第十三話「JK・後」
女性が女性たる所以の一つとして、柔く膨らみを持った胸部に溜め込まれた脂肪分であることは今更に言わずも周知の事実。
そして東風谷早苗という少女に関して言うならば、その特徴は他の者に比べてやや自己主張の程が目を見張るものがある――故に、
「どうですか、わたしのJKパイズリの具合は?」
「すごい柔くて……うっ」
標準よりも些か大きめな部類に属するであろう玉男の魔羅を容易に包み込んで見せることができるのである。しかし、特筆すべきは大きさだけではない。
色白な肌はまるで大福の薄皮か、それともゴム毬の表面か――幾分か張りによる弾性を残しつつも主だって玉男の下腹部から力を虚脱させて行く事由に当たるのは、やはり柔さ。
シミや傷の一つだって付いていない珠の様な白色が内包するのは餡子か空気か、それとも水か。
「ふふ――すっごく、だらしない顔になってますよ?」
「いや、これは誰でも――やばいっ」
唐突な絶頂――いや違う、彼の身体は遠の昔に予兆を報せていたのだ。
それならば何故、彼は自らの快感が最高潮に達するのを悟れなかったのか。理由は簡単、胸に挟まれて性器を刺激されるなど玉男にとっては初めての経験だったのである。
そして恐らく、彼の頭の内にはこのような行為に対するある種の憧れもあったのだろう。自分にはない身体的特徴、女性の象徴でもある乳房によって快楽の行き着く終着点へと至るという。
さながら圧死である。と、彼は鈍った頭を巡らせて告げる。
「なら、わたしは殺人を犯してしまったことになっちゃいますね」
もしも彼の頭が曖昧な感覚に囚われる前ならば、今の早苗の恍惚な表情を意外に思ったのかもしれない。彼女が先刻に告げた「初めて」という言葉に端を発して。
白濁液の滴る胸の境に指を這わせると、黄味がかったジェル状のそれは早苗の人差し指に絡みつく。まるで放出された先が思い望んだ場所ではなかったが故に、生が尽き果てる前にどうにかして女性の中へと入り込もうとしているかのよう。縋り付いている、とも言える。
しかし彼らの望みは、早苗の内で昂る感情のさせた所業によって形は異なれど叶う運びとなる。
「んっ――しょっぱぁい」
人差し指の先端を咥えると言う。
「はは……ここの世界の女の子は皆、けっこう性に対しては積極的なんだな」
「知らないんですか? 女子だって男子に負けないくらいエッチなんですよ」
片方の翡翠はまぶたに覆われ、舐め取った人差し指をそのまま唇に当てがい、舌を出して微笑む早苗。茶目っ気、というよりも彼女の歳の頃の場合、それは愛らしさや愛嬌と呼ぶに相応しいだろう。
正座した態勢の早苗はももの上に乗る玉男の臀部をゆっくりと身を引くことで畳の上へ優しく降ろすと、立ち上がり際に続ける。
「ほら」
服の裾を手繰り、その内で控える自らの恥部を晒す。髪の色と同様、先ず玉男の目を奪うのは鮮やかな深緑。次いで彼の視線に杭を打つのは淡い桜色の裂け目だった。
陽が暮れる頃も過ぎたある時、疲弊しきった様子の霊夢が神社の石畳に降り立った。やや背を丸め両肩から力を排した様子がその度合いを物語る。
「はぁ……結局は咲夜のお惚気話が大半だったわね」
紅魔館で過ごした時間を振り返った霊夢が吐息を漏らすと、不意に上げた視界の先で縁側に座して手を振って来る人影が見えた。
「ま、いいか」
垂れ下がった目尻をやや持ち直させた霊夢はゆったりとした歩速で人影へ向かう。
しかし、これから彼に告げられるであろう自身の不在時に起こった不祥事について、果たして今の彼女は許すことができるのだろうか。そんな危うさの行く末は、ハラハラと瞬きながら見守る星々のみしか知ることはなかった。