軌跡ヲナゾル猥手 作:四十八手
あんまり更新早くはできそうにないけどマイペースでやることにします。
水曜日、前もって予告してあったが俺達≪Ⅶ組≫は実技テストのために学院グラウンドに集められた。
ようするに模擬戦なわけだがサラの言葉によれば力押しで勝っても評価しないから状況に応じた適切な行動を取れとのことだ。
先手必勝、速攻かつ一撃で決めてしまうほど適切なことは無いだろうがそれをやってしまうと流石に怒られるだろうなあ。
でもまあやることは分かってるしサクッと終わらせますか、予定通りまずは――
「エリオット、ガイウス、マキアス、ユーシス、前に出なさい」
――あれ?
「いきなりかぁ」
「くっ……貴族と組まされるとは」
「ふん、せいぜい足手まといにならないことだな」
言われた通り前に踏み出す不安そうなエリオットとガイウスに早速険悪な雰囲気を漂わせ始めるユーマキ二人組。
おかしいな、記憶が確かならまずは俺とエリオットにガイウスが呼ばれるはずなんだが、覚え違いをしてたのか?
首をひねる俺をよそにエリオット達はサラの指パッチンと共に現れた動くカカシこと戦術殻との戦闘に入る。
丁字型の中身の無い胴鎧みたいなそいつと四人は危なっかしいところを見せながらもなんとか勝利を収めていた。
マキアスの射線にユーシスが突っ込んだり逆にユーシスが仕掛けようとするタイミングでマキアスが散弾をぶっぱしたりとヒヤヒヤする場面も多かったがエリオット達が戦術リンクでなんとか手綱を取ったみたいだ。
あの二人はお互いでリンクを繋げる気が全くないみたいだったからガイウスとエリオットはすごい気疲れしたろうな……。
「次、エマ、ラウラ、アリサ、出なさい」
これで呼ばれていないのは俺とフィーだけになった。
あくびをしてやる気のなさそうなフィーは気にしてないようだったが流石に他の皆も気にするように俺達を見ている。
四人、三人ときて二人なのか?
この短期間で実力を見切られたとは思わないんだけどな、どういうつもりなんだあの人は。
そうこうしてるうちにアリサ達の戦闘も終わった、ダメージを受けて機能停止したらしい戦術殻が地面に転がっている。
あれでバランスの良い構成だった三人は難なく攻略できたようで戦術殻のアーツ駆動も速攻でアリサの弓が刺し止めていた、評価は問題ないだろう。
「うんうん、男子と違って良い感じね、ちゃんとARCUSが使えてたようでなによりだわ」
誰かとは言われなかったがユーシスとマキアスは疲れの残る顔をぐぬって感じに歪めていた。
エリオット達の足を引っ張った自覚はあるみたいだから言い返せないだろうな。
「それじゃ最後にリィン、フィー、出なさい」
「おっ」
やっと出番か、なんだかんだで呼ばれて安心した。
まあ何もかも記憶通りってわけにはいかないだろうし、このぐらいの食い違いはあるよな。
模擬戦用に持ってきた刃を潰してある刀を片手に前に出ると、唐突にサラが指を鳴らす。
すると現れたとき同様に戦術殻が空間に溶け込むようにして消えてしまった。
「はい?」
「フィー、アンタはこっちに来なさい」
「ん? ……分かった」
模擬戦の相手を消してしまってどうするのかと聞く前にサラはフィーを自分の方まで呼び寄せる。
フィーも事態を掴めているわけじゃなさそうだが言われるままにトコトコ俺より前に歩いて行った。
「えっとサラ教官? どういうことなんですか?」
「それはねえ――こういうことよ」
説明を求めた俺に対してサラは不敵に笑うと腰に提げていた導力器付き強化ブレードと導力銃を抜き放った。
教官のサラが武器を構えたことに俺だけでなく≪Ⅶ組≫の皆も驚いている。
「フィー、一応アタシもARCUSは持ってるのよ、手伝いなさい」
「サラ、本気なの?」
「ええ、多分このぐらいいけるはずよ、ご褒美にアタシの授業で一回居眠り許したげるから全力でやりなさい」
「――! わかった」
俺とやり合う気満々なサラにご褒美を約束されてフィーまでやる気になりやがった、双銃剣を両手に構えてこっちに向き直って眠そうだった目がしっかり開かれている。
「サラきょうかーん? なんで俺だけこんな扱い受けてるんですか、傷つきますよ」
「ふん、自分の胸に聞きなさい」
ほんの少しむくれたような顔でそんなことを言われてしまうが心当たりなんて……いや、もしかしてあれだろうか。
サラとの初夜翌日、ヤリ過ぎて朝寝坊したサラは学院朝のミーティングに遅刻しそうになってチョビ髭ハインリッヒ教官にお叱りを受けたらしい。
その後のクラスの朝礼で軽く睨まれたものの特に何も言われはしなかったがまさかこれはその仕返しのつもりなのか。
「えっとあの朝のことについてなら俺のせいってわけじゃないと思うんですけど?」
常人と比べ体力の有り余っているサラとは一夜で何度もそれは激しく求め合ったが取っ掛かりにインチキを使用したものの合意の上での行為であったしこっちが責められる筋合いは無い。
俺はもちろんサラだって十分に気持ち良い思いをしたはずだしな!
「おだまり、そんな理屈じゃあたしの気持ちが収まらないのよ、黙ってこの勝負を受けなさい」
だがじと目でこっちを睨んでくるサラが矛を収めるつもりはないようだ。
予期せぬ事態に後ろでエリオット達が困惑を見せる中、一人俺とサラとの間柄の変化を知っているアリサからの冷たい視線が背中に刺さって痛い。
サラと関係を持った翌日にはそのことに女の勘というやつか鋭くも気づいたアリサがちょっとばかり不満そうにしていた。
ご都合展開力の影響かサラ同様に俺が複数の女性と関係を持つことを認めてはくれたもののその日の夜は役得ではあったがなかなか眠らせてもらえないほど激しく求められたもんだ。
「えっと教官? 流石に生徒相手にフィーまで駆り出してぼころうってのはどうなんでしょう?」
「あら、あくまでシラをきろうっていうなら構わないわよ、テスト成績不良で補習出しといてあげるから」
ひでえ、職権乱用以外のなにものでもないだろそれ。
「はあ……しょうがないか」
サラなりに俺が隠している実力を探りたい狙いもあるんだろう、補習はめんどくさいし、まあこのぐらいならいいか。
腰の刀に手をかけ臨戦態勢に入る、やる気を見せた俺にラウラ達が息を呑んだ気配が伝わってきたが止めようとする奴はいない。
一介の生徒への試練としては無茶ぶりが過ぎる筈だがこの時点ではサラの実力も測りきれていない皆としては止めるべきかの判断も出来ないだろうしな。
「覚悟はできたみたいね、それじゃ――行くわよ!」
左手の導力銃を向けるなり引き金を引くサラ。
「おっと」
飛来する連射された導力弾を抜刀した刀を振り生じた風圧で弾き飛ばしていく。
弾が軽いおかげでこういった威力を受けやすい導力式の重火器はまだ対処が楽だ。
刀を振り続け続く銃撃を凌ぎながら戦闘開始と同時に視界の端へ消えたフィーが後ろから接近してくるのを感じ取り、地面を通して伝わる足踏みの気配が強くなった瞬間に小さく弧を描くような動きで回り込む。
面食らったフィーが目を剥いていたが、流石に猟兵として実戦を経験している彼女だけあってすぐに身を翻し振り下ろした刀を交差させた双銃剣で受け止めた。
ガードのかぶせられた刃に硬い音を打ち鳴らして刀が止まる。
「やるなフィー」
「……っ!」
動きの読みにくい摺り足での高速移動に対応されたことを称賛する声を掛けたがそれを舐められていると取ったのかフィーは目端を吊り上げて、鋏のように交差していた双銃剣の一方で拮抗していた刀の横腹を押すように払い流し踏み込んでくると、もう一方の刃を滑らせ斬り込んできた。
半身を引いてそれを躱した俺から猫のように俊敏な動きで飛び退るフィー、瞬間。
「うわっと!」
それまでフィーが居た空間の向こう側からサラの出力を上げた強化導力弾が放たれていた。
寸でのところでスライド移動し躱した俺を襲ってきたフィーの射撃を再び刀の風圧で払い飛ばす。
危ない危ない、フィーと密着してるなら撃ちにくいだろうと思ったけどそういやARCUSがあるんだった。
あれがあればユー×マキみたいに険悪な仲じゃない限りツーカーでタイミング合わせなんかそりゃあ朝飯前だよな。
だがまあ反応さえできれば対処はできる、この年までひたすら鍛錬に明け暮れただけあってこの『リィン・シュヴァルツァー』の身体能力は尋常じゃない、このぐらいの弾幕なら一日中でも余裕で凌げる。
イメージするのは最強の自分だ――なんていう某厨二台詞も案外馬鹿にできない、明確に目標があるとトレーニングにも実が入るってもんだ。
この世界の人間の伸びしろを知る俺は辛さに何度もくじけそうになりながらも鍛錬を欠かすことはなかった、なにしろハーレムという至高の目標があったからな。
下心の原動力というものは人間の持つ感情の中でも最高クラスなんじゃないかと思う、マジで。
「ああもう、埒が明かないわね……」
銃撃が意味を成さないことを悟ったサラは顔つきを険しくして拳銃を下ろす。
今のまま続けても銃の導力が尽きるだけだ、当然そうなれば接近戦を挑んでくるだろうが……げ。
一呼吸したサラが瞳をカッと見開いた瞬間、その身に纏う空気が一変した。
全身から見えないゆらぎみたいなものが迸り、なんかバチバチで走る電気のようなものが見える。
いわゆる気功による身体強化というやつだ、サラのは雷神功とかいったっけ?
その変化に流石の《Ⅶ組》メンバーも目を丸くしている、いや俺が銃弾を払い始めたあたりからそんな顔をしていたような気もするが。
「さあ、あんたの実力を見せてもらうわよ、リィン!」
グラウンドに土煙を上げ突っ込んでくるサラ。
瞬き一つの間に俺まで到達するだろうその迅さ、これが執行者クラスの実力者というやつか、しかし。
振るわれた強化ブレードを刀の柄本で受け止める、見切れないほどじゃないこれならこのままの俺でも十分にイける。
受けられるのを予想していたのかサラは間隙を挟まず飛び退きながら銃を構え立て続けに引き金を絞る、至近距離からの銃撃にはさしもの俺も対処がきつく横っ飛びに回避させられる羽目になったが、そこへ隙を窺っていたフィーの銃撃が追い打ちをかけてきた。
「……っと」
ぎりぎり刀を振るのが間に合ったがそろそろしんどくなってきた。
サラもすかさず刀を握る手とは逆の左手に回り込んで最接近してきているし、そろそろやっておくか。
刀へと流し込んだ俺の気が赤い炎へと変じて刀身に纏われる。
技の兆候にサラは足を止めたが、構わず炎を纏った刀を地面へと叩き付けた。
「業炎撃!」
炸裂した炎が弾け周囲へ熱波が広がる。
顔を腕でかばいサラに隙ができた瞬間を見計らって呼吸を入れ替える。
「――コォ」
全身を巡る気が高められ、力が漲る感覚が広がっていく。
気を操る戦闘技法はもちろん俺も習得している、稲妻は走らないもののサラと同系統の身体強化技法、麒麟功により身体能力を向上させた俺は一気に距離を取っていたフィーへ接近する。
目の前のフィーが驚愕に目を見開いていた。
あまりの高速にまるで俺が瞬間移動したようにでも見えたんだろう、この状態の俺の速さはそれぐらいの域には達している。
咄嗟に双銃剣を掲げるフィーだったが次の瞬間には後ろへと回り込んだ俺の刀が首へ添えられていた。
「はい、一抜けだな。悪いけどちょっと休んでてくれフィー」
一拍遅れて首元の刀に気づいたフィーは呆然とした目でこちらを見ていたが、すぐにコクンと頷いて大人しく引き下がってくれた。
「ごめんサラ、頑張って」
「はあ……まさかここまでとはね、いいわ、ありがとフィー」
頭をかきながら《Ⅶ組》メンバーの方へ戻るフィーを見送ったサラは一対一となってもやる気らしく強化ブレードの切っ先をこっちへ向け直した。
さてどうしたもんかな、こんな勝負で怪我なんてさせるのもするのも御免だけどガチのサラ相手に穏便に事を収める方法はあるだろうか、と。
その時一つの妙案が脳裏に閃いた。
「っ!」
刀を鞘へ納め姿勢を低くした俺を見てサラは警戒を強めたようだ。
彼女ぐらいの実力者なら居合の技ぐらい知っているだろう、だからこそ引っかかってくれる可能性がある。
「今度はこちらから行きますよ、サラ教官」
ぐっと呼吸を潜め身構えたサラへ踏み込み俺は――抜刀する勢いを乗せて握った刀を投げつけた。
「なっ!?」
刀がすっ飛んで来るのは予想外だったらしくサラは柄を向けて飛んでくる刀をブレードで弾くがその瞬間には突っ込んだ俺が距離を詰めている。
今だ――腰元で引き絞った手に神経を集中し目の前のサラへ必殺の一撃を放つ。
「ライトニングチャージ!」
「な……何が起こったんだ?」
戸惑うマキアスの声、他のメンバーも大体似たような反応でこちらを見ていた。
駆け抜けた俺の背後ではサラがうずくまりブルブルと、いやビクンビクンって感じだろうか、体を抱えるようにして震えている。
覗き込めばその顔が真っ赤に染まっていることが分かるだろう、それも俺が今彼女に見舞った技による結果だった。
説明しよう!
ライトニングチャージとは巧みな指先の動きで対象の性感帯を刺激し稲妻にもたとえられる程の快感を与える技なのだ。
とある伝説の痴漢が編み出したものだがそれを俺なりに今日までの経験(性的)を生かし再現している。
まだ浅い経験は麒麟功による高速の手さばきでカバーし一瞬の内に敏感なポイントを刺激し尽されたサラはあえなく絶頂、これにて御免である。
「リ……リィン……あんたねぇ……」
涙目でサラがこっちを見ている。
皆何が起こったのか気づいてはいないだろうがよく考えれば生徒達の前でイかされるなんてとんだ羞恥プレイである。
今更ながらやり過ぎただろうかと思いもするが後の祭り、《Ⅶ組》メンバーの中でサラの反応から唯一俺が何をしたのか分かったらしく頬を膨らませているアリサも含め後でアフターケアの方法を考えておかないといけないだろう。
何はともあれサラは戦闘不能、これにて実技テストは終了の運びとなるのだった。
エロは次回に持ち越し