※この作品はR-18です。

やはり、私の青春ラブコメがまちがっているはずがない。   作:夏ノ雪

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3 こ、これはパジャマよ

数日後。

 

あの日から僕は雪乃を意識するようになった。

ただの幼馴染の少女だった彼女。

それが女性になった。

 

そして同時に心がどこか焦っていた。

何故だか分からないが、依然の僕とどこか変わったように思えた。

どこが変わったのかは分からない。

 

僕は女性にもてる。

それは誇張ではなく事実だ。

彼女たちにいい寄られることもよくある。

だが、僕は彼女たちに興味を持つことができなかった。

勿論女性には興味がある。

でも、それは基本的な女性への興味だった。

どの女性にも等しく感じる興味。

 

だがあの日、僕は雪乃に特別なものを感じた。

あれは何だったのだろう。

雪乃の中に陽乃さんをみたからかもしれない。

僕が憧れているその人、雪乃の姉、雪ノ下陽乃さんを。

 

ただ、分かることがある。

僕の心は揺れていた。

そう、揺れていた。

 

 

◆◇◆◇

 

 

街のケーキ屋。

 

先日雪乃と来た店だ。

今もこうして僕は、雪乃とテーブル越しに向かい合っている。

あの時と同じ席に。

街路からよく見えるその特別な席に。

 

店にくると、前と同じ茶髪の女性店員にこの席へと案内された。

今度は案内表に名前を書く前に連行された。

目があった瞬間だ。

席につく際に聞いたのだが、何でも僕たち目当てにこの店に来る人がいるようで、店の収入に貢献しているらしい。

その話がどこまで本気か分からないが、僕たちは再びその席に着いた。

 

「これ、ありがとう」

 

僕は雪乃に袋を渡す。

世界的なスポーツメーカーのロゴが印字されている袋を。

あの日借りたジャージとトレーナーだ。

雪乃は受け取り、袋の中を見る。

そして、ふと一瞬目を閉じる。

 

「別にクリーニングにださなくてもよかったのに」

「他に出すものがあったから、ただのついでだよ」

「そう・・・」

 

そして雪乃も袋を僕に渡す。

有名アパレルメーカーが印字されたその袋を。

僕は中を確認する。

あの日の僕の濡れた服だ。

やっぱりか。

 

「雪乃ちゃんこそ、別にクリーニングにださなくてもよかったのに」

「私にも他に出すものがあったから、ついでよ」

「そうか」

 

僕たちは紅茶を飲む。

 

その時、窓の外に見知った姿が映る。

あの興味深い男。

世の中に斜に構えているような男。

日企谷八幡の姿が。

 

僕の目線を追って、雪乃もそれに気づく。

だが、その視線の先にいるのは八幡だけではない。

その隣に見知らぬ女子生徒がいる。

同じ高校の制服を着ている女子生徒。

そして・・・

彼と彼女は手を繋いでいる。

まるで、彼氏と彼女の様に。

 

「比企谷君には彼女がいるみたいだね」

 

僕はそう口にする。

見たままを口にする。

その光景を口にする。

 

雪乃は僕の言葉を聞いているか分からない。

視線の先をずっと見ている。

何かにとらわれたのか。

ずっと見ている。

比企谷君とその隣の少女の姿を。

あの雨の日、僕が雪乃の姿に見惚れていたかのように。

珍しく彼女のその顔には、驚きの表情が見て取れる。

普段決して見せることがない素の表情。

それを僕の前で見せている。

 

驚きと悲しみ、それが合わさったような複雑な表情を。

僕はその表情に魅力された。

その姿が僕の心を満たす。

 

すると、視線の先で比企谷君とその少女がこちらを見ている。

彼女が僕らの方向を向いて指をさしている。

何やら少女が比企谷君にいっているようだ。

彼ははじめ、消極的に否定的な動作をしていた。

だが、彼女の勢いに負けたのか、二人はこちらに歩いてくる。

 

 

◆◇◆◇

 

 

店内。

 

迷わず僕たちのテーブルに近寄ってくる一組の男女。

先頭に女子生徒。

後ろに比企谷君。

比企谷君は、彼女に無理やりつれてこられたというオーラが出ている。

それを隠そうともしない。

だが明確に反対もしない。

その姿が彼らしい。

 

「葉山先輩、私たちも一緒にいいですか?」

 

女子生徒が僕にいう。

僕は雪ノ下の顔を見る。

彼女も僕の目を見る。

彼女は何の動作も見せない。

 

「もちろんだよ。雪乃ちゃんもいいかな?」

「ええ、かまわないわ」

 

そして僕の隣に比企谷君。

雪乃の隣にその少女が座る。

全員が席に着いた所を見計らって僕は声を出す。

 

「初対面の人もいるし、一応自己紹介しようか。僕の事は皆知っているから省くよ。

彼女は同級生の雪ノ下雪乃さん。こちらは一色いろはさん。サッカー部のマネージャーだよ」

 

僕は言葉を話ながら、手振りで紹介する。

その言葉を聞き、

 

「どうも」

「こちらこそ」

 

雪乃と一色の二人は、共に挨拶をまじわす。

雪乃に比べると劣るが、一色も十分魅力的だ。

彼女は美しいというより、かわいさがある。

由比ヶ浜さんとは違ったかわいさだ。

 

「それにしても感激です。雪ノ下先輩に会えるなんて」

 

一色が雪乃の方を見ながらいう。

その顔は笑顔、そして元気一杯だ。

 

「そんなことないわ。私も・・・合えて嬉しいわ」

 

一色にほめるべき所がなかったのか、言葉を濁す雪乃。

何か落ち着かない表情をしている。

あまりこういう娘になれていないのか。

由比ヶ浜と仲が良いわりには不思議だ。

 

「ですよね~。先輩といっしょにいたら葉山先輩見つけて、すぐ来ちゃいましたよ」

「そう。すぐね・・・」

 

雪乃と一色は合わなさそうだ。

雪乃は僅かに目線を逸らしている。

 

「そういえば比企谷君たちも注文しないか」

「そうですね」

 

そうして時は流れていく。

 

 

◆◇◆◇

 

 

「あれ?これなんですか?」

 

一色が雪乃の隣に置いている袋について質問する。

それは僕が雪乃に返した服が入っている袋。

スポーツメーカーのロゴが印字されたそれ。

 

「これはただの服よ」

「そうなんですか~。なんか意外です。雪ノ下先輩がそんな袋を使っているなんて。見せてくださいよ。私、先輩の私服とか超気になります」

 

そういって雪乃の返事を聞かずに袋を開ける一色。

その動作が素早い。

 

「ちょ、ちょっと」

 

慌てる雪乃だが遅い。

一色は服を取り出す。

それはトレーナーとジャージ。

 

「こ、これはパジャマよ」

 

恥ずかしいのか、とっさにそう答える雪乃。

珍しく言葉を詰まらせている。

すぐに服を取り返して袋にしまう。

 

この様子に、隣の比企谷君も驚いているようだ。

いや、一色の様子に驚いているのかもしれないが。

 

「すいません。つい先走ってしまって・・・。あれ、葉山先輩の隣にあるおしゃれな袋なんですか?」

 

とっさにその袋をとる一色。

 

「まて」

 

そう言おうと思ったが遅かった。

一色は袋をとり、中から僕のトランクスを出す。

僕はすぐに袋を取り返す。

 

「すみません」

 

彼女は顔を赤くして謝る。

急にしおらしくなる少女。

先程の勢いが一気に失われる。

 

「別にいいよ、洗濯済だから」

 

僕は落ち着いた声でそういう。

だが、一色がふと顔をあける。

 

「あれ?でもなんで二人ともそんな服持ってるんですか?それに、雪ノ下先輩の袋は葉山先輩がもってそうなもので、葉山先輩がもっている袋は・・・」

 

僕と雪乃の表情が凍る。

場に緊張が走る。

そんな彼女をみかねたのか、

 

「悪い、俺もういくわ」

 

それまで黙っていた比企谷君がその場を後にする。

その光景に慌てる美波。

 

「ちょ、せんぱ~い、待って下さいよ。あの・・・・すみませんでした」

 

そういって頭を下げて出ていく二人。

まるで嵐のようだった。

残された僕と雪乃。

 

「その、あれなんだ・・・・・。一色は良い娘なんだ。決して悪い子じゃないんだ。ちょっと自我が強いだけで・・・」

「そのようね」

 

雪乃は小さく呟く。

 

◆◇◆◇

 

 

その後、僕たちは何気ない会話をしながらケーキを食べた。

雪乃はどこか落ち着かないようで、始終落ち着きがなかった。

そんな雪乃は珍しく、その姿は僕の心をくすぐった。

彼女の心の揺れが、僕の心をくすぐる。

それが僕のどこか満たされない心を満たしていく。

周りの人々の期待に応えることで、心を満たしてきた僕だけど、今は違った。

この高揚感はなんなのか。

彼女の姿が僕の心を満たしていく。

何故だか分からない。

でも、それは心地よかった。

僕はそれに手を伸ばしていた。

 

痛!

 

すると僅かに頭痛がした。

僕はその痛みで平静に戻った。

 

僕たちはケーキ屋を後にした。

今回も会計時にクーポン券がもらえた。

今回も雪乃の分の会計は僕が払った。

彼女は前回ほど抵抗しなかった。

2回目ということもあるが、今の彼女の精神状態では会計にまで頭が回らなかったのだろう。

 

驚いた事に、比企谷と一色さんは自分たちの料金を払っていたらしい。

あのドタバタの中払っていたらしい。

僕は比企谷君をまた見直した。




本作と関係ないですが、今日はサッカー観戦行ってきます。
次話は時間通りに投稿しますのでご安心を。

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20150503 誤字脱字修正
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