主×花
主×直
主×千枝
主×雪
※再び霧に包まれたテレビの世界で、特捜隊が戦う相手とは!?
そして、悠のダイヤモンド・ポールが炸裂!!
「先輩、今日は真面目な相談があるんですけど……」
直斗から連絡があった日、悠はたまたまバイト休日であった。
通信家庭教師の他、自身が通う大学近辺にあるファミレスの調理担当もしており、日々多忙なバイト生活の悠がこの日偶然空いていたのは、今思えばまさに『神の意志』だったのかもしれない。
* * * * *
事件の後、志望の大学へと進学した悠は、現代に甦ったイザナギの如く早くも女性百人斬りを果たしていた。
その上、陽介との友情がいつしか愛情に転化し、そこでも肉体関係が生まれていた。
しかし、目覚めてしまったキング悠がそれで満足するはずもなく、数ヶ月前から直斗との交際も始めていたのだ。
当然、身体の交わりありきである。
その直斗はと言うと、高校を卒業してすぐ民間の特殊科学捜査研究所にスカウトされ、都内で警察と協力体制を取りながら日々研究に勤しんでいる。
今夜も、直斗はいつも通りの男装風体で、研究所から既に通い慣れた感のある悠のマンションへとやってきた。
「こんばんは」
オートロックのスピーカーに向かって、直斗が呼びかける。
いくら交際しているとは言え、スペアキーを渡すなどという行為は悠の辞書には全く記載なしである。
「直斗か。今開ける」
ロックが解除され、直斗は775号室へと上がっていく。
玄関ドア前で再びインターホンを鳴らすと、悠がにこやかに顔を出した。
「やあ、よく来てくれた。……上がれよ」
「……お邪魔します」
いつもより神妙な面持ちの直斗であったが、クールである反面、そういった洞察力とは縁のない悠だ。全く気が付くことなく、直斗を部屋へ迎え入れた。
「直斗、メシまだだろ? 丁度作ってたとこなんだ。食べろよ」
「あ……、はい。ありがとうございます。いただきます」
丁度などと言いつつ、悠は時間を計算して調理していた。
悠が自分からいそいそと相手のために何かするなど、あまり考えられない。
つまり、今回、悠は直斗に結構ご執心のようなのだ(陽介とは別次元で)。
洋間のソファー下に位置したテーブルの前で、直斗が行儀良く座って悠の手料理を食べる。
それを、後ろのソファーでカクテルを飲みながら悠が眺めている。
「直斗、お前も飲むか?」
「……ああ、今日はいいです」
「ん? どうしてだ?」
悠は、そう言いながらソファーから降りて直斗の横に座り直す。
「今日は、相談事があって来ましたので……」
と言って悠の方へ顔を向けた瞬間、直斗の唇は悠の唇に塞がれた。
「……ちょ、何を……!!」
「すまん。お前がかわい過ぎて……」
途端、赤くなる直斗。
「……もう!」
ふくれっ面で残りの料理を素早く平らげていく直斗。
悠は、再びそんな直斗を愛おしく見つめる……。
食事を終え、テーブルの上にノートPCを広げる直斗。
「ここ数日の、吉祥寺行方不明事件は御存じですよね?」
「ああ……」
直斗の言葉を上の空で聞きながら、直斗の頬に軽くキスをする悠。
「……あ、……いや、ですから、ここんとこ調査を繰り返してるんですが……」
キーボードを叩く直斗の両脇から悠の手が伸び、直斗の胸をまさぐる。
「……ちょ! きょ、今日はそんなんじゃなくて……」
「そんなんじゃなくて……、何だ?」
直斗の胸を揉みながら、悠は直斗の耳元にウィスパリング。
「あ……、ああああ」
いつの間にかシャツのボタンが外されており、悠の指先がブラジャー越しに直斗の乳首を刺激していた。
「いや……、んふ……!!」
直斗のキーボードを打つ手が震える。
しかし、必死で自我を守ろうとする直斗は、説明を続ける。
「……で、ですね、その被害者というのが……」
「ほう……、被害者が……?」
オウム返しとしか思えない無意識な言葉とともに、悠は両手を直斗の背中に滑り込ませ、ブラのホックを外す。
締め付けが解け、直斗の巨乳が自由の身となる。
「……そ、そうです。被害者の共通点が、表向きは何のつながりもないんですが……」
悠が直斗の胸を生身で揉みしだく。
「……ああ! ……い、いや、その、共通……、あ、いや! ああん!」
悠の攻撃に上半身をのけぞらせる直斗。
すかさず直斗の唇を奪う悠。
二人の熱く激しいキスが続く。
さすがにこうなると直斗も逆らえない。
悠のキス&乳首攻撃で、直斗の頭は一瞬にして真っ白になってしまった。
そのまま絨毯の上へ直斗を押し倒す悠。
キスの合間に、悠は攻め言葉のつもりで逆質問を直斗にぶつけていく。
「……で? 被害者の共通点がどうしたって?」
もはや悦楽の世界に入っていた直斗だったが、悠の言葉で我を取り戻す。
「そ、そうなんです! ……警察では取るに足らない情報としていますが、被害者全員の自宅全てにに大型テレビがあったんですよ!」
直斗の言葉に、悠の動きが止まる。
「……何!?」
瞬時に真剣な表情となり、直斗を正面から見据える悠。
「それだけならただの偶然となるんですが……、実は昨日……、マヨナカテレビが見えたんです!」
「な……何だって!?」
直斗の上から起き上がる悠。
そして、直斗も乱れた髪を直しながら起き上がり、再びノートPCに向かう。
「……これが、被害者のデータです」
キーボードを叩き、調査データを映し出していく直斗。
「最初の行方不明者が三日前。吉祥寺駅前のパチンコ屋の店主です。次が翌日、そこから数軒離れた民家のサラリーマン。そして昨日、男子高校生が一人、忽然と行方をくらましています」
「高校生……」
「はい。しかし、先程言ったように三人に表向きの共通点はありません。が、昨日それぞれの自宅捜査に立ち会わせていただくと、三人の自室に大型テレビがあったんです」
眉をひそめる悠。
「……で?」
「そして昨夜零時、何気なく部屋のテレビを見てみると、映ったんですよ! 被害者たちの様子が!!」
「はっきり見えたのか?」
「いえ……。テレビの中は大雨って感じで、被害者たちの輪郭がおぼろげに見えた程度です。しかし、マヨナカテレビがまた映ったということは……!!」
汗をかきながら考え込む悠。
やがて、スクッと立ち上がって歩き出し、クローゼットの前に立つ。
そしてクローゼットの右側をそっと開け、一番上の小物入れから何やら取り出す。
「……直斗、ついて来い」
悠は、そう言うと大股で玄関の方へと向かう。
直斗、慌てて立ち上がって悠の後を追わんとするが、自分の胸が露になっていることに気付き、振り返って落ちていたブラジャーを拾う。
「……もう! マイペースな人なんだから……」
ぶつぶつ文句を言いながら直斗は着衣を整え、玄関へと小走りで向かっていく。
廊下に出た悠と直斗は、同じフロアの730号室の前に移動し、悠が徐に鍵を開ける。
「ここは……?」
「生活空間とは別で借りている部屋だ。万一の時のために……」
少し手狭な部屋に入った二人。
悠が電灯をつけると、そこには八十型の大型テレビが……!
「こ……、これは! ……先輩はもしや、こうなることを予測して……!?」
「いや、予測していたわけじゃない。しかし、アメノサギリやイザナミが完全に消滅したわけではなかっただけに、俺の中ではずっと不安が付きまとっていたんだ。いつかまた、神を名乗る者が人間の存在意義に疑問を持ってしまったら、その可能性を信じられなくなったら、その時奴らがまた動き出さないとも限らない」
「先輩……」
改めて、悠を頼もしげに見つめる直斗。
「直斗、俺の身体をしっかり支えておいてくれ」
「……ええっ!?」
「少し、探ってみる……」
直斗は悠の後ろからしっかと背中にしがみつき、力いっぱい足を踏ん張る。
そして悠は、右手を恐る恐る大型テレビのモニターに近付けていく。
悠の右指がモニターに触れる。
と、フワッと波紋が広がり、悠の右手がモニターに吸い込まれていく!
「ウッ……!!」
テレビの中へと引っ張られる力を感じる悠。
左手でモニターの枠を掴み、必死で足を踏ん張って耐える。
と、悠の右手を伝わって小さな声が聞こえてくる。
「……センセイ。……センセイ」
「そ、その声は、クマ!!」
「……センセイ、クマを……、たす、け……」
次の瞬間、悠は逆にテレビから突き離されるような強い圧力を感じ、二人もろとも後方へ吹っ飛ばされた!
「うわあああああっ!!」
部屋の反対側に倒れ込んだ悠と直斗。
二人、ゆっくりと起き上がる。
「……聞こえたか」
「……は、はい」
「クマを……、助けなければ!!」
* * * * *
翌日、悠のもとへ遼太郎から電話が入った。
「悠……!!」
「おじさん! お久しぶりです」
「……挨拶は後だ。実はな、悠。……足立が、脱走した」
「何ですって!?」
驚く悠。
「元々証拠不十分だったからな、裁判も難航してたんだ。テレビの中で人殺しだなんて、公判で認められるわけがない。……まあ、もちろん俺も信じちゃいないが」
「…………」
「そんな中で、アイツもまた精神が不安定になっていったんだろう。様子が少しおかしいと連絡が入っていた矢先、この不始末だ」
「足立さんが……、脱走……」
考え込む悠。
「で、お前に電話したのは……、その、何だ。あの時、俺には理解し難いところだったが、お前たちが事件解決のキーポイントだったことは確かだ。そこでふと気になったのが、吉祥寺での連続行方不明事件だ」
「……さすがはおじさんですね。実は僕たちも、昨日その事件があの時の事件とつながっていることを確信したんです!」
「そうか、やっぱりな。残念ながら、俺は管轄違いでそっちには手が出せねぇ。足立の足取りはもちろん追うが、お前にも知らせておいた方がいいと思って、な」
「おじさん……、ありがとうございます」
電話越しに微笑む悠。
遼太郎との電話を切った後、悠はすぐさま直斗の携帯に連絡した。
「……直斗!」
「先輩! ……今日も行方不明者が出ました。もうグズグズしていられませんね」
「うむ。みんなを、集めなければ……」
「僕は、巽君と久慈川さんに連絡しておきます。先輩は、他の方に……」
「分かった。……ただ、あの時と違うのは、もうみんな時間の自由が利く高校生ではないということだ。全員集まる保証はどこにも……、ないな」
「そうですね。僕は捜査の一環としてある程度動けますが、巽君は修業の身だし、久慈川さんはもっと……」
「とにかく、集まった者だけでも行くしかない。……それじゃ、頼むぞ!」
「はい! 先輩!」
悠は続いて、陽介に連絡を取った。
事件の知らせは、当然稲羽市在住の四人も戦慄させた。
ジュネス八十稲羽店で働く陽介は、年間二度取得出来る長期休暇をすぐさま申請した。
千枝は来年警察学校へ入るべく準備中だったので、とりあえずカンフー道場にしばらく休む旨を申し送った。
天城屋旅館で日々忙しい身の雪子は、同業研修の名目で上京の許しを貰った。
しかし、造形作家を目指して修業中の完二は、自分の都合で休暇を取ることはやはりできなかった。
「直斗、スマン! 行かなきゃならねーってことはもちろん分かってる! だがな、俺も覚悟を決めてこの道の修業に励んでいる。師匠のお許しが出ない内は……」
「分かっています。仕方がないことですから。……いや、寧ろここで君が無鉄砲に飛び出そうとしないことに、僕は感激しました」
「直斗……、ありがとよ。出来るだけ早く駆け付けっからよ!!」
そして、東京でアイドルとして活躍中のりせにおいても、事情は完二と同じだった。
「悠先輩……、直斗君……、私も戦いたい! でも……」
直斗から事件の知らせを聞いた時は、すぐにでも駆けつけようと思った。
しかし、秒刻みのスケジュールが日々続く中で、長々と別のテレビの世界へ行ってしまうのは、やはり今のりせにはできなかった。
仲間は助けたい。
事件も解決したい。
でも、自分にはファンが待っている。
ファンを裏切ることは、自分の生き方を否定することになる。
だから、りせは他の仲間を信じることで、自分との戦いを全うしようと決めた。
「私はスーパーアイドル・りせちー!! 私は歌で、きっとクマの心を助けてみせる!!」
* * * * *
そして悠と直斗が待つ悠のマンション・730号室に、三人の戦士がやってきた。
「懲りずによく現れたわね~! 待ってなさい! 私がコテンパンにしてやる!」
「また無関係の人を巻き込んでいくなんて……、許せない!」
「……相棒の行くところに俺あり! ……だろ? 悠」
千枝、雪子、陽介が、それぞれの覚悟で東京までやって来てくれた。
「みんな、ありがとう! ……行くぞ!!」
悠を先頭に、五人が大型テレビの中へと入っていく!
* * * * *
テレビの中は、やはり大雨だった。
そして、イザナミとの戦いでメガネが消滅してしまった皆にとって、視界はひどく見にくいものとなっていた。
「クマは!? クマはどこにいる!!」
早速ズブ濡れの陽介が、周囲をグルグルと見渡しながら叫ぶ。
「ちっくしょー!! 見にくいったらありゃしない!」
千枝がしきりに目をこする。
「……む! あれは!?」
悠が見上げた高台に、一つの影があった。
「……また君たちか」
それは、留置場のトレーナー姿の足立だった!
「足立さん!」
一歩前へ出る悠。
「きっさま~、性懲りもなく!」
その横に並び出る陽介。
「今度は邪魔しないでほしいんだけどなあ。だってさ、別に君たちに迷惑かけてるわけじゃなし、ここに来た人たちは望んでシャドウになってるわけなんだし……」
飄々と言い放つ足立。
「シャドウになってる……だって!?」
足立の言葉に反応する悠に、直斗が追随する。
「被害者が全員、既にシャドウになっているとでも?」
「ああ、そうだよ?」
「……ふ、ふざけんなよ! てめぇ!!」
陽介が逆上する。
「そう興奮すんなって。……今回、ここに来た人たちはねぇ、み~んな人生に絶望してたのよ。心ん中じゃあ雨が土砂降り。だから僕が引っ張ってきてシャドウにしてあげた。……僕だってそうさ。いつまで経っても裁判は進まない。こっちが本当のことを言っても誰も相手にしないから、結局証拠不十分で振り出しに戻っちゃう。……しらけるよね~! せっかく罪を償おうとしてたのにさあ、そのチャンスを向こうが与えてくれないんだもんね」
「……だから脱走したと言うんですか?」
唇を噛み締めながら、悠が問う。
「ハハッ。脱走なんてしてないよお? 気がついたら、またここにいたんだ。きっとさあ、神様が呼び戻してくれたんだろうね~。……ほらごらんよ、この素晴らしい大空を! 全てを洗い流してくれる恵みの雨を! ……もうモヤモヤした中途半端な状態なんてまっぴらだ。み~んな洗い流しちゃっえば、解放したその先には広大な闇がある! シャドウの世界だ! み~んなシャドウになってしまえば、こんなに気楽なことはないんじゃない?」
「……狂ってる」
雪子が苦虫を噛み潰したように呟く。
と、足立が雪子をキッと睨みつける。
「うるさいな、小娘が!」
雪子を罵るやいなや、足立の目がギラッと光り、顔面が青く変色した!
そして雪子の周りに突如水竜巻が発生し、そのまま雪子を呑み込んでいく!!
「きゃああああーーーーっ!!」
「ゆ、雪子!!」
駆け寄る千枝。
しかし、それより一歩早く水竜巻は雪子を呑み込んだまま地面に埋まっていった。
「雪子! 雪子ーーーーっ!!」
千枝、激しく叫びながら雪子が埋まってしまった地面をバンバンと叩く。
「きっさま~! 天城をどうした!! ……そ、そうだ! クマ! クマをどうかしたのもお前か!?」
激高する陽介。
と、青く変色した足立の頭からは、黒い角が三本生えてきていた。
「クマ~? ああ、あのポンコツかあ。あいつ、シャドウのくせに人間になりたいだなんて……、逆さまなんだよ! 人間なんて理屈こねて考えてばかりで、結局なんにも解決しない。そもそも解決するつもりなんてないんだよ! 考えるフリして、もっともらしいこと言って勝手に納得し合って、実はだ~れも満足してない。それでも何かを得たと勘違いして喜んでるんだ。……そんな表面ばっかりの理屈なんていらないんだよ! 絶望して、闇の底へ堕ちたらな~んにもなくなる。そうなったらもう考えなくてもいい。な~んにも考えずにやりたいようにやって、またこの大雨が洗い流してくれて、毎日お気楽に暮らしていけるんだ。……ああ、闇よ!絶望よ! もっともっと世界を覆ってくれ!!」
足立は、そう言いながら大きく両手を天に向かって掲げる。
降りしきる雨粒が足立の全身を鞭打ち、大きな稲光とともに、その姿は真っ青な蛇と亀が合わさったような不気味なシャドウ・ミズハノメと化した!
「こいつ……、完全にシャドウに取り込まれている……!!」
立ち尽くす陽介めがけ、ミズハノメは口からスライム状の水塊を吐く!
「あ、危ない!!」
陽介を庇って飛び出す直斗!
その直斗に、ドロ青いスライムが命中し、そのまま地面へと吸い込まれていく。
「な、直斗ーーーっ!!」
続け様に、ミズハノメは千枝にもスライムを吐きつける!
「ひゃっ!!」
油断していた千枝、あっという間に直斗同様地面に吸収されていく。
「さ、里中……!!」
うろたえる陽介の手をガシッと握る悠。
「……陽介、しっかりしろ!」
「ゆ、悠……」
「みんなを助けるのは、俺たちだ! ……行くぞ!!」
「お……、おう!!」
「ペルソナ!!」
まだ力が残っているのか半信半疑だった悠と陽介は、かつてのように高らかに念を送った!
すると、悠と陽介の背後に、イザナギとスサノオが姿を現した!!
「で……、出てくれた! ペルソナが、出てくれた!!」
「まだ俺たちには、力が……ある!!」
悠の叫びとともに、イザナギとスサノオが並んでミズハノメに向かって飛ぶ!
* * * * *
「し、師匠! ありがとうございます!!」
度重なる懇願を経て、ようやく完二に特別休暇の許可が出た。
しかし、それはわずか二日間である。
「状況を聞く限り、先輩たちはすぐにでも戦いに行ったはずだ。二日もありゃ十分! ……いや、そんなにかかってちゃ、クマを助けられない!」
完二は、あるものを手に稲羽市を飛び出し、一路東京へと向かった。
* * * * *
「もう一曲、いっくよ~~~っ!!」
都内の大会場では、りせのコンサートが最高潮を迎えていた。
ステージで躍動するりせ。
歌声は観客を魅了し、その想いは仲間たちへと馳せていた。
「(みんな、頑張って……!!)」
* * * * *
ミズハノメと戦うイザナギ&スサノオ。
巨大な亀の甲羅のような本体から青い大蛇が無数に飛び出したような、邪悪極まりない形態のミズハノメ。
イザナギとスサノオはその周囲を飛び回り、電撃疾風攻撃を繰り返す。
しかし、一向に決定打が与えられない。
「ちくしょう! 全く効かねーーーっ!」
「……まだだ!」
さらに一歩前へ出る悠。
イザナギに渾身の体当たりをすべく強く念じる!
黄金のオーラを纏い、イザナギがミズハノメの胴体に突っ込む!
しかし、無数の大蛇の口がバッと開き、強力な邪気を放出する!
跳ね返されるイザナギ!
悠も同体反応で傷つき、一瞬吐血した後、後方へ吹っ飛ばされる!
「……うっ!!」
そのスキを逃さず、ミズハノメは悠に対して毒の水流を発射する!!
「危ない! 悠ーーーっ!!」
陽介が悠のもとへと駆け寄り、その身体を庇う。
と、ミズハノメの毒水流が陽介に命中!
「うわああああ!!」
全身に攻撃を食らい、バタリと倒れる陽介。
「……よ、陽介ーーーーーっ!!」
悠が陽介のもとへ駆け寄る。
「陽介! 陽介ーーーっ!!」
陽介の肩を抱き、必死の形相で叫ぶ悠。
「……ゆ、悠……。だ、大丈夫……か」
「何言ってる!? お前、なんてバカな事を……!!」
「……バカ、か。そうだよな……。俺って、バカなくらい、お前のことが……、グッ!!」
吐血する陽介。
「陽介!!」
涙目で陽介を揺さぶる悠。
「……俺、お前を出会えて本当に良かった……。もっと……、楽しみたかったけど、な……、ハハッ」
「陽介!! 死ぬな!! 死ぬことは許さん!!」
悠の叫びも虚しく、陽介は静かに目を閉じていく……。
「……よ、陽介ーーーーーーーーーーっ!!」
目を閉じた陽介は、毒の水に包まれたまま、ブクブクと地面へと吸い込まれていった。
陽介を取り込んだ地表に蹲る悠は、肩を震わせながらゆっくりと顔を上げる。
「…………!!」
鬼の形相で立ち上がった悠、無言でミズハノメを睨みつける。
そして、背後で立ち上がったイザナギとともに、真っ直ぐにミズハノメに向かって走り出す!
「うおおおおおおおおおおおっ!!」
悠を追い越したイザナギは、ミズハノメに再度捨て身の体当たり攻撃!
と、突如周囲がグルグルと回り出し、悠はさらなる異次元へと放り込まれていった……!!
先程とは別の雨の空間へと移動した悠。
しかし、ここも視界は定まらない。
「こ……、ここは……!?」
周囲を見渡す悠。
と、ボーッとした中に、雪子が壁に貼り付けになっている姿が見えた!
「……あ、天城!!」
両手首、そして両足首が拘束状態の雪子に、黒い雨が上空から被弾していく!
そして、雪子の衣服が雨に溶かされ、次第にそのやわ肌が露となっていく。
と、目の前に現れた巨大なミズハノメ!
「何っ!?」
ミズハノメの本体に開いたいくつかの穴から亀の頭の如き触手が次々と飛び出し、雪子に襲いかかる!
亀頭形態の触手たちは、雪子の上下の口へと無理やり侵入していき、その胸をも締めつけていく!
「くそう! 」
触手たちは雪子の口中と陰部を激しく動き回り、バッと飛び出すとその先からドピュドピュッと白濁した液体を宙空に発射させた。
その液体が雪子の全身へと落ちていく。
と、白濁液を落とされた部分から、徐々に溶解していく雪子の身体……。
「ダメだ! ダメだあああーーーっ!!」
必死で雪子にしがみつく悠。
「……天城! 俺が……、俺がお前を清めてやる!!」
悠は、徐に自らの分身を露出させると、それを雪子の陰部に押し当てた。
こんな状況下でも、一瞬の内にMAX硬化する悠のダイヤモンドポール、それは瞬く間に雪子の中へと侵入していった!
激しく腰を動かす悠。
ジワジワッと光を放つ雪子の陰部付近。
「……ううっ!」
絶頂を迎えた悠は、分身を雪子から抜く!
そして、その先端から勢い良く発射される黄金のシャワー!!
黄金色に煌く悠の分泌液が雪子の全身にかかり、溶けかけていた雪子の身体が元に戻っていった。
ゆっくりと目を開ける雪子。
「……な、鳴上君」
「良かった。……ハッ!!」
安堵も束の間、ミズハノメは次に千枝の身体へと同じように触手攻撃を仕掛け始めていた!
瞬時に千枝の方へと移動する悠。
イザナギでミズハノメを千枝から引き離し、千枝の陰部にも悠の浄化挿入が行われる!
悠液シャワーを全身に浴びる千枝。
そして、千枝も自我を取り戻す。
「鳴上君……、ああ……」
千枝を助けてふと気付く悠。
「……ということは、直斗もどこかに! いや、もしかしたら陽介も……!!」
雨の中を走る悠。
その上では、イザナギが周囲を見渡しながら飛ぶ。
と、イザナギが何かを見つけたように前の方を指さす。
「……向こうか!」
イザナギの指さす方へ走ると、そこにはやはりミズハノメの触手攻撃に合っている直斗が!
その身体は黒い雨に衣服を溶かされ、豊満な胸の上では亀頭型の触手がいやらしく蠢いている。
そして、直斗の陰部には複数の触手が出たり入ったりの状態!
「……イザナギ!」
イザナギがミズハノメを背後からガッシと捕まえ、直斗の身体から引っぺがす!
悠は素早く直斗に駆け寄り、まずは熱いキス。
直斗の顔色にみるみる生気が戻る。
そして、キス一つで激しく硬化した自らの分身を、汚れてしまった直斗の秘部へと挿入し、高速ピストン!
直斗の秘部付近が神々しい光を放ち、悠は徐に抜いたダイヤモンドポールからゴールデンシャワー!
悠の光の雨を浴びた直斗は、肉体を蘇生させてゆっくりと目を開く。
「……せ、せんぱ……い」
悠、直斗に笑顔をおくると、イザナギとともにまた駆け出していく。
「あとは陽介……、そしてクマだ!」
走る悠の先に、一つの棺のようなものがフワリと浮かんでいた。
「あれは……!!」
辿り着いた悠の目の前に現れたのは、透明の棺の中で消えかかっている陽介の姿だった!
「よ……、陽介!!」
そして、その陽介の上には、黒っぽい影が蠢いていたが、霞がかかったように『何であるか』判別できない。
「……イザナギ!」
悠の叫びとともに、イザナギが棺を叩く!
しかし透明の輪郭はビクともしない。
続け様に電撃攻撃を浴びせかけたが、これも無効化される。
「ちくしょう……!!」
と、宙空がバリン!と割れ、一つの影が悠の前に降り立った!
「……先輩!!」
完二が現れた!
遅れて駆けつけてきた完二が、戦いの痕跡を辿ってここまで追いついてきたのだ!
「完二!」
頼もしく完二を迎える悠。
「先輩、遅くなって済まなかったッス! ……これを!」
完二は、悠に手作りのダークグレーフレーム眼鏡を手渡した。
「これは……」
「先輩のために作ったッスよ。あの時クマに貰った眼鏡を解析して作ったんで、きっと見えるはずッス!」
完二は、そう言いながら自分も新たな眼鏡をかける。
悠、受け取った新しい眼鏡をかけると、土砂降りで薄暗かったこの空間が途端クリアに広がった!
そして、透明の棺の中で蠢く黒い影も、その姿をはっきりと映し出した!
「……よ、陽介の……シャドウ!?」
棺の中では、邪悪な表情のシャドウ陽介が、消えかかっている裸体の陽介を犯している最中だった!
「うわっ! 何だ、アイツは!?」
驚いて一歩退く完二。
「……陽介は、さっき、足立さんが変化したシャドウの毒を受けて倒れたんだ。その時、俺に人生最期の如きセリフを言ってきた。つまり、もう助からないと絶望したんだろう。……この世界では、人間の絶望感がシャドウを生むらしいので、きっと陽介自身の新たなシャドウが生まれて、本体を取り込もうとしているんだ」
悠の言葉に、思わず目を見張る完二。
「……しかし、状況がどうであろうと、陽介は生きていた! 生きていたんだ! ……こんなに嬉しいことはない!!」
無口な悠が、陽介の存命を確認した喜びで涙ながらに捲し立てる。
「完二、頼む! あのハコを壊してくれ!!」
「よっしゃ! ……ペルソナ!!」
完二の叫びとともに、ロクテンマオウが姿を現した!
そして、陽介が捕えられた棺を、ロクテンマオウが力いっぱい叩く!
ガシャーーーン!!
透明の棺が粉々に砕け散り、キラキラした結晶となって周囲に飛び散る。
振り返るシャドウ陽介。
「お前などに、陽介は渡さない!!」
イザナギがシャドウ陽介の首根っこを掴み、そのまま地面に叩きつける!
そしてシャドウ陽介に馬乗りになり、パンチの雨あられ!
「陽介の絶望を払うのは……、俺だ!」
悠は所々モザイクのように消えかかっている裸体の陽介に抱きつき、唇を重ね合わせる。
そして、首筋から胸元、腹から陰部へと、愛撫の川を築く。
悠の愛撫により、陽介の肉体が上半身から順に実体を取り戻していく。
その様子を見た完二は、一瞬驚いたものの納得した表情でウンウンと頷く。
「やっぱり……か」
血色良く、見事に美しき肉体を復活させた陽介が、静かに目を開く。
その時、悠はまだ陽ペニを口中で浄化作業中であった。
「……う!」
ピクッと動いた陽介の身体に気付き、悠が顔を上げる。
そして、陽介がゆっくりと上半身を起こす。
「……ゆ、悠」
「陽介……、陽介……、陽介!!」
悠は無我夢中で陽介に抱きついた。
「陽介! 良かった……、良かった……!!」
「悠……。助けてくれたんだな……、ありがとう」
「バカヤロウ! 当たり前だ!! ……もうダメだなんて、二度と考えるんじゃない! お前には、俺がついてるだろ!」
陽介に抱きついたまま、涙を流して歓喜する悠。
「悠……、ありがとう。ありがとう!」
陽介もまた、悠を強く抱き返す。
「……先輩たち! 水を差すようで悪いんですが、早く奴を追わないと……!」
完二が、少々遠慮気味に二人に叫ぶ。
「そ……、そうか! クマが……!! ……イザナギ!」
シャドウ陽介を完全KOしていたイザナギが、ビュンと空中高く飛び立つ!
* * * * *
今夜のコンサートが終わり、りせが控室に戻ってくる。
「ふう……。私の歌声、ちゃんと届いてるかな……」
と、バタバタとマネージャーが入ってくる。
「……りせちゃん、大変だ! この後収録予定だった『コーン・オームラの爆笑対談』だけど、オームラさんが急に都合つかなくなって収録延期だって!」
「えー、そうなの!? オームラさんと会うの、楽しみにしてたのにな~」
「でもまあ、これで次のスケジュールまで丸一日空いたわけだから、この際ゆっくり休んでおいたら? ……じゃ、そういうことで!」
シュタッと手を挙げて、マネージャーが部屋を出ていく。
これで自分も休めるということもあり、マネージャー自身も少し嬉しく思っているのだろう。
と、りせがポンと手を打つ。
「そうだ! この間に、みんなのところに行けるかも……!!」
勇んで控室を飛び出すりせ。
「……確か、第2リハーサル室に大型テレビがあったはず!」
第2リハーサル室目指して走るりせ。
そして、運良く誰もいない第2リハーサル室に入ったりせは、壇上にある大型テレビの前に立つ。
「ここからでも、きっと行ける……」
モニターに手を伸ばすりせ。
すると指先の周囲に波紋が広がり、徐々にモニターに入り込んでいくりせ!
* * * * *
悠のゴールデンシャワーによって、衣服まで完全復活した雪子、千枝、直斗が駆けてくる。
「鳴上く~ん!!」
千枝を先頭に、三人は悠、陽介、完二のところに集結した。
陽介もまた、悠のゴールデンペッティングの威力によって、肉体とともに衣服も完全復活していた。
「みんな揃ったな。しかし、奴の居場所をどうやって……」
と、まるで悠の言葉に応えたかのように、空中からカンゼオンをレーダー装着したりせが降ってきた!
「みんな~! おっまたせ~~~っ!!」
「りせ!!」
悠を筆頭に、来ないと思っていたりせの姿に、皆は満面の笑みを浮かべていく。
「りせ、頼む! 足立さんが変化したシャドウを追うんだ!」
悠の言葉を受け、りせはカンゼオンのレーダー機能を発揮させる。
「オッケー! ……ん、いた! これだ!!」
カンゼオンのレーダーがミズハノメの姿をを捉える!
「気持ち悪い奴発見! ……ん~、こことは、世界の階層が違うみたい」
「行けるか?」
「うん! みんな、自分のぺルソナと、一体になって!」
りせの言葉に頷いた陽介、千枝、雪子、直斗が叫ぶ!
「ペルソナ!!」
それぞれの背後に現れる、スサノオ、スズカゴンゲン、アマテラス、ヤマトタケル!
「みんな! ペルソナの手の上に!!」
りせ以外の五人が、それぞれ自分のペルソナの手の上に飛び乗る。
そして、カンゼオンを先頭に時空の壁を超える!
雨が降りしきる異次元世界。
そこで、さらに肥大化して呻いているミズハノメ。
傍らでは、クマのペルソナ・カムイが真っ黒な姿に変わっており、その真下には首、同体、両手足がバラバラにされたクマがいた……。
と、そこへ自称特別捜査隊の七人が、時空の壁を突き破って現れる。
「見つけた!」
身を乗り出す千枝の目には完二製作の新しい眼鏡が。
七人がジャンプして地面に降り立つ。
皆の目にはそれぞれの新しい眼鏡が着装されており、クリアになった視界ではミズハノメがさらにグロテスクに見える!
「……クマ!!」
バラバラになったクマを見つけて、陽介が叫ぶ。
「クマ!!」
「クマちゃん!!」
皆も、口々にクマに呼び掛ける。
しかし、クマからの返事はない。
「くっそ~! よくもクマを!!」
激高する陽介が、スサノオを突進させる。
「……陽介! 早まるな!」
悠の制止も聞かずスサノオが単独攻撃をかけるが、簡単に跳ね返される。
「うわっ……!!」
スサノオとともに後方に吹っ飛ばされる陽介。
「りせ、アナライズを」
ジッとミズハノメを睨みながら、悠がりせに命じる。
カンゼオンのレーダーを作動させるりせ。
「名前はミズハノメ……、何コレ!? 弱点が……ない!?」
「そんなバカな!? 水系だろーが! 俺と先輩の電撃でダメなのか!?」
完二がりせに詰め寄る。
「ダメ……。本体の甲羅が全ての攻撃を跳ね返すみたい……。相手の必殺技は……、『幾億の絶望』!?」
「それだ。それでさっき陽介たち四人がやられかけた。……絶望の淵には、絶対迷いこんではならない!」
悠が、改めて全員に意識を強く持つよう呼びかけた。
「しかし、一体どうやって立ち向かえば……」
直斗が唇を噛み締める。
と、突如天が真っ二つに割れ、巨大なイザナミの顔がそこから覗き出てきた!
「お前は……!!」
悠がイザナミを見て反射的に身構える。
「……久しぶりですね。あの時はお見事でした。私は人の『絆の力』というものを目の当たりにし、その先にある真実をあなた方に託して敗北しました。……しかし、絆というものは絶対ではありませんでした。確かに我々神の力をも凌駕する強大な力ではありました。それでも、その力は実は至極局地的なものであったことは否めないでしょう。その後も、人の心の中にはシャドウとなるべき『陰なる心』が幾多も見え隠れしました。そして、それは『絶望』に行きつくことによって闇を解放し、考えることを必要としない『無』の快楽へとつながったのです。こうなってしまっては仕方がありません。私はあの時利用した足立という男を再び媒介にして、人の『絶望』によって世界を形成しました。……ここは、一見暗く陰湿な世界に見えますが、その実、人の本質をそのまま浮き彫りにして真の快楽を『無』という形で現実化した理想の世界と言えませんか? ……さあ! あなた方も、一緒に『無』の世界で究極の快楽を味わいましょう!」
イザナミが言い終わると同時に、ミズハノメがさらなる『幾億の絶望』を発動させた!
空中を徘徊する大蛇の口から発せられる毒水噴射!
そして、亀頭型の触手が何本も本体の穴から飛び出して悠たちを襲う!
「みんな! ……心を強く持て!!」
悠が一心に叫ぶ!
そして、七人は互いに手をつなぎながら輪になっていく。
その輪の外側では、それぞれのペルソナが悠たち捜査隊の七人を守る!
ミズハノメの発した毒水、そして触手を、七体のペルソナが寸前で弾き落して防御していく!
そして、悠がイザナミに問いかける!
「確かに人に絶望感はある。だが、一旦絶望しても『諦めない心』があれば人は立ち直れるんだ! 人は、仮に絶望の淵に追いやられたとしても、必ず立ち直る。倒れても倒れても、罪を赦し、仲間の助けを得て、自分自身の真なる力で何度でも前へ前へと進むんだ! 不完全であるが故、人の可能性というのは無限大なんだ!!」
「では跳ね返してみよ! 人の子よ!!」
さらに激しくなるミズハノメの攻撃!
しかし、ペルソナ防御の壁は崩れない。
「……何だと!? 何故そこまでの力が……!!」
目を瞑って念じていた七人が、カッと目を見開いて叫ぶ!
「愛をもって……、夢をもって……、みんなを赦して!」
りせが菩薩の如く叫ぶ!
「漢の力で……、そして優しさで……、みんなを赦せ!」
完二が魔王の如く叫ぶ!
「諦めることなく……、ロジカルに……、みんなを赦して!」
直斗が騎士の如く叫ぶ!
「強い意志で……、信じる心で……、みんなを赦して!」
雪子が女王の如く叫ぶ!
「勇気をもって……、守る心で……、みんなを赦して!」
千枝が戦士の如く叫ぶ!
「吹きすさぶ風のように……、燃え盛る炎のように……、みんなを赦せ!」
陽介が魔術師の如く叫ぶ!
「現実と向き合い……、真実を求めて……、みんなを赦せ!」
悠が大天使の如く叫ぶ!
七人の渾身の叫びとともに、自称特別捜査隊最強の合同攻撃スキル『幾兆の告解』が発動!
七体のペルソナから眩い光が放たれ、ミズハノメの全身を包み込む!
「グア、グアアアアアアアアーーーーッ!!」
光の力が闇を打ち消し、ついにミズハノメは四散!!
そして降り続いていた雨が止み、空は明るく晴れ渡った。
「……またしても敗北です。しかし、私はいつでも人のあるべき姿を見ている。それを忘れぬよう……、さらば、人の子よ!!」
消えゆく天空のイザナミ。
そして、バラバラだったクマの身体が元に戻り、カムイも色彩を取り戻してクマへと吸収される。
「ク、クマ~~~~ッ!!」
陽介が泣き笑いながらクマのもとへと走り、ガシッとクマを抱き締める。
「ヨヨヨヨ~スケ……」
自我を取り戻したクマも、涙を流して皆に感謝する。
「……センセイ、みんな、どうもありがとうクマ。クマ、この世界を守るために色んなことを考えたクマ。……でも、その内に訳が分からなくなってきて、気がついたら誰かにペルソナをシャドウに変えられて、もう考えても無駄だって思っちゃたクマよ……」
嘆くクマに、千枝と雪子が近付く。
「泣かない泣かない! クマには私たちがついてるじゃん!」
「そうそう。私たち、離れててもいつまでも仲間だから……、」
「ありがとうクマ、千枝ちゃん、雪ちゃん……。クマ、これからはもっとしっかり考えるクマ! この世界を、もっといい世界にしてみせるクマよ!」
息巻くクマに、悠が寄り添う。
「クマ……。焦らなくていい。お前は、お前に出来ることを精一杯やればいいんだ。苦しい時は助け合えばいい。俺たちだって、時には間違った行動をこれからもしてしまうだろう。その結果、イザナミがまた現れるかもしれない。だけど、人の可能性は無限大なんだ。何度でも何度でも、俺たちの力で跳ね返してみせるさ!」
悠の言葉を聞き、皆が幸せいっぱいの表情で頷き合う。
「よっしゃあ! じゃあ、元の世界に帰って、今夜は悠んチで盛大に鍋パーティーでもやろうぜぃ!!」
「……えっ!?」
陽介の提案に一瞬ギョッとしながらも、軽く溜め息をついて口元を緩める悠であった……。
* * * * *
悠の部屋では、人間体で参加のクマも含め全員集まっての鍋パーティーが行われていた。
みんな疲れているし、ここは安全にまともなものを!という全員一致意見の下、今夜は手作りではなくスープや具材をスーパーで仕入れての簡単鍋パーティーということになった。
広い洋間でテーブルをくっつけて、何故か豊富に揃っている食器類を駆使して盛大に飲み食いする捜査隊メンバーたち。
と、悠が少し離れたところで携帯電話で何やら通話。
「……そうですか。で、命に別状は……、良かった。……はい。分かりました。……いえ、こちらこそ、ありがとうございました。では……」
電話を切る悠。
「悠ーっ! 誰からだった!?」
千枝と肉の取り合いをしながら、陽介が問う。
「ああ、堂島さんからだ。さっき、留置場付近に倒れている足立さんが見つかったそうだ」
一瞬黙り込み、悠の方を見る全員。
「……かなり消耗しているみたいだったけど、命に別状はないらしい」
そう言いながら、鍋の席に戻る悠。
「また裁判は振り出しに戻りますね」
神妙な面持ちの直斗。
「足立さん、もう一度改心してくれるかしら……」
日本酒の入ったコップをつつきながら、雪子が呟く。
「……ま、なるようになるんじゃねーの? んなの、ここで考え込んだってしょうがねーよ、本人自身の問題だからな!」
陽介がズバリと言い放つ。
「そうだな。……信じよう、人の力を」
悠の言葉に、改めて皆が頷き合う。
「さ! それより今日は朝まで飲みまくろうぜ~!」
「ゲッ! 何言ってんの? 花村! ……でもまあ、いいっかあ!」
「私も……、今夜は大丈夫……」
陽介の発言に、千枝と雪子が同調する。
「私も、明日までオフだからOK!」
「俺も、あと一日休暇貰ってますからいいッスよ~」
「……僕も、問題ありません」
りせ、完二、直斗も同意する。
「クマはぁ、いつでもウェルカムクマ~!」
当然のように、クマが能天気に答える。
「お、おい……、そりゃあ、俺も明日は授業ない日だけど……。ま、いいか」
仲間との楽しい時間はそうない。
悠も、この夜を目一杯楽しもうと座り直した。
と、そこで異様な目つきがいくつか刺さってくる気配を悠は感じた。
「(フフ……、みんなのスキを盗んで、今日は悠センパイのアソコをゲットしちゃうもんね~)」
「(花村先輩助けた時の先輩、カッコ良かったな……。俺も、今夜は一度先輩と……)」
「(昨日は中途半端に終わっちゃたし……、今日は先輩の胸に飛び込んで……)」
「(助けてもらった時の鳴上君の感触が、今でも私の身体に残っている……。今夜は……)」
「(やっぱ鳴上君って、花村とは違うなんか特別なものがあんのよね~。いっちょやってみっかあ~)」
「(な~んてね、適当に飲んでみんな潰しちゃたら、あとは悠とお・た・の・し・み!)」
りせ、完二、直斗、雪子、千枝、陽介それぞれの思いが、テレパシーの如く悠に伝わり、思わず股間に悪寒が走る。
タジタジと後ろへ体躯をズラしていく悠。
今までで最大の難関が待ち受けていることを肌で感じ、思わず天に祈った。
「……イザナミ! 俺を赦してくれるか!?」
異次元の彼方から、イザナミの「ダメです」という切ない言葉が聞こえた気がした悠だった……。
(了)