精神的な疲労なのか、それとも体力の消耗なのか、柊馬彩里は気を失っていた。目を開けるとそこは物理の法則など何もない虚無の空間、まるで世界の終わりの中心地のようである。
重力の縛りを解かれ浮かび上がる体とは対極的に、その身は意のままに動けない。まるで狗星の力で押しつぶされ、そのまま空に固定されたかのような感覚を覚える。
なすがままに浮かび上がる周囲の建物は崩れていき、それは自分の衣服も例外ではない。ボロボロと崩れていく布地は肌を微かに擽り、そんなことを考える余裕などないはずなのにムズムズと違和感を覚える。
羽毛で体中を擽られるかのような淡い刺激はくすぐったいを通り越して別の感覚を掘り起こす。
「ん……ん! ン!」
彩里は悶える。もしこの場に誰かいたら恥ずかしくて仕方がない程に悶え苦しみ顔は赤面する。刺激を受けた全身が紅潮し唇も乳首も張り裂けんばかりに血が巡る。充血し勃起する陰核などは触ればコリコリと音を立てそうなほどである。
「誰か! 助けて」
助けを求める声は音にならない。ただか細く吐く息が漏れる空気の音だけである。
衣服が崩れると灼熱の業火にも感じる熱が襲い掛かり、火照る体は汗だけでなく愛液までも濡らす。
崩れゆきついに握り拳大の破片へと砕かれたコンクリートを横目に、なぜ自分はこんな目に逢っているのだろうかと自問するほどである。だが彼女に答えは見つからない。不幸としか思えない。
知らない間に世界の終わりが訪れていようなど、知る術もない。
「まるで世界の終わりね……だったら助けなさいよ、バカ甲兵」
燃え盛る業火が快楽を超えて苦痛を迎え初め、ついに世界の終わりかと観念した彩里はふと呟く。
「ああ、だから助けに来たぜ」
「え……」
彩里は思いもしなかった。ダメで元々、死ぬ間際の最後の言葉のつもりであった。だがその言葉一つで世界は変わる。
上空より飛来したガントライザーの両手に包まれた彩里にはもう苦しみなど無い。あの業火の苦しみは嘘のように引いていた。
「大丈夫か?」
「ええ、ありがと……って、なんでアンタは裸なのよ」
「俺だって知らねえよ。そういう彩里だって素っ裸じゃねえか」
「それは……」
苦しみから解放された彩里は言われて初めて甲兵に裸を晒していたことに気が付く。
咄嗟に胸元を腕で隠すが、それ以上に甲兵までも裸であることを気にしてしまう。
大人の、体の大きな式神使いほどではないにしても鍛えられた彼の体は筋肉が詰まっており逞しさを醸し出している。さらに気になったのはその股間の一物、皮がむけてむき出しとなったピンク色の亀頭は張り詰め、うっすらと粘液で濡れている。竿も充血して固くなっており、長さは約十五センチほどであろうか。
初めて見た勃起した肉棒に彩里の眼は釘付けになる。まして甲兵のことは常々意識しているのだからなおさらである。
「ところで、それはアタシの裸を見てそうなったの?」
「え?!」
甲兵も言われて気が付いたようでガチガチに固くなった股間を思わず隠す。
童貞と処女の二人が裸で対面したからか、妙な空気が二人の間に流れる。
その均衡を彩里は破る。
「助けてくれたご褒美に、それ、何とかしてあげるわよ」
彩里は自分でも何を思ったのかと思いながら甲兵の手を払いのけ、張り裂けんばかりの亀頭を咥えた。汗なのか、ほんのりと塩の味がする肉棒はしゃぶりだすと止まらない。不思議な味覚が彩里の思考を肉欲で支配する。
「バカ、俺は!」
「いっつも千早ちゃん千早ちゃんとうるさいわよ。たまにはアタシの事もみなさいよ」
千早への操のつもりなのか腰が引ける甲兵をなじる。罵倒と文句が入り混じる言葉は肉棒をしゃぶりながらであることを忘れていたため竿を甘噛みしてしまう。
だがそれが運よく絶妙な刺激になったのか、尿道を刺激された甲兵が果てるまでの時を早める。
「それ以上は、やめ!」
やめろと言い切ろうとしたが、それを射精は待たなかった。アンコントローラブルな青い性欲は勢いよく溢れ出し、白濁液が彩里の口の中を染め上げる。
苦み走った不思議な味が口いっぱいに広がり、粘り気が喉に絡み咳き込ませる。
先ほどの妙な体験の影響もあってか彩里の体は準備万全である。肉壺は密で満たされいつでも甲兵を受け入れる用意が整っている。
彩里の行動、そして初めての口内射精でついに甲兵の理性も消し飛ぶ。
「彩里が悪いんだからな。やめてと言っても止まらねえぞ」
「バカ、むしろ望むところよ」
彩里は股を開き、肉壺の入り口を指で広げる。濡れた性器は光に照らされて艶やかに輝き、甲兵の眼を釘付けにする。
入れたいという欲望に駆られた彼にその誘惑を払うことなどできない。
「行くぞ!」
「そう、そのまま入れなさい」
甲兵は亀頭をあてがい、ゆっくりと腰を落とした。
ぬぷぬぷと亀頭は肉壺を進んでいき、膣を押し広げる。
たったの一突きで彩里の膣は甲兵の形を記憶してピタリと密着する。
もっと、もっと、もっと。
そう彩里の体は肉棒を求めてうねる。
「く! 入れただけだってのに」
甲兵はうねる膣のあまりの気持ちよさに悶えて赤面する。その顔を見た彩里は妙な満足感と罪悪感を覚える。
彼と繋がることはうれしいが、千早はどう思うのだろうか。
だが千早が好きなのは開斗であり、甲兵とは甲兵側の一方的なアプローチに過ぎない。
ならば問題なかろう。彼を好きなのはアタシなのだから。
「アンタの好きなように動いて!」
「そうは言っても……彩里の
「好きなだけ
彩里は彼を求め、そして彼もそれに答えた。
三擦半とはよく言ったもので、甲兵は瞬く間に果てた。
ドビュドビュと効果音をつけるにふさわしい程の大量の精液が彩里の膣内に注がれて、おなかをゆらすとたぷんと音がしそうなほどに子宮を満たす。
それでもなお彼の男根は衰えない。さながら彼の式神、ガントライザーのように。
「抜かずにこのまま動くけど、いいか?」
「いいって言っているでしょ」
甲兵は抜かずの二発目を目指し腰を振り始める。
これまで二度の射精で耐性がついたのか今度はすぐには果てない。
まっすぐでがむしゃらな正常位は下から彩里の子宮を押し上げて膣内の精液を子宮内に押し込む。
突かれる快感と擦られる快感が彩里を快楽の奔流に押し込む。
「アンタ、上手じゃない」
「そういう彩里は、上手下手を判断できるほど経験豊富なのかよ」
「そんな訳ないでしょ、バカ」
彩里の全身は痺れ、この心は天に昇る。
これが噂のエクスタシーと言うものかと、彩里は先ほどの天変地異など完全に忘れ去って快楽に溺れていた。
だがどれだけ気持ちよくても彩里は果てない。
小さな死とも揶揄されるエクスタシーの到達点である気絶には何かが足りていないのだ。
「彩里……そろそろまた
「さっきも言ったけど、好きなだけ、いつでも
「でもその前に一ついいか?」
「なに?」
甲兵はそういうと了承を取るより先に彩里の唇を奪った。
思えば彼とはキスなどしたことなかった。
むしろキスより先にセックスに及ぶなど異常ともいえる。
だが重なる唇、絡みつく舌、混ざり合う唾液は足りないピースを埋める。
そうか、これが足りなかったのか。
「ん!」
ディープキスをしたまま甲兵はうめき、そして三度目の射精を迎えた。
唇は彩里の唇を襲い、肉棒は彩里の膣を襲い、胸板は彩里の胸を襲う。
重なり合い全身で包み込まれた彩里はついに小さな死を迎えた。
絶頂を迎えた彩里は再び気を失う。
彩里が目が覚めるとそこは露天風呂の中だった。千早が介抱をしたのか、湯船から引き上げられ、頭には氷袋が乗せられていた。
「もう、心配したんだから」
「あれ……アタシ……」
「お風呂の中で眠っちゃって、そのままのぼせちゃってたのよ」
彩里は先ほどまで見て、感じていたことを思いだして赤面するが、それが湯あたりでないことに気が付くのは本人ばかりである。
あの不思議な体験は夢、それにしては妙に生々しかったなと彩里は感じていた。
胸から腰に掛けられたタオルは湯ではなく蜜で濡れて湿っていた。