今回短め&無理がある展開
壁外とそう変わらない木々の茂る壁内のとある森。
鳥ではない何かが、身軽に枝を渡る。それが飛ぶたび、枝の上にあった葉がひらりと落ちる。
ひらひら、と風に吹かれながら落ちてきた葉をぱしりと男が掴む。その男の前には、隊別に集合して整列した調査兵団員達。男は、微かな笑みを頬に浮かべ、団員達の頭上を行き交う赤い髪を無視するように言い、合同訓練の説明を始めた。
それは以前、今頭上を飛ぶスカルラット分隊長が主張した、ガス欠且つ立体機動装置故障による立体機動使用不可状態での戦闘だ。立体機動装置が壊れても訓練兵団では多少は仕組みを教わり直せるように習うが、修理する前に食べられてしまっては意味がない。つまり、立体機動が使えないがその重さを背負ったまま、木に登る練習だ。
誤って落ちそうになった際は使用可、そして万が一の事態は、立体機動を装着して待機する団員が救出する。
そう言いきったエルヴィン団長の言葉に兵団がざわつく。
また珍妙なことを…と眉間のシワ2割増しの兵士長が、逆光で顔の表情が伺えない巨人狂の脛を蹴る。蹴られたハンジはイヒィと悲鳴をあげながらも、すぐに体勢を立て直した。
「いやね、ロッソの木登り楽しいって一言でここまで膨らませるかと感心してた」
「…降りて来ねえなアイツ」
団員達の見上げる先に、時折影が映る。
巨大樹に抱擁する団員達、ではなく、爪と指の間に木の皮を入れ滝のような汗を流しながら木登りをする団員達である。ほらほら頑張れとハンジが1mも登れていない団員の尻を叩く。
2m登るのに一苦労、5m登れたら休憩の後救出団員へ。リヴァイは最初に救出団員の方に組分けられた。
運良く3m付近に枝があり、一先ず休憩を、と座り込む数人の男の姿。
「きっつ…」
「馬鹿げてないかこの訓練。壊れたら即死と考えた方が良いんじゃないか」
「そう言うなよ、
やっぱり人命だし、そういった最悪のケースも想定した方が良いんじゃないか」
「だがこの木登りで怪我人が出たら元も子も無いじゃないか」
「あーあー、止めろよキツいのに」
「…いま俺らが、3m弱か」
「あ、」
団員たちの前を通り抜けた赤い影。
言わずと知れたスカルラット分隊長である。壁外調査の際は姿が見えないが、立体機動使用を禁止したはずなのに、彼女はすいすいと飛んでいる。驚いたエルヴィンが立体機動は禁止だぞ、と呼び止めると、彼女は立体機動をその場に置き、団服にベルトといった服装でぴょんぴょん飛んでいる。
「あれは、人間じゃないよな」
「な」
そうして木登りをさせるうち、4m付近まで登った一人の女性団員が声をあげた。
「あっ」
人の重さに耐えられそうな、即ち彼女が休憩できそうな枝まであと1m、というところで、木の破片が爪と肉の間まで入った彼女の指が、限界を告げた。必死に木を掴もうとするが、ガリリリと爪が剥げるだけで掴めるほどにならない。
「いやーーーー!!!」
恐怖ですくむ彼女を空中で抱き止めたのはロッソ。ロッソ自身のブレード、立体機動は最初に捨てたため、女性団員のブレードを引き抜き、木に刺して落ちる勢いを弱める。この時点で既に地面が近く、ガガガガガガ、と木が削れ、多少弱まったが二人分の体重と重力の力そのままに、砂埃を巻き上げて盛大に地面に転がっていく。二人の回転が止まり、辺りに土煙が立ち込める中、庇われた女性隊員が起き上がらないの赤髪を揺する。
「あ、あの、スカルラット分隊長、」
「大丈夫酔っただけ。立体機動使わないと勿体ない」
「勿体ない、じゃねえよクソ女
立体機動無しに何故突進して行くんだ馬鹿か。ただの馬鹿か、そうか」
そう言って背後に降り立ったリヴァイはロッソの首根っこを掴んで救護の方へずるずると引きずって行った。
「もおおおお馬鹿ロッソぉおおおお何のための救出団員なのよぉおおおお」
「ごめん」
「うわああああん石で背中切れてるしぃいいいよりによって利き手に一番深い傷負ってるじゃない血がぁあああああああ」
ぎゃーぎゃー騒ぎながら慣れた手つきでロッソの団服を脱がせるハンジが背中の傷を見た途端また一層騒ぎ、鮮血を出す深い傷が細腕にあることを認めるとまた一段と騒ぐ。
「うるせえクソメガネ」
ハンジに使い走りにされたリヴァイが水を持って帰って来て、ハンジに蹴りを入れる。
「痛いぃいいい
縫うよ!?行くよ縫うよ!?」
「早くしろ」
「リヴァイに聞いてないもぉおおんロッソ、痛かったら言ってね?」
「痛かったら縫う以外に何かするの?」
「いや、縫うの続けるけど」
「続けるんだ」
手の甲近くから一文字で腕の半分ほどまで切れており、これまた騒ぎながらも器用に縫うハンジの傷の実況中継を聞きながら、縫われるロッソと興味のあるリヴァイと、興味津々、と間近で見つめる。
縫い終わり、背中の傷も治療した後、利き腕を動かせないほど大量に包帯を巻かれ、抗議の目をハンジに向けるロッソ。
「だーめ、包帯の上から物掴もうとするのもダメ。ロッソの事だからすぐ傷開いちゃうでしょ
世話は全部私か補佐君か、周りの団員に頼んでね」
「面倒…」
そこでハンジの全身を使った渾身のチョップが頭に刺さる。
「治りが遅くなるよ、この調子じゃあ次の壁外調査には連れて行けないなあ」
演技ぶったハンジがそう言った途端、ロッソの目が変わる。
「わかった」
可愛い妹のように感じる同僚の頭の中を見てみたい気がしたハンジである。
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駆逐度としてはエレンと同等なのでは