エロバコ 作:ryou
藤堂美沙の携帯に専門学校時代の友人から半年振りのメールが届いたのは、美沙がせっかく就職した勤務先を退職してから少し経ってからの事だった。
メールの内容は、合コンの誘い。
ほんの三行ほどの文面に明るい女の子らしさが垣間見えて、美沙は相好を緩めた。
3Dアニメーションに強い拘りを持っていた友人は、卒業後には美沙とは別の大手アニメーション制作会社に就職した。
彼女とはそれっきり連絡を取っていなかったので、卒業以来に繋がったということになるだろうか。SNSの類をほとんど利用しない美沙は、こういった電子世界で他者と繋がる事が少なく、友人たちの動向には詳しくないので、合コンの話を持ちかけられて、正直驚いている。
“タイミング的には、あまりよくないんだよね”
ベッドの上でため息を付く。
会社を辞めてから、先輩に紹介してもらった別の制作会社を何社か受けている美沙だったが、心中は不安で震えている。
大手制作会社を退社してまで、自分の夢の実現に賭けた。その判断を間違いだったとは思わないが、そうそう上手く事が運ばないのだという事も二十歳を過ぎて、社会に出た今じわじわと実感し始めている。
一年も持たずに会社を辞めた人間は、その本質に関わらず社会的に受けが悪い。
相談した両親にも強く言われていた事だったし、当然、美沙も分かっていたが、それでも我慢できずに次の居場所を求めて外に飛び出てしまった。
今の美沙の立ち位置は非常に不安定だ。
収入は零で、蓄えも多くない。
もしかしたら、このままアニメに関わる仕事に戻れないかもしれない。再就職に失敗して、アルバイターとして鬱屈とした日々を送る可能性も零ではないとなれば、心中穏やかではいられない。
携帯を眺める美沙は、再びため息をついた。
ドロップアウトして再就職先を探している人間が、合コンに参加するというのはなかなか厳しい。収入面、精神面の双方の問題で。
“でも、何かしらの気分転換にはなるかもしれない”
経費も男性側が多めに持ってくれるというから、美沙にとっても良心的な価格設定になっている。
何より、閉鎖的な業界にあって、他業種との繋がりは稀有な刺激をもたらしてくれるかもしれない。
合コンなどという大それた呼び方だったが、結局は友人が飲み会をしたいだけで、美沙はその人数あわせに声をかけられたに過ぎない。
合コンなんて、今まで関わったこともないのだが、心機一転を図るきっかけになればと美沙は参加の意思を表明した。
合コン当日は、本当にブルーなままで迎えなければならなかった。
前日に届いた「お祈り状」。就活生の天敵ともいえるそれを、再び目にする事になろうとは。ありえない話ではなく、むしろ当たり前なのかもしれないが、それでも実際に受け取ってしまうとショックは大きかった。
親に仕送りを頼んだり、バイト先を探さなければならなくなるかもしれないと思うと尚の事気が滅入る。
会場は美沙の家からも程近いところにある雰囲気のいい飲み屋で、合コンというよりもやはり大学サークルの飲み会で使うような場所だった。
そこに向かう途中、背後から、
「美沙ちゃん、久しぶり~」
きゃるるん、という擬音が似合う発案者の斧田が小走りで駆けて来た。
「斧田さん、元気だった?」
「元気ー。そっちは?」
「ん、まあ元気」
一瞬言い澱んでしまったが、斧田が気付く様子はなかった。
「そういえば、今日、誰が来るの?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「うん、聞いてない」
しまった、と大袈裟に叫んで斧田は自らの額にデコピンをした。
「今日はね、うちの新入社員の人から誘われてね。男は向こう、女はわたしで声をかけてたの。詳しくは行ってみてのお楽しみだって事になってる」
「アニメの会社の人なんだ」
「それだけじゃないみたい。いろいろと顔が利く人だから、大卒他業種の人もいるみたい」
「へえ」
大卒となると最低でも美沙よりも二つは上という事になるか。
もともと人付き合いが得意ではない美沙は、共通の話題のない年上を相手に会話ができるだろうかと不安になる。
そんな美沙の不安を読み取ったのか、斧田が笑う。
「そんな心配そうにしないでいいよ。なんかあったら、わたしがどうにかするからさ!」
バン、と斧田は勢いよく美沙の背中を叩いた。
思いのほか力が強く、美沙は前につんのめる形になってしまった。
斧田の容姿と明るさなら、すぐに中心になれるだろう。そんな斧田に気を回してもらえれば、美沙も気まずくならずに済むかもしれない。
それにしても、斧田の格好は学生時代と変わらず実に女の子らしい。
男装をすれば、普通に少年で通じかねないボーイッシュな美沙からすれば、斧田は非常に眩しい存在だ。一応、スカートを履いてきたのだが、それでも自分には合わないような気がしてならない。
到着すると、早くに集まっていた面々がすでに盛り上がっていた。社交的な人が集まっていたらしく、完全に出遅れた感じが漂っていて幹事を務める斧田はぷっくり膨れっ面だ。
「や、斧田さん」
若い男性が軽く斧田に手を挙げて挨拶をした。どうやら、彼が幹事その二らしい。
その場にいたのは男が四人と女が五人の計九名。しかし、用意された皿は十枚あって、一人遅れている事が分かる。
「なんか一人遅れててね。仕事が詰まっちゃってるみたいでさ」
「えー、何ソレ間に合うの?」
「間に合わないから先に始めててくれって。大卒で、今年から出版社勤めの人」
「大卒の出版社!?」
斧田が黄色い声を上げる。
斧田が集めた女子たちも、興味をそそられたらしい。他の男たちの経歴にも大卒が付く人は混じっているが、専門学校出の女子たちにとっては大卒というのも一つのアクセサリーだ。大卒と言ってもピンからキリまであるが、それでもイメージとしては勉強ができるという方向になってしまう。誰しも、底辺層を想像したりはしない。いいように解釈する。
アクセサリーは大切だ。
公務員とかは最近ブーム。安定しているから、不安定なアニメ業界からすれば羨ましい事この上ない。
遅れてくるという人が勤める出版社は、誰もが知っているような大手の中の大手で、競争率が極めて高い事が容易に想像できる大企業だった。
合コンは、簡単な自己紹介から始まり、それが一段落してから各々が自由気侭に会話する段階に入った。二時間飲み放題のコースで、一時間ほどが経っただろうか。
大体相手の他人の事が分かるようになってくると、会話はますます盛り上がる。困った事に端の席な上正面には遅刻者の席があって必然的に美沙の席は会話に参加しにくい場所になってしまった。
それでもコミュニケーション能力が秀でていれば、苦もなく席を立ち笑顔で会話をしながら酒を注ぎ、取り皿を彩ってあげる事もできたかもしれないが、今更動くとなると不自然過ぎてどうにも動けない。何よりも女の子らしい連中が大いに女子力をアピールしている中に飛び込む勇気が湧いてこない。
隣と斜め向かいの人と軽く会話を交わし、ビールジョッキが三回空になったところで、遂に遅刻してきた人物が現れた。
「悪い。思いのほか遅れた」
そう言って入ってきた男性は、遅刻した事を苦々しく思っているのか顔を顰めて謝った。
短く刈った髪。
高い背。
細面で、十人中七人はいいかも、と思うくらいには整った顔立ちをしていた。
仕事先から真っ直ぐ来たのだろう。彼はスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを外してから美沙の正面に座った。
「澄さん、ビールですか?」
「うん、ビールでいいよ」
「すいませーん。ビール一つ!」
遅刻者分のオーダーが飛ぶ。
頼んできたビールが届いてから、改めて遅刻者が立ち上がり自己紹介を始める事になった。
「遅れてきて申し訳ありません。先ほど、あそこの彼が
しっかりとした口調で話す澄司は、生来の真面目さを醸し出していて、この場に集まった男性たちに比べれば外面的には華がないようにも思えた。髪を染めている者ばかりの中で、スーツに黒髪というのが非常に浮いている気がするのだが、それでも直後にビールの一気飲みを遅刻の贖罪とした事で場を盛り上がらせるという「技」を見せ、雰囲気を和らげた。
澄司は二杯目を並々と注ぎ入れたジョッキを片手に幹事の二人のところまで歩いていき、遅刻を詫び、その場でしばらく会話を繰り広げた。
周囲を巻き込むのが上手いというか、自分に投げかけられる問いを近くの男性に流すようにしてさらりと受け流しているように見えた。
そうして一通りの挨拶巡りを終えた澄司は、やっと自分の席に戻ってきた。
ジョッキを置いた澄司と目があった。
数秒の沈黙の後、
「もしかして、藤堂か?」
澄司が口を開いたのであった。
専門学校卒元3DCGアニメーション制作会社社員で現就職活動中の藤堂美沙と大学卒大手出版社勤務の新採用一年目の亜爛澄司との接点は高校時代にまで遡る。
当時、文芸部に属していた澄司は三年生で美沙は帰宅部の一年生であった。二つも学年が離れている上に、部活動での付き合いがあるわけでもない二人を結びつけたのは、アニメーション製作を目的とする同好会を立ち上げようという動きに巻き込まれた事に端を発する。
人数不足で同好会が立ち上げられないという問題を抱えた美沙たちと新入部員が少なく同好会に格下げされそうになっていた文芸部の間で密約が結ばれ、互いに協力体制を敷く事となった。今となっては懐かしい思い出だ。
「覚えててくれたんですね、わたしの事」
「それはこっちの台詞だよ。俺が同好会と関わったの、四年以上も前だぞ。しかも、ほんの半年くらいだし」
もうそんなに経つのか、と漠然と美沙を感慨に耽った。
四年前、高校一年生だった頃は未来がバラ色に見えていたように思う。今でも、やりたい事はたくさんあるが、あの時ほど素直かつ無条件で先の事を思えるわけではなかった。
「宮森から聞いたけど、同好会の面々は皆こっちに来てんだって?」
「はい、そうですけど。え、連絡取ってるんですか?」
宮森とは、アニメーション同好会の設立者にして武蔵野アニメーションで忙しく働いている先輩の事だ。
「宮森とは仕事の関係で何度か会った事があってさ。アイツ、今二年目で制作進行だろ。ほんと、尊敬するわ」
「そう、ですね。おいちゃん先輩、本当にすごいと思います」
宮森あおいが現場の最前線で奮闘している事は、専門学校生の頃からよく聞いていた。持ち前の前向きな気持ちで、様々な困難を乗り越えて突き進んでいる姿には憧れる。
二次会へ河岸を変える段になって、美沙は抜ける事にした。
忙しい社会人。翌日が土曜日だからといって仕事が休みというわけではない人もいる。二次会に行くのは、およそ半数といったところだったので、途中で抜けるのにそれほど罪悪感はなかった。
「家、こっちなんですか?」
「ああ、そうなんだよね」
「じゃあ、結構近いんですね。知らなかった。どこかで会ってたかも」
「そうかもな。いると思ってないと、目に入らないもんだし」
澄司の暮らすマンションの場所を聞くと、なんと美沙の家のすぐ近くだった。
「越してきたのが今年の春だからな。気付かなくても無理ないだろう」
「あれ、でも大学も東京ですよね?」
「通勤に都合がいいところを選んだんだ。初期投資だけは親がしてくれたからさ」
「ああ、なるほど」
都内の大学に通えるからといって、会社まで簡単に通えるというわけではない。交通網が発達した東京都心といっても、どこでも好きなように移動できるというほど便利ではないのだ。
「先輩。明日は仕事あるんですか?」
尋ねてみると、澄司は首を振った。
「明日は休み。久しぶりにね」
答えを聞いて、反射的に美沙は口走った。
「じゃあ、もしよろしければ、その、二次会しませんか? 二人しか、いませんけど……」
なんで、こんな状況になってしまったのだろうかと頭の冷静な部分が首を傾げている。
二次会と言ったものの、飲み屋で飲み直す気にならなかった事もあり、コンビニで酒の缶を数個購入して宅飲みをする事になった。
会場は、澄司の家。
四年ぶりに再会した先輩とはいえ、簡単に男の家に転がり込むのはかなりの珍事ではあったが、アルコールで気分が高揚していた美沙は、とにかく胸の裡を吐き出したい気持ちがおかしいという気持ちに優先していた。誰かに、胸中の思いを聞いて欲しくて、都合よく気心の知れた相手がいたので甘えてしまった、という感じ。
もともと酒が入っていた事もあり、新たに多量の缶を買う必要はなかった。ほんの数個あればいい。澄司の家の座卓の上に乱雑に置かれた空き缶を、意味もなく重ねて美沙は呟く。
「わたし、仕事辞めちゃったんです……」
「三回くらい聞いたな。とりあえず、水でも飲んで落ち着け」
澄司は美沙の前から缶を取り除き、酒は入ったグラスも下げて、変わりにミネラルウォーターを注いだグラスを渡した。
「ありがとうございます」
美沙はグラスを受け取り、一気に水を飲み干した。
キンキンに冷えた水は、火照った美沙の頭を鞭打った。ふわふわとした非現実感が薄れて、次第に男性の部屋に転がり込んだ現実感が押し寄せてくる。
“わたし、何してんだろ……”
かなり、投げやりになっている自分がいて、それを冷静な自分が俯瞰しているような気分だ。
将来に対する不安がある。
仕事が決まるかどうか分からず、もとの職種に戻れるかどうかもこれからの努力次第だ。一緒にアニメを作ろうと約束した親友たちは、美沙を応援すると言ってくれたが、だからこそ再就職が決まらなければ合わせる顔がないというプレッシャーが重く双肩に圧し掛かっている。
あの職場にいては、夢は叶わないと分かってしまってからの懊悩は、結局、誰かに理解してもらえるものではなく、夢と生活を天秤にかけて夢を選択したのだから苦しい日々が待っている事も覚悟していたつもりだったが、実際に出口の見えないトンネルに踏み込んでしまうと、この選択でよかったのか心配になってくる。
今更四人に泣き言を漏らすわけにもいかず、アルコールが入った美沙はここぞとばかりに澄司に日々の愚痴を零しまくった。
澄司は嫌な顔一つせず、美沙の愚痴に付き合ってくれた。おかげで、少し気分が晴れたような気がした。
「前が見えないって気持ちは俺も分かるよ。一年目だしな。理想と現実はやっぱり違ったよ」
「とーじ先輩もそうなんですか」
「そうだよ。俺は、藤堂みたいに新天地を求める勇気なんてないから、今に何とか合わせようとしている真っ最中だよ」
「勇気なんて……ただ、わたしは今のままやっていく事ができなかったってだけです……」
新しい環境に上手く適応して生きていくのが社会人の正しいあり方なのだろう。澄司の選択は、至って一般的なもので、その悩みも新人なら誰しも通る道だと言える。
二つも歳が離れていれば、学生ならば雲の上の存在だ。実際、高校時代は半年の付き合いしかなかったが、胸襟を開いて話をするような機会はなかった。しかし、四年経った今、互いに社会人一年目を経験し、同じような悩みを抱えて再会したというところに奇妙な縁を感じた。
酒はなくなり、水を入れたグラスも干した。いつの間にか日付が変わり、深夜アニメを茫洋と眺めているくらいしかする事がなくなった。
「藤堂、家まで送ろうか?」
アニメが終わると、一時半という深夜の中の深夜に突入していた。美沙の家までは歩いていける距離なので、澄司はそんな提案をしてくれる。
「やっぱり、彼女さんに怒られちゃったりしますか?」
「彼女なんていないよ」
「え、いないんですか?」
それは意外だった。
外見は悪くないし、学歴も仕事もしっかりしているのだから引く手数多だろうに。
「一年前に、別れたっきりだな」
「そうなんですか」
それから、少し気分が高揚した。心臓を少し高鳴らせて、
「なら、今日泊まってもいいですか?」
「この会話の流れでそういう事を言われると、男としては変に受け取ってしまいかねないぞ」
「変に受け取っても、いいんじゃないですか。……お酒の勢い、あると思います」
行きずりの関係なんてありえないと思っていた。
厳密に言えば、元々知り合いなわけで、行きずりという言葉が適切かどうかは分からないが、再会して数時間の相手と床を同じくする事になるとは合コンに行く前の美沙は想像もしていなかっただろう。
ベッドのスプリングが音を立てて軋む。
シャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。
寝る前に、シャワーだけ借りた。服はどうしようもなかったが、体の方は清めておきたかった。相手も、汗をかいたからと美沙の後に体を流していたので、この香りは自分か相手かどちらのものなのかよく分からなかった。
ベッドの端に並んで腰掛けて、美沙を恐る恐る澄司の肩に頭を預けた。
“どうしよう、これ。どうしたら、いいんだろう”
性知識はさすがにあるが、困った事に二十歳を過ぎても経験が皆無だった。酔った勢いに任せて自分から誘ったはいいものの、最後の一歩を踏み出す前に怖気づく程度には酔いが醒めていた。
“心臓、やばい。し、死にそう”
バクバクと高鳴る鼓動。美沙は顔を真っ赤にして、俯くが、そうすると隣に座る澄司の一糸纏わぬ下半身に目が行ってしまう。
思わず、生唾を飲んだ。
いや、それなら自分の方もバスローブの下は何も着ていないから、これから先に進めば同じような状況になるわけだが。
「大丈夫?」
「あ、はい! ちょ、ちょっと、緊張しただけっていうか……その、初めてなんで……すみません」
美沙の返答に、澄司は唖然としてから失笑した。
「わ、笑わなくてもいいじゃないですか」
「いや、まさかとは思ったけど、本当に初めてなのか?」
「仕方ないじゃないですか。わたし、勉強と仕事ばっかりでしたし、男っぽいし」
「そうかな。可愛いと思うけど。今日の服だって、似合ってたし」
「そ、そんな事、ないですよ。スカートなんて滅多に履かないんです。いつもはパンツとジャケットばかりなんです」
何を必死になって否定しているのか、自分でも訳が分からなかったが、とりあえず否定してしまった。どれだけ自己否定的なのだろうかと、内心で自嘲する。
「そう。それなら、これから少しずつ女の子らしい服にも挑戦すればいい。元がいいんだから似合わないなんて事はないよ」
「そ、そうですか……」
血流が加速したような気がした。心臓の音がうるさくて仕方がない。可愛いとか、そういった事は言われた事がなかったので、美沙は心底気恥ずかしくなってしまう。
「あ……」
澄司は徐に美沙を抱き寄せて、頬に手を添える。
それから軽くキスをした。
思わず身を強張らせる美沙の頭を澄司は優しくなでる。
「力、抜いて。大丈夫だから」
耳元で囁かれて、美沙の背筋に電流のようなものが流れた。
さらに唇をついばまれて、くすぐったさに身じろぎする。初めてのキスは、緊張で何がなんだか分からないままに終わってしまった。それが少し残念だったが、それを口にする前により強く唇を塞がれる。
「ん、ふ、……ん」
固くなった体から徐々に力が抜けていって、澄司に委ねるようになる。息苦しさに閉じ合わせていた唇を開くと、それを見越していたかのように澄司の舌が美沙の口内に侵入を果たした。
「あふ、んんんッ」
びっくりして、美沙は体を離した。
「あの、その、むぅ!」
今度は逃がさないとばかりに美沙は強引に口付けをされた。
ぬるりとしたものが口の中を荒らしまわるのを感じて、身を硬くする。
初めてのディープキスに、どのように対処したらいいのか分からず、美沙は目を白黒させる。そうしている間にも、澄司は美沙の歯をなぞり、舌を絡めて口蓋を舐める。
「ん……む、ちゅ……あ、あふ……あむ、ちゅる……ちゅ……」
唾液が混ざり合って、美沙の口の端から零れ落ちた。
始めは固まってしまった美沙も、ここまで来れば余裕が出てくる。慣れないなりに舌を動かして、相手の舌を追うようになる。
「ふ、む、あ、……れろ、ひた、が……ん、ちゅう……はあ、はあ、はむ、ん、く……ちゅ……」
吐息が交差する。ねっとりとした口付けに体の芯が熱くなり、惚けてしまう。
“これ、キス。なんか、どうでもよくなっちゃいそう”
深い深いキスの後、唇を離すと二人の間に銀色の橋が生まれる。
美沙は顔を赤くして、俯いた。
されるがままだったのも束の間の事で、最後には美沙から求めているところもあった。自分がした行為に羞恥心を感じていた。
その美沙を澄司はベッドの上に押し倒し、バスローブの守りを取り払った。
一糸纏わぬ姿となった美沙。
その上気した肌はほんのりと赤みを持ち、桃色の乳首が愛らしく自己主張を始めていた。
「う、あ、……あまり、見ないでください」
恥ずかしげに胸を手で隠した美沙は、相手を直視できずに顔を背けた。
「綺麗だったから、ついね」
「やめてくださいよ、もう。……うひゃッ」
澄司の手が美沙の内股をなでたのだ。くすぐったさに声を上げてしまった。
くすぐったいだけではない。
彼の手が愛撫する近くには、美沙の秘所がある。恥ずかしいのに体が感じているのが分かる。じわじわと、あそこが熱を帯び始めていた。
そして、澄司の指が軽く秘所をなぞると、背中にむず痒い電流が流れた。
「は、ん……!」
ぴくん、と美沙の体が揺れる。
自分の体の中に他人の指が入ってくる感覚に、美沙はぞわぞわとした興奮を抑えられない。
「は、あぁ。ん、ん……はあ、ふ、う……先、輩……あまり、変なとこ、ん、触らないで、は、あ……」
「変なとこってどこだよ」
「そ、れは。ひゃうッ。あ、ん、そこ、ダメ……!」
ぞり、と美沙は秘所の上側を引っかかれて思わず腰を跳ねさせた。
甘い痺れに思考がまっさらになりそうだった。
恥ずかしいから触らないで欲しい、という気持ちが、どんどんと触って欲しいという淫らな欲求に書き換えられていく。もうここまで来たら墜ちるところまで墜ちればいい――――そんな甘美な誘いが美沙の脳裏を過ぎる。
「ん、はぁ……あ、ん♡ 気持ち、いい、です……ん、ふぅ……あ、ふ♡ とーじ先輩、あ、もっと♡」
美沙の声にも色気が混じり始め、呼吸が急速に荒くなっていく。
美沙の女性器はすっかり濡れそぼって、透明な愛液を零し始めていた。入り込む澄司の指を咥えて、吸う様子は、股に口が付いているかのようでもあった。
「もしかして、感じやすい?」
「そ、そんな事、知りませ、んあッ、は、ふぅんッ♡……きっと、アルコール、のせい。はゃん♡」
初めてなのに、指だけで乱れるなんて、自分はそんな淫らな体質じゃない。
頭ではそう思いながらも口を付いて出るのは嬌声と媚びた言葉だ。口も体も自分のものではなくなってしまったみたいだ。
いやらしい音を立てる自分の秘所。
肉の壁を抉られて、指先で押し退けられるのが気持ちいい。襞の一つひとつをまるで慰撫するかのように柔らかく撫で付けたかと思えば、次の瞬間には獰猛な獣のように美沙の膣内をかき回す。
澄司は美沙を翻弄しつつ、空いた手で乳首を摘んだ。
「ひん……!?」
美沙がびっくりしたような顔をする。どうやら、美沙の体は乳首も十二分に敏感らしい。軽く抓られただけで、全身の毛穴が締まって、筋肉が萎縮してしまう。
(に、二箇所同時、なんて……本当に変になる!)
想像以上に気持ちがいい。
他人に触れられているというのに、むしろソレが興奮を誘っている。
澄司の指の出し入れが激しくなる。そうなったかと思えば、焦らすようにゆっくりと動き始め、次の瞬間にはクリトリスを弾かれる。
「ん、ほッ。ひ、はぁ! あひ♡、く、んぅん……ひはぁ!? とーじ先輩、乳首、抓っちゃ……あうぅん♡ あ、あ、あぁ、き、きちゃう、止めて、指、止めてくださいぃぃ!」
四本も指を入れられるというだけでも美沙の体は限界に近かったのに、それぞれがまったく別の動きをして美沙を押し上げていく。そして、トドメとばかりに肉筒の粘膜を三百六十度捻るようにされると、美沙の体はもう持ち堪えられなかった。
「ひぃ、ん、~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡!」
咄嗟に口を塞いだ美沙は、絶頂の声を押し殺す。
しかし、上の口は塞げても、下の口までは塞げない。快楽を吐き出すかのように、美沙の割れ目からは潮が吹きだしてベッドを汚した。
「は――――あ、ひ。……ひ、あ……」
細かく痙攣する美沙は、陶然とした表情で天井を眺めて脱力する。
荒く息を吐き、絶頂の余韻に浸る。
体中の力が抜けて、ぐったりとしたところで澄司の指が股をなでた
「ん、い!?」
また、腰が跳ねた。
くすぐったさを越えた刺激は、一瞬で美沙を現実に引き戻す。
「あ、何を……?」
「ん、ぼー、としてたから、気付けに」
「気付けって……あ、止め、ちょっと、んひぃ! い、今、ダメなんですってば! せん、いやぁん! また、また、きちゃ、うッ」
じゅくじゅくとした音が否応なく美紗の耳を蕩かし、頭をダメにする。体はすでに他人のもののようで、何一つ自由が利かない。快楽に翻弄されている事を恥ずかしく思いながら、心の底で愉しんでいる自分に気付く。
指が縦横無尽に自分の蜜壷を苛めている。
動かれると、それだけで美紗の股は喜びを露にして指を締め上げ、涎を垂れ流す。
「また、イ、イク。あ、あ、あ゛ぁあああああああああ♡」
美紗はシーツを握り締め、喉を震わせて悦楽に呻く。
体中の筋肉が収縮して、身もだえしてしまう。
「あ、あえぇ……」
ベッドに沈み込むように全身を弛緩させた美紗は、呼吸を整えながら恨みがましい視線を澄司に向ける。
「だ、めって、言ったのに……ひどいじゃないですか」
美紗は上体を起こして、むすっとする。
美紗はベッドから下りて、澄司の前に膝立ちになる。それから、手をペニスに伸ばした。
「おい」
「お返し、です」
自分が恥ずかしい目にあったのだから、相手にも同じ思いをしてもらわないと釣り合いが取れない。
美紗の痴態のおかげか、肉棒はすっかり固くそそり立っていた。手に触れると、驚くほどの熱が蓄えられているのが分かる。
美紗は両手で棹を包み込み、上下に動かす。力加減が分からず、強く握りすぎてはいないかと心配になったりもしたが、初めて触れる男の分身は予想していたものよりもずっと固く、頑丈そうに思えた。
「こ、こんなに固いの……?」
「見るのは初めて?」
「ほ、本物は」
AVくらいでしか見たことのない造詣。知識としては知っていても、実際に見て、触れるとなると印象も変わる。
“でも、やっぱりグロテスクな形。こんなのが人の体についてるなんて”
ついつい、すぐ近くでまじまじと観察してしまう。
玉袋から陰茎の裏筋まで視線を走らせ、充血した亀頭まで視察する。亀頭の根元を人差し指の腹で軽く擦ってみたり、エラをつついてみたりと、好奇心に任せて美紗は肉棒を弄った。
やはり、亀頭のあたりは繊細で敏感らしい。美紗の指が触れると、それに反応して肉棒が跳ねる。玉袋の皺の奥で精巣が蠢いているのが目視できた。女にはない器官の動きに、美紗は一層の興味を覚え、行為を加速させていく。
「あ、これ……」
先っぽから透明な雫が分泌され始めた。
先走りだ。
(よかった。気持ちよくなってくれてるんだ)
ほっとした美紗は、柔和な笑みを浮かべた。ぎこちない美紗の手淫でも、男を悦ばせる事くらいはできるらしい。何となく、それは嬉しかった。
ただ手で擦っているだけなのに、美紗のほうも心臓が早鐘を打つほど興奮してきてしまった。生唾を飲み、呼吸が深く、荒くなる。
ぬるぬるとした先走り液が美紗の手を汚す。汚いとは思わなかった。しかし、臭いがキツイ。分かっていた事だったが、男のこれは凄まじい臭気を発している。鼻が曲がりそうなのに、どうしてか嫌いにはなれそうもなかった。アルコールで判断力が鈍っているからだろか。それとも、性行為に陶酔しているからだろうか。
「藤堂、ちょっと、離れろって」
「ん?」
澄司が美紗から離れようと腰を動かした。
もしかして、イキそうになっているのだろうか。だとしたら、ここで切り上げられるとお返しにならない。美紗は、澄司の言葉を無視して手淫を続けた。その直後――――、
「あ、きゃッ……ん、ん!?」
亀頭から飛び出てきた白濁液が美紗の顔に飛び散った。
一瞬の出来事に目を瞑った美紗は、顔中に熱を帯びた粘液が張り付くのを感じて呆然とした。
「ふわぁ……」
今まで以上にキツイ臭いを発する精液。鼻を突く異臭に頭がどうにかなりそうだった。
「悪い、藤堂。えと、大丈夫か?」
「あ……はい。あの、ありがとうございます」
「ありがとうって、何がだよ」
「そうですね、何がでしょう」
顔射されたショックで頭が回らなかった美紗は、顔を拭く事も忘れて笑みを浮かべた。
「とりあえず、顔、洗ってきます」
ふらふらとした足取りで、美紗は洗面所まで歩いていった。
電気をつけて、洗面台に近付く。鏡に映った自分の姿に、息を呑む。
人前で裸になっている事を今更ながらに実感する。そして、自分の顔にたっぷりと付着する男の欲望の塊。このまま放置していたら、雄の臭いが体に染み付いてしまいそうで、まるで別人のものような淫らな顔が視界に入って胸が高鳴る。
美紗は自分の顔に付着する精液を指で掬い、眺めてみる。
べたついていると思っていたのだが、思っていたよりもぬるぬるとしたものだった。白濁としたゼリー状のそれを舐めてみる。
「うえ、苦い」
聞いていた通りの味に顔を顰める。経験を重ねるうちに、この味にも慣れるのだろうか。
(いや、経験って)
美紗は顔を赤くして、頭に浮かんだ言葉を誤魔化すように顔を洗う。冷たい水が、火照った体に心地よく、茫洋とした頭が冴えるような気がした。
洗面所を出る。
一瞬、このまま服を着て帰宅しようかと思った。
所詮は行きずりの関係だ。彼のほうも悪くは思うまい。
しかし、ここまで来て帰宅しても、悶々と過ごす事になるのではないか。結局、美沙はベッドルームに自ら戻る事を選んだ。
「帰ってこないかと思った」
美沙を見るなり、澄司は驚いたとばかりに目を見開く。
美沙は、澄司の隣に腰を下ろした。
「だって、ここまでして終わるのも、中途半端ですし」
「最後までしてもいいって事?」
美沙は答えず、首を縦に小さく振った。
「あの、ちゃんと付けてください」
「分かってるよ」
軽くキスをしてから、美沙はベッドに倒れ込む。手際よく準備を終えた澄司が、美沙の膝を押し広げ、一物の先端を女性器に押し付ける。
緊張に胸が張り裂けそうになる。
いよいよ、二十年守ってきた処女を失う時が来た。少し怖くて、体に力が入る。
「力、抜いたほうがいいぞ」
それを察したのか、澄司はそうアドバイスしてくれる。とはいえ、力を抜くなど簡単にはできない。すると、澄司は美沙の胸に手を伸ばし、乳首を軽く摘んだ。
「んぅ!」
美沙の体はその甘い刺激についつい反応してしまう。それだけで、体は男を受け入れる体勢を整えてしまった。
それを隙と見た澄司は美沙の秘所を押し広げて自らの分身を挿入する。
「んぐ、ぅぅううッ!」
喪失は一瞬の出来事で、美沙はただ下腹部に痛みを感じる事しかなかった。じわりとした熱が背筋を伝って上ってくるに及んで、処女が貫かれたのだという実感が湧いてくる。
「い、は、は、は、が、ぐ、ふぅぅ……」
もはや声にならず、喘ぐ事も儘ならない。
ひたすら痛い。
痛くて涙が溢れてくる。
これでは、感慨も何もない。
「落ち着いて、深呼吸して」
「あ、い……」
澄司は美沙に密着し、幼子をあやすようにして抱き締める。そのおかげで、美沙は澄司の体にしがみ付くようにして痛みを堪える事ができた。知らず、両足に力が篭り、相手の腰を立てた膝で挟み込むような姿勢になってしまっている。
しばらく、そうして震えていると徐々にではあるが痛みが遠退いていくのを感じた。熱は依然として下腹部にたゆたっているが、それはどちらかというと男を受け入れている事によるもので、痛みとは別物だ。
痛みに慣れれば、後は相手を求める女の性が顔を出してくる。膣内に挿入されたペニスを欲しがって、自分の股がだらしなく汁を垂れ流しているのを感じてしまっている。
「あ、とーじ先輩。ん、あ、は、ぁ……そろそろ、動いても、いいと、思います、ん」
「大丈夫か? 我慢しないでもいいんだぞ」
「そんな。大丈夫、ですよ。痛み、引きましたから」
見上げれば苦しそうな顔がある。
それはそうだろう。
女の中に入ったのに、動けないのだからそれは寸止めと大差ない。こうしている今でも、美沙の膣内は律動を繰り返してペニスを締め付けているが、それが却って澄司を苦しめている。
「だ、から、早く、動かして、ん……」
囁くように美沙を言う。両腕を澄司の首に回し、抱きかかえるようにしてから自ら腰を動かして澄司のペニスをより奥に導く。
「うく、分かった。後悔、するなよ」
「はい」
そして、澄司は腰をゆっくりと動かし始めた。
「ん、んんんん」
淫肉を掻き分けて、抽送されるペニスを感じて美沙は言いようのない充足感を覚えた。まだ始めたばかりなのに、自分が相手から求められているというだけで、満たされたような気持ちになる。
「ん、く、は、あん……ふ……く、あ、あぁ」
喉の奥から勝手に声が漏れてくる。
何度かペニスが抽送されているうちに処女を失った時の痛みはどこかに失せて、ただ体を支配する甘い熱だけを感じていた。
「ひ、いん! は、あく、んん……や、あッ! こんな、んん! はじめて、なのにぃ……ひ、ぃ、はあ、あ゛あ゛」
美沙が感じ始めるのに時間はかからず、湿りきった秘所は柔らかいに媚肉でペニスを包み込んでしゃぶりつく。淫らな女だと思われたくないのに、体は言うことを聞かずに男を求めて涎を垂らしている。
突き上げられるたびに、心臓を鷲掴みになれたかのような快感が体を駆け抜け、目の前がチカチカとしてしまう。
「だめ、これぇ、よ、すぎ、てぇ……へんにな、ちゃう、アん、くひぁ♡」
澄司もすっかり美沙が慣れた様子だったのでエンジンをかけて腰の動きに緩急を付け始める。強く奥を抉ったかと思えば、浅い場所を焦らすように擦る。それだけではない。美沙の首を甘噛みし、胸を揉みしだいて耳を舐める。美沙の体のすべてを味わいつくそうとしているかのような行為は、美沙の全身を性感帯のように作り変えていく。
「ひ、は……耳、やめ、変な音、聞かせないで……」
そうは言いながらも、美沙は両足を腰に回してしがみ付く姿勢を崩さず、その顔は快楽に蕩けきっている。
耳を執拗に責める澄司を押し退ける事はせず、そのまま受け入れて嬌声を発している。
「あえぇ、は、へあ……あ」
澄司が体を離した。美沙の顔を覗きこんでくる。それが、気恥ずかしくて、しかし目を離す事ができない。もう、今の美沙は快楽を貪る事しか思考できないでいるから、澄司の顔を掴んで引き寄せ、唇を重ねるのに戸惑いはなかった。
「あむ、ん。……ふぅ、ちゅ……へあ、あぁ……れろ、ぺろ、むちゅ、ちゅぷ……」
唇を吸い、舌を絡めあう。
上の口も下の口も、獣のように絡まってそのまま溶けてしまいそうだった。
積極的に舌を吸った美沙は、恍惚とした表情で与えられる悦楽を享受する。
(口の中がこんなに気持ちイイなんて、知らなかった……)
舌と上顎の辺りが特に感じる。美沙は夢中になって、澄司の舌を貪る。
「む、ちゅ、んー……ちゅ。は、は、はひッ……あえ、奥、来すぎ、イギッ、あ、壊れ、ちゃう♡」
澄司の動きが激しくなり、それに伴って美沙を襲う快楽の波が強く大きくなる。腰に打ちつけられる獣欲が、膣壁を刺激して抗い難い多幸感で美沙の心を染め上げていく。
「ひは、はぁん♡ き、てぇ……あ、あ、あぁ……ん、ぐ、ふぅうう。あ、き……あ゛あ゛、あああああああああ♡」
「く……!」
澄司が射精すると同時に、美沙も山の頂に昇りつめた。
この日何度目かになるオーガズムに、美沙は激しく息を荒げて余韻に浸る。体力を一度に消耗してしまった。ベッドに沈み込んで、同化してしまいそうだった。
「ん、ふぅん!」
膣内からペニスが引き抜かれた。
ペニスを包み込むゴムを外すと、その中にはたっぷりと精子が詰まっているのが見て取れた。もしもゴムがなければ、あれがすべて自分の膣内に放出されていたのだろう。
自分の愛液に濡れたゴムと精液に塗れたペニスが妖しく光る。
「うごか、ないでください」
ベッドの上で胡坐をかいていた澄司に言うと、美沙は四つんばいになり、その股に顔を埋めた。
「お、おい」
さすがに驚いた澄司が声を上げるが、その時には美沙は萎えかけのペニスを口に咥えていた。
「あ、む。ん、ひれいに、ひまふ……じゅる、ん……」
AVで見た行為をそのままになぞっているだけ。フェラチオなどした事がないのだから上手いわけがない。ぎこちなくペニスを吸い、棹についた汚れを唾液に溶かすと口の中でペニスが肥大化して、尿道に残った精液を口内に放った。
「ふむ、んん~~~~~~~~!?」
美沙はシーツを握り締めて苦味に耐える。吐き出すわけにもいかず、ペニスを咥えたまま動きを止めてしまった。
(あ、すごい苦い。それに、ねっとり……してて、濃い)
熱いペニスを咥えていると思うだけで、涎が溢れてくるのに、それに精液が絡み合って口の中がひどい状態になっている。
美沙は、精液を零さないようにゆっくりと口を離した。
「ん……んく……ふわぁ……」
舌が痺れる。
結局、全部飲み込んでしまった。
精液を飲む日が来るとは思っていなかっただけに、自分の行為を信じられないという面持ちで振り返った。
その日は澄司の家で一夜を明かし、翌日美沙は帰宅した。
朝が来て冷静になると、流れのままにセックスしてしまった事が信じられず、まともに口も利けなかった。
しかし、不快ではなかった。結局、美沙と澄司の関係は友だち以上恋人未満という微妙なものに留まったが、これからどのように進むのか分からないというのが楽しみでもあった。
そして、帰宅した美沙を待っていたのは、頼れる先輩に紹介してもらったアニメ制作会社からの採用通知だった。