Twins Knight Saga ~双子の勇者の転生戦記~ 作:破戒僧
事件から数時間。
アーサランドの中枢部は、事態の収拾に追われていた。
中枢部にあって、女王陛下に最も近い位の1つである『大臣』ハーボックが、今回の一連の事件の主犯格だったというのだから、それも当然だろう。
全ての省庁(と、呼んでいいのかわからないが)で、その夜は明かりが消えることはなかった。
そしてアイク達はその後、簡単な事情聴取を済ませた後、危険も回避されたということで、各々の家に戻って休む事になった。
一応その後、『一緒に食事でもどう?』とデイビッドに誘われたのだが、珍しくアイクが疲労を訴えたため、またの機会に……ということになったのである。おそらくその時は、今回のお礼ということで……レオや、イリアザート親子も同席するのだろうが……。
アイクの疲労に関しては、今まで経験したことのない術をぶっつけ本番で使ったためだろう、という結論に達した。
……イオンの『術使ったの僕なのに、被施術者の方が疲れるのかな……?』……という、胸のうちに秘められた疑問を残して……だが。
☆
その夜、
ベッドの上で……アイクは、妙な倦怠感に襲われていた。
「はぁ……何だろーな、これ……?」
ただの倦怠感ではない……ということは、すぐにわかった。体だけでなく……なぜか心までもが疲れたような気がしているからだ。
精神的な疲労……と呼べるようなものなど、別に溜め込んでいた記憶などないのだが。
デイビッドの食事の誘いを断ったのも、そのためだ。
女神の力の新しい反動か、とも思ったが……それを確かめるすべはアイクにはない。少なくとも、女神の方から出向いてきてくれない限りは。
考えても仕方がない、ということで……アイクは、寝て治すことにした。これだけの疲れがあるのだから、目を瞑ればすぐにでも眠れるだろう……と考えて。無論、その前に……カナの給仕で食事を取っておくことも忘れなかった。
「ま、何だか知らねーけど……食って寝りゃ治るだろ、ふぁ~……」
と、その時、
「治りませんよ~、それは、睡眠をとったくらいでは~」
「っ!?」
誰もいないはずの部屋に突如として声が響いたことに驚き、アイクは飛び起きた。
しかし……例の倦怠感のせいで、思ったより俊敏に動くことができない。
僅かな焦燥感を抱きつつ、声のした方に目を向けると……
「こんばんは~、アイク様~」
「………………エミリィ?」
なぜか、自分の寝室に忍び込んできている……寝間着姿のエミリィがいた。
状況がよくわからず、呆然としているアイクの元に……彼女はすたすたと歩み寄ってくる。そして、頭に『?』を浮かべるアイクに、
「どうも、アイク様~。今夜の夜伽のお相手に参りました~」
「あ!?」
言うなり、エミリィはベッドにもぐりこんでこようとする。
アイクは一瞬反応が遅れたものの、すぐさまエミリィを外に押し出そうとするが……なぜかその手はぐいぐいと押しのけられ、押し出せない。
(な……なんだ!? エミリィってこんなに力強かったか!?)
それも気になったが……ともかく、アイクはわからないことが多かった。
自分が疲れていると知っているのに、しかも申し付けてもいない(申し付ける気もない)夜伽のために、自分の寝所を訪れた彼女の意図が……まるでわからなかった。
たしかに、のほほんとしているというか、そういった雰囲気のエミリィではあるが……いくらなんでもやりすぎというか、越権行為だ。
というか、アイクはそもそも、そういう理由で迫ってくる者に対してのセックスはあまり好きではないのであった。
「ま……まてってエミリィ! お、俺は別にそんな……」
「遠慮なさらず~。英雄色を好む、と言いますし、何も恥ずかしくはありません~」
「いやそういうんじゃないから! 俺そもそも疲れて……っていうか、何でそんなにお前力強いの!?」
「うふふふ~、最高に気持ちよくして差し上げますからね~」
エミリィは布団の中でもぞもぞと動き……アイクがいったいどうすればいいのかと狼狽していると、
「と、いうのはもちろん冗談なのですが~」
「………………は?」
と、いきなりエミリィが言った言葉の意味を図りかね、アイクは抜けた声で聞き返した。
エミリィは変わらぬ笑みを浮かべながら、
「ですから~、夜伽に来た、というのは、私の全くの冗談なのです~」
と、言ってのける。それでも、アイクは未だにわけがわからない。
それを悟ったのだろう、エミリィはさらに続けた。
「本当はですね~、アイク様のその倦怠感の治療をするために参りました~」
「? それ……どういうことだ?」
「どうもこうも、アイク様のそれは、単なる倦怠感ではなくてですね~……大臣の放ったあの魔法『封魂の黒茨リミテーションソーン』の残照によるものと思われますのです~」
「!?」
思いがけない言葉がエミリィの口から出てきたために、アイクの心中に会った今までの困惑が吹き飛び……別の困惑で埋め尽くされた。
自分が、事前に発動させていた防御術で完璧に防いだはずのあの黒い茨の呪いが……防ぎきれていなかった、というのである。それが、この倦怠感だ、と。
というかそもそも、アイクは……誰にも言っていないはずのこの倦怠感のことを、エミリィに見抜かれていたことにも、驚かなければならなかった。
その疑問の数々に、エミリィは1つ1つ答えてくれた。
「ええとですね~……まず、『封魂の黒茨リミテーションソーン』は、単純に『魂』を休眠状態にするだけの魔術ではないのです~。魂が休眠状態にある間、当然体は動かせませんし、筋力も衰えてきます~。しかし、それによる衰弱死を防止するために、同じ期間、体そのものをも休眠状態に近くなるような作用をもたらすのです~」
「つまり……アレくらうと、身体能力にも制限がかかる……ってことなのか?」
「大雑把にいってしまえばそうですね~。まあ、本来あれを受けた者は昏睡状態でぴくりとも動かなくなりますから、そもそも体の駆動性は問題ではないのですが~」
しかし、アイクはあれを受けつつも、防いだ。しかし……どうやらその『身体能力の制限』という追加効果までは防ぎきれなかったらしいのだ。
「それは~、いたって普通の女性の腕力しかない私を、アイク様ほどのお方がベッドから押し出すこともできなかったことからも、お分かりいただけるかと思います~」
「!」
どうやら……本当らしい。
それならば……さっき、いともたやすくアイクがエミリィにベッドへの侵入を許してしまったことへの説明もつく。あれは、エミリィが強かったのではない、アイクが弱っていたのだ。それも……極端に。
「まあ、きちんと魔力で強化すればある程度の腕力は発揮できると思いますが~、これから3ヶ月間このまま、というのはさすがにアイク様も不便かと思いますので~、こうして参上させていただいた次第なのです~」
「そうだったのか……」
「はい~、ですので、少しの間……大人しくしておいて下さい~」
アイクは、ようやくエミリィの目的をしっかり理解し、ほっと胸をなでおろす。
見ると、エミリィは寝間着の袖の下から、治療用の魔法アイテムと思しき、小さなビー玉のようなものをいくつかを取り出し、アイクの周りに並べていた。ベッドが広いため、体が邪魔になることなく普通に置けている。
「さて、簡易的なものですが~、魔法陣はこれでいいでしょう~。それではアイク様、少々失礼しまして~……」
と、今度はアイクの上着をはだけさせると……
……なぜか、エミリィ自身も、服を脱いで裸になった。それも……アイクのベッドの上で、アイクの体にまたがって……だ。
一旦は冷静なそれに戻ったアイクの思考が、再び混線状態に戻る。
「ちょっ、何やってんだ!? お前……夜伽じゃなくて治療なんだろ!?」
「そうですよ~? その『治療』に必要なのです~…………んっ、くぅ……」
「そして何始めてんだ!?」
言いながら、エミリィは今度は……自らの恥部に手をやり、くちゅくちゅと音を立てて自慰を始めた。しつこいようだが、アイクにまたがり、アイクが見ている前で。
くちゅ、じゅ、じゅちゅ……ぐちゅ……
指を第2関節まで膣内にすべり込ませて、息をかすかに荒くしながら……エミリィの自慰は続く。ぽたぽたと、アイクの腰の辺りに愛液まで垂れてきていた。
さらにエミリィは、そのEカップの胸に手をやって、付け根に乳首にと積極的にいじくり回し、さらに快感をむさぼる。……ストリップショーでも見れそうにない光景だ。
当然、見ているアイクの方も無事ではいられず……しかるべき所が硬くなっていく。
「っ……! お前、ホントに何やってるんだよ!? 治療に必要なのかそれが!?」
「必要ですよ~。だって、きちんと濡らしてかないと、挿れた時痛いですから~」
「挿れ……っ!?」
「ふぅ……そろそろ、いいですかね~……」
すると、エミリィは……ふいに性器と胸の愛撫をやめたかと思うと……今度はあっさりアイクのズボンを脱がせる。そしてパンツもどかし、そこにそびえ立っている剛直を手に取り、当然のように自分の恥部へあてがった。
既に濡れて愛液をたらしている秘裂は……すんなりと、とはいかないまでも、適度な締め付けと共に肉棒の先端を受け入れる。
説明もなしにこれ以上はまずい、とさすがに思ったアイクだが……抵抗しようにも、呪いによる弱体化のせいでろくに力が入らない。体を押しのけようとするが、全体重を乗せて押さえつけてくるエミリィに軽々防がれてしまう。
エミリィの肉壷の中に、アイクのペニスが半分過ぎほども入ったと思うと、
――――プツン!
何かが肉棒の先端につっかえる感触がした直後、その何かを突き破る感触が……肉棒を通してアイクに伝わって来た。それを感じ、アイクはまさか、とはっとする。
しかし、それと同時に……
「え、エミリィ!? おまっ……まさかしょz……っ、くああああぁぁああっ!!?」
びゅるるるるるびゅるるっ! びゅる……どぴゅびゅくっっ!!
いきなりにもほどがある、前兆すら感じないほどのタイミングで……それこそ、根元まで肉壷にうずめた瞬間に……アイクのペニスが精液を吐き出していた。
からみつく膣壁の感触に、圧力に耐え切れずに……腰を1回も動かさないうちに、だ。まるで童貞のような反応……このようなことは初めてである。
「な、なんで……こんなに早く……ぅああっ!?」
「だ、大丈夫、ですよ~……。これも、呪いのせいで……下半身の筋肉が、堪え性が、なくなって、いる、のが……原因です、から~……! アイク様が、早漏に、なってしまわれたわけでは、全然全くありません~……!」
と、説明してくれるエミリィだが……未だにアイクの射精は続いており、膣内にほとばしる精液が叩きつけられている状態だ。やはり、しゃべるのも若干辛そうである。
何せ……、先程まで、処女だったのだから。
先程アイクが感じた、あの感触……紛れもなく、破瓜のそれだ。その証拠として……あふれ出てくるアイクの精液に、かすかな赤みがさし……ピンク色になっていた。
どうしてこんなことを……と、アイクがたずねようとするが、その瞬間、エミリィが腰を振った。
アイクの腰から強烈な快感が走りぬけ、またしても射精してしまう。その際、射精の快感はきっちり感じるので、アイクは発言もできなかった。
2度、3度とエミリィが腰を振り、そのたびにアイクの精液が搾り出される。女性が快感の極みとして挙げる『いきっぱなし』を、擬似的に体験したかのような感触だった。
エミリィも決して楽そうではないが、腰を止めようとはしない。微妙に歯を食いしばるようにしつつ、アイクの精液を根こそぎ搾り取る。
そのあと……腰を振ってもアイクが射精しなくなるまで……アイクが持ち合わせていたほとんど全ての精液を搾り取ったところで、ようやくエミリィは口を利いた。
「こ、これで……準備おーけー、です~……」
「ほ、ホントに、準備か、これ……?」
2人とも、息が荒い。
ベッドに仰向けのアイクの胸はせわしなく上下しているし……その上にまたがっているエミリィの肩は大きく上下している。フルマラソンでも走った後のようだ。
その結合部には、エミリィの膣内そして子宮内に収まりきらなかったアイクの精液が、エミリィの愛液と混じって散乱していた。シーツには染みができ、結合部の周囲……互いの陰毛や股関節の辺りにもべっとりとこびりついている。淫靡な光景だ。
と、一応息が落ち着いたところで……エミリィが口を開いた。
「で、では、アイク様……これより、魔術による治療を始めさせていただきますので……楽にしていて、ください~……」
「……もう、勝手にしてくれ……」
睾丸内部の精液が空に近いところまできているアイクの、力ない返答だった。
するとエミリィは、おもむろに結合部付近にある……愛液と精液(と、破瓜の血)の混合液をすくって指にからめ、仰向けのアイクの胸に……何やら模様を描き始めた。
少し頭が冷えてきたアイクが、何をしているのかとその様子を見ていると、エミリィはにっこり笑って、
「では、始めます~。力を抜いてください~」
もとから入らねーよ、などとアイクが茶化すより先に、異変が起きた。
さきほど、魔法陣の代わりといってエミリィが並べたいくつかの水晶球が、アイクの周りで光を放ち始めた。しかも……僅かに浮いている。
そしてエミリィは……アイクの胸に描いた模様に右手を添える。そして左手を、
「はい、これをくわえていてください~」
「もご!?」
と、アイクの口の中に入れる。人差し指と中指を、第1関節辺りまで、浅く。
すると今度は、アイクの胸に描かれた紋様までもが、水晶と同色の光を放ち始めた。
「では~」
そんな言葉と共に、アイクの体に……何かむずかゆい感覚が走る。
性的快感に似ているが……微妙に違う、奇妙な感覚。そう、例えるなら……長時間の正座の後、足がしびれた時のような……そんな感覚だ。それが、全身を駆け巡る。
「むぐ……?」
それがしばらくすると……今度は、何かがアイクの体とエミリィの体を循環しているような……奇妙な感覚がさらに襲った。アイクがくわえているエミリィの指から、物体ではない何かがアイクの体内に入り……逆に、つながっているアイクのペニスから、同じように物体ではない何かが出て行き、エミリィに流れ込む。
何なのか聞こうと思ったが、うまく口が動かないのと……エミリィが何やら凄まじく早口で何か言っているのを感じたため、アイクは黙っていた。
それがしばらく続いたかと思うと、ふっと突然に消えた。
「はい、おしまいですよ~……」
そんな舌ったらずな声が聞こえたかと思うと……今まで体を包んでいた倦怠感が、嘘のようになくなっていることに気づいた。
ベッドに寝たままだが、腕を動かし、肩をまわしてみて……
「……マジで治療だったんだな」
「失礼ですね~。私だって、こういうことはまじめにするのですよ~」
☆
その後、セックスで疲れているのは本当であるため……アイクとエミリィは。そろって同じベッドに横になっていた。
「要するにですね~」
と、エミリィ。アイクともども、裸のままだ。
「大臣のあの魔術は、3ヶ月間の間、何をやっても魔法理論的に解除が不可能なものだったのです~。まあ、確実な時間稼ぎが目的だったわけですから、当然ですね~」
「それを、お前は解除できたのか? 理論的に不可能なのに」
と、横でぴったりとくっついているエミリィにアイクは問いかける。
胸にぷにゅん、と彼女の双丘があたって形を変えているが……魅惑的ではあるものの、出るものが全て絞りつくされているため、残念ながらヤる気は起きない。それに、まじめな話の最中であるから……という理由もある。
するとエミリィはにっこりと嬉しそうに笑い、
「うふふふ~、理論というのはですね~、同じ理論でもって破ればいいのです~」
と、返してきた。
「?」
「わからない、というお顔ですね~。いいですかアイク様、全ての法則には理由が存在し、その理由に基づく対処法・反存在を考察・特定・実行することによって、法則もとい現象は制することができるのです~。まあ簡単に言えば、火を消すには火に水をかけるのではなく、火元となる、燃えているものに水をかけるのと同じですね~」
「……もうちょっとわかりやすく頼めるか?」
すると、エミリィは少し考えて、
「そうですね~……私は今、理論上は解読不能とされている『封魂の黒茨リミテーションソーン』の複雑な魔法構造組成式を解読しつつ分解・処理したわけですので……もう率直に言ってしまいますと、『術式を解析して根元から構造そのものを分解した』というところでしょうか~」
……つまり、こういうことだ。
ハーボックが使い、結果的にアイクにその被害が及んだ『封魂の黒茨リミテーションソーン』は、その魔法的な構造の複雑さゆえに、それに事後的に対処する術式が……もっと簡単に言ってみれば、解毒剤の役割を果たす魔法が存在しない、『絶対解除不可能』だったのだ。
しかしそれをエミリィは……この少女はやってのけたのである。
数百年もの長きにわたり、彼女よりもずっと年上で経験豊富だったであろう先人達がことごとく失敗し、『絶対解除不可能』などという通り名までついた複雑な魔術を、エミリィは完璧に解読した。
そして、爆弾処理班がコードを順番に切って爆弾を解体するかのごとく、魔術そのものを『解体』することによってアイクを救ったのだ。
これには、アイクも驚きを通り越してなんと言ったらいいかわからない。
「エミリィって……すごかったんだな、意外と」
「いくらなんでもちょっとひどいですね~。私これでも、もう王立学術院も全コース全階級出てるんですよ~?」
身近な所に、とんでもなくハイスペックな子がいたものだ……と、アイクは嘆息する。
そんな中、ふとアイクは……エミリィの恥部に目が行き、そこににじんでいる血の跡に……自分が今さっき、彼女の処女を奪ってしまったのだ、と思いだす。
同時に、罪悪感にも似た重い感情がわきあがってきた。
「その……悪いな、エミリィ」
「はい~? いえ、そんなに気にしていませんよ~?」
「いや、スペックのことじゃなくて……ほら、俺みたいな奴に……初めて……」
「ああ、そのことですか~? いいえ、それもむしろ、わたしの本望ですから~」
エミリィのセリフに、アイクはきょとんとする。
「スティングレイ家は、一応貴族ですから~、婚姻もまた、家柄ごとに管理されるケースが多いのです~。ですので、放っておいても、私の処女はいつか、親が決めた結婚相手に捧げられていたでしょう~。それよりは、私がいいと思える人にあげたかったのです~」
「それが……俺?」
「はい~。優しくて、強くて、それに……他人のために、自分の命をかけて、全力でがんばれるような誠実な人……私みたいなのほほんとしたのんびり女には、そういう真っ直ぐさや荒々しさが、魅力的に映りました~」
その言葉は……そのまま、彼女がただ仕事のためだけに自分を受け入れたのではない……ということをアイクに教え、その心根をいくらか楽にした。
彼女も彼女なりに……自分のことが好きだ、と告白してくれているのだ、と。
現金なもので、そう認識したとたん……胸の辺りに感じる彼女の温もりが、実感的で、心地よく感じられてきたアイクだった。
が……その気分は、次のエミリィのセリフで崩壊することになる。
「それに~、今日始めて使う術式を試させていただくんですから、このくらいの対価は支払ってしかるべきです~」
(………………ん?)
その言葉に、アイクは痛烈な違和感を感じる。
彼の記憶が正しければ、エミリィは今『始めて使う』と言った。それすなわち……
「お前もしかして……俺を人体実験の実験台にしたか?」
「はい~、私としては、術式はばっちり計算して構成したのですが、何ぶん前例などあるはずもありませんので、少々不安でした~。うまくいってよかったです~」
「しかもお前のオリジナルだったのか今の魔法!?」
驚愕の事実に、アイクは唖然とする。
「ちょ、まさかとは思うけど……セックスとか、本当はしなくてよかったんじゃ……」
「いえいえ、性器同士での結合が必要というのは本当ですよ~? 演算の結果、それがもっとも魔法伝道効率がよかったですし~、快感と、高度な集中を伴う術式なので、執行中に射精などされては集中できなくて大変です~。なので、あらかじめ搾り取らせていただいていた、というわけでした~」
「あ、そう……」
「……魔法陣を精液で描いたのはノリですが~」
「そうなのかよ!」
「それに、色々とアレな魔法技術や魔法アイテムを無許可で使いましたので~」
「お前意外とアクティブだな!?」
アイクは適宜つっこみつつ、一応は力が戻っている体で脱力した。
ノリで卑猥な手段を選び、その行使にためらいもなく、あげく……自身があったとはいえ、自分を魔法の非公式な魔法の実験台にする……。
彼女を理解するには、まだまだ付き合いが浅い……とアイクは感じていた。
☆
余談だが、
朝になってからアイクがイオンに、昨日あったことを話したところ……アイクがエミリィの学歴(王立学術院全コース全階級卒業)についての部分を話したところで、イオンは口に含んでいたお茶を吹きだしていた。
そしてアイクは、イオンに、
『それって現実世界だと、ハー○ードとケ○ブリッジとオッ○スフォード同時に卒業するくらいの偉業ですよ!?』
―――と教えられ、再度驚くことになったとか。
分野も何もかも違う魔法学問を、彼女の歳で完璧に修めている、というのは、そのくらいに凄まじいことなのだ。『稀代の天才・エミリィ=スティングレイ』といえば、学問関係者で知らない人物は、アルビオンにはまずいない。
だからこそ、『純度10(アイクとイオン)』の補佐役に大抜擢された……ということでもあるのだが。