※この作品はR-18です。

とある提督が鎮守府に着任しますた   作:へんたいかがくしゃ

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その少女、響

 「何?新鋭の泊地からの応援部隊がこれだと!?」

 

 被弾した音すら忘れてしまうような、聞き捨てならない言葉が聞こえた。

 軍服を羽織った居丈高な少尉は、机に拳を叩きつけ、目の前にいるソレを眺め。

 

 「上層はふざけているのか!?ヤツ等は年端もいかぬ少女を兵器の代わりと言って差し出すのか!?」

 

 『……ああその通りだよ、そもそも武装放棄した「海兵器をと言っているのだ私は!」

 

 電話の向こう側にいるその提督の笑い声が、その少尉の苛立ちを更に募らせた。

 そもそも相手の顔すら知らない海軍少尉だが、これでも武勲は相当にあげてきた。

 世界艦艇演習では上位に食い込むほどにまで武連を積み。

 護衛艦である『いずも』を用い、深海勢力と呼ばれる謎の部隊と交戦していたというのに。

 渡されたのが兵器ではなく、単なる少女だと言われれば、それこそ腹が立つ。

 

 『うっせえおっさんだな……いいか、それを使えば日本側に大きなメリットが得られるんだよ』

 

 電話の向かいに居るのは、自分よりも若い声。

 その相手は敬語すら使うこともせず、また上層の人間にも思えない。

 ただ、打ち上げた暗号を解読し、この回線で秘匿通話している時点で、只者ではない。

 しかし、こちらは海上で交戦中。いきなり空輸でこの少女が送られてきたとなれば。

 それこそ、相手は何らかの巨大な権力を持っているということは把握できる。

 

 「艦長っ!右舷に被弾!このままでは轟沈してしまいます!」

 

 「慌てるな!取り舵20!波の切れ間に注意して主砲を西南西に配置!」

 

 『ハハハ……随分と慌てているな』

 

 「部外者は黙っていろと言ってるんだ!敵の姿の視認は出来たか!?」

 

 「ネガティブ!悪天候のため、敵影の確認が出来ません!」

 

 「ソナー!位置の割り出しは出来たか!?」

 

 「こちらもネガティブ!スコールが強すぎます!」

 

 『ああそうだ、そちらに送った彼女と話をさせてくれ、そちらの状況を聞きたいのでね』

 

 「貴様!?そのためだけにこの少女を!?」

 

 『早く変わってくれないか……?ディナーに遅れてしまいそうなんだ』

 

 「……っ!」

 

 唇が切れるほどにまで歯噛みし、鉄の味が広がることを気にせず、無線機を手渡す。

 配線がショートし、光がほとんど存在していない状況でも、その少女は迷わずその無線機を取り。

 

 「司令官、こちら響、今から交戦した方が良さそうかい?」

 

 『そうだな……そろそろ出撃するべきだろう。失うには惜しい、貴重な人材だからね』

 

 「了解、響、出撃する」

 

 『Желаю удачи……』

 

 そんな調子で通信を終えたかと思えば、先程までの断続的な砲撃が止んでいたが。

 

 「艦長!弾丸の再装填まで20秒!現在、いずもは中破……如何いたしましょう!?」

 

 敗色濃厚となった船上。しかし、引こうとすれば集中砲火を浴びることになるだろう。

 沿岸から300キロ……ここで命運が尽きたかと思われた。

 

 「じゃあ、行ってくるよ」

 

 『ああ、魅せてやれ』

 

 まるでその司令官がその少女の隣に立っているような錯覚を覚えた。

 しかし、その本人はどこかで悠々とこの戦場を眺めているはずだ。

 ……一体、どうする……!?

 

 その少女は間髪入れずに海へと飛び込んだ。

 

 「自殺かっ!?」

 

 この状況で自殺など、先ず考えにくいことであり。

 そもそも、司令と呼ばれた男の豪語していることではなかったが。

 もはや、退却不可能なまでに緊迫していた状況を打開したのは。

 

 先程までバカにしていたその少女だったのだと言うのだから、もはや、何も言うことはないだろう。

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