※この作品はR-18です。

とある提督が鎮守府に着任しますた   作:へんたいかがくしゃ

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過去の因果

 ハァ……犯罪の香りしかしねぇ……。

 心の中で途轍もなく大きなため息を吐きながら、見習いたいほどに行儀良く湯呑みをすすっている少女を見る。

 取り敢えずのところ、新しく着任した提督だということも伝えたのだが、勢いだけで提督室に呼んでしまった自分が度し難い。

 喋る話題もなければ、こういった年代との会話というのはしたことがない。

 というか、空気が重くて物凄くつらい。

 加えて、妙に行儀正しいことが余計に自分の心を抉ってくる。

 他の提督というのがどれだけ凄いのかが解ったような、解らないような気分であるが。

 配属されて一日目にやったことが基地内の探索だと言えば、流石に体面が悪い。

 読むのも面倒だが、先ずは資料に目を通すことにしよう……え、申請書?

 

 ペラリと紙を捲る。重要文章であろうその申請書の内容を読んでみれば。

 配属された新任提督のために秘書艦を頂けたらしく、申請は明日までのようだ……確認しておいてよかった。

 もう一枚めくれば、艦の全容と名称がそれぞれ記載されており……何故か漣の説明欄だけが小さいのは仕様だろうか?

 そんなことは気にせず、取り敢えずは申請書の内容をもう少しだけ詳しく読み。

 部屋に備え付けてある電報を手に取り、目的の番号に発信する。

 文章の最後に「ナウ」という特殊電文を忘れずに記載し、直接本部の方へと打電すれば。

 返信はやっ!?という感じに了解の意味の電報が届いた。

 

 「……もしかして、本当に新任なのかい?」

 

 いきなり声を掛けられてしどろもどろになりそうになった。

 えっ、というよりはヒィ、という意味が強かったが。

 

 「あ、ああ……初めて着任したばかりだ……出来れば色々と教えてほしい」

 

 「了解……また一人になったワケではないんだね」

 

 「……?」

 

 気に掛かる物言いだったが、一先ずのところは資料を確認するべきだろう。

 任務、建造方法、さらには工廠の使い方などなど。

 兵舎や島内にあった和食レストランなど、様々な使用方法が事細かに書き連ねてあり。

 確認してから島内を見回りすべきだったなと、心の中で溜息を吐く。

 一頻り資料を確認し終え、いくつか記入しておく書類を整理しながら顔を上げると、湯呑みを置いた少女が机の前に立っていて。

 

 「私がやるべきことはないのかい?」

 

 書類を全て読み終えたのを見計らったようにしていて。

 少しばかり面喰う破目になったが、少しばかり逡巡して。

 

 「いまのところ、今日は特にない……呼び立てて済まなかった」

 

 実際、自分がやることは山のようにあるが。

 それをこの少女に任せてしまうというのには抵抗がある。

 小一時間ほど眺めていても飽きはしないだろうし、近くに誰かいてくれれば仕事が捗るだろうが。

 そんなワガママばかりを言っているヒマがあるなら、今すぐ書類を処理するべきだろう。

 そう思い、ボールペンで様々な文章を記入していく。

 健康状態、基地情報、その他諸々……。

 って……あれ?

 

 「……どうかしたかい?」

 

 なんでまだそこに居るのだろうか。

 自分としては、てっきり部屋に戻るのだと思っていたのだが。

 嫌そうな顔一つせず、こちらの作業を眺めているのだった。

 

 「いや……そういえば、名前を訊いてなかったと思ったんだ」

 

 ……どうにか誤魔化せたかと思う。

 だが、気になっていなかったといえば嘘になるだろう。

 すると、眠たげだった彼女は忘れていたと言わんばかりに驚いた様子で。

 

 「響だよ、その活躍ぶりから不死鳥などの通り名もあるよ」

 

 ……噴いた。

 決してバカにしているわけではないのだが。どうにも可愛らしいというか、愛らしいというか。

 普通、こういうのは男から名乗るものだったな、と思い起こしながら、遅まきの自己紹介をする。

 

 「俺は……そうだな、神矢康市だ。元海上自衛隊元帥、神矢宗治郎の息子だ」

 

 だが彼女は、そんな俺の自己紹介に、少しばかり気落ちした顔をした。

 ……いや、本当は知っているのだ。

 この泊地は、元々は自分の親父が勤務していた島であり。

 退役する直接の原因を被った、いわくつきの日本領地であることは、重々承知であった。

 そこにもし、誰かが残っているのだとすれば。

 それは詰まり、自分の親父が遺した切り札か、何らかの手違いとも考えられなくもないが。

 これもある一種の、切っても切れない腐れ縁というヤツだろう。

 

 「宜しく頼む……俺は新米だがな」

 

 俺が差し出した右手に、彼女は戸惑いながらも握手を返してくれた。

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