やはり、私の青春ラブコメがまちがっているはずがない。 作:夏ノ雪
1 幼馴染
俺の名前は代々木はじめ。
俺の幼馴染に由比ヶ浜結衣という女がいる。
彼女とは幼稚園から一緒だった。
幼少の頃の彼女はとにかく元気で、俺はいっつも彼女と一緒にいた。
彼女が公園に行きたいと言えば、俺がスコップとバケツを持っていく。
駄菓子屋に行きたいと言えば、俺が母に頼んでお金をもっていく。
俺は危なっかしい彼女の後ろをいつもついていった。
理由は分からない。
馬鹿なくせにいつも元気な彼女に憧れていたのかもしれない。
時よりみせる弱さに守ってあげたくなる何かがあったのかもしれない。
彼女は誰でにでも優しかった。
俺が嫌いな奴にも。
何故皆にやさしく、人気があった彼女が俺といてくれたのかは分からない。
ある日、彼女が大きな犬に吠えられてあたふたしていた。
顔には涙を浮かべて、ぶるぶると震えていた。
俺は犬の前に飛び出て犬を殴った。
だが、そのへなちょこパンチは犬に華麗に躱されて逆に噛みつかれた。
俺は簡単にやられた。
人間だけど犬に負けた。
血は苦手だ。
俺はその苦手な血にまみれていた。
その後、犬の飼い主が来て慌てて俺を病院に送っていった。
俺は泣かなかった。
泣くほど痛かった。
だが隣で結衣が泣いているので俺は泣けなかった。
本当は今すぐ泣きたかった。
「はじめちゃんが食べられちゃったよ~」
馬鹿みたいに泣き続けた結衣はずっと俺の傍にいた。
幸い大事に至らなかった。
俺の右腕には、今でもその傷跡がうっすらと見える。
俺と彼女のそんな関係が変化したの小学校の高学年になってからだ。
2人で登下校しているとよく友達にからかわれた。
だが俺はそのことはあまり気にしなかった。
結衣も笑ってごまかしていた。
俺と結衣はかわらない日常を送っていた。
中学にあがると男女の制服の違いもあってか、さすがに少し距離をあけるようになった。
いつも元気に動き回るため、結衣にはスカートのイメージは無かった。
セーラー服に身を包んだ結衣は、ちょっといつもの結衣と違った。
だが、相変わらず結衣は馬鹿のままだった。
でも俺たちの関係は続いていた。
そして高校。
俺は彼女と一緒の高校に進学した。
クラスが違うせいか中々合う事は少なかった。
馬鹿だと思っていた結衣は何故だか勉強はできた。
よく分からない結衣だが、この点が一番よく分からない。
偶々彼女のクラスを通りかかった所、結衣がある男子に話しかけていた。
名前の知らない男だ。
結衣は周りに気を使う奴だ。
困っている奴をほっておけない。
それに誰にでも気軽に話しかけるから男子からの人気も高い。
だからその時、俺はそれほど気にしなかった。
だが、結衣がその男に話しかけている姿をたびたび見かけた。
俺は何か気になって男の事を調べた。
奴の名前は比企谷八幡。
目が死んでいる事以外には特に特徴のない男だ。
奴は俺と少し似た感じを受ける。
世間に斜に構え、何かあきらめているような男。
だが、完全には諦めきれずに期待している。
そんな感じがする。
俺が奴に抱いた感想は、そんなものだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
放課後。
「結衣」
人気がない廊下で俺は結衣に話しかける。
小さい頃から結衣と呼んでいる。
小学校まではよく彼女の家に遊びにいっていた。
苗字で読むと結衣の母と混同してしまうので、自然と結衣と呼ぶようになった。
「はじめ」
結衣が俺の名前を呼ぶ。
「よぉ」
学校で話すのは久しぶりだ。
特に話さないと決めているわけではないが、なんとなく人前で話すのは避けていた。
「どうしたの?」
結衣は最初少し戸惑った顔をしたが、すぐに笑顔になる。
「悪いな学校で話しかけて」
「え、別に悪くないよ。そんなこと」
「そうか、これ、うちの母さんがお前の母さんに渡してくれって。ちょっとこれから用事があって、学校で澄ましたかったんだ」
俺は封筒を渡す。
「そうなの。分かった。なんだろね、これ?」
結衣は封筒を受け取る。
「分からん、いつもの映画のチケットとかそんなんじゃないか?」
「そうかもね。内のおかんとはじめの母親、仲いいからね」
「まぁ、多分そんなとこだよ。じゃあな」
「うん、ありがと。それじゃあね」
俺は廊下を後にする。
久しぶりにあった結衣は前とは違った匂いがした。
甘いというか、なんだろう。
とても魅力的な何かだった。
これまで意識したことがなかったが、胸も大きなっているようだった。