とある提督が鎮守府に着任しますた 作:へんたいかがくしゃ
どうにか午後までに電を鎮守府にまで連れ帰ることが出来た。
―――しかし、妙に気になったことがある。
それは艦娘然り、深海棲艦も然りだが。
あの大佐が最後に言っていた言葉……その意味だ。
第二次世界大戦―――資料を調べれば、その本当の意味するところが解るはずだが。
何故かは解らない。不安を招く要素にしたくないのか。それとも、全く別のところに意識があったのか。
無数に存在していたはずの大戦期の記録が、
いや、旧海軍本部へと出向くつもりは湧いてこない……あそこは確か、深海棲艦に根絶やしにされた地域だ。
その時にでも記録が抹消されたか、或いはサーバーダウンしたのかは定かではないが。
もう一つ、彼が去り際に言ってきたセリフがまだ引っかかっている。
『―――良い親父さんを持ったな』
……それは普通、親戚か肉親が言うべき言葉だ。
あの態度、それに加えてあの知識量―――もしかしたら、自分の父親に近しい人物だったのかも知れない。
―――父親の最期は裏切られたのだ、という噂が飛び交っているが……今は余計なことを考えないようにする。
自分達が乗っている快速の渡り船のモーター音が心地よく鳴り響き、水を切る音と海風が頬を撫でる。
最低限の航路を守備できているとは言え、鎮守府近海には深海棲艦が待ち構えている。
こうして平和な道を辿っていても、いつ深海勢力が襲ってくるかもわからない……そんな状況だ。
個人的な質問は積もっているが、新任となる彼女……電には期待するべきだろう。
……そういえば鎮守府に残っていた響は、何をしているのだろうか。
兵舎の方の掃除か、それとも何かの準備か。
―――また、一人にさせてしまっているのだろうか。
こうして二十と余年を過ごしてきた自分ですら、孤独というのは辛い。
それでも、連れてくるべきではなかったのだ、と自分に言い聞かせる。
「え、えっと……提督さん……?」
そうして何時まで思考に没頭してしまっていたのか、ようやく意識をハッキリとさせた。
どうやら既に鎮守府に到着していたらしく、ボートのモーター音も消えていた。
忙しなくあたふたとしながら、訝しそうにこちらを眺めている電に大丈夫だ、と言い、ゆったりと立ち上がる。
立とうとしたところで、少しばかり立ちくらみがしたような気がするが、座り込んでいたせいだろう……。
取り敢えず、提督室まで向かうこととする。
昨日貰った資料には任務について明記されているものもあったはずだ。
出来れば今日中に色々とカタを付けておきたいところだが、急ぐ必要はない。
それはさて置き、
実質、彼女達が何らかの因果を……或いは、何か途轍もないモノを背負っている気はする。
―――俺の父親が遺して逝った言葉。
本当に言いたかった、意味とは結局、何だったのだろうか。
死体とすら対面できず、ただ噂だけが行き交っていた海軍学校と、俺の地元。
……その本当の意味を知るためだったのか。
それとも、これは俺の因果だったのか。
考え込む時間は飽きるほどにあるのだ……今は、目の前だけを見て行動することに努める。
「ただいま」
「―――おか…ぇ…」
「響……なのです?」
そこで、響の表情が変わったのを見逃さなかった。
泣き出しそうな、嬉しそうな、そんな
いや、驚いた表情だけだったのかも知れない……見間違いであったと考えるべきだろう。
長年会えずにいた親友と出会えたような、そんな優しい笑顔でいる彼女達を眺めながら、自分は作業をしていくこととする。