気が付くと、真子は見覚えのない部屋で目を覚ましていた。正確には見覚えがない訳ではない。これまでゴミの山となっていた個室が見違えるほどにきれいになっていたのだ。昨日から同居している恭介に訊ねたところ、彼が掃除をしたと聞いて真子は驚く。
「お掃除の続きの前に、ちょっとシャワーだけ浴びてもいいかな」
「どうぞ。僕は先に掃除の続きをしていますので」
朝食を取って一息ついたところで、真子は体に纏わりつく違和感に気が付いてシャワーを浴びることにした。昨夜は疲れ果てて汗もそのままに眠ってしまったのだから、染みついた汗が不快感を誘うのは当然である。
「くっさ……恭介君、嫌じゃなかったかな」
服を脱ぐ最中、シャツの背中やブラジャーに染みた汗を嗅いだ真子は思わずつぶやく。昨夜の時点ではさほどではなかったのだが、一晩開けたことで匂いがきつくなっていたからだ。仮にこの香りを恭介に嗅がせたところでどうなるかは別として、真子は臭いと思われたらどうしようという気持ちが先走る。
まずは体を清めよう。そう思いシャワーで軽く汗を流してからソープに手を伸ばす。
「……真子さん……」
ソープに手を触れた瞬間、何かを求めるような少年の声が耳に届く。驚いた真子はそれに耳を傾けるのだが、すると真子の意識は過去に飛んだ。正確には持ち前のサイコメトリーにも似た力が作用して、眼前に昨晩の光景が広がっている。幽霊のように俯瞰した視線で真子が見下ろすのはシャワーを浴びる恭介の背中である。
シャワーの水音に紛れて確かに聞こえる『ぬちゃ、ぬちゃ』という粘液が擦れるような音。状況に戸惑いながら目を凝らす真子が見たモノは、いきり立つ淫棒を暴れさせる想像も出来ないような恭介の姿であった。
美少女を自負する真子であるが男性経験には薄く当然のように処女である。ましてや年下の男の子が肉欲に溺れる姿などイメージできるわけがない。男のオナニーを初めて見る真子にとってはこの日の恭介はさすがに刺激が強すぎた。困惑と緊張と性的興奮は自身のトランス能力を暴走させ、姿だけではなく匂いまで再現させる。初めて嗅ぐ我慢汁の香りはほんのりと磯の風味を醸し出し、鼻に刺さる刺激は女性器にまで伝わる。
「恭介君……わたしの事を想像しているの?」
幾度も真子の名を叫びながら腰を動かしているのだから、これで気が付かないようでは名探偵の名折れである。異性に異性として意識されていることを自覚したことで、真子もまた恭介を男性として見てしまうのも当然である。自然と右手は股間を触り、中指で溢れ出す愛液を掬いながら入口をなで回す。肉壺から掬い取った愛液をクリトリスに塗り付けて軽くつまむとそれだけで真子は果てそうになる。全身を駆け巡る快感は乳首を勃起させていた。
「……恭介君……」
いつの間にか真子も幻影の中の恭介と同様にその名を呟いていた。眼前の恭介と同様に真子もまた嘉神恭介という一人の少年に惹かれている。これまで恋に恋することはあっても恋そのものをしたことが無い真子にはこの想いがどのようなものかを理解しきれていない。だが震えるような声で自分の名を呟き、一心不乱に腰を振る恭介の姿は真子の母性本能を擽るのには充分である。
暴走する自身の能力が作用したこともあり、性行為の経験が浅い処女である自分以上に恭介少年が性に不慣れであることを真子は察する。さすればお姉さんとしてリードすることは当然であろうという気持ちに胸がいっぱいになっていた。恭介の淫棒がビクンと脈動していよいよ発射寸前になるのと時を同じくして、真子もまたフィニッシュを迎えようとしていた。肉壺の入り口付近を中指で貫きくちゅくちゅと音を立てる。さらに掌はクリトリスを上下に擦り、二点同時の攻めは真子を絶頂させるのに充分な快感を与えた。
「ピクピクしてる……出そうなのね……いいよ、そのまま出して」
「で、出る!」
眼前の恭介は幻のはずであったのだが、まるで意思を疎通させてタイミングを計ったかのように勢いよく白濁液を発射する。自らの陰部を苛めながらその様子を間近で観察していた真子は興奮を通り越して感動してしまう。生命の神秘ともいえる射精の瞬間をまじまじと見つめ、さらに発射された液体は自らの顔や胸に付着したのだから。
今見ている恭介の姿は幻である。だが意識が幻の世界に捕らわれている真子にとっては現実同様にそのいのちの精をしかと感じ取ることが出来ていた。
「ダメ、待って」
眼前の恭介は昨晩の自慰行為を再生する幻に過ぎない。だが真子が幻に介入したことで幻はただの幻影ではなくなった。真子は第二射を放とうとする恭介の魔羅を握りしめる。
「で……で……」
幻の恭介はイケるはずの所でイクことが出来ずに切ない表情を浮かべる。だが相手はしょせんは幻。現実の存在ではないがゆえにその理由まではわからず固まってしまう。
「今度は、お姉さんのお口でぴゅっぴゅしましょうね」
真子はまるで幼子をあやす様に語りかけ、恭介のペニスを咥えた。処女である真子は当然ながらフェラチオの経験など無いが、女性雑誌のセックス特集で予習は済んでいる。単純に亀頭を咥えて舌で舐め回すだけと単調ではあるが、射精を強引に押し留まれた恭介がこれに耐えられる道理はない。
「んぐっ!」
ドビュッ! っという効果音を付けるにふさわしい程の勢いで発射された精液は一気に真子の喉の奥まで注ぎ込まれる。思わず真子はペニスを口から引き抜いてせき込むが、恭介の怒張はまだ収まらない。なにしろ相手は昨夜の恭介を再現した幻である。いくら現実の恭介以上の刺激を受けたと言っても過去を再現する幻である以上は、昨夜の射精三連発を再現しようとするのも当然なのだ。
真子の介入により多少の変更こそくわえられたが、恭介は三発目に向けて股間に性の気を貯め込む。
「セックスは怖いけど……胸ならいいよ」
真子の問いかけに幻であるはずの恭介も頷く。真子は自慢のおっぱいで恭介のペニスを挟み、谷間から顔を出した亀頭を舌で舐める。尿道にたまった先ほどの精液と我慢汁が混じった恥ずかしい液体を真子は飲み込む。その一口だけで真子にオーガスムスを与えるのには充分であった。
「真子さん…真子さん……」
胸の中でピクピクと肉棒が蠢き、いよいよ三発目は発射の準備が完了した。自らも腰を振りながら一心不乱に名を呼ぶ恭介の幻を前に真子も軽い絶頂を繰り返す。
「いいよ……恭介君……そのまま来て……」
腰砕けになる恭介に合わせて真子は体位を変え、仰向けのまま乳房を真上に寄せて下品な言い方をするならば胸マンコを作る。そのまま腰を落とすも尚も腰を振り続けた恭介は現実における昨夜の彼とは比べ物にならない程の快感の渦に巻き込まれ、盛大にいのちの精をまき散らす。
「真子さん!」
叫び声と共に放たれた精液は真子の胸も顔も髪の毛も白濁に染め上げた。
「はあ……はあ……恭介君……す、すごい……」
まさに凄いとしか真子には言い表せなかった。流石に恭介本人にたいしてこのような行動をとったのなら、互いに羞恥心もあり話は違うかもしれない。だが今回の恭介は幻が相手である。昨夜実際にあった自慰に吹ける恭介という過去と、それを見て真子が危惧した色欲に狂う恭介というヴィジョンが結合したことで、予想を超える激しい性行為を繰り広げる恭介が誕生していた。
だがそれもここまで。昨晩の恭介がした射精は三回、ならば三度目の発射の後はただ消えるのみである。
「今の……夢?」
絶頂と共に失神していた真子が目を覚ましたのはそれから五分ほど経ってからだった。先ほどまでの光景は幻であり、当然口の中や上半身を染め上げた白濁液は現実のものではない。だがその快感と匂いは体が覚えている。そして幻の最初に感じたあの感覚は、間違いなく自分の異能のものである。間違えるわけがない。
「いや……あれは『視えた』感覚だわ。と言うことは、恭介君がここでオナニーを……」
真子は推理をしながら、改めてソープに手を伸ばす。よく見れば角に一片の白い塊が付着している。それが証拠であることを、答えを先に見ていた真子は当然気が付く。
「恭介君はえっちなことに免疫がないんだから、わたしが手取り足取り教えないと。知らない女性に誘惑されてそのままズルズルと不健康な関係になってしまったら、お姉さんの落ち度だよ」
真子は誓う。恭介に正しい性の知識を身につけさせようと。そして想う。いかに理屈を述べようとも真子もまた恭介の性の虜になっていると。昨日一緒に住もうと誘った時はそのような邪なことは一切考えていなかった。でも今は違う。それどころか性行為を邪とさえ思っていない。好きになっちゃったのだから、体を求めるのも当然の摂理であると認識しているほどである。
だが真子も処女であり、本番行為に対しては恐怖心の方が勝る。それでもなお、真子は恭介に惹かれていた。
「まずは今晩に向けて準備しないと」
体をきれいに洗った真子は、掃除をする恭介に合流した。
「だいぶ遅かったが、また寝てたか?」
「ええと、まあそんなところ」
真子は白天丸の追及を逃れ、今晩のお楽しみを考えながら拭き掃除に勤しんだ。