさえ体が弱いのに、もう……何日も監禁されて弱ってるんです! お医者様を呼んであげてください!」
その捕虜……孫か何かか……の言うとおり、老人はいかにもつらそうだ。今までまともに歩けていたのが不思議なほどに。
すると兵士は、少し考えて
「しかたねえ、その爺はここで殺せ」
「なっ……!?」
「ああ、どのみちその状態じゃ、奴隷にもなりゃしねえ。ムダに食料を消費するくらいなら、ここで口減らししたほうがいいな」
言いながら、仲間の兵士が老人から孫娘を引き離し……別の兵士が老人のそばに立つ。
そして、腰に携えている剣を抜き……大上段に振りかぶる。
「や……やめてっ! おじいちゃあぁ――ん!!」
少女の悲痛な声にも、男達は耳を貸す様子はない。
「さて爺さん……悪く思うな。恨むなら……あんた自身の体の弱さを恨むんだな」
そう言って、兵士が剣を振り下ろそうとしたその時、
「的外れな責任転嫁すんなボケ」
そんな声と共に……窓枠を突き破ってアイクが突入し、剣を持っていた兵士に強烈なとび蹴りを食らわせて吹き飛ばした。
ごげっ、という妙な声と共に兵士は吹き飛び……したたかに壁に打ち付けられて動かなくなった。
「えっ………………?」
という、女の子の声を最後に……その場は一気に静寂に包まれる。
そんな中、アイクは……悠然と着地し、兵士が落とした剣が老人に刺さらないようしっかりと受け止める。
老人が殺されそうになったと思ったら、誰かがいきなり外から現れて……兵士を蹴り飛ばした。予想もしない事態に……その場にいるアイク以外の全員の目が点になる。
そしてその数秒後、
「「「な、な、何だテメェはっ!!?」」」
突然の侵入者、もとい乱入者に……帝国の兵士達があわてて武器を構えなおし、
「あちゃあ……またやっちまったよ。隠密行動厳守だってのに……ま、この場合仕方ねーよな!」
アイクは開き直って、すぐにこの場をどう収拾、もとい粛清するかプランを練り始めていた。
☆
「……なんか上が騒がしいな……?」
と、隠し扉から入った地下通路を進みながら……イオンは嫌な予感を覚えていた。その右手には、騎士団から託された、秘密の地図。
この港町『テイロス』、元は軍港だったらしくその当時の設備……たとえば、地下通路や地下牢、拷問部屋などもきっちり残され、しかも1施設として現在も利用されている。
そしてその名残ゆえに、それらの地下通路はもちろん、町の通路に至るまでが迷路のようになっている。軍港時代……敵の侵攻を防ぐための設備だろう。
もっとも今回はそれを承知の上の帝国の者たちにそれを逆に利用されてしまっているわけだが。
そんな中でも彼は……今まで同様、『ほぼ』誰にも見られていない。
にもかかわらず、外が騒がしくなってきているということは……だ。
「兄さん、また何かめんどくさいことやらかしてないだろうな……?」
その問いに答えを返してくれる兄は、上の階で派手に戦っていることだろう。
かなり濃い、嫌な予感を無理やり振り切りつつ……イオンは歩みを進める。
ここにいたるまで、イオンは別の場所でいくつかの捕虜を見つけ……彼ら彼女らを救い出し、一旦別の場所に隠れさせていた。完全に安全とはいえないまでも、兵士達にはしばらくはまず見つからないであろう場所に。
その際、見張りの兵士達は……昏倒させ、拘束し、こちらも簡単にはわからないところに隠した。先程、見られていないのを『ほぼ』とつけたのは、ここに起因する。
そして、最後の一箇所……イオンが、『第2拷問部屋』に向かう途中。
ここを曲がれば、目的の部屋だ……という曲がり角で、
「……ん……?」
イオンは、曲がり角の向こうに妙な気配を感じ、足を止めた。
誰かが……角の向こうで待ち伏せしているような気配だ。
イオンは足音を消して―――少なくとも兵士達に途中気づかれないレベルまで―――でここまで来た。にもかかわらず気付かれ、待ち伏せされているということは……相手は相当な手練か。
……とも思ったが、それは違う、とイオンは悟った。向こうからのろうそくの光で影ができて、襲撃者(多分)の存在がこちらから確認できる。
しかも、やや荒い息遣いも聞こえる。プロなら……こんなヘマはしない。
おそらく、出会いがしらに昏倒か何かさせるつもりだろう、何か武器を構えているのがわかった。それが何かもわからない今、うかつに出て行くのは危険だ。
そう思ったイオンは、ブレザーの上着を脱ぎ……
(さて……どう来る?)
曲がり角の向こうに、ふわりと放り投げた。
直後、
「うおりゃぁあっ!!」
掛け声と共に、何者かが飛び出し……鉄パイプでブレザーに殴りかかった。
ぶぉん、と音を立てて鉄パイプが空を凪ぐ。気合十分、一撃で仕留めるつもりだったのだろう。
が、
「……あれ?」
そこにあるのはただの上着。暖簾に腕押し。
スカッ、と手ごたえなく鉄パイプは空振りし……それを構えていた者は、勢いそのままにバランスを崩して倒れそうになる。
どうにか踏みとどまったが……その間に1テンポ送れて飛び出したイオンは、その者の背後に回って、後ろ手に腕をとる。
「ぐっ!」
と、その時……イオンは一瞬だけ、その襲撃者の姿を見た。
(えっ、女性!?)
不思議に思いつつも、ほとんど条件反射でイオンは関節技を決め、この世界に来た時にイーラにしたのと同じ要領で相手を押さえつけた。ぐぅっ、と苦しそうな声をあげ、決して動けない姿勢で襲撃者は床に押さえつけられる。
その時イオンは、改めて見た襲撃者の姿に驚きを隠せなかった。
その者は……裸の女だったのだ。一糸まとわぬ姿の、全裸の若い女性。
今しがた殴りつけたブレザーを床との間に挟んで、女性は顔を床に押し付けられている。それを強引に動かして上を向き……イオンをにらみつける。
「ちくしょう、離せっ! 離せよ、帝国のタコ兵士っ! 汚い手使いやがって!」
そして、その感情のままに……大声で罵声を浴びせてきた。
「え? あ、あの……ちょっと?」
「何だよ、どうせまたあたしを犯りに来たんだろ!? このエロ兵……士……?」
と、ここで女性はようやく……その服装から、自分を押さえつけている男が、帝国の兵士ではない……と悟ったらしい。
お互いがきょとんとした顔になり、数秒の沈黙の後、
「えっと……あんた誰?」
「えっと……その言葉そっくり返させていただいても?」
と、その時、
「おい、何か聞こえたぞ、何かあったの……か……!?」
イオンがついさっき通ってきた扉から、鎧から兜までしっかり装備した1人の帝国兵が顔をのぞかせ……その状況を目撃して絶句する。
見つかった、と知ったイオンの対応はすばやかった。兵士が何か言う前、何かする前にすばやく走りより、口を押さえて腕を回し……首を掌握する。さらにもう片方の手で兵士の剣を奪い……鞘から抜いて切っ先を持ち主の喉元に突きつけた。
「ひぃ……っ……!?」
「上にいる仲間に来られると困ります。何もなかったと叫んでください。余計なことを言ったらその瞬間殺します」
そう、イオンは切っ先を首にちくちくと触れさせながら命じた。
くぐもった恐怖の声も止めて、兵は素直にうなずいた。そしてイオンが手を離すと、
「な、何でもなかったよ、女がやけになってたんだ、ははは……」
『おーそうか。まあ、おかしくなってもおかしくないくらいにヤったしな、ははっ』
などという声が上から聞こえた。
どうやら……上にいて今の騒ぎを聞いた他の兵士達は納得したようだ。
お疲れ様、と言って……イオンは拘束していた兵士の首をコキッ、とひねる。適確に頚椎にショックを受け、兵士は一瞬で気絶し、どさりとその場に倒れた。
と、そこまでして……イオンは襲撃者の女性の存在を思い出し、その方を向くと……女性は上体こそ起こしていたが、未だに座ったままで……ぽかんとそれを見ていた。
イオンが……あれよあれよという間に事態に対処し、そして帝国の兵士を気絶させたというその行動に……彼女の中で、最初に抱いてしまった誤解が解け始めていた。
(もしかしてこいつ……帝国兵じゃない……ってことは、敵じゃ、ない……?)
イオンはイオンで、改めて彼女の姿を見る余裕ができていた。
女性と言うよりは、少女……歳も近そうだ。かわいらしい、美少女と言っていい顔つきだが……その男のような言動もあいまってか、やや強気な印象を受ける。
綺麗なブロンドの髪のヘアスタイルは、男とさして違わないベリーショート。しかも手入れしていないのか、ぼさぼさ。
眼前の出来事にあっけにとられている彼女に、イオンは……
「えっと、その……よければどうぞ」
「え? あ、お、おう……ありがと……?」
ふぁさっ、と、ブレザーの上着を羽織らせた。
色々と確認すべきことはあるが……さすがに裸のままは……よろしくない。
とりあえず、双方がもう少し落ち着くまで……イオンは少しだけ、彼女との対話を待つことにした。