Twins Knight Saga ~双子の勇者の転生戦記~ 作:破戒僧
「いたぞ、侵入者だ! 逃がすなっ!」
「追え、追えーっ!!」
兵士達の怒号と共に……テイロスの街のある建物の中で、凄まじい戦闘音が鳴り響いていた。
その現況……アイクは、学ランをひるがえし、襲い掛かってくる敵兵を次々に、鮮やかになぎ倒していく。
「はっ、テメエら程度じゃ俺には勝てねーんだよ! せめて頭数そろえて来なっ!」
言いながら、『女神の剣』を変形させた長刀を振り回し、無双の乱舞。
身体強化以外は特に技も使ってないため、エネルギーの消費も少ない。付与した怪力と経験からの技能で、降りかかる敵の全てを斬り払っていた。
「何ぃ!?」
「なめやがって……ぶっ殺せぇっ!」
威勢だけはよくぶつかってくるものの、実力が伴わないのは哀れと言うほか無い。
ほとんどは、近づく前に長刀の刃で切り伏せられる。運よくそれより内側に入れたと思えば……今度はその柄でしたたかに殴られるか、足で蹴り飛ばされて地に沈んだ。
矢や、遠隔型の魔術で攻撃を試みる者もいたが……軽々かわされたor防がれた後、『やむなし』と判断したアイクの連続気功弾で、周囲を盛大に巻き込みながら吹き飛んだ。
最初から合わせてすでに、兵士の方の被害総数は……およそ、200人ほどにのぼる。
「おおぉぉお――っ!!」
「死にやがれぇっ!!」
「ははっ、いい感じにまとめて来たな……そんじゃ……『気刃大回転斬り』!!」
――ギュルン、ズババババババァッ!!
「「「ぎゃああああっ!!」」」
その場でぐるりと回転し、襲ってきた者たちを残らず斬り伏せる。
直後……アイクの構える長刀が燐光を纏う。技の効果により、攻撃力が上がった。
「よっしゃあっ、パワーアップ完了! どんどん来い雑魚共!」
言いながらも戦うことを休まないアイクの手により……どんどん、帝国兵達の数は減っていくのだった。
☆
一方そのころ、
「うぎゃ……っ!」
「し、侵入者は1人じゃ……ぐっ……」
こちらは、アイクが暴れている地点からはだいぶ離れた……路地裏。
そこで、隠れさせていた捕虜達を連れたイオンが……作戦通り、気づかれないように兵士達を闇討ちしながら、町の外へ連れ出していた。
正確には……町の外に隠れて待機している騎士団に引き渡していた、だ。
アイクが暴れて兵達をひきつけているために、他の区域の警備は手薄になり……大人数の捕虜達の移動にはかなり助かっていた。
もうすでに侵入がばれているのなら、どうせなら思いっきり暴れてしまおう。そしてそれを陽動にして、その間に捕虜達を連れ出そう、というわけだ。
「イオン、この場所の捕虜も、全員連れ出せたぜ!」
「あ、わかりましたセラさん! 引き続き先導お願いします!」
「合点! よし、みんなこっちだ、さっさと逃げるぜ!」
と、他人に指示を出して引っ張るのも得意らしい、簡単に言えば姉御肌なセラの協力もあって、作戦はスムーズに進んだ。
そしてイオンは、程なくして自分が捕虜達を隠した箇所の全てを回り、回収し、
「では、お願いします、ギオさん」
「承知しました。必ずや全員、安全に守りきりましょう」
ここに無事に、セラも含めた全員を避難させることに成功していた。陽動&避難作戦、大成功だ。
しかし……この作戦、欠点がある。
これだと、アイクが隠れさせた捕虜を……逃がすことができないのだ。
元軍港であるテイロスは、町ぐるみでつくりがかなり複雑で、隠れ場所を口で伝えるのが非常に難しい。頭と目で覚えているアイクならともかく、土地勘もなく、地図でしか物事を判断できないイオンには……その場所を探すのが難しい。
伝えきれないことはないだろうが、かなり詳細な説明が必要だ。アイクはもともとそういったことが苦手である上、それに時間をかけると……せっかく隠密のうちに捕虜をさらったのに、門番の交代やら何やらで気づかれて騒がれ、探されかねない。おとりを作るなら作るで、さっさと出て行く必要があった。
それに関しては、今アイクが注目の的になることでどうにかごまかせているが……もう1つ、イオンではアイクが隠した捕虜を探せない、という問題点が残る。
……そこで、イオンの策の出番である。
☆
捕虜たち(セラ含む)を引き渡した後、イオンは町に戻り……見つからないように、アイクの暴れている地点の近くまで行った。
そしてそこまでくると、建物の窓の外から……腕輪で光を反射させて、アイクの目に当たるようにする。
チカチカとまぶしさを感じ、アイクが視線を向けると……その先には、イオン。
(! 合図だな!)
と、それを確認したアイクは……
「んじゃ、悪りィけど……ちょっくら失礼するぜ!」
そう言って、指をパチン、と鳴らした。そしてその手には……いつの間にか手袋がはめられており、その手の甲に妙な魔法陣(?)。
瞬間、アイクの周囲で某大佐の技による大爆発が起こり……周囲を囲んでいた兵士達の半分ほどを一掃する。同時に塵煙が舞い、一面を真っ白にして視界を封じた。
「ぐわあっ、煙幕か!?」
「畜生、見えねえっ!」
「逃がすな!」
それと同時に、アイクは部屋の外に飛び出し……イオンと合流した。
そして、
「それじゃあ兄さん、手はず通りに……」
「わーってるよ。んじゃ……次はお前の番だな」
☆
数十秒後、
「くそっ、あいつ……どこへ行った!?」
「たった一人に……どんだけてこずってんだよ俺ら!」
そんな事を言いながら、兵士達が煙幕で見えない侵入者の姿を探していると、
「上だ―――――っ!!」
そんな声がとどろいたと思うと……兵士達の頭上に、ふっと暗い影がさす。
そして上を見上げると……
そこには、濃紺の髪に精悍な顔、学ランを着て長刀を大上段に振りかぶって跳んでくる、先程の侵入者(アイク)……
……ではなく、
「さて……お相手しますっ! せあああああっ!」
「「「ぎゃあああああっ!」」」
そこにいたのは……アイクの学ランを来て、アイクと同じに『女神の剣』を変形させた長刀を構え、そしてメガネをはずしている……イオンだった。
そして、それを見た兵士達の反応は、
「いたぞ、こいつだ!」
「間違いない!」
「くそっ、たった1人に……!」
やはりというか、そこにいるのが先程までとは別人であるということに……気づいていない。
そう、これが……イオンが考えた、名づけて『2人で1人作戦』。
主な問題は、アイクでないと捕虜達の隠し場所がわからないこと。そして彼ら彼女らの避難のためには、引き続き陽動の必要があることだ。
アイクが捕虜達の避難指示に向かい、イオンが陽動を引き受ければいい……という考えが浮かぶだろうが、それだと侵入者が2人いることがばれ、2手に分かれられてしまう可能性がある。そうなると……いくらアイクでも、捕虜を守りながら逃げるのは難しい。
しかし今現在、イオンはまだ見つかっていないため、侵入者はアイク1人……というのが、向こうの認識だ。できればコレは利用したい。
そこで、『侵入者は1人のままで』『陽動で戦う役を残して』『アイクが捕虜を先導』……この3点を一気に解決するのが、イオンのこの『2人で1人作戦』……わかりやすく言えば、入れ替わり作戦だ。
アイクとイオンは一卵性双生児のため、外見が凄まじくよく似ている。メガネをとってしまえば、両親やユキ以外は見分けることは困難だ。それを利用する。
途中まで……つまり、イオンが、自分が隠した捕虜を全員逃がして戻ってくるまではアイクが陽動を引き受けて戦う。
煙幕にまぎれてイオンが合流したら、2人は服を交換し、イオンはメガネを取ってアイクに預け、今度はイオンが陽動で戦う。同じ武器、同じ格好で。
外見が似ているイオンなら……兵士達も、まさかさっきまでと違う人物が戦っているとは気づかない。結果的に、侵入者は引き続き『1人』のままだ。
その間に、アイクは自分が隠れさせた捕虜達と合流し……町の外に逃がせばOK。陽動に目が行っているので、スムーズにことが運ぶ。
そしてその数十分後には、見事に捕虜達全員の避難が完了した。
……と、思われたのだが、
☆
「さて……そろそろだと思うんだけどな……」
と、アイクに代わって無双を決めているイオンは、自らも200を超える敵兵を切り伏せつつ……ちらりと腕時計に目をやる。
メガネが無いせいで若干見にくいが……そろそろアイクと入れ替わってから40分。そろそろアイクも任務を終えているころだ。
ならばもうすぐ合流して2人で戦うことになる……とイオンが思ったその時、
「……っ!?」
街路にふと目が行ったイオンの目に……予想外のものが飛び込んできた。
(セラ……さん!? なんで……)
そこにいたのはなんと……見つかってしまったのであろう、兵士から逃げて街路を走っているセラの姿。しかもなぜか、その手に小さな赤ん坊を抱えている。
というか、セラは一番最初に自分が逃がしたはずなのだが……という疑問がよぎったが、
(まずは……助けないとっ!!)
イオンは何か考えるよりも早く、その救出に向かった。
敵の一団をまとめて斬り払い、エネルギー弾で吹き飛ばし、開けた道を作ると……強化された脚力で一気に跳ぶ。
「あ、侵入者が逃げるぞ!」
「逃がすな!」
☆
「待て女ッ! 待たなければ殺すぞ!」
「はぁ……はぁ……くそぉっ、捕まってたまるか……!」
息を切らしながら、セラは走っていた。
イオンの先導で隠れながら逃げている途中、どこかの建物から子供の泣き声が聞こえたのがそもそもの原因。
それが気になったセラは、こっそり騎士団の陣を抜け出して町に戻った。
結果、予想通り取り残されていた赤ん坊を発見したものの……その泣き声を聞きつけた帝国兵が集まってきてしまい、追われているのだ。
しかもセラは、帝国兵によるレイプや、イオンとのセックスで体力を消耗している。だんだんと息が切れ、追っ手との距離をつめられてきていた。
こうなることはわかっていた。しかしセラは、戻らずにはいられなかった。そういう性分なのだ。
(後悔は……してない! 助けられるかもしれない命があるのに、テメーのわが身大事さで見捨てるようなまね、できるかよ!)
セラの胸のうちにある熱血気質な正義感……それは、アイクにも似たものがある。
考えなしと言われても仕方ない行為だったろう。しかし、セラにはそれでも、己を貫き通したい、という意地があったのだ。
だが、減失は残酷だった。悪いほうの予感が当たり……赤ん坊は救出したまでも、イオンやアイクのような隠密技能のないセラは、帝国兵に見つかってしまった。
振り向けば……帝国兵達が構えている剣の凶悪な煌めきが目に入る。それが余計に、セラの筋肉を緊張させ、駆動を奪う。
(今捕まったら、あたしがレイプされるだけじゃすまない……この子が殺される……! でも、もう、足に、力が……っ!)
「追いつけるぞ、一気に行け!」
(ちくしょう……っ、あたしには何もできないのか……っ!?)
もう数秒で、帝国兵達の凶刃がその背中に届いてしまうかと思われた……
……その時、
「「はいそこまでェッ!!」」
どごごっ!!
「「「ぎゃあああああっ!!!」」」
「えっ……!!」
その横から……アイクとイオンが同時に飛び込んできて、追いかけてきていた兵士達を一気に蹴り飛ばして一掃した。
ちなみにアイク、イオンのブレザーを着て……律儀にメガネまでかけていた。
「アイク! イオン!」
「ったく……気がついたらいなくなってやがって……びっくりさせんなボケ!」
「まあまあ、何かしら理由があったようですし……お説教は後に」
と、すばやくセラを両側からかばう形で降り立つ。
その周囲を、イオンを追ってきた……陽動に群がっていた兵士達が追いつき、周囲を取り囲む。すぐに彼らは、女と子供を守っている2人の顔がそっくりなことに気づき……驚いていた。『双子か!?』などと言う声もする。
しかし、だからといって何をするかが変わらないわけでもないだろう。それを知っているアイクとイオンは……とりあえず、安全確保とこいつらの一掃を最優先課題とする。
戦えないセラと、赤ん坊が1人いるここでは……まとめてかかってこられると厄介だ。それを考え、2人はすばやく動いた。
アイクが赤の、イオンが青のオーラをそれぞれ発して纏うと……腕相撲の要領で互いに右手をとる。
そしてそのまま上空に飛び、つないだ手を中心に、凄まじい勢いで回転し始めた。
2色のオーラの色が混ざり、溶け合い……空中で紫色になる。
回転により渦巻状になっているそれは、オーラの根源である2人の姿が確認できないような大きさと濃さになり、さらに回転の速度を加速させ、そして……
「「『パープルコメットクラァア――――――ッシュ』ッ!!!」」
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガァァァアアァン!!!
四方八方に、紫色の光弾を無差別発射し……地上にいる敵兵全員を掃討していく。
器用にも、セラと赤ん坊には絶対に当たらないような着弾位置だ(となると厳密には無差別ではないか)。
数分の間降り注ぐエネルギー弾の暴風雨。
それが終わったころには……
「……す、すげー……」
数百人いた帝国兵達は……1人残らず再起不能になっていた。
無論、さっきまでアイクやイオンが直接暴れていた分のそれも含むのだろうが、あたり一面に、動かなくなった帝国兵達が倒れ付している。壮観、と言えなくもない。
唖然とするセラの目の前に、ちょうど上空からアイクとイオンが降りてきた。
しかも、いつの間に交換したのか……各々の服装が元に戻っていた。アイクは学ラン。イオンはブレザー+メガネ。この短時間で……ムダに器用だと言える。
ともかく、セラも赤ん坊も助かった。
「やれやれ……まずは一安心だな」
「ははは……助かったよ、サンキュな、2人とも」
そう言って、セラはいつの間にか泣き止んでいた赤ん坊をしっかりと抱く。無事でよかった、とでも言いたげに。その様子に、アイクとイオンはセラが戻ってきた理由をなんとなくだが悟った。
「ったく、無茶しやがって……」
「ん……ごめん。けど、ほっとけなくて……。嫌だったんだ、自分が救えるかもしれない命を、わざわざ……見逃すのは」
そう、セラは赤ん坊を抱く手に力をこめる。
「ええ……その心は、立派だと思います」
ぽつりぽつりと言い放たれた言葉の内に、セラの確かな心の強さと、並々ならぬ正義感を感じたイオンは……ゆっくりと、彼女に肯定の返事を返した。
「それはいいが……それ以上強く抱くとそのガキ死ぬぞ?」
「え!? あ、わ、悪い、危ねー危ねー……」
と、アイクからの危険な指摘であわてて緩めるセラの姿は見なかったことにした。
それよりもまずやるべきことがある、とイオンは思い出す。主に2つ。
2つは当初からの計画だったが……この場合、もう2つの方……セラと赤ん坊の護送を優先するのが吉だろう、とイオンは判断する。
「ともかく……セラさんがいつまでもここにいるのは危険ですね。早く町の外へ送りましょう」
「だな。敵兵はもういねーし……そうした方が、この先色々と……」
と、その時、
「随分と派手にやったようだな……侵入者共」
「「「!?」」」
威圧感のある声が響くと同時に……彼らの背中に、強烈な何かの気配が感じ取れた。
アイク達がとっさに後ろを振り向くと、そこには……新たに来たと思われる、数十人の帝国兵達。
そして……その先頭に、明らかに異質な空気を纏う1人の男がいた。
身長は180オーバーで……服の上からでも、筋骨隆々の肉体が見て取れる。顔は隠しておらず、そのために月明かりに浮かび上がる髪は、灰色のオールバック。
服装は、頑丈そうな素材のズボンとシャツ。さらに革製のベスト。迷彩柄でこそないが……密林を進む軍人か、特殊部隊のような印象だ。そこにさらに防具として、金属製と思しき、手甲(ガントレット)と脚甲(レガース)。重厚すぎない分……威圧感があるように思える。
隙のない目つきでアイク達をにらむその男は、後ろに控えている兵士達を手で制しつつ……一歩、また一歩と……アイク達に刺激を与えない程度まで、前に来た。
そして、おもむろに懐中時計を取り出し、確認して口を開く。
「……侵入者発見の報から、たった1時間33分か……たったそれだけの時間で、この町に残していた兵士達のほとんどがやられるとはな……」
ため息をつく謎の男。懐中時計を閉じて、再び懐にしまった。
「おまけに、それがこんな小僧とは……世の中わからんものだ」
声音は低く、静かだが……何か、有無を言わせぬ威圧感のようなものが感じられる。殺気とも、悪意とも違う……言うなれば、覇気のようなそれだ。
そのことから……アイクとイオンには、まだ名乗られてもいないにも関わらず、当然のように……この男が誰なのかがわかった。
そしてその一瞬後……それが正解であると、アイクとイオンは知る。
腕組みをして、仁王立ちのその男が言うことには、
「情けなくはあるが……まあ、恨み言のひとつも言わせてもらおうか。小僧共……よくもまあ、このモーガンの管轄下で……好き勝手に暴れてくれたものだな!」