Twins Knight Saga ~双子の勇者の転生戦記~ 作:破戒僧
時は少しさかのぼり、アイクとイオン、それにユキが……女神ロローラから、力についての説明を受けていた時のこと。
その際……ロローラは、今後……アイク達が能力の使いすぎで消耗しすぎるのを抑えるため、アイク達がいつも身につけている『腕輪』に、ある細工をしておいた。
戦う時は必ず、腕輪を身につけているように……という言葉と共に。
☆
目の前にいるのは……まぎれもなく、1人の人間。
しかし、アイクとイオンには……まるで巨大な氷山を目の当たりにしているかのような圧迫感が……その肌に感じられていた。
これが、帝国軍『16師団長』の一角、第9師団師団長……モーガンの実力、とでもいうのだろうか。
腕組みをして静かにこちらをにらみつけているモーガン。先程の発言以降……口を開こうとはしない。しかし……その視線だけで十分、威圧感がある。
するとそこに、
「アイク、イオン! あ、セラさんやっぱりここにいたんだ?」
「「! ユキ!」」
と、突如として上空からユキが、既に変身後のコスチュームで舞い降りた。どうやら……セラがいなくなったことに気づき、探しに来たようだ。
そして、この状況に……すぐには理解しかねるのか、首をかしげている。
そこにイオンが説明しようとするより早く、
「おい、そこの娘」
と、モーガンが口を開いた。ユキに尋ねる。
「お前は……ここに何をしに来た?」
「? いや、まあ……この人を回収しに」
「そうか、なら……とっとと連れてここから失せろ」
モーガンの予想外の言葉に、兵士達は驚いていたが……それを気にすることもなく、モーガンは続けてアイク達に視線を向け、
「小僧共……私と戦うつもりなら、場所を変えるぞ」
「「!」」
返答を待つように黙るモーガン。
モーガンの意図がわからないが……その言葉は、アイク達にとっても当てはまった。先程まで散々暴れていた彼らのせいで、住宅地だったこの場は瓦礫の山と化し、さらに兵士達があちこちに倒れていて自由に走り回るのも難しい。
それを考えて、アイク達が首肯したのを確認すると、モーガンは背を向けた。
「……ついてこい。兵士共、追ってくるなよ。巻き込まん自信はない」
と、モーガンが動くより前に、1人の兵士が声をかけた。
「し……しかし師団長!? あの2人の女と赤ん坊は……逃がしてよろしいので!?」
「貴様の目は節穴か? 今飛んできたあの女……おそらく相当強い。戦っても犠牲者が増えるだけだ。それよりも……負傷兵を回収して手当てをしろ。全員でだ」
それだけ言うと、モーガンは人間の限界を明らかに超えた跳躍力で飛び上がり、建物伝いにかけていった。
「じゃ、ユキ、あと頼むぜ!」
アイクとイオンも、それを追う。
……と、その前に……
「あ、セラさん?」
と、イオンはなぜか飛ぶ直前で止まり、耳打ちして他の誰にも聞こえないように、
「その……陣営に行ったら、ミリスって人を探して……事情を話して、事後避妊魔法をかけてもらって下さい」
「え? いやでも……」
「いいですね、絶対ですよ!」
そう念を押した後で……イオンもまた跳びさった。
自分は『純系』……その精液に生殖能力があることを忘れてはいけない。
後にはセラとユキ、それに帝国兵達が残されたが……モーガンの言いつけにより、兵士達はユキらにかまわず、負傷兵達の手助けに回っている。
それを確認し、ユキ達もまたその場を離れた。
☆
数十秒後、
モーガン、アイク、イオンの3人は……モーガンが案内して連れてきた……広場らしき開けた場所に、3人そろって降り立った。そして、再び向かい合う。
モーガンは、ポケットから取り出した葉巻をふかしながら、
「……ここなら広い。他の者を巻き込むこともなかろう」
「ま、そーだな。優しいじゃんか、兵士を気遣って場所移動とは」
「勘違いするな。単に私が戦いづらかっただけだ」
言うと、ふぅ~……と、煙を吐き出す。するとモーガンは、
「……勝負の前に、1つ聞いておきたい」
「?」
「濃紺の髪に……精悍な顔立ち……片方は裸眼、片方はメガネの、双子の兄弟……貴様らもしかすると、最近話にあがる、純度10の双子の純系か?」
「! へぇ~……知っててくれたとは光栄じゃねーか」
どうやら……ガーベル帝国にも、アイクとイオンの噂は広がりつつあるようだ。
返答を肯定をみなしたモーガンは、その日初めて薄く笑みを浮かべる。
「ふっ……私は運がいい。此度の襲撃は痛手ではあるが……結果として、ここで貴様らをしとめ……アーサランドの国力および士気をそぐことができる」
「その言い方……やはり、更迭された……というのは虚言ですか」
イオンが指摘する。
つまり……モーガンの更迭は、アーサランドから外交的に非難を受けたとしても、のらりくらりと言いかわすためのカードで、実際にそんな事実はない、ということだ。
「鋭いな、メガネの。わかったのなら話は早い……ここで2人とも死んでもらう」
と、言ってモーガンが不意に手をかざしたその瞬間……何もない空間から巨大な狼牙棒(ろうげぼう)が出現し、その手に収まった。
昔話で、鬼が使うような『金棒』……その柄の部分を、槍のように長くしたような形状をしている武器だ。超重量だが、破壊力は凄まじく……鎧など意味を成さない。詳細および形状を詳しく知りたい場合は、ネットで検索をかけることを勧める。
驚いているアイク達に、
「……収納魔術の応用だ、驚くことでもあるまい。それより……さっさと構えろ」
そう言って……自らも武器を構える。構えに……隙はない。
アイク達もまた、かたわ手甲をつけ、かたや剣を抜いて構えたのを確認し、
「……名を」
「アイク・ソーヤーだ」
「同じく、イオンです」
「……いい名だ。覚えておこう……」
そして
「ガーベル帝国第9師団長・モーガン=ドーラント……参る!」
言うやいなや、凄まじい勢いで跳んだ。
((速い!?))
2人が飛び退った次の瞬間、狼牙棒が地面にたたきつけられる。
ガゴォオォン!!
轟音と共に石の地面がえぐれ……極小のクレーターができた。
しかも、凄まじい切り返しの速さで、今度は横にふるい……イオンを狙う。
イオンは刀で受け止めたが、勢いは到底殺しきれず……広場の反対側まで飛んだ。
その剛力にアイク達は驚いたが……驚いたのは、モーガンも同じだ。
「私の一撃を受けて折れないとは……見た目に反して何と強靭な剣だ……!?」
鋼の鎧すら意味を成さないモーガンの狼牙棒の一撃を、木の枝ほどの太さしか、厚紙ほどの厚さしかない剣が受けとめていたのだ。無理もない。
その間に、アイクがモーガンに迫る。
振り上げた拳を打ち付けるが、気づいたモーガンに……空いているほうの手で、正面から受け止められた。
「……っ!?」
「いい拳だ……並みの奴なら一撃で骨を折れるだろう。しかし……私には通じん!」
そのまま、アイクをイオンと同じ方向に投げ飛ばす。
そして……その手を、何やらその方向にかざすと……
「風よ……この手に集いて仇敵を討つ牙となれ! 『嵐玉(ストームボール)』!!」
目にも見えそうな凄まじい突風が、衝撃波とまで呼べる威力で放たれた。
それを察知し……アイクは強引に体勢を立て直すと、腕輪を使ってバリアを展開する。
風の弾丸そのものは防がれたが、圧縮されていた空気が爆散し、その勢いでまたイオンとアイクが吹き飛ばされた。
師団長モーガン……どうやら、打撃のみならず魔術も達者らしい。
そこに、再び狼牙棒を構えたモーガンが迫る。
が、今度はアイクも軽率な手は使わない。迫り来る高速かつ高威力の一撃にそなえ……手元にエネルギー段を作ってぶつけた。
「むっ!?」
とっさにモーガンは棒で受け止めるが、アイクはさらに大量のエネルギー弾を作る。棒ではさばききれないほどの……20発以上のエネルギー弾だ。
「おらあっ! 連続気功弾!!」
「やるな……しかし、さばけなければ防ぐまで! 『黒金の剣山(アイゼングレイブ)』!!」
唱えてモーガンが地面を殴ると、地表から次々に、黒く、槍のようにとがった岩石が次々に突き出してきた。それはアイクとモーガンの前に巨大な黒光りする壁を作り出し、アイクの連続気功弾を……自らも砕けたものの、全て防ぎきった。
その土煙の向こうから、また『嵐玉(ストームボール)』が飛来する。
しかし今度はそれにイオンが反応。
「『風花・風障壁』!」
目には目を……とでも言うのか。風の弾丸は風のバリアで防がれた。
双方の消滅と同時に、アイク、イオン、そしてモーガンは一気に接敵する。
「ぬえええぇぇいっ!!」
「うらぁああぁっ!!」
「はあああぁあっ!!」
互いは接近し、離れ、また接近……を繰り返す。拳が、剣が、狼牙棒が乱れ飛ぶ。
アイクとイオンは器用にかわしながら反撃を試みるが、モーガンの体格からは想像もできないその俊敏な動きでかわされ、または棒で防がれる。
時たま、アイクの拳やイオンの蹴りがヒットすることもあるが……
「か……硬、っ……!?」
人間の筋肉とは思えない強靭さ。モーガンのまさに鋼の肉体に……さほどダメージを与えられない。鎧をも貫通するアイクの拳でも、だ。
これは……アイク達は知らないが、モーガンが『鋼鉄のモーガン』と呼ばれるゆえんである。魔力によって肉体を強化し、鋼の防御力と脅威の戦闘力をものにしているのだ。
上級の戦士なら皆やることだが……特にモーガンは、肉体強化の魔術において驚異的な才能をもつ。鎧をも超えるこの異常な筋肉の強靭さは、そのためだ。
戦いの中で……アイク達はモーガンが明らかに、これまでの敵とは違う……ということを悟っていた。パワーも、スピードも、テクニックも……桁違いだ。
そしてそれ以上に、内面が違う。
今まで戦ってきた敵にことごとく見られた……相手を見下すような態度が見られない。たとえ敵だろうが、子供だろうが、全力で相手をし、それでいて相手を……1人の戦士として認識し、礼節を尊重している雰囲気が伝わってくる。
その気高さも……おそらく、この男を大きく見せている原因の1つだろう。
「師団長、ね……帝国最強の16人は伊達じゃねえってことか……」
「そういうことだ……せいっ!!」
「ぐあっ!?」
カウンター気味の蹴りでイオンを蹴り飛ばすと同時に、気合と共にもう1人に向けて棒を振るうモーガン。アイクはよけ切れず……手甲で受け止める。
その威力はそれをつきぬけ……凄まじい衝撃がアイクの体を通り抜けた。
「……っ、ぐ……っ!?」
どうにか耐えたものの……吹き飛ばされ、先に飛ばされたイオンの近くに転がった。今までにないダメージで体が硬直するアイクは、すぐには起き上がれない。
そこに……モーガンの凶悪な一撃が迫ろうとしていた。
ギュルルルルル…………
「はぁああぁああ…………」
動作は……先程までの『嵐玉』と同じだ。
しかし今度は……サイズが大きい上、今の戦いで広場の地面が破壊されてできた土砂や岩塊を巻き込んでいる。質量的に考えて……その威力は先程とは比べ物にならない。
「これで……幕にしてやろう……!」
アイクとイオンは、とっさに障壁系の技で防ぐのは無理だと判断し……2人とも、手元にエネルギーを手中させる。加減すれば破られる危険がある。全力だ。
そして、モーガンは片手を、アイクとイオンは両手を前に突き出し、
「『嵐玉(ストームボール)・土砂災害(ランドディザスター)』っ!!」
「『かめはめ波』ぁ―――っ!!」
「『だいもんじ』っ!!」
ドゴオオオォォォオオン!!!
モーガンの土石流のごとき巨大弾丸と、アイクの破壊光線とイオンの灼熱の炎とが直撃し……威力を互いに相殺してはじけ飛ぶ。
大爆発と共に砂埃が舞い……双方が爆風にひるんだ。
「……っ!? 驚いた……まさか、この技と相殺するほどの威力とは……!」
「こっちのセリフだっつの……。俺ら2人の決め技を……どんだけすげーんだあんた?」
と、あまりない余裕を振り絞ってアイクが言ったその時、
――――ピコン、ピコン、ピコン、ピコン…………
「!?」
アイクの一歩後ろから……そんな音が聞こえてきた。
見ると、そこにはイオンが膝をついており……その左腕の腕輪につけられた大きな水晶の玉が、赤色に点滅している。
先程まで青色だったそれが、赤く、電子音ちっくな音を響かせて点滅しているその光景は、言うなれば正に……ウル○ラマンのカ○ータイマーだろう。
同時に、音声ではなく、2人の脳内に直接……声が響いていた。
『警告、エネルギーの残量が残り15%を切りました……すみやかに戦闘を終了し、休息をとってください。繰り返します。警告……』
そう、これが……ロローラによってつけられた腕輪の新機能。一見するとギャグに見えるが……ここでは大真面目に機能を果たしている。
エネルギーの残量を確認できるのだ。何も少なくなった時だけではなく……念じれば、あとどのくらいの量が残っているかがすぐにわかる。
そして……残りが少なくなると、警告音が脳内に響き……水晶が赤く点滅する。
「イオン、お前……」
「ははは……相手が風属性でしたから、僕が今使える限り最強の炎技で応戦したんですが……選択を
誤ったかな、MPすごく消費しちゃったみたいで」
イオンはそう言ったが、それだけではないだろう。
アイクはイオンよりも不器用だ。当然、捕虜達を逃がすのにも……慎重に慎重を重ねる必要があり、イオンよりもかなり長く時間がかかっていた。
その間ずっと、敵兵達と1人で戦っていたことも、イオンのエネルギー消費の原因であると言える。
そして……あまり言いたくない俗物的な理由だが……セラとのセックスによる疲労も、エネルギー効率に多少なり関係していた。
最後の1つはともかく……そのほかの理由は、アイクも察していた。その責任の一端が、自分にあると言うことも。
疲労をこらえ、イオンは立ち上がる。
「さて……そういうわけで時間もないんで、さっさと決めましょうか……。兄さん、ここからはコンビネーションで……」
が、
「いや……お前は少し休んでろ、後は俺がやる」
アイクの返答は……予想外のそれだった。
「……えっ……!?」
イオンが聞き返すが、アイクは撤回する様子はない。その目は……本気だった。
「ちょ……兄さん? 何言って……」
「大丈夫だ。別にやけっぱちで言ってるわけじゃねえ、ちゃんと考えた」
イオンのセリフをさえぎる形で、アイクは言った。
「イオン……俺達がこのまま、たとえコンビネーションで戦ったとしても……あいつに照るかどうかってのは、正直怪しい。技云々以前に……あいつ、戦いに慣れてるからな」
と、アイクは今、自分が考えた心の内を語る。
アイクの考えはこうだ。
そもそも……自分達は、訓練をつんだとはいえ、戦場に行ったことなどない子供。
しかしモーガンは、幾度も戦場に立ってきた歴戦の戦士だ。当然……実践的な戦い方においては、アイク達よりもはるかに上。さまざまな戦勝を経験してきたモーガンに、今更2対1など苦にもならないだろう。
そのモーガンに、いくらバリエーションに富んだ技を使えるとはいえ、小細工を用いて戦っても……経験則で対応されてしまう。そもそもが不利だ。
となれば……
「正面から……小細工なしでやった方がいいってこった!」
「で、でもそれは……そうするだけの力があってこそでしょう!? 僕らにそんな……」
「だったら……そうなりゃいい」
瞬間、アイクは、腰を落として姿勢を低くし……全身に力をこめ始めた。
「はぁああぁぁあ~~~~~~…………ッ!!」
そして、周囲の空気がびりびりと張り詰めていく。
「……ん?」
それを感じ取ったのか……砂埃にまぎれての奇襲を警戒していたモーガンが、何かぴくっと反応する。
イオンと同様、アイクの体に起こり始めた異変に……気づいたらしい。
その肌が黒鉄色に染まっていき……筋肉が一回り大きくなり……髪が逆立っていく。周囲には覇気が充満し、イオンは息苦しさすら与え始めた。
「……何だ、その姿は……!?」
「……これって……!」
「イオン……ここは俺に任せて、休んでな……」
驚くイオンとモーガンの眼前で、アイクの変身が完了した。
黒鉄色の肌、一回り大きな体格、逆立った濃紺の髪……アイクのパワーアップを如実に匂わせるその姿は……
「『荒欧零猛怒(アラクレモード)』ォオッ!! さァ……第2ラウンド行くぜオラァッ!!」
肉体的に爆発的なパワーアップをとげ、さらに性格までも若干凶暴に変化したアイクは、怒号とともにモーガンにとびかかった。手甲すらつけずに、素手でだ。
その威圧感に一瞬気圧されたモーガンだが、すぐに持ち直し……自慢の怪力で狼牙棒を振るう。この程度の一撃ならば、アイクはよけるだろう、と読んだ上で。
が、
ガギィン!!
「な……っ!?」
あろうことかアイクは……その一撃を、素手で受け止めた。
そしてそのまま、反撃の隙を与えずに突進し……
「おおおおおおおっ!」
勢いのついた鉄拳を、モーガンの腹に叩き込んだ。
「ぐっ…………がはぁっ!!?」
その威力に……モーガンの息が詰まると同時に、その体が広場の反対側まで吹き飛んだ。
「な、何だ……この威力は……!?」
状況を理解できないモーガン。
どんな攻撃も跳ね除けてきた鋼の肉体が、全く意味を成さないほどの重さの一撃。呼吸すらままならないダメージに、口の中には血の味。その表情に初めて焦りが浮かぶ。
「い、いったい……どんな技だ……!?」
「技ぁ? バカ言うな、ただ『殴った』だけだ!」
そこに、凄まじい速さで接近したアイクの拳が、蹴りが、雨あられと降り注ぐ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「ぐがぁ……っ! がぁ、は……ば、バカな……!!?」
ズドドドドドドドドドドドドドドッ!!!
一発あたり数tの重さのある一撃による、息もつかせぬ殴打。
モーガンはとっさの判断で対応しているが、攻撃のスピードまでも上がっているために、裁ききれずにダメージが蓄積していく。すでに……肋骨が何本かイっていた。
正にアイクが言ったとおりだ。小細工が効かないなら……小細工する必要がない圧倒的な力で、打ちのめせばいい……と、その言葉通りだ。
しかし……その状況でも、モーガンは生きていたし……勝負をあきらめてはいなかった。
(身体強化系か……! 確かに脅威だが……しかし、これほどの力を生み出すには、かならず大きな反動があるはずだ……! それまで耐えれば……!)
そして、それは……間違ってはいない。
(残り20秒……19……18……)
アイクは、攻撃しつつも……『荒欧零猛怒(アラクレモード)』に課せられた、1分という制限時間をきっちり気にしていた。
そして……リミットを悟ったアイクは、最後の最後に特大の一撃を構える。
それを悟り、モーガンは狼牙棒でガードの構えを取るが……それを無視し、アイクは右手と左手、両方の拳を同時に前に突き出した。
「『打舞流叛魔(ダブルハンマー)』――――っ!!!」
バッキャァアッ!!
左右両方の鉄拳によるとてつもない威力のパンチが炸裂し、モーガンの狼牙棒を粉砕する。双拳はモーガンにまで届き……その体を、凄まじい勢いで広場の端にあった廃屋にまで吹き飛ばした。
しかし……その一方で、アイクのほうも既に、
――――ピコン、ピコン、ピコン、ピコン…………
『警告、エネルギー残量、9%……休息が必要です。警告、エネルギー残量……』
腕輪から、脳に直接流れ込んでくる、そんな声。
大技の反動により、発動前は40%近くあったアイクのMPが一気に減った。しかも……時間切れで『荒欧零猛怒』が解除され、いつものアイクに戻る。
「はぁ……はぁ……はぁ……く、これ……思ったより……」
と、その状況下で……瓦礫の中から、モーガンは立ち上がった。
「……どう、やら……時間切れ、らしいな……」
予想が当たったことに安堵しているのか……そうでないのか、知るすべはない。
頭に肩、腕に口……そこらじゅうから流血し、骨も数箇所やられている。モーガンもまた満身創痍だが……驚くことに、戦う力はまだ残っていた。
瓦礫を押しのけ……さすがに肉弾戦は好ましくないのか、手をかざして……『嵐玉』を作り始めた。しかも……その周囲の瓦礫を利用して、『土砂災害』バージョンを。
(もう、これをしのぎきるだけの体力は奴にはない……いける……!)
その予想は間違っていないだろう。アイクはもう、肉体も精神も反動で限界だ。
が、
「誰か……忘れてませんか? モーガンさん」
「――――――っ!!」
気付いた時にはもう遅い。
モーガンのその周囲に……まばゆい光を放つ、いくつもの光の球体が浮遊していた。廃墟の建物ごと、広範囲から彼を取り囲む形で。
それが……アイクの背後で両手をかざしている、イオンの手によるものであると言うことは……想像に難くない。
自分を取り巻く状況を理解したモーガンの顔が、驚きにゆがみ……
……そして、
「……ふっ、見事……」
一言、そうつぶやいた。
直後、
「―――――『魔空集中弾』……!」
全方位から全ての光球がモーガンめがけて発射され、大爆発を起こす。
同時にその衝撃で建物が崩れ……凄まじい量の瓦礫となってモーガンに降り注いだ。
数十秒間それが続き……あとには、原型が想像もできないただの瓦礫の山だけが残った。そこに動くものは……何もない。
「ぜぇ……ぜぇ……ったく、イオンお前、おいしいとこ持って行きやがって……」
「はぁ……はぁ……勝ったんだから、別にいいじゃ、ないですか……」
『警告、エネルギー残量、9%……警告……』
『警告、エネルギー残量、7%……警告……』
戦闘が終わり、疲労感に包まれた2人の耳に……夜の静寂を押しのけ、ありがた迷惑な腕輪の警告音だけが響いていた。
できるのかどうか不明だが、2人とも、『後でコレOFFにしよう……』と考えながら、疲労回復のために、路上に座り込んだ。