主×花
※悠がひと目ぼれしたもの、それは……。
大学生となり、天然ジゴロから本格セックスマシーンへと進化を遂げた鳴上悠が、同性である陽介に愛情を抱き、果ては肉体関係に溺れるまでにもなったことには、一つの理由があった。
それは、陽介のペニスの美しさである。
男は美しいものに惹かれる。
しかし、そのターゲットは基本的に女性であり、悠とて例外ではなかった。
自らの素質と才能を自覚した悠は、周囲の美しい女性に対してナチュラルアタックを繰り返し、瞬く間に百人斬りを果たしたのだ。
そんな悠が、事件以来休暇の度に稲羽市を訪れていたのはもちろん仲間と楽しい時間を過ごすためだが、その中核はやはり陽介だった。
陽介に対する感情は、事件の起こっていたあの一年間に徐々に育まれたものであったが、別れることでそれが急速に展開していった。
事件翌年の夏休み、冬休みは仲間みんなで楽しく過ごした。
陽介への想いも『唯一無二のパートナー』という程度の自覚であり、個人的な進展が生まれることはなかった。
しかし二年後の春、その『ある瞬間』から悠の中で何かが弾けた。
* * * * *
「う~、漏れる漏れる!」
いつものように、陽介が必要以上の尿意を訴えながらジュネスのトイレへと向かう。
悠も「またか」という苦笑いとともに、その後へついた。
「俺も行くよ」
ジュネス3階は専門店エリアだ。
他の階に比べて、トイレは比較的空いている。
悠と陽介は、並んで小便器の前に立つ。
「……ふ~、間に合ったあ」
陽介の何気ない言葉に、悠は笑顔で首を横に傾けると、無意識に視線を下へ向けた。
その瞬間! 悠の身体に電流が走った!!
ハンカチで手を拭きながらトイレから出てくる陽介。
「すっきりすっきり……っと」
その後ろには、実に神妙な面持ちの悠が。
「(あれは、何だったんだ?)」
「……ん? 悠、どうかしたのか?」
「あ……、いや、何でも……」
とりあえず軽く誤魔化した悠。
屋上フードコートへと向かうと、既に他の仲間たちも集っていた。
そこにいるのは千枝、雪子、完二の三人。
千枝が最近通い出した地元のカンフー道場の話で盛り上がっている。
完二は有名な造形作家にその腕を見込まれ、受験はせずに弟子入りの方向だ。
りせはアイドルに復帰し多忙なため、なかなか会い難い状況。
直斗は既に高校を中退し、東京の特殊科学捜査研究所でその腕を奮っている。
そして陽介は、進学を諦めてジュネスの正社員に。
「人生、焦っても損損! とりあえず食ってければいい夢にも出会えるって!」
そう言いながら敢えて親の七光を真っ向から呑み込んだ陽介に、悠はある意味の頼もしさも感じていた。
楽しい会話が続けられる中、悠だけは何故か集中できないでいた。
自分が目を奪われたものに、理解が出来ないからか?
それとも、その現実を受け入れられないからか?
結局、その日の悠は愛想笑いと適度な相槌だけでその場をやり過ごし、皆はジュネス前で解散した。
それぞれ帰路につく五人。
と、耐えきれず悠が陽介に声をかける。
「よ……、陽介」
「……ん?」
「ちょっと……、お前んチに寄っていいか?」
「ん? ああ、いいぜいいぜ! 丁度いいや、こないだ里中に借りたDVD、一緒に見ようぜ~」
明るく笑う陽介の顔に、悠は棒状の陰影を重ねていた。
そう。
悠は、先程トイレで何気なく見た陽介のペニスに一目惚れしてしまったのだ。
ペニスに一目惚れというのもおかしな話だが(それも同性として)、それほどまでに陽介の肉棒は輝いて見えた。
何と表現すれば良いのだろうか。
小水が溜まったからか半勃ちの状態で、それは悠の目に焼き付いた。
すべすべの本体、艶やかな海綿体、そこから勢い良く尿が出ていく様すら世界遺産たる噴水の如くキラキラしていた。
あれが完全体となった時、そのフォルムは一体どうなるのだろうか?
それはきっと、想像を絶する美しさだろう!
そんな思考が止まらぬ内に、二人は陽介の自宅へと到着し、二階の陽介の部屋へと向かった。
「ビール飲む? それともリボンシトロン? へへっ」
陽介は自室にも専用の冷蔵庫を持っている。
やはりハイカラだ。
「……今日は飲もうか」
「お、いいねぇ! じゃ、改めて乾杯といくかあ」
陽介は悠に缶ビールを手渡し、二人で同時に開缶した。
乾杯し、グイッとひと口飲むと、陽介は本棚へと向かう。
「……と、これこれ!」
陽介は、本棚から『成龍伝説3・玄龍四天王の逆襲』なるDVDを取り出す。
「すっげー面白いらしいぜ~。里中ってばこのテの話見る目は確かだからな~」
パッケージを眺める陽介は、中からディスクを取り出さんとする。
と、悠がふいにその陽介の手を取って動きを止める。
「陽介。それを見る前に……、実は別に見たいものがあるんだ」
真剣な表情の悠に、陽介も少し戸惑う。
「な、何だ?」
「いいから、ちょっと座れよ」
悠は、陽介と横並びになるようベッドの縁に腰を下ろす。
「どうしたんだ? 悠……」
いつになく落ち着かない様子の悠、ググッと缶ビールを飲み干す。
「……陽介。お前は、俺のことをどう思っている?」
「な、何なんだよ急に!」
「いいから、答えてくれ」
「ん~、あの事件の時から言ってるだろ。お前は、俺の憧れで自慢だって」
「それは……、『好き』ってことか?」
思わず目を丸くする陽介。
「……え? 何だって!? ま、そりゃあ……、好きにはちげーねーけど」
「じゃあ……、見せてくれるか?」
「え? 何をだ?」
キョトンとする陽介の股間に、悠はそっと手を当てる。
「……な! ちょ、ちょっと待て悠!! 俺たち、男同士だぞ!?」
「分かっている。何もしない。興味があるだけだ。……今日、ジュネスのトイレで何気なくお前のモノを見た。その時からだ。俺は、自分でも信じられないがお前のコイツのことで頭がいっぱいになってしまったんだ」
「ど、どういうことだ? わ、訳分かんねー!! ……つーか、やっぱおかしいぞ、お前!?」
「綺麗だった。そう、凄く綺麗だったんだ! お前のモノは、俺の目の前で……いや目の下か……、まあいい。とにかく俺は美しいものが好きなんだ。だから確認させてくれ。絶対変な事しないから」
「いや……、つっても……」
悠の言葉を理解し難い陽介だったが、悠が特別な存在だってことは確かだ。
だからこそ、普通ならベッドから飛び跳ねるところを、言葉では否定しながらもそのまま悠のなすがままにしている。
陽介のジーンズのジッパーを、ゆっくりと降ろしていく悠。
「ちょ……、やっぱダメだ! 汚ねーって!」
「いや、汚くはない。お前のモノは綺麗なんだ」
もはや止められない悠の動き。
トランクスの前開き部分から、震える手で陽介のペニスを取り出す!!
* * * * *
堂島家に戻った悠は、自室のベッドに寝転び、数十分前のことを思い出していた。
陽介のペニスは、やはり極珠であった。
悠が軽く握ると、それはすぐに反応して内部に血流が走った。
さらに硬さを増していく棒状のそれは、瞬く間にピンと天井に向けて立ち上がった。
それはまさに『美しき斜塔』だ!
赤々として艶やかな先端、そのカリの部分は程よいグラデーションを彩り、余分な皮を一切残さず膨張した本体は、毛細血管のネックレスを映えさせる一片の曇りもない肌色で、そのそびえ立つ雄姿は一つの洗練された芸術作品と言っても過言ではない輝きを放っていた。
さらに袋のムーブが本体を際立たせる大きな役割を果たす。
自然と上下左右に動く皺、繁みの中でもその丸みが浮き立つかのような内部の球体。
悠は完全にその芸術的オブジェに魅了され、しばらく思考不能の状態へと陥ってしまった。
気が付けば、悠は屹立した自分の分身を露にし、右手で軽くしごき始めていた。
この二年ほどで数々の女性を虜にしてきた悠の劇銃だ。
自分でもそこそこ自信を持っている。
ほどよく剥ける膨張感、形のいいカリ、長さ太さは並だろうが、その硬度が何と言っても相手を高揚させる。
まさにダイヤモンドを思わせる極上の硬さは、百人の女性全てが驚愕していた。
しかし、陽介のモノはその造形が見事であり、勃起した状態ではこの世のものとは思えぬ美麗感を漂わせていた。
しばらく見つめた後、当然ながらまずは手でそれを上下に動かしてみた。
陽介は焦っていた。
「ちょ……、何もしないって……」
「ああ、何もしない。お前以外の男には何もしないよ。それでいいだろ」
「……なんて勝手な理屈! でも、それがお前なんだよな……」
もはや諦めた陽介。
右手で棒を、左手で袋を愛撫する悠は、いつの間にか陽介の正面に跪いていた。
そしてうっとりとした表情で肉棒の裏側にキスをすると、そのまま舌先を上下に転がす。
呻き声を上げる陽介。
そして、満を持してパクッとその美しきモノを悠がいただく。
数十分前の現実は、今でも悠の口中に生々しい感触を残していた。
陽介を口でイカせた悠は、当然ながらその白濁液を自らの口中で受け止めたのだった。
その時の陽ペニの瞬間硬化とドクドクッとした微震感覚を思い出しながら、今、悠は自らの分身を激しくしごき上げる!
* * * * *
……マジ、ビックリした。
悠があんなこと言うなんて。
で、あんなことするなんて!
そりゃ、俺にとって悠は特別な存在だったさ。
でも、男同士であんなことするなんて、正直んとこ思ってもみなかった。
悠も、多分今日の今日までこうなるなんて思ってなかっただろうな。
俺のアレが見たいだなんて……。んで、結局は好き放題されちゃったし……。
やっぱ、俺も望んでたのかな。
男だ女だ、そんなことは関係ねーんだな。
あいつが俺を欲してくれたことは素直に嬉しいし、俺も正直かなり気持ち良かった。
あいつのこと……、好き……なんだろうな。
でも!
やっぱムカつく!
あいつってば、俺をイカせた後、すぐ素に戻っちまうんだもんよ。
「……おい、じゃあ、次はお前の……」
「フッ……、今度な」
なんてドヤ顔で言いやがった!
俺だけじゃねーか、恥ずかしい思いしたの。
今度は絶対逆襲してやる。
花村陽介・リベンジ大作戦だあ~!!
* * * * *
「うっ……!!」
悠の分泌液が、バッと宙空に飛び散る。
そして、シャツの前をはだけていた自らの胸でそれを受け止めた。
「ふう……」
敢えて陽介だけをイカせ、自分は耐えて自家発電。
これが悠のジゴロ戦略なのだ。
胸をティッシュで拭きながら、その思いは陽介へと馳せる。
そしてベッドから立ち上がり、鏡の前に立って自らの肉体を映し出してニヤリと笑う悠。
「新しい俺……、誕生だな」
(了)