※この作品はR-18です。

変態特別捜査隊   作:三化月

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【カップリング】
 なし

※今回はカプなしです。
 悠君がミスコン説明をした時のように『眼鏡』について語りまくります!


第32話「冬の夜の眼鏡語り」

 2018年も年末。

 いつものように八十稲羽で冬の休暇を楽しむ悠は、天城屋旅館に部屋を取り、陽介、完二とともに男子会鍋パーティーを開いていた。

 

「しかしまあ、今年もあっと言う間だったよなあ」

「そうッスね。……フハフハ」

 陽介の言葉に相槌を打ちながら鍋をつつく完二。

 

 その二人に悠が問いかける。

 

「里中は元気にやってるのか?」

「……ん、ああ多分な。なんせ警察学校じゃ携帯ご法度だからなあ。便りがないのは元気な証拠……だろ?」

「そうか……」

 一時は退学も危ぶまれた千枝だったが、悠と雪子の力で立ち直り、訓練生活も佳境に入っているのだろう。

 

「りせはますます人気が出てきたみたいだし、直斗も調子いいみたいだな」

「ああ、そうッスねぇ。アイツらも迷いが吹っ切れたっつーか、ま、それは俺もなんスけどね」

 自分自身の価値について悩んでいたりせ、直斗、完二の三人も、改めて自分と向き合うことでまた一つ階段を昇った。

 

 と、襖が開いて雪子が顔を出す。

「お待たせしました! ぶりしゃぶでございまーす」

 仲居とともに、鍋の具を部屋へと入れていく雪子。

 

「お! 来た来た~!」

 思わず舌なめずりする陽介。

「いいわねー。男の子たちだけで飲むってのも」

「……お前も男装して参加したらどうだ? 天城」

 悠がニヤリとしながら一言。

 その言葉にドギマギする雪子。

「……えっ!? ああ、そんなのダメだって……」

 

「天城先輩の男装ッスか……。それは是非、見てみたいッスね」

 真剣な表情で呟く完二。

「な……何言ってんの完二君! ……ささ、この辺は片付けるわよ!」

 照れ隠しに空になった皿を片付ける雪子。

 やはり、先般悠と女装・男装でプレイした時のことがまだ生々しいのか……。

 

 

 

 宴もたけなわ、陽介がふと完二に尋ねる。

「ところで完二。お前のその眼鏡、どこで買ったんだ?」

「……ああ、コレッスか? 駅前商店街の店ッスよ?」

「やっぱそうか。あそこ割といいの揃ってるもんな」

 

 ウンウンと頷く陽介に、悠が口を挟む。

「なんだ陽介。眼鏡を買うのか?」

「え? ああ、ちょっと視力落ちてきたかんなあ。そろそろ買っとかないと。……あっちの世界の眼鏡じゃさすがに見えねーし。ヘヘッ」

「……今、結構売れてるみたいッスね。オシャレでかける人も増えてきたっつーか、俺の店に来る若いコらなんかも、眼鏡っ娘のかわいいお客が増えてきましたよ」

「お、眼鏡萌えか~? 完二」

「そ……、そんなんじゃねーッス! ……まあでも、普段かけてないコがかけ始めると、ちょっといいなって思いますね」

 完二の言葉にピクッと反応する悠。

「そーだな。でも俺は、逆にいっつもかけてるコがちょっと外してみた時なんかもグッとくるけどなー」

 陽介の言葉にさらにピクピクッと全身を揺らす悠。

 

 再び鍋をつつき合う陽介と完二だったが、悠は徐に箸を置いて立ち上がった。

 

「いいか、お前たち。眼鏡萌えというのはだな……」

 

 ヤバい!

 陽介の脳裏に、高校時代に悠からミスコン自説を延々と聞かされた時のことが即座に過ぎった。

 しかし、それはもう手遅れであった。

 

 鬼気迫る表情で語り始める悠。

 

「眼鏡萌えというものは、それほど単純なものではない。簡単に話題に出して、簡単に終わらせるような代物じゃないんだ。……完二、お前は普段眼鏡をかけていないコがかけると萌えると言った。一方、陽介は普段かけているコが外すと萌えると主張する。これはある側面からは両者とも正解だが、別の側面から見ると両者とも間違っているのだ。それは何故か? 眼鏡萌えというものが、それほど奥深く、尊いものであるからだ。そもそも、これは男性目線、女性目線でも違いがある。……ではまず、男性目線から説明しよう。男が女に『萌え』を感じる時、それは仕草や性格、そして外観の印象など様々だ。中でも、この眼鏡というアイテムは、外観に止まらず『萌え』の要素全てに影響を及ぼすスグレモノだ。昔は、眼鏡をかけているということは一つのコンプレックスの原因となるものだった。それは目が悪いから仕方なくかけている、言わば人より劣っている部分を補うアイテムとして止むを得ず使っていたからだ。それがいつしか『負』の要素から『正』の要素へと変換を遂げた。それはまさに、アンチテーゼが生んだ一種の対抗理論なのだ。眼鏡をかけていることに対する引け目、ネガティブ思考、それが『眼鏡をかけていることなんて気にしない』といった励まし的思考となり、さらにはそれを超越し、『眼鏡をかけているからこそいい!』といった境地に達した瞬間、『眼鏡萌え』というものが確立されたのだ。しかし、ここで考えねばならないことは、眼鏡をかけてさえいれば誰でもいいのか?ということである。もちろん、決してそうではない。まず女性に限定して考察するということは、つまり眼鏡萌えの始まりが『眼鏡っ娘』であったからだが、そもそも眼鏡っ娘という呼び名は『眼鏡をかけた女性』を指す場合に使うものだ。だがその奥底に、今は『萌え』を秘めていなければならない。これを俗に『眼鏡っ娘属性』と言うが、この眼鏡っ娘属性がないと決して『萌え』には発展していかないのである。……眼鏡っ娘も当然コンプレックスから始まっている。それは昔の漫画やドラマにおいて……いや、今でも時にはあるが『眼鏡をかけさせることで他のキャラと差別化を図ったサブキャラを記号的に作ること』にも起因している。これにより、眼鏡をかけていることがすなわち第一線には立てない、立ってはいけないという『自我の封印』にもつながっていたのだ。これは今だから言えるが、真の眼鏡萌え精神を全く理解しない愚民が考え出した安易なキャラ付けなのだ。眼鏡をかけさせることでキャラ付けが終了したと勘違いし、ステレオタイプの眼鏡キャラばかりが世に蔓延った。だが時代とともに、眼鏡キャラを主人公やライバルに据えたりする手法が目立ち始め、眼鏡そのものがキャラ付けへの大きなファクターへと変貌を遂げていったのだ。これにより世の眼鏡っ娘はある意味救われた。しかしそれは、単にコンプレックスから解き放たれたというだけで、『眼鏡っ娘萌え』に直接つながるわけではないのだ。ネガティブ思考と切り離されたことにより、眼鏡をかけていることへの一般的な印象、頭が良さそう、大人しそう、高慢っぽい、ドジっぽい、そうした様々な印象が悪印象から好印象へと逆転していったのだが、それはあくまで『印象の転化』であり『萌えの発生』ではない。さっきも言ったが、『眼鏡っ娘萌え』は『眼鏡っ娘属性』があってこそ初めて生まれるものなのだ。……では『眼鏡っ娘属性』とは何なのか? それは人それぞれの感性によって微妙なズレはあるものの、言ってしまえば『眼鏡からも愛される存在』だということだ。仮に眼鏡にも心があった場合、この娘にかけられたい!この娘と一つになりたい!と眼鏡自身に思わせるパワーのある存在が、すなわち眼鏡っ娘属性のある人物ということになるのだ。言い換えるならば『心に眼鏡を持っているかどうか?』ということにもなるな。この『眼鏡っ娘属性』があれば、それはどんな仕草でも、どんな性格でも、はたまたどんな種類の眼鏡をかけていようとも『萌え』は発生する。……おっと、ここで忘れてはいけない。完二が言った『普段かけていないコがかけた時がいい』のか、陽介が言った『普段かけてるコが外した時がいい』のか、その違いもまた重要だ。一般的には、眼鏡っ娘である以上、眼鏡をかけていることが前提で、外した時の状況など関係ないはずなのだ。しかし、そこが『萌え』の奥深いところであり、かけることによっても外すことによっても『萌え』は発生するのである。もちろん眼鏡っ娘属性があることが大前提はなるが、マキシマム的には普段かけていないコがかけることによって『萌え』が増幅すると考えられる。これは『スキーウェアを着ればかわいさ三倍増し』という理論と似たようなもので、普段とは違う『非日常』を感じ取ることによって発生する『萌え』であり、その女性全身が対象となる。逆に普段かけているコが外した時に発生する『萌え』は非常にミニマム的であり、完全に外してコンタクトにしてみたりとかはまず論外。少し外して垣間見えるそのコの素顔、よく見えていないであろうその目つきの危うさ、さらには外した眼鏡を大事そうに拭いたりもう一度かけ直したりする時のまさに千載一遇の仕草! そこに『萌え』が発生するのだ。『眼鏡を外した方がかわいいよ』だとか『眼鏡を外してかわいくなった』などとほざく輩は眼鏡っ娘萌えの精神を欠片も持っていない愚民なのである! そのような奴に眼鏡を語る資格などない!! ……失礼、つい興奮してしまった。さて、女性を中心に眼鏡っ娘萌えを考察してきたが、そもそも『眼鏡萌え』の話だったな。眼鏡萌えと言うからには、それは『眼鏡マニア』や『眼鏡フェチ』につがなるところがあるのも事実だ。『眼鏡マニア』というのは、眼鏡そのものに深い愛情を注ぐ人たちのことだ。それは造型へのこだわりであったり、ガラスレンズへのこだわりであったりと、人それぞれの偏狂愛がある。一方『眼鏡フェチ』とは、自分のパートナーに眼鏡をかけさせることによって性的興奮を覚える人たちのことだ。これは先にも言った眼鏡をかけることがマイナスからプラスへと転換されていったことも背景にあり、今やそれを題材にエロを生み出す手法すらポピュラーとなっている。スタートはエロではないが、俺たちがテレビの世界で全員眼鏡をかけていたのもフェティシズム嗜好の一種だろう。実際、眼鏡をかけたパートナーに射精する、さらには精液を眼鏡にかけるといった行為は、俺たち変態仲間の心をくすぐるには十分かつ必然である。……この意味が分かるか? 眼鏡っ娘萌えの根本は、実はここにあるのだ。眼鏡に萌える=性欲の象徴。性的衝動としての眼鏡フェチ。眼鏡っ娘への萌え衝動は、須く性衝動へとつながっているのだ。眼鏡っ娘が本を読んでる姿がいい、眼鏡っ娘が勉強してる姿がいい、眼鏡っ娘が廊下で躓いて転びそうになるのがいい、眼鏡っ娘が高慢ちきな態度を取るところが敢えていい、眼鏡っ娘がうつむき加減で見つめてくるのがいい、眼鏡っ娘が眼鏡のズレを何気なく直すのがいい、眼鏡っ娘が失敗を恐れずに立ち向かっていく姿がいい、眼鏡っ娘がいざ失敗して落ち込むが自ら立ち直っていく姿がいい……、それらは皆、その後ろに『その眼鏡に射精したい!』という思いが隠されているのだ。ただ、その思いはあくまで潜在的なものであり、当人が気付いていない場合もある。だから、実際に行動に移す確率は低いだろう。……では、女性目線からはどうなのか? 女が男に『萌え』を感じることももちろんある。そのアイテムが眼鏡であった場合、最近その対象者は『眼鏡男子』と呼ばれている。男がかける眼鏡も当然コンプレックスからスタートしているわけだが、ある時期から女以上に二分化されている傾向がある。それは『知的な眼鏡男子』と『オタクな眼鏡男子』だ。女目線で萌えるのは当然前者であり、スーツや白衣といったサブアイテムがセットになっていることも多い。対して後者が萌えの対象になることは皆無と言っていい。ここが『眼鏡っ娘』と『眼鏡男子』の大きな違いだ。眼鏡っ娘はある程度かわいければオタクでも問題なく、いや、逆にさらに萌え指数がアップする場合もあるが、眼鏡男子はオタクだと『眼鏡男子』の範疇には入れてもらえない。もちろん外見上での判断なので、中身がオタクでもある程度顔立ちが良く、スマートな体型で服装やバッグ類がこなれていれば眼鏡男子認定はされる。しかし、ブサイクだったり太っていたりファションセンスがなかったり古めかしいリュックを背負っていたりすると、それは絶対に眼鏡男子認定されることはないと言っていいだろう。もちろん、女でも外見があまりにもヒドければ眼鏡っ娘認定はされない。男であろうが女であろうが、まずはこの『認定されるか否か』がスタートラインになる。そして、次に『眼鏡っ娘属性』若しくは『眼鏡男子属性』があるかどうかが問われる。まあ、平たく言えば『似合う』か『似合わない』かになるのだが、ここが男女で若干ニュアンスが違うところなのだ。眼鏡っ娘属性は、似合っていればその指数が上がる可能性は高いが、仮に似合わなくとも別の視点から魅力を感じた場合、眼鏡っ娘属性としての指数は上がる。逆に言えば、一般的に似合っていても『萌え』の要素を感じ取ることが出来なければ眼鏡っ娘属性の指数は上がらないのだ。一方、眼鏡男子属性は似合っていれば概ね指数アップになると言って間違いない。そして、似合っていなければ属性なしと認定されるだけなのだ。ただ、属性ありとみなされた場合の『萌え』がどういうところにあるのか? それは残念ながら女目線そのものにならなければ分かり得ない。つい先日、天城から『真の女らしさ』を学んで女装に磨きをかけた俺ではあるが、まだまだ眼鏡男子の萌え要素を完璧に理解するところにまでは到達していない。また後日、この部分は女の口から説明してもらう必要があるだろう。……では、先程出た『眼鏡フェチ』的な部分は「眼鏡男子』にも当てはまるところがあるのだろうか? 当然、男同士でプレイした場合は射精を伴うので問題ない。しかし、男女間プレイの場合は『男の眼鏡』というアイテムが果たして性的興奮要素たりうるのか? このことも同様に女性自身の考察が必要となるが、恐らく興奮度を高める要素にはなり得るのだと思う。ただし、その守備範囲は眼鏡っ娘よりかなり小さいのだと俺は見ているが……。さて、最後に俺たちの立場として考えておきたいのは、この『眼鏡萌え』が人間の可能性を高めていく糧となるのかということだ。俺たちは、これからも人間の未知なる可能性を高め、人間の根本が『希望』であり、決して『絶望』や『虚無』ではないことを証明し続けなければならない。そのために絶対不可欠な力が『変態力』であることは明白だが、ここに『眼鏡萌え』が果たして重要なポイントとして働くのか? ……ズバリ、答えはイエスだ! イエス! イエス! イエス!! ……眼鏡萌えは人間の希望そのもの、可能性そのものと言っても過言ではない。くどいようだが、眼鏡というものはコンプレックスからスタートしているものなので、ある意味『絶望』や『虚無』の象徴となっていてもおかしくないのだ。事実、遠い昔はそういう時代もあったのかもしれない。しかし、それをプラスのエネルギーに変えていったのは他ならぬ人間なのだ。現実社会では機能性に工夫を凝らし、洒落感を持たせていき、もはやなくてはならないアイテムに進化させ、創作世界では単なるキャラ付けの材料から、そのキャラの内面を表す重要なファクターに、或いは使用することで何かの変化をもたらす重要アイテムとして進化させてきた。それがつまりは『希望』であり『可能性』であると言えるだろう。同時に、ネガティブな没個性体質からポジティブな個性輩出の原動力にまで推し進めてきたのだ。そこに『萌え』を感じるということは、新たなる希望や可能性をいち早くキャッチして自分のものに出来るということだ。『萌え』自体が人間誰しも持っている潜在的な意識の現れであるからして、それは間違いなく『変態』にも直結し、それこそ人間の可能性は無限に広がっていくことだろう。俺たちは、今こそこの『眼鏡萌え』をより深く研究し、変態力の底上げをする必要があるのかもしれない。……というわけで、『眼鏡萌え』のついて大体の輪郭は掴めたと思うが、どうだ?」

 

 一気にまくしたてた悠。

 この間、一切飲み食いすることが暗黙の内に許されなかった陽介と完二。

 

「……わ、分かった。……分かったから、鍋……、食おうぜ? 悠」

「そ……そうッスよ! まだまだ食い足りないッスよね!」

 

「……本当に分かったのか? いや、まだまだ説明が不十分だな。もう少し……」

「いやいやもう分かったって! ホントに分かったから!!」

 冷や汗をかきながらバタバタと手を振る陽介。

 

 と、襖がスッと開いて雪子が入ってきた。

 

「……天城」

 

「鳴上君、聞かせてもらったわ。……さすが私たちのリーダーね。これからの私たちが行く道を、改めて教えてもらった気がするわ。……でも、眼鏡男子に対する考察はかなり甘いわよ? あと、女同士のプレイにまつわる眼鏡というアイテムが持つ意味を話し忘れているわよ」

 後ろ手に襖を閉めつつ、キリッとした表情で言い放つ雪子。

 

「うむ、そうか! ならば説明してもらおうか、女目線の考察というものを!」

 雪子の方を向いて座り直し、ニヤリと笑う悠。

「……ちょっと待った! その……、鍋食わねー? 冷めちまうし……」

「何言ってるの!? 花村君!! こんなに重要な話をしている時に……」

 雪子に恫喝されて思わず怯む陽介。

 

「じゃ、話すわよ。そもそも眼鏡男子というものは…………」

 

 真剣な表情で話し始めた雪子。

 それを悠だけはマジマジと聴き入る。

 

 結局、陽介たちが再び鍋にありつけたのは、それから一時間後のことであった……。

 

 

(了)

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