※この作品はR-18です。

やはり、私の青春ラブコメがまちがっているはずがない。   作:夏ノ雪

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ここから由比ヶ浜結衣視点になります。


5 由比ヶ浜結衣

私の名前は由比ヶ浜結衣。

高校1年生の女子高生。

昨日、ちょっと、その、口ではいいにくいことが起きた。

満員電車の中で、エッチな出来事にあった。

 

でも、違うの。

痴漢とかじゃなくて、私の事を守ってしてくれたことで。

悪い事じゃないの。

ぜんぜん。

その、そう、悪気があったわけじゃないの。

本当に。

 

ただの生理反応。

意識したことがないけど、はじめも男の子なんだから、あれぐらい当然。

寧ろ私が悪いの。

上手くごまかせなくて。

そう、私が。

 

帰り道では変な別れ方になっちゃったけど、はじめ、気にしてないかな。

気まずくでよく顔を見れなかったけど、その、つらそうだった。

とてもつらそうだった。

あんな雰囲気のはじめ、久しぶりに見た。

昔私の家に来て遊んでいた、小さい頃以来だ。

気にしてないかな?

自然と心が沈む。

 

だめ。

 

だめ。

 

私がこんな沈んでたらだめ。

明日からはいつも通り、いつも通り。

はじめにあったら、笑顔でいつも通り挨拶しよ。

笑顔で。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

次の日。

3時間目の終わり。

 

職員室にプリントを提出しにいった帰り道。

廊下で思いがけずはじめとあった。

私の幼馴染のはじめ。

小さい頃はいつも一緒にいたはじめ。

頼りなさそうな見えるけど、私が困っているといつも助けてくれたはじめ。

あれから昨日は寝れず、ついはじめのことを考えてしまった。

私の記憶の中のはじめは幼く、いつも困った顔をしながらいつも私の傍にいた。

時よりみせる笑顔がとてもかわいかった。

私はその笑顔がみたくて、はじめによくちょっかいをかけていた。

 

「はじめ、おはよう」

 

私はいつも通り挨拶する。

そう、いつもと同じように。

昨日、なにもなかったような雰囲気で。

だが、私ははじめを凝視してしまう。

 

幼さは残すが、どこか男を感じさせる雰囲気がある。

私の頭の中のはじめとは違うはじめ。

全体的に幼さが残る顔つきだけど、顎やひたいなど、所々男らしさを感じる。

私の目に映るはじめは昨日とは違った。

小さい頃一緒に遊んでいたはじめではなく、高校生になったはじめ。

なつかしさと新しさを同時に感じ、なにやら心がほっと温かくなる。

 

「おはよう」

 

はじめが返事をする。

小さい頃の様に、高い声なのに暗さを感じさせるそれではなく、落ち着いた声。

男を感じさせるその声。

その声で私ははっとする。

数秒間意識がない。

はじめに見惚れていたのだ。

 

私がはじめに・・・・

 

その事実に私の心は焦る。

なんで私が。

昨日まで何もなかったのに。

私はとっさに顔が赤くなる。

 

・・・・・・・・・

 

学校の喧騒の中、ここにだけ生まれる沈黙。

まるでここの空間だけ切り取られて別の次元に送られたように。

昨日までには生まれなかった沈黙。

 

何か言わなきゃ。

 

何か言わなきゃ。

 

そうじゃないと私、昨日の事を気にしてるみたいじゃん。

昨日の夜、決心したんだし。

いつも通り、いつも通り。

 

「俺、いそいでるんだ」

 

私が口を開く前に、はじめが声を出してその場を後にする。

いつものように私を守って。

私は心が沈む。

こんなことじゃだめ。

いつまでもはじめに守ってもらってちゃ。

私はすぐにその後を追う。

はじめは既に角を曲がっていた。

 

急がなきゃ。

 

急がなきゃ。

 

私は走りだす。

心に急かされて走り出す。

だが角を回った先にはじめの姿はもうなかった。

 

やっちゃった。

 

また、やっちゃった。

あれだけ昨日心に決めてたのに。

そう沈んでいると、

 

「こんなところで立ち止まってどうしたの?」

 

その声は高くどこか威厳を感じさせる私の好きな声。

私の憧れる雪ノ下雪乃の声。

 

「あ、ゆきのん。別に、なんでもないの」

「そう、それならよかったわ。さっき走っている男子生徒とぶつかりそうになったわ。ここは幼稚園ではなく高校だというのに・・・・あなたも注意した方がいいわよ」

 

そうしてさっていくゆきのん。

私は彼女の後ろ姿は見送る。

彼女はいつも自信に満ち溢れ、落ちついている。

私にはできないことを常に実践している。

そんなゆきのん姿は、さらに私をみじめにさせた。

 

だめ。

 

こんな落ち込んじゃダメ。

 

ほら笑顔。

笑顔にならなくちゃ。

はやく教室に戻ろ。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

それから数日、はじめと話す機会がなかった。

だがはじめの姿を見つけるたびに自然と目で追っていた。

つまらなそうに歩くはじめ。

友達と何やら笑い合っているはじめ。

どれも私がみた事がないはじめだった。

あんな風に歩いて、あんな風に笑うんだ。

それのどれもが新鮮だった。

私はいつも通りの日常を送った。

 

クラスでは仲の良いグループと、放課後はヒッキーやゆきのんと時間を過ごす。

私はひそかにヒッキーに恋心を抱いていた。

彼は無愛想に見えるがとても優しい。

変な事をいう事も多いけど、色々考えてみんなのためになることをしてくれる。

そんな彼の姿に私は憧れを抱いていたのかもしれない。

私はつい人の顔を伺ってもじもじしてしまう。

だけどヒッキーは、そんなこと気にせず、ずばりと言いたい事をいう。

私にはできない。

 

でも、私の思いはヒッキーに伝えていない。

私はヒッキーに恋心を抱いている。

でも、私が憧れているゆきのんも、ヒッキーに恋心を抱いているような気がする。

それは気がするだけ。

直接聞いたわけじゃない。

そんな怖い事、私にはできない。

私にできるのは人の顔を伺うことぐらい。

私が憧れているゆきのんと、好意を抱いているヒッキー。

もしゆきのんがヒッキーのことを好きなら、私は邪魔ものだ。

 

彼女より私は劣っている。

彼女に勝てるはずがない。

ヒッキーを幸せにできるのは彼女だ。

私は何もできない。

だから何もしない。

私は今の3人の関係を壊したくない。

そんな後ろ向きな考えが私の行動を縛る。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

ある日。

とある光景に目を奪われる。

ゆきのんとはじめが廊下で二人きりで話していた。

その光景は私の心にひんやりしたものを与えた。

まるで冷水が心の中に流し込まれたように。

はじめは恥ずかしそうに笑い、ゆきのんも珍しく表情が柔らかい。

 

なんで?

 

なんで二人が一緒にいるの?

 

なんで?

 

私の頭の中に同じ疑問が何度も浮かび上がる。

ゆきのんが何やら言い、小袋をはじめに渡す。

はじめはそれをうけとり中を見る。

はじめの表情がさらに柔らかくなる。

私の心はさらに冷たくなる。

 

何渡しの?

 

ゆきのん。

 

はじめの口が開く。

何かいったのであろう。

普段のあまり表情をかえないゆきのんが、ふと頬を緩ませる。

 

え?

 

ゆきのんが笑った?

 

あのゆきのんが。

 

なんで?

 

なんで?

 

そして二人は二言三言会話をしてその場を後にする。

私は暫らく動けなかった。

 

なんで?

 

なんで私はこんなショックを受けてるのだろう。

 

ゆきのんは友達。

はじめは幼馴染。

別に二人が話していても問題ないはずだ。

ゆきのんは友達で、憧れの人。

はじめは幼馴染で、いつも私を守ってくれる人。

 

私は・・・・・

 

私は何だろう?

 

私は・・

 

その日、私は部活を休んだ。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

次の日。

部室。

 

部屋の中には、私とゆきのん。

私はそっとゆきのんを見る。

いつも通り、ゆきのんは紅茶を飲みながら読書している。

とても絵になり綺麗だ。

私ならああはならない。

私はタイミングをまっていた。

昨日見た光景の理由をさぐる機会を。

 

あれから私は家で考えた。

ゆきのんとはじめ、二人に共通するのは私だ。

だから私に関係する何かを話していたのかも。

そうだ、きっとそうだ。

だから数日もすればどちらかが話してくれるかも。

だから私はそれを待っていた。

 

だが、その機会はこない。

いつも通りゆきのんと何気ない世間話をするけど、その話は出ない。

好きなお菓子や音楽は聞けるのに、昨日の事については聞けない。

はじめのクラスの話をしてみるも、何の反応もない。

そのあまりの何もなさに、わたしは徐々に不安になる。

なんで何もいってくれないの。

その事実は、私にいいようのないしこりを残した。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

京都への修学旅行。

学校の一大イベントの一つ。

私は日常を忘れて楽しんだ。

だが、その最後は気持ちいいものではなかった。

ヒッキーが、私が恋心を抱いているヒッキーが、目の前で私の友達に告白した。

 

そう、目の前で。

 

それで彼は振られた。

ヒッキーが本気で私の友達に告白したのではないことは分かっている。

彼は、私がクラスで仲良くしている6人の男女グループの関係を壊さないために、わざと告白したのだ。

彼らの内の一人に依頼されて。

私たち全員が依頼されたのに、彼は一人で解決した。

そう、彼は自分を犠牲にして他人を救った。

私たちに頼らず、自分を犠牲にして。

 

だが、私の心には大きな喪失感があった。

ヒッキーが他の女の子に告白した。

その事実が私の心を強くにぎりしめた。

 

なんで?

 

なんで私はこんなに動揺したの?

 

考えても分からなかったけど、ひどく私は動揺していた。

その際に、ゆきのんは彼に言った。

 

「あなたのやりかた嫌いだわ」

 

私もそう思っていた。

だけど私は言えなかった。

本当は私が言いたかったセリフ。

そのセリフを私とヒッキーの前でゆきのんは言った。

そして去った。

その事がさらに私を苦しめる。

 

あ、ゆきのんもやっぱりヒッキーのことを・・・・

ゆきのんは私とヒッキーの前で思いを口にした。

私は・・・

 

心がぐちゃぐちゃになりながらも私はヒッキーと歩いた。

そして、

私も思いを口にした。

 

「こういうのなしね」 「ああいうのやだ」

 

ゆきのんがいない場所。

 

二人きりで。

 

私は卑怯だ。

でも、口に出さずにはいられなかった。

心がぐちゃぐちゃになっていた。

吐き出さずにはいられなった。

私はやっぱり卑怯だ。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

修学旅行後。

私は沈んでいた。

私はヒッキーの力になれない。

私は友達のゆきのんに隠れて、ヒッキーに思いを口にした卑怯者。

ゆきのんは私より美人だし、頭もいいし、性格もいい。

ゆきのんは、はじめとも仲がよい。

はじめは私をいつも守ってくれた。

でも、ゆきのんははじめとも仲が良い。

私は何もない。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

笑顔でいつものように日常を送りながらも、私は混乱していた。

そして、知らず知らず、追いすがるようにはじめの姿を目で追っていた。

彼の一挙一動を目に焼き付けていた。

彼と他の女子が話していると心が痛んだ。

なんでこんなに痛いのか。

分からない。

私はヒッキーが好きなはず。

なんではじめに・・・・・




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