第九話「ドールプレイ・中」
ベッドの上で仰向けになる少女の震える指先に絡みつくたくましい指の感覚が、知り得ない世界への不安を幾ばくか和らげてくれる。
不快とは思わない強引さで自分の首筋に舌を這わせる男の姿に、少女――アリスはこれまで感じ得たことのない身悶えしてしまいそうになる感覚に身を委ねながら考える。
湿り気を伴う熱く柔い舌先の愛撫が顎を伝って口元へ迫ると、アリスは自らの舌でそれを迎え入れる。
一度目に先端が触れ合うと、今し方感じた互いの味をさらに求め合うようにして二度目は激しさを増して絡み合う。
「んっんっ……玉男」
舌を絡ませ合う刹那、自然と相手の名前を口にしていることに気付くと、そこからアリスの思考は曖昧になる。真っ白に白濁する脳内はただ純粋に、さらなる快楽を求めて彼女の身体を動かす。
無意識のまま下腹部に向かわせる右手の指は、構わず青いスカートの上から敏感になっている股下をこする。
「本当に始めてか?」
すると、舌を絡ませていた男の顔が離れ際に告げてくる。
「え、指が勝手に……」
自分でも分かるくらいに熱を帯びた顔を横に向けるアリスは、その言葉を告げてからしばらく閉口を保つ。
「以外と――エッチなんだな」
「うぅ……ひゃっ?!」
恥ずかしさに目を閉じた瞬間、下の方から胸を掴むようにして優しく揉まれ、思わず短い悲鳴を上げてしまう。
服の上からでも分かる先程たくましいと感じた手の感覚は硬く、しかしその動作は柔らかさを覚える程に遅速でいて優しい。
「けっこう大きいんだな」
「い、言わない、で……んっ」
優しいと感じた手付きが力強さを携え始めるとアリスの右手は、またしても快楽を求めて身勝手に動き出す。が、その手が不意に掴まれてしまう。
「勝手に気持ち良くなるのはダメだよ。これはエッチの時の約束なんだ」
「し、知らなかった……」
だが、その直後に吹き出して笑う男の姿で気付く。今の発言が真実ではないこと。
「あ、嘘なのね?」
「ごめんごめん……でも今は我慢した方が、後で触られた時の気持ち良さが大きくなるのは本当だぞ」
どこか含みのある言い方であると勘繰るも、服の裾から男の手が差し込まれる感覚の方が優先的に思考の舞台へ上がった。
「あっ……んんっ」
服の中へ侵入して来た男の右手がアリスの胸に直で触れると、先とはまた毛色の異なった感覚が脳内を駆け回る。
乳房の周囲を揉みほぐして登って行く指先が頂点へ達すると、鋭敏な先端部を二本の指でつまんで来る。その瞬間、アリスの身体はビクッと身悶えする。
「そこ、だめぇ……敏感、んっ……なの」
「気持ち良さそうな顔も可愛いよ」
その声が耳に届いた後、アリスの口内にも再び男の舌が侵入してくる。
そうなった頃には頭の中は完全に真っ白となり、いつもは人形を操る彼女が皮肉にも、男の為すがままのラブドールへと変容して行った。