人物紹介
アナタ
月村すずかさん
以上! 簡単!
甘い香りで意識が持ち上げられる。
ぼんやりと開いた瞼の先にあったのは紫色の塊だ。塊、と言ってしまったが、ソレは髪だ。
僅かに漏れ出す光に反射する程に艶やかで、胸元に在るソレは甘い香りを強く放っている。
混乱する頭の中をどうにか落ち着ける。一体何がどうなっているというのだ。
身体に当たる柔らかさから、この紫髪の主が女であろう事は分かる。けれど、分からない。なんせ、この方恋人という存在を俺は持ったことがないのだ。
そんな俺が気付けば、目が覚めれば女とベッドに眠っている。夢ならばもっとステキにしてほしいモノだ。少なくとも、スチール製のパイプのベッドヘッドに繋がれて、拘束されている腕は解放すべきだろう。夢ならば。
溜め息を一つ吐き出した。
どれほど記憶を辿っても、この女が誰だか思い出せない。果たして俺の知らない女なのか。それとも俺がすっかり忘れてしまっているのか。
記憶力は壊滅的に悪いと自負しているので、恐らく後者だろう。
もぞり、と紫髪が動いた。
幾度か俺の胸に頬を摺り寄せ、そのぼんやりとした顔を上に向けた。俺と目が合う。髪よりも淡いと感じる、けれど深い紫色の瞳が俺の顔を映し出す。
見つめ合って数秒、女は柔らかく微笑んだ。
「おはよう」
「……ああ、おはよう」
思わず返してしまったのは、礼儀だからだ。得体の知れない女であろうが、挨拶は大切なのだから。
女は眉尻を下げて憂いを帯びる。けれどそれも一瞬の事でスグに柔らかい微笑みへと戻った。
「昨日は……すごかったね」
少しばかり頬を赤らめていう女。その昨日が思い出せない俺を殺したくなった。間違いなく美女と言っていい女を抱いたであろう昨日の俺。そしてソレを思い出せない俺。両方とも殺してやりたい。
さて、ココで問題が発生する。いいや、問題は既に発生していたのだ。
「えっと、悪い。誰だ?」
俺の声にビシリと女の表情が凍りついた。
俺が悪い。そんな事は重々に承知だ。むしろ彼女が悪い訳が無い。彼女が悪い可能性など、それこそ彼女が俺を攫っているぐらいしか思いつかない。そんな可能性は零に近いのだから切り捨てておく。
「本当に、わからないの?」
「……悪いが、さっぱり。皆目検討もつかない」
「……そっか」
悲しい顔をする美女は一つだけ溜め息を吐き出した。
本当に申し訳ないが、これほどの美女ならば覚えている自信がある。記憶喪失にでもならない限り覚えているだろう。しかも抱き締める事が可能である美女だ。頑張って思い出せよ、俺。
「うん、忘れていても仕方ないかな。だってアナタからすると八年ぶりだもんね」
「八……?」
「正確に言うと、八年と二ヶ月と十二日、五時間二十四、ああ、二十五分かな」
ニコリと笑顔でそう言った美女。ヤバイ。関わっちゃいけない感じの人だ、この人。
しかも俺からするとって事はどういう事なんですかね? ストーカーですか? ストーカーなのか、この美女は。絶対人生無駄にしてるぞ、それだけは分かった。
八年前……いや、正確にはもう少し前になるらしいけれど。今が二十歳だった筈だから、小学生の卒業時期、もしくは中学生か。
この美女の小学校の時代だ。さぞ美少女だったのだろう。未だに誰だか分からないのが難点すぎるが。
脳をフル稼働させて卒業アルバムをひっくり返す。全然思い出せない。それこそ卒業後もちょくちょく会っていた高町さんとかハラオウンさんは思い出せるが……ん?
何か、引っ掛かりを覚える。確か三人娘が四人に増えて……。
「……月村さん?」
「当たりだよ」
どうやら当たっていたようでよかった。はにかんだ月村さんはとても可愛い事もよく分かった。
うんうん、思い出してみればすっきりした。確かにあの四人娘は美少女揃いだった。それが八年という時を経て美女へと進化したのだ。
その美女が目の前にいるのは非常に嬉しい事だ。俺の腕が縛られていなければの話だが。
「月村さん、月村さん」
「すずか、でいいよ?」
「その、すずかさん。どうして俺の腕は縛られているんでしょうか?」
「え? ……だって攫った人は抵抗できない様に縛るでしょ?」
零ではなかったけど、零ではなかったけどさ!
そんな可愛い顔して恐ろしい事を言うのか!
パクパクと口を動かしている俺を見て可笑しかったのかクスクスと笑うすずかさん。
「アナタが私を見てくれないだもん」
耳元で囁かれた声。鼻先が付きそうな程近くに顔があり、甘い匂いが強くなる。瞳には光が灯っていない。
「私はずっとアナタを見ていたのに……。アナタはずっと皆しか見なかった。 だから、攫っちゃった」
「攫っちゃった、って」
「でも、ほら。今のアナタは私だけのモノだよ」
虹彩を映さない瞳が細められ、微笑む。
ヤバイ。何がヤバイか分からない程、ヤバイ。
甘い匂いの所為で頭がまともに回らない。ジャラジャラと鳴る鎖とソレに当たるパイプが高い音を鳴らす。
「ダメだよ、暴れちゃ」
「放せ」
「嫌だよ。せっかく一緒にいれるんだから、もっと楽しもう?」
頬を撫でられ、口を合わされる。
下唇を甘噛みされ、ヌルリと歯の上を熱い何かが這う。
顔を少し離したすずかさんは不満顔。
「嫌?」
「嫌だ」
嘘である。それこそ常識を疑うような事をされている事を許容出来るほど、彼女は美人なのだ。
俺とて男なのだ。意地ぐらいある。
ふーん、と唸ったすずかさんの手が俺の下腹部を撫でる。其処には俺の意地とは裏腹に本音をこれでもかと意思表示している剛直があった。
「
細い指が剛直を握り上下する。親指が鈴口を撫で思わず声が出そうになる。
そんな事もお見通しと言わんばかりにすずかさんの笑みが深くなる。
「もっと気持ちいい顔を見せて。私だけに見せて」
早くなる手。すずかさんの息も荒くなり、甘い吐息が俺に掛かる。押し付けられる快楽が溜まっていく。
下腹部に熱が溜まり、放出される前に手が放された。
「あ……」
「ふふ、残念。手でもいいけれど、コッチで、ね?」
すずかさんが半身を起こす。
大きな乳房は垂れる事もなくその存在を主張しており、透き通るような白い肌が少し上気している。括れた腹と俺の上に乗せられている尻肉。
見惚れた。息を飲み込んだ。手が自由だったならば抑える事なんて考えれない程美しく、同時に汚したくもなった。
俺の視線に満足したようにクスリと笑ったすずかさんは俺の胸に手を付いて腰を浮かせる。
左手で剛直を上に向かせて入り口に触れさせる。
「じゃあ、入れるね?」
ゆっくりと剛直が飲み込まれていく。熱い柔肉が剛直に纏わりつき擦れる。
すずかさんがしっかりと俺の腰に座った。同時にソレは俺を全て飲み込んだという事になる。
すずかさんは瞼を閉じて何かを耐えるように顎を引いて、止まっていた息を熱っぽく吐き出した。
「イッちゃった……」
嬉しい事のように報告をした彼女は微笑んでおり、ソレを証明するように剛直を包んでいる柔肉がキュゥ、と締め付けている。
歯を食いしばり、吐き出しそうな熱を耐える。
そんな頑張りを無駄にするように、彼女は笑い、腰を動かす。
柔肉がカリ首を引っかき、強烈な快楽を叩き付けて来る。寸止めの影響もあり、熱が容易く吐き出された。
「んっ! ッきたぁ」
吐き出された熱を待っていた様に彼女は震え、笑みを浮かべる。
搾り取るように柔肉が蠢き、吐き出したはずの熱が再度補填されていく。
「ねぇ、もっと頂戴?」
女神の肢体でありながら妖艶に微笑んだ彼女がまた腰を動かす。
絶頂を味わったばかりの剛直に更に快楽が押し付けられていく。
「もっと、もっと」
顔を寄せて唇が合わさる。熱い舌が俺の舌を捕らえ、甘い唾液が俺に止め処なく送られる。
淫猥な水音が鼓膜を揺らし、彼女の鼻息が触れる。
口を放した彼女をぼうっと見つめているとすずかさんはやはり微笑んで、俺に耳打ちをする。
「もっと、私と一緒に堕ちよ?」
熱い息が首に当たり、小さな痛み、そして意味の分からない巨大な快楽が俺を襲った。
そこから先の記憶は俺には無い。ただ、目が覚めて俺の上にはすずかさんが居た。
正しく俺は彼女のモノになったのだろう。同時に彼女は俺のモノになった……と思いたい。
一つだけ息を吐き出して、また甘い香りを吸い込む。
もぞりと紫髪が揺れた。
「おはよう」
「おはよう、すずかさん」
すずかさんと一緒なら、堕落しても怖くはない。そんな事を考えながら、俺はどうにか拘束を解いてくれるようにすずかさんにお願いするのであった。
人物設定
アナタ
二十歳の男性。よく分からずに月村すずかさんに攫われた被害者。
月村すずか
二十歳の女性。アナタを攫った人。美人さん。何処か病んでる
時系列
JS事件終了後
コンセプト、『退廃的なエロス』
裏で練ってた設定(本文とは関係ないけど、見た後だと「ふーん」と言いたくなる程度に)
アナタ:なのはさんと同時期に魔導士として覚醒した少年。なのはさんとは別のクラス。魔導士としての適正はなのはさん以下ではあったけれど、適応・学習能力が以上な程高い。
小学校卒業後は魔導士として管理局へと入り、特定の誰かではなく不特定多数を守る為に忙殺される。
仕事量から相応の評価を得ており、ある程度の地位を与えられるも辞退している。
八神はやて含む三人娘に頼まれ、内敵の抑止力の為に機動六課に籍を置いていた。教導などは不参加で別の任務を優先していた。
六課に入ってから少しして、月村すずかとの交際を開始。交際、と言っても正義の味方であったアナタは不特定多数の為に動いていた。
そんな無理が祟り、JS事件終盤に撃墜されて大怪我を負ってしまう。
治療中。すずかの一案でアナタを管理局から匿うことを決定し、治療の事もありミッドチルダ近辺に一室借りてそこに半軟禁が決定する。
目が覚めたアナタは記憶を失っているが、その記憶を失っている事すらも分からずに話が始まる。
すずかさん:女神。
アナタは記憶喪失も関係なしにすっかり忘れているが実はすずかさんを助けていたりした。そこからの一目惚れで何度かアプローチもしてみたが、特定の誰かにしたくない為にアナタはソレを気付かないようにしていた。
六課設立後、三人娘とアリサさんに背中を押されてようやく告白に行き着いた。
正義の味方をしているアナタを支える事を決意しようとしている時にアナタが撃墜されたと知らされて数日程自暴自棄になっていたり。
アナタを独り占め出来る計画を即座に練り、それらしい理由を並べ立ててアナタを軟禁する事に成功。
けれど記憶を失っている事に気付いたすずかさんは頭を回転させて、アナタとの繋がりを必死に求める話。
添える程度の解説
>>「昨日は……すごかったね」
自慰だったりする。
>>「正確に言うと、八年と~」
マジ。
>>引っ掛かりを覚える
記憶喪失の記憶
>>縛られている理由
趣味
アトガキ
ハジメマシテ、猫毛です。
最初に言い訳をば。
挿入前に素股とか尻コキとか考えてたけど、気付いたら早漏になってました。どうせ全部寸止めになって気が狂いそうになるだけだったので……。
構想の最初、それこそアナタが目が覚めて三行程までの設定は
「一ヶ月程度で記憶喪失になる」
という設定でした。まあ、それですずかさんが毎月アナタを落とすというご褒美的なものを書く予定だったのですが、書いているとアナタが物凄く変わってしまったので……。設定を練りながらカリカリしてました。
退廃的、というか、完全に堕落に堕ちる瞬間ですね。まあ、設定読んでからだと正義の味方の陥落なので中々にステキなんですが。