※この作品はR-18です。

超古代の星   作:サマエル

6 / 14
燃ゆるシャンゼリゼ

「いい朝だなぁ………。」

 

大きく背伸びをして、大神は爽やかな朝の日差しを満喫した。

オペラ座におけるマスク・ド・コルボーとの戦いの後、怪人達の事件はパッタリとなくなってしまった。

 

「米田司令なら、こんな時『治にいて、乱を忘れず』と言うだろうな。」

 

大神は、今や遥か東の地にいる恩師の言葉を思い出した。

平和な時にこそ油断しない。

以前もそのために、降魔に敗退した苦い思い出がある。

あのような二の舞になるのは、真っ平御免だ。

 

「さて、今日の昼はみんなでランチだったな………。」

 

カレンダーを見て、大神は支度をはじめた。

ちょうど今日の日付の所に、赤い丸印が付けられている。

 

「大神さ~ん!!」

 

「お、もう来てしまったか………。」

 

下から聞こえるエリカの声に、大神は支度を急いで下へ向かった。

 

「遅いぞ隊長。あまり人を待たせるな。」

 

下には既に、五人の隊員が揃っていた。

 

「それじゃあ、何を食べに行こうか。」

 

巴里にはフランス料理だけでなく、様々な国の料理がより取り見取りに揃っている。

人気の店では並ぶ事もあるので、出発前にある程度決めてかかるのがセオリーというものだ。

しかし………、

 

「北欧料理はどうだ?バイキングの本場の味を教えてやろう。」

 

「ベトナム料理がいいな。辛いけど、とっても美味しいんだよ!」

 

「何言ってんだ。ここは酒だろ。近くにいいバーがあるんだ。」

 

「駄目ですよロベリアさん。ここはお酒よりもプリンです!」

 

「そ、そうか………。じゃあ花火くんは?」

 

「私ですか?大神さんのお決めになったものなら何でも構いませんわ。」

 

計ったかのようにバラバラになる隊員達。

この巴里華撃団というチームにおいて、大神の抱えている不安はそれだった。

 

「(巴里華撃団は、何かしようとするとすぐバラバラになってしまう。隊長として考えなければ………。)」

 

これまでの戦いも、チームワークの低さからピンチを招いた事があった。

ティガの助太刀もあって乗り切れたが、今度もまた同じように勝てる保障はない。

そして大神の不安は、この後現実に変わる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………今日から二日間の休日か。何をして過ごそうかな?」

 

翌日、大神は行きつけのカフェでクロワッサンを頬張っていた。

実は昨日の夜、グラン・マから二日間の特別休暇を貰ったのだ。

グラン・マは隊員達とデートを楽しめと言っていたが………。

 

「ん………?」

 

そう考えていた時、大神の耳に聞き慣れたギターの音が聞こえて来た。

 

「巴里はいいなぁ~。………パン硬いけど。」

 

帝都でも以前あったシチュエーションに、まさかと思い振り返る。

すると、そこには大神のよく知る人物が東京タワーの書き割りをバックにフランスパンをかじっていた。

 

「元気そうだなぁ大神!!」

 

「か、加山じゃないか!!いつフランスに来たんだ!?」

 

そこにいたのは、士官学校からの大神の親友、加山雄一であった。

帝都では花組を支援する諜報部隊、月組の隊長として活躍してくれた、頼もしい戦友である。

こんな呑気な性格に見えて、加山は危険な裏の仕事をこなすプロフェッショナルなのだ。

 

「実は海軍の研修旅行で、スイスに来てるんだ。」

 

「そうだったのか………。ありがとう加山、会えて嬉しいよ。」

 

懐かしい友との再会に、大神も笑顔を見せる。

すると、加山はいつもの調子で笑った。

 

「そうだろ、そうだろ、そうだろ!!じゃあ大神、今日は俺に花の都巴里を案内してくれよ!」

 

「いいとも。俺もちょうど休暇が貰えたからね。」

 

せっかく友人と再会したのだから、今日はデート云々よりその喜びに浸りたい。

大神はその思いから、加山の頼みを快諾した。

 

「古人曰く、『善は急げ』だ。さあ大神、連れてってくれ!」

 

相変わらずの親友に笑いながら、勘定を済ませる大神。

すると、そこにエリカとコクリコが現れた。

 

「大神さ~ん!おはようございます!!」

 

「おはようイチロー。まだ朝ご飯食べてたの?」

 

「おはよう二人共。今日はお出かけかい?」

 

大神が尋ねると、コクリコは嬉しそうに答えた。

 

「えへへ、今日はね、エリカを遊園地に連れてってあげるんだ。」

 

「そうなんです。コクリコに連れてってもらうんです。」

 

何だか立場が逆な気がしたのは大神だけだろうか。

 

「ところで大神さん。もしかしてそちらの方は、生き別れのお兄さんですか?」

 

不意にエリカが加山に気付いた。

コクリコも物珍しそうな表情で尋ねた。

 

「もしかして、イチローの友達?」

 

「ああ、紹介するよ。彼は加山雄一。俺の親友なんだ。」

 

月組の任務は極秘調査が基本。

従って、不用意にその正体を明かす訳にはいかない。

大神はその空気を読み、あくまで加山が自分の親友である事だけを伝えた。

すると、加山もそれに合わせて自己紹介を始めたのだが………。

 

「ボンジュール!ミーの名前はユーイチ・加山。日本で貿易商をやってるザンス!どうぞよろしくザンス!!」

 

「(ザ、ザンスって………!?)」

 

「どうぞ、よろしくザンス。私は、エリカ・フォンティーヌというザンス。」

 

「ボクはコクリコっていいます。よろしくね、加山さん。」

 

無言のまま固まる大神だったが、意外にも二人の受けは良かった。

特にエリカに至っては、ザンス口調を真似した程である。

 

「二人は、俺が世話になっているテアトル・シャノワールのダンサーなんだ。」

 

「なるほど、そうだったザンスね。二人共綺麗と思ったザンスよ。」

 

うんうんと頷く加山。

すると、エリカが尋ねた。

 

「それはいいとして大神さん。明日の休みは何してるんですか?」

 

「え?まだ決めてないけど………。」

 

唐突な質問に答える大神。

すると、コクリコが目を輝かせた。

 

「本当!?へー、そうなんだ………。」

 

「それじゃ、先に失礼しますね。」

 

そう言って、何やらニコニコ顔でカフェを後にする二人。

その後ろ姿が見えなくなると、加山がふと真顔に戻った。

 

「な、なんだあのエリカという娘は。なんか掴み所がないな………。」

 

「エリカくんは、そういう娘なんだよ。」

 

流石の加山もザンス口調を真似されるとは思わなかったらしく、呆然とする。

それが痛い程分かる大神は、したり顔で答えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長ではないか。こんな所で何をしているのだ?」

 

「おはようございます、大神さん。」

 

最初に加山をシャノワールに案内した大神は、入口の所でグリシーヌと花火の二人に出くわした。

やはり見慣れない日本人が後ろにいるためか、二人の表情はいつもよりやや硬い。

 

「ああ、帝都から友達が来たから、巴里を案内しているんだ。」

 

その空気を読み、加山を紹介する大神。

すると、加山は再びザンス口調で自己紹介をはじめた。

 

「ミーの名前はユーイチ・加山!どうぞよろしくザンス!」

 

「は、はい………私は北大路花火と申します。」

 

「私はグリシーヌ・ブルーメール。巴里を守る貴族だ。」

 

やはりザンス口調が気になるのか、花火は僅かに戸惑いながら返し、グリシーヌは鋭い視線で加山を見た。

 

「ところで大神さん、明日の予定は決まっていますか?」

 

「え?」

 

「わ、我々は休みとはいえ気を抜けん!貴公の予定を聞くのも任務だ。」

 

そうは言うものの、赤い顔でそっぽを向かれては説得力に欠ける。

大神は微笑みつつも余計な口出しをせず、一言で返した。

 

「いや、予定はないよ。」

 

しかし、返って来たのは意外な人物の返事だった。

 

「そうか………、明日は暇なんだね。」

 

「ロベリア!いつの間に!?」

 

それは、何とロベリアだった。

今まで影も形もなかった人物の登場に大神は驚く。

その表情を満足げに眺めながら、ロベリアはヌケヌケと言った。

 

「アタシは神出鬼没が信条さ。覚えときな。」

 

そう言ってその場を立ち去るロベリア。

しかし、それをよしとしない者がいた。

グリシーヌである。

 

「ロベリア!盗み聞きなど許さん!成敗してくれる!!」

 

毎度毎度どこから出したのか、斧を振り回してロベリアを追いかけるグリシーヌ。

流石の加山もその様子に呆然としている。

 

「………それでは大神さん、加山さん、失礼しますね。」

 

花火も一礼してその場を後にする。

 

「ず、随分個性的なメンバーの揃った店なんだな………。頑張れよ、大神。」

 

「ありがとう、加山………。」

 

気遣かってくれる加山に、大神は心から礼を述べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、ダイゴとピエールは近くの公園で草むしりのボランティアをしていた。

やたら広い公園の淵にある花壇の雑草を抜いていくだけの簡単な作業なのだが、やたら日差しが厳しく、すぐに体力を奪われてしまう。

そんな中、ピエールがふとダイゴに尋ねた。

 

「どうしたんだい、ダイゴ。やけに楽しそうだけど?」

 

「え?そうかなぁ………?」

 

振り向いたダイゴの顔は、いつにも増して上機嫌に笑っていた。

それもそのはず。

実はダイゴは今日の朝、外ならぬエリカからこう言われたのだ。

 

「ダイゴさん、明日は予定入れてますか?ないなら私と何処かお出かけしましょう!」

 

つまりは、エリカにデートに誘われたのだ。

今まで大神にのめり込んでいたエリカが久しぶりに自分を誘ってくれた事に、ダイゴはこの上ない喜びを噛み締めていた。

 

「あのエリカさんがねぇ………。」

 

手を休めないまま、ピエールが呟いた。

 

「でも、お出かけでしょ?本当にデートなのかな?」

 

「きっとそうだよ。何か今からワクワクしちゃうなぁ………。」

 

ようやく大神からリードを奪える状況が来た事に意気込むダイゴ。

その影響からか、ダイゴの草むしりのスピードはピエールのそれを大きく上回っていた。

 

「………それならいいんだけど。」

 

エリカは他の人間と比べて何処かズレた所がある。

お出かけと言う事が果たしてデートと結び付くかどうか。

相手がエリカではその保障はなかった。

そんな心配をするピエールをよそに、ダイゴはせっせと草むしりを進めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて………。」

 

その夜、部屋に戻った大神はキマネトロンの前で考えていた。

内容はずばり、明日の予定だ。

元々デートなんて考えてなかったのだが、あの後加山に言われた言葉が印象に残っていたのだ。

 

「隊員達の事を知るのも大事な事だぞ?その努力もなしに、チームワークは語れないはずだ。」

 

確かに加山の言う通りだった。

かつての帝国華撃団でも、積極的なコミュニケーションをやって初めて、自分を中心に花組が一つにまとまったのだ。

裏を返せば、強力なチームワークが生まれるのには時間がかかる。

まだ結成して間もない巴里華撃団にチームワークが備わっていないのは、当然の事と言えた。

そこで、誰と交遊を深めるかなのだが………。

 

「………よし。」

 

しばらくキネマトロンを眺めていた大神は、何か決断した表情でスイッチを操作した。

すると、程なくして通信が繋がった。

 

「………ったく、誰だ?人が急いでる時に。」

 

右側のモニターに、ロベリアの顔が写った。

大神が選んだのは、ロベリアだったのだ。

 

「ロベリア。大神だけど………。」

 

「何だ隊長か?どうしたんだよ。」

 

上の大きな画面に変わり、ロベリアが尋ねた。

何か急ぎの用事でもあるのか、焦っているようにも見える。

 

「ロベリアこそ、何を急いでるんだ?まさか悪い事じゃないだろうな?」

 

「夜の仕事にヤバくないもんなんてねぇだろうが。」

 

呆れ顔のロベリアに、大神は小さく笑った。

 

「で、アンタは?聞くだけ聞いてやるよ。」

 

「ああ。ロベリア、明日は暇かい?」

 

そう尋ねると、凄絶に笑っていたロベリアの表情が驚きに変わった。

 

「は!?………もしかしてアンタ、アタシを誘ってんのか?」

 

「ああ。せっかくの休みだし、二人で何処か行こうかなと………。」

 

ロベリアは巴里華撃団の隊員ではあるが、戦闘時以外は常に一人で行動し、他の隊員達と関わりを持とうとしない。

そこで、彼女に少しでも協調性を持ってもらう事が、巴里華撃団のチームワーク向上に繋がると、大神は考えたのである。

 

「ふうん………。まあ、いいんじゃないか?」

 

幸いロベリアは、了承ととれる返事をしてくれた。

あの合理主義のロベリアの事、軽くあしらわれるかと心配していた大神は、内心胸を撫で下ろす。

 

「それじゃあ明日の10頃に、シャノワール前まで来てくんな。」

 

「ああ。それじゃ………。」

 

そう言ってキネマトロンを閉じる大神。

すると、再びキネマトロンに通信が入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ここは………?」

 

そこは、緑色の光に包まれた空間。

自分の他には何もない空間に、ダイゴは漂っていた。

 

「………パリシィの守護神………それは、光の使者………。」

 

「!?」

 

ダイゴの耳に、何者かの声が聞こえて来た。

 

「闇に覆われた悪しき都市を、何故守る………?」

 

「だ、誰だ!?」

 

謎の声に正体を問うが、返事はない。

 

「パリシィの御霊は都市を憎む。都市を守る者を憎む。」

 

「パリシィ………?何の事だ!?」

 

そう叫んだ時、辺りがまばゆい閃光に包まれた。

 

「哀れな裏切り者………。悪しき都市と共に滅びを迎えるがいい………。」

 

辺りが見えなくなる中、ダイゴが最期に聞いたのはその言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………変な夢だったな………。」

 

朝日が差し込む窓を開け、ダイゴは呟いた。

目の前にはいつものように、平和で長閑な巴里の街が広がっている。

 

「哀れな裏切り者………。悪しき都市と共に滅びを迎えるがいい………。」

 

脳裏に夢で聞いた言葉が蘇る。

 

「この街が………、滅びる………?」

 

所詮夢と言えばそれまでの話。

しかし、ダイゴにはどうしてもその一言であの夢を片付ける事ができなかった。

 

「………。」

 

不安げな表情で巴里の街を見下ろすダイゴ。

やがて彼の不安は、恐るべき形で現実になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ここがデート場所か?」

 

ロベリアの後ろに続く大神が尋ねた。

そこは、裏通りの奥にある一件のカジノだった。

ロベリアは大神に有無を言わせず、ここに連れて来たのだ。

 

「どうせアンタの安月給じゃ、ろくに遊べないだろ?だから資金を増やさないとね。」

 

「いいっ!?でも俺、ギャンブルなんてやった事ないぞ!?」

 

ギャンブルは当たれば一攫千金だが、負ければ何も残らない。

特にこういった所では、イカサマが平然とまかり通っている。

素人の大神は奴らにとって、絶好のカモだった。

 

「アンタは金を出しゃいいんだよ。アタシがやるんだから。」

 

やはり大神では全額巻き上げられる事を見越してか、ロベリアが言った。

 

「何だか財布扱いだな………。」

 

「何言ってんだ。女はデートにまで金を使う。男はデートに金を使うのさ。」

 

そう言って、ロベリアは大神を店内に引っ張り込んだ。

 

「………凄い店だな。」

 

「いいだろ?不健康そうで。」

 

店はさほど大きいものではなかったが、店に立ち込める酒やタバコ、弾薬の臭いが鼻につく。

最もそれを気にするのは大神だけで、ロベリアも他の客も平然としている。

つまりこの店にいるのは、大神を除いて全て裏の人間という事だ。

 

「アタシはポーカーで稼いでるから、アンタはそこでワインでも飲んでな。ただし………。」

 

ロベリアが顎で大神の座る位置を示した。

 

「アタシが眼鏡を触った時だけ、ワインを飲むんだよ。」

 

「眼鏡を触った時………?何故だ?」

 

怪訝な顔で尋ねる大神。

すると、ロベリアが大神の耳元で忠告した。

 

「こういう店にはね、ある種のしきたりがあるんだ。アタシの言う通りにしないと、命の保障はないよ?」

 

「わ、分かった。」

 

大神が頷くと、ロベリアは満足げに笑ってポーカーの席についた。

 

 

 

 

 

 

「(ロベリア………、大丈夫かな………?)」

 

大神はワインの継がれたグラスを片手に、ロベリアの様子を見た。

相手は背後に二人のSPをつけている事から、かなり裏の社会で高い地位にいる人間と分かる。

 

「………。」

 

その相手がカードを交換した時、ロベリアの手が眼鏡に触れた。

 

「(………あ、今だ………。)」

 

大神はロベリアに言われた通り、ワインを一口飲む。

すると、ロベリアはニヤリと笑った。

 

「二枚チェンジだ。」

 

「よし、ジャックの3カード。」

 

「残念、アタシはキングの3カードだよ?」

 

同じ3カードなら、数字の高い方が勝ち。

つまり、ロベリアの勝ちである。

それから、ロベリアは不自然な位に連勝を続け、大神の元本の30倍までに資金を増やしていた。

 

「(おかしい………、俺がワインを飲んでから、ロベリアは全く負けていない。)」

 

ロベリアの連勝には、間違いなく自分のワインが関係している。

そう不審に思った大神は、ワインを飲む姿勢でチラッとグラスを見た。

 

「(こ、これは………!)」

 

大神は仰天した。

何と自分のグラスに、相手のカードが写っているではないか。

ロベリアはこうする事で、コールとドロップを使い分けていたのだ。

 

「ロベリア!俺をイカサマに利用したな!?」

 

大神は乱暴にグラスをカウンターにたたき付け、ロベリアを睨んだ。

彼女の行為が、不正を許さない大神の侍精神に障ったのだ。

 

「なっ!?バ、バカ!アタシは知らないよ………!」

 

ロベリアは慌てて言い逃れようとするが、無駄だった。

驚いた様子と途切れた口調が何よりの証拠だ。

たちまち周りの店員達が、二人に銃を突き付けた。

 

「この店でイカサマを働くとは、どこの田舎者だ?」

 

「ふん、そのイカサマに引っ掛かる奴に、田舎者呼ばわりされたくないよ。」

 

四方から銃口を向けられたこの状況で尚、ロベリアは言い返す。

すると、男は凄絶に笑った。

 

「ほう、言ってくれる。どうやらここで死にたいらしいな。」

 

「止めろ。ばらしたのは俺だ。しきたり通りなら、俺を殺すのが筋じゃないのか?」

 

ロベリアを庇うように、大神が口を開いた。

イカサマ自体はばれなければ構わない。

ばれる、もしくはばらすような不届き者を始末するのがしきたりだ。

男は大神の顔に、意外そうに笑った。

 

「兄さん、いい目をしてるな。死線を潜って来た目だ。そういう奴は大好きだぜ。」

 

普通このように囲まれれば、大抵の人間は情けなく怯える。

しかし、大神は違った。

周りの銃を怯える様子もなく、しっかりと男を見据えている。

話し方も対等だ。

肝っ玉のある人間は、裏では好かれていた。

 

「よし、兄さん。ここは俺と引き勝負といかないか?」

 

「勝負?」

 

「二つのカードの山から一枚を引くんだ。相手よりでかい数字なら勝ち。分かりやすくていいだろ?」

 

言うや、男はトランプの山を二つ、テーブルに置いた。

勝負である以上、イカサマはないようだ。

 

「兄さんが勝てばイカサマはチャラ。負ければセーヌ河に沈む。どうだ?」

 

「いいだろう。」

 

大神は即答した。

ここで拒めば間違いなく自分達は死ぬ。

ならば、自分の運にかけて勝つ。

これまでの戦いのように………。

 

「よし、なら俺から引くぜ?」

 

男は左の山から一枚のカードを引いた。

出て来たのは、ダイヤのキングだった。

 

「キング………。兄さん、エースを引かなきゃ勝てないぜ?」

 

つまり、ここにある103枚の中から、一発で8枚のエースのいずれかを引き当てなければならない。

かなり追い詰められた状況に、大神の顔を一筋の汗が伝った。

 

「よし………!」

 

大神は数秒考えた後、右のカードを引いた。

考えなどない。あるとすれば、右が正々堂々と考えたから。

大神は自分の運に全てを賭けた。

そして………、

 

「………スペードのキング………。」

 

大神が引いたのは、男と同じキングだった。

 

「引き分けか………。」

 

ガックリと肩を落とす大神。

しかし、男は首を振った。

 

「いや、同じ数字の中で、スペードは一番強い。」

 

トランプにおいて、同じ数で引き分ける状況はよくある。

そんな時は、カードのスーツで勝敗が決まる。

その順番は、スペード、ダイヤ、ハート、クラブ………。

つまり………。

 

「この勝負………、兄さんの勝ちだ。」

 

男はやや驚いた様子で言った。

 

「やるじゃないか隊長!!流石アタシの見込んだ男だ!」

 

この結果に、ロベリアまでもが驚いた。

まさかギリギリのキングを一発で引き当てるとは………。

 

「参ったぜ、兄さん。………名前を聞かせてくれ。」

 

「大神一郎。隣の彼女はロベリア・カルリーニだ。」

 

すると、男は納得したように笑った。

 

「ハッハッハ………、なるほどな。あのロベリアの男なら、負けても不思議じゃねぇよ。」

 

「フフフ………、気づくのが遅いんだよ。」

 

満足げに笑うロベリア。

すると、大神が徐に立ち上がった。

 

「行こうか、ロベリア。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、あのつき方はただ者じゃない!流石は隊長だ。見直したよ!」

 

店を出るなり、ロベリアが満面の笑みを浮かべて見せた。

あの状況で同じキングを引き当てるのは、エースより難しい。

一体大神はどれだけ悪運が強いのか。

ロベリアは嬉しそうに笑っていた。

 

「ハハハ、ロベリア、随分ご機嫌だな?」

 

「あ、いや………え~と………。」

 

大神に言われ、ロベリアは珍しくばつが悪そうにそっぽを向く。

 

「で、でも元はと言えば、隊長がイカサマをばらすから………。」

 

「でも、あれもチームワークの一つかも知れないな。」

 

ふと、大神が呟いた。

イカサマは卑怯な行為だが、相手に気付かれないように神経を使う。

特に今回は、大神がタイミング良くワインをのまなければ成立しない。

事実上、チームワークに当て嵌まると言えば当て嵌まる。

 

「この期に及んでまだ仕事かい?アンタって本当に真面目だね………。見損なったよ。」

 

言葉と裏腹に、笑顔を見せるロベリア。

その笑顔に、大神も自然と笑顔になった。

その時、街に12時を知らせる鐘が鳴った。

 

「そろそろ、次のデートに行く時間だろ?」

 

「え!?知っていたのか!?」

 

突然の一言に驚く大神。

すると、ロベリアはやれやれとため息をついた。

 

「おいおい、かまかけに決まってんだろ?」

 

「な………!」

 

大神はしまったと思った。

ロベリアは知らない事をさも知っているように見せ掛けるかまかけが上手い。

今回もデートとは知らないが、時間を気にする大神にもしやと思ったのだ。

 

「にしても、人のイカサマに怒る奴がデートの梯子なんだ………。」

 

「う………。」

 

「見直したよ。じゃあな!」

 

痛い所を突かれて押し黙る大神にそう言って、ロベリアはさっさと裏通りを走り去って行った。

 

「………で、ちゃっかり財布はするんだな………。」

 

いつの間にか空になった服のポケットに手を突っ込み、大神はポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ダイゴさん遅いですよ!」

 

公園でダイゴを待っていたエリカが、大きく手を振った。

それを見て、ダイゴも手を振って走り出す。

 

「ごめんごめん。準備に時間かかっちゃって………。」

 

とは言っても、そんなに整えた訳ではない。

いつもの黒いシャツに白いズボンと、ラフな格好のままだ。

エリカは妙に着飾るより、普通の格好が好きなのだ。

 

「………で、何処に行くの?」

 

昨日エリカは、行きたい所があると言っていた。

ダイゴが尋ねると、エリカはキョトンとした顔で言った。

 

「あら、ダイゴさん忘れちゃったんですか?」

 

「いや、場所は聞いてないから………。」

 

相変わらずのズレた返事に疲れを感じつつ、ダイゴは返事を返す。

すると、エリカは思い出したように手を叩いた。

 

「あ、そうだ思い出しました!さあダイゴさん、行きますよ!」

 

言うや、エリカはダイゴの手を掴んで走り出した。

 

「ち、ちょっとエリカさん!?」

 

「ほら早く!時間がないんですから!」

 

ダイゴはそのまま、エリカに引っ張られる形で公園を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………遅いな。」

 

場所を再びシャノワール前に移し、大神は腕時計で時間を確認した。

既に約束の時間にはなっている。

確か昨日のキネマトロンでの通信では、待ち合わせは昼頃と言っていたはずだ。

別に遅れる事は構わないが、待ち合わせる相手が相手だけに来るかどうかが心配だった。

 

「まさか………、忘れてたりしないよな。」

 

心配そうに呟いた時、大通りの奥から声が聞こえて来た。

 

「大神さ~ん!!」

 

「あ………。」

 

見ると、大通りの奥からその人物がやって来た。

いつものように周囲を薙ぎ倒しながら現れる様に、大神は自然とため息を漏らした。

 

「エリカくん………、いつにも増して張り切ってるね………。」

 

「もちろんです!何たって大神さんと一緒なんですから!」

 

大神の前で胸を張って見せるエリカ。

すると、大神はその手に繋がれたもう一つの手に気付いた。

 

「ところでエリカくん………。何でダイゴも一緒なんだ?」

 

どうやら引きずられて来たらしく、ダイゴはボロボロの状態でエリカの手にしがみついていた。

 

「………え?」

 

何でアンタがいるんだという表情で、ダイゴが大神を見た。

どうやら向こうもこちらと同じ気持ちらしい。

 

「何言ってるんですか、大神さん。今日はダイゴさんも一緒ですよ?さあ、行きましょうか!」

 

「え、ちょっとエリカくん!?」

 

言うや大通りを逆走するエリカを、大神は慌てて追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリカを追いかけて大神がやって来たのは、子供達で賑わう公園だった。

 

「………結局公園なら来て貰えばいいじゃない………。」

 

シャノワールと公園を一往復引きずられたダイゴが、ボロボロの状態で言った。

確かに行き先が公園なら、わざわざ行くより大神を待てばいい事だ。

しかしエリカは気にもとめない様子で言った。

 

「ほらほらダイゴさん、今から疲れてちゃもちませんよ?」

 

「え………?」

 

「じゃ、みんなに入れてもらえるように頼んで来ますね。」

 

そう言ってサッカーを楽しむ子供達の方へ走っていくエリカ。

どうやら子供達と一緒にサッカーがやりたいらしい。

「サッカー………?」

 

「まあ、エリカくんらしいと言えばらしいけど………。」

 

急過ぎる展開についていけない二人をよそに、エリカは満面の笑みを浮かべて戻って来た。

 

「大神さ~ん、ダイゴさ~ん、早くぅ~!!」

 

その様子に、二人は顔を見合わせてため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからおよそ2時間。

大神、エリカ、ダイゴの三人は、子供達に混ざってサッカーを楽しんでいた。

いや、大神とエリカはともかく、ダイゴはそうは言えなかった。

 

「(せっかくのデートだと思ったのに………。)」

 

やはりピエールの言う通り、エリカの申し出はデートなんかではなかった。

それどころか、これはお出かけと言えるのだろうか。

そう考えると、一人だけ期待していた自分が馬鹿みたいに思えた。

 

「お~いダイゴ!ボールいったぞ!!」

 

そんな事を考えていたダイゴは、眼前に迫るボールに気付かなかった。

 

「ぶっ!?」

 

顔面に激突したサッカーボールは、ダイゴを薙ぎ倒して真後ろのゴールに見事に入った。

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

「トンガリ兄ちゃん、手加減してやれよ~。」

 

「ありがとう………、僕は大丈夫だよ。」

 

ダイゴを見兼ねて助け起こしてくれる子供達。

ダイゴは子供達にお礼を言いつつ起き上がる。

しかし次の瞬間、ダイゴは固まってしまった。

何故なら………、

 

「大神さん、ナイスシュートです!トレビアンです!」

 

「え、そ、そうかなぁ………?」

 

「そうですよ!エリカ感激しちゃいました!!」

 

「そうかい?エリカくんに言われると、何だか照れるなぁ………。」

 

エリカにベタ褒めされ、思わず照れながら頭をかく大神。

シュートを受けてすっ転んだ自分ではなく、シュートを決めた大神に注意どころか瞳を輝かせて褒める様子に、ダイゴは何かが音を立てて崩れていくのを感じた。

 

「(やっぱりそうなんだ………、エリカさん、僕よりあの人がいいんだ………。)」

 

自分の心配ではなく、大神にばかり寄っている今のこの状況が、何よりの証拠だ。

ダイゴは、顔の痛みも忘れて力無く立ち上がった。

 

「………。」

 

まるで二人の仲を見せつけられたような気分になり、ダイゴは子供達に「ごめん」と謝りながら公園を後にする。

 

「あ、ダイゴさん!」

 

それに気付いたエリカが、ダイゴに駆け寄って来た。

 

「何処行くんですか?まだゲームは続いてますよ?」

 

「………もういいよ。なんか邪魔みたいだから。」

 

「どうしたんですか?急に………。」

 

「見せつけられるのはもうたくさんなんだ!!」

 

笑顔のまま尋ねて来るエリカに腹が立ち、ダイゴは思わず怒鳴り返した。

その拍子に、エリカの肩がビクッと震える。

 

「よく分かったよ!もう邪魔しないから………。それでいいだろ!?」

 

「待て、ダイゴ!!」

 

ダイゴの背中で別の声がした。

見ると、大神がダイゴを睨みつけている。

 

「今のはあんまりだぞ!エリカくんに謝れ!!」

 

「………。」

 

「一体どうしたんだ?前々から君は俺をそうやって睨んでくるが。言いたい事があるなら言ってみろ!男として恥ずかしくないのかっ!!」

 

「………アンタにそれを言う資格があるの?」

 

普段見せない剣幕で怒鳴って来る大神に、ダイゴは冷ややかに言った。

今の態度が間違っている事くらい、ダイゴにも分かっている。

しかし、その元凶に言われる筋合いはなかった。

 

「アンタに僕の何が分かるって言うんだ。同情なら止めてよ。」

 

「ダ、ダイゴさん……」

 

そう吐き捨て、ダイゴはエリカが呼び止めるのも聞かずに公園を出て行ってしまった。

 

「ダイゴさん、どうしちゃったんでしょう………。」

 

公園のベンチに腰掛け、エリカがポツリと呟いた。

いつもの元気は消え失せ、悲しそうな表情で俯いている。

 

「エリカくん………。」

 

「ダイゴさんと大神さんに、仲良くなってほしいだけなのに………。」

 

エリカが大神とダイゴをサッカーに誘った理由。

それは、二人にもっと仲良くしてもらうためであった。

今までダイゴが大神の話題で笑った事は一度もない。

そこでエリカは、ダイゴにも大神の素晴らしさを見せてあげようと考えたのだ。

しかし、結果は逆効果。

ダイゴは大神と仲良くなるどころか、ますます仲を悪くして帰ってしまった。

 

「俺にも分からないけど、今はそっとしておくべきだと思う。」

 

「はい………。」

 

「………そういえば、ダイゴとエリカくんは、いつから知り合ったの?」

 

落ち込んだままのエリカに、大神が話題を変えた。

すると、エリカは懐かしむように話しはじめた。

 

 

 

私とダイゴさんが知り合ったのは、初めて教会に来た日です。

あの日、教会に初めて来た日、ダイゴさんは一人で女神像に祈っていました。

黒い髪が印象的で、私は試しに声をかけてみました。

そしたら、ダイゴさんは恐々と尋ねたんです。

 

「君は、気味悪がらないの?」

 

ダイゴさん、それまで自分の黒い髪と黄色い肌にコンプレックスを持ってたみたいで………。

神父様以外で、私が初めて話し掛けてくれたと言ってました。

私も、その時はまだ他に友達もいなかったので、ダイゴさんは最初の友達でした。

それからずっと、ダイゴさんは暇さえあれば私と一緒にいてくれました。

ダイゴさんが側にいると安心できて、彼に逢わせてくれた神様に感謝しました。

 

 

 

「………でも、私が大神さんと一緒にいるようになってから、ダイゴさんは私から離れていっちゃって………。」

 

要するに大神に対するヤキモチである。

エリカがダイゴより大神に夢中な事と、大神が何にしてもダイゴに勝るスーパーマンな事に、ダイゴはヤキモチを焼いていたのだ。

最も、その手のものに鈍感なエリカと大神には全く分からないが。

 

「大神さん………、ダイゴさんの事………。」

 

「分かってるさ。責めたりはしないよ。俺はダイゴも、友達と思っているからね。」

 

安心させるようにそう言った時だった。

大神の携帯キネマトロンに、緊急の通信が入ったのだ。

 

「エリカくん、作戦司令室に急行するぞ!」

 

「了解!」

 

先程までの表情を捨て、二人はシャノワールに急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!くそっ………!!何で………!」

 

部屋に戻ったダイゴは、溜め込んでいた涙を流して壁を殴った。

怒りの原因も矛先も分からない。

ただひとつ分かるのは、自分の心に深い大きな傷が出来た事くらい。

 

「僕は………、僕は………!!」

 

何日もの月日を共に過ごしてきた部屋の壁は、その部屋の主の悲しみを無言のまま受け止めていた。

 

「エリカさん………、何故なんだ!?」

 

今までエリカは側にいてくれる唯一の存在だった。

ダイゴが唯一、心を許せる存在だった。

そして、ダイゴが光を感じた存在だった。

彼女の喪失はダイゴにとって、闇に墜ちる事を示していた。

 

「………。」

 

ふと、ダイゴは壁を殴り続けていた手を止めた。

どちらも赤く腫れ上がり、爪は掌に食い込んで血が流れている。

 

「………!」

 

その時、ダイゴの懐から淡い光が溢れ出した。

見ると、スパークレンスが光を放っている。

巴里に仇なす闇の存在が、現れたのだ。

 

「こんな時に………!」

 

吐き捨てるように呟き、ダイゴは部屋を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼下がりのシャンゼリゼは、5分と経たずに火の海に変わった。

つかの間の平和が終わりを告げたのだ。

助けを求めて逃げ惑う人々。

そこに、巴里を守る光の使者が現れた。

 

「巴里華撃団、参上!!」

 

これまで連戦連勝。

無敗を誇る巴里華撃団である。

 

「ああ………何て酷い………。」

 

変わり果てたシャンゼリゼに、花火が言葉を失う。

その時、何かが凱旋門を過ぎった。

 

「何だ、今の光は!?」

 

「歓迎の挨拶じゃなさそうだね………。」

 

炎の中を過ぎった一筋の光。

もしやあれが犯人か。

そう考えた大神の耳に、今度はコクリコの声が聞こえてきた。

 

「こっちにも来るよ!みんな、気をつけて!!」

 

見ると、先程の光が一直線にこちらに襲い掛かってくるではないか。

大神達は素早く左右に避けてやり過ごしたが、光はシャンゼリゼの真ん中に深々と爪痕を遺している。

 

「みんな、大丈夫か!?」

 

大神が叫んだ。

すると、エリカが凱旋門を指差した。

 

「大神さん、あそこ!」

 

「何っ!?」

 

大神が振り向くと、凱旋門の前に青白い光が見えた。

それは、紛れも無い人ならざる者………。

則ち怪人であった。

 

「よく来たのう、巴里華撃団………。」

 

これまでの怪人とは比較にならない妖気を発しながら、怪人が口を開いた。

豪華な椅子に腰掛け、足元からはイカを思わせる青い触手が見え隠れしている。

 

「貴様が………シャンゼリゼを、こんな………!!」

 

グリシーヌが怒りに拳を震わせる。

 

「貴様、何が目的だ!?」

 

今にも飛び出しそうなグリシーヌを抑えつつ、大神が叫んだ。

すると、怪人は野太い声で笑った。

 

「ヌハハハハ………、知ってどうする?余を止めるか?」

 

「当たり前だ!俺達巴里華撃団が、この街を守る!」

 

二刀を構えて大神が吠える。

すると、怪人は更に大きな笑い声をあげた。

 

「ヌハハハハ!ならばその力、見せてみよ!」

 

刹那、怪人の妖気が急激に跳ね上がった。

その強さからは、威厳すら感じさせる。

 

「さまよえる御霊よ………、裏切り者に滅されし、哀れなる魂よ………、今再び、余の元に蘇るのだ!」

 

怪人が怪しげな呪文を唱える。

すると、怪人の周りで五つの光の玉が現れた。

何かの攻撃かと身構える巴里華撃団。

しかしこの直後、大神達全員は、目の前の出来事に驚愕する事になる。

 

「さあ来い、同胞よ!」

 

凄まじい閃光と共に、五つの光が形を変える。

それは、大神達のよく知る姿だった。

 

 

 

 

 

 

「ウーサッサッサッ!シゾー様の復活だピョン!」

 

「イーヒッヒッヒッ!呼んだかい?このピトンを………?」

 

「人間共よ!このレオンが今度こそ、貴様らを根絶やしにしてくれる!」

 

「愚かなる人間共、ナーデルの芸術になれる事………、光栄に思いなさい!」

 

「光に生き続ける裏切り者よ!このマスク・ド・コルボーが、地獄に突き落としてくれようぞ!!」

 

 

 

 

 

 

シゾー、ピトン、レオン、ナーデル、そしてマスク・ド・コルボー………。

いずれも巴里華撃団とウルトラマンティガに戦いを挑み、敗れていった怪人達だ。

 

「ば、馬鹿な!怪人達が蘇っただと!?」

 

驚愕の事態に目を見開く大神。

すると、怪人は満足げに笑った。

 

「聞けい、同胞よ。余に忠誠を誓い、裏切り者を血祭りにあげ、巴里を破壊するのだ!」

 

「やるピョン!人も街も切り刻んでやるピョン!」

 

「裏切り者のクリスタル。今度こそいただくよ!」

 

「ナーデルの芸術が分からない人間共………、まとめて引き裂いてやるわ!」

 

「聞かせてあげましょう!子を失った親鳥が如き、美しき葬送の歌声を!!」

 

「カルマール公爵、我等全員、あなた様に忠誠を誓います。」

 

「………どうかね、巴里華撃団の諸君。我が同胞との再会は。驚く程嬉しいか。」

 

レオンにカルマールと呼ばれた怪人が、ニヤリと笑った。

 

「では手始めに、我等に半旗を翻した裏切り者の処刑といこうかの。」

 

「待て!この街を好きにはさせないぞ!?」

 

凄まじい妖気に圧倒されながらも、大神が言い返す。

しかし、カルマールの余裕は変わらなかった。

 

「面白い。ならば少し相手をしてやろう。」

 

すると、大神達の前に数体のポーンが現れた。

 

「ん………?」

 

モニターに写るポーンの姿にひっかかる点を感じ、大神はポーンの一体を拡大してみた。

何だか以前のものより一回り程大きい。

見ると、腕や足が太くなっている。

 

「(まさか………、強化したポーンか!?)」

 

怪人を復活させたカルマールの力だ。

ポーンを強化改造させるくらい造作もない事。

しかし、他の隊員達はそれに気付いていない。

 

「ふざけるな!この程度の雑魚、纏めて片付けてくれる!!」

 

「ほう?珍しく気が合うね。これがチームワークって奴か?」

 

「あっ、ロベリア!グリシーヌ!」

 

大神の制止を無視して、二人は同時にポーン目掛けて突進を始めた。

途端にポーン達も動き出す。

 

「マズイ!みんな、二人を援護するんだ!」

 

大神の指示で、残る三人が続く。

そして大神の予感は現実に変わった。

 

「何………?」

 

「わ、私の斧を受け止めただと………。」

 

何とポーンの一体が、ロベリアとグリシーヌの攻撃を、それぞれ片手で受け止めてしまったのだ。

これまでのポーンなら一撃で倒せたというのに………。

 

「あのポーン、桁違いに強い!みんな、連携して戦うんだ!」

 

大神がチームワークを呼び掛ける。

しかし、返って来たのは大神の期待に反する返事だった。

 

「考える間でもない。全員が私の指示通りに動けば良いのだ!」

 

「そんな!ボクが戦えるようにフォローしてよ!」

 

「場慣れしてない奴の指示なんて聞けるか!アタシの言う通り動け!」

 

「大神さん………、誰に従えば………。」

 

「みんな、チームワークを自分中心に考えるな!そんな事ではチームプレイなど不可能だぞ!?」

 

チームワークは自分の事を考えては成り立たない。

相手の立場に立ってこそ、初めて呼吸を合わせる事ができるのだ。

しかし今の巴里華撃団は、さながら分裂寸前。

これではまともな戦いすら出来ない。

 

「ヌハハハハ。そんな状態で、余に刃向かうつもりか?」

 

カルマールはそう言って、口から墨を吐き出した。

すると、その中からイカを模した巨大な蒸気獣が現れた。

その大きさ、凱旋門に匹敵する程である。

 

「余自らが、この蒸気獣『サンフォニー』で相手をしてやる。来るが良い!!」

 

「くっ………!」

 

今の状態で勝てる相手ではない。

それは分かっているが、大神も退く訳にはいかない。

 

「狼虎滅却………!」

 

精神を集中し、ありったけの霊力を二刀に込める。

 

「刀光剣影!」

 

そして、全身全霊の力で二刀を振るった。

………だが、

 

「なっ………!?」

 

何とサンフォニーは大神の光武Fを、まるで玩具のように触手で弾き飛ばしたのである。

その一撃で、大神の光武Fは激しく地面にたたき付けられる。

すると、その近くに大神の刀の片方が、光武Fの腕をつけたまま突き刺さった。

切断部からは、黒い煙が上がっている。

 

「フン、この程度か。後はお前達にやる。行けい!!」

 

露骨に落胆の色を浮かべるカルマール。

そして、命令を受けたポーン達が、大神に駆け寄る残りの光武Fに襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………シ、シャンゼリゼが………!!」

 

スパークレンスの導きに従い、シャンゼリゼにやって来たダイゴは、目の前の惨状に目を疑った。

巴里を代表する大通りはいくつもの穴が空き、周りの建物からは火の手が上がっている。

そして何よりダイゴを驚かせたのは、その奥でポーン達に袋だたきにされる巴里華撃団の姿だった。

 

「そんな………、エリカさんや大神さんが………。」

 

凱旋門前に立つ不気味なイカの蒸気獣はおろか、ポーンにも勝てないとはどうした事か。

ダイゴはスパークレンスに目を向け、そして思った。

 

「僕は………、勝てるの………?」

 

たとえティガに変身したとして、巴里華撃団が手も足も出ない相手に太刀打ちできるのか。

これまでの怪獣に苦戦した自分だ。

その怪獣よりレベルの違う敵に敵う訳がない。

それでも、スパークレンスの輝きは強いものへと変わっている。

まるでダイゴに、戦う事を促すように………。

 

「スパークレンス………、でも僕には………。」

 

力無く呟いた時だった。

ダイゴの視界に、一人の少年の姿が見えたのだ。

 

「………、危ない!」

 

シャンゼリゼに入ろうとする少年を、ダイゴはすんでの所で止めた。

すると、少年はダイゴに言った。

 

「離してよ!僕の家を化け物から守るんだ!」

 

「駄目だ!君も無事じゃ済まないんだぞ!?」

 

凱旋門からの金属音はかなり強く、離れた所にいるダイゴの耳にもよく聞こえてくる。

そんな所に生身で行けば一たまりもない。

しかし、少年はダイゴを見て言った。

 

「だって、巴里華撃団もやられちゃうし、ウルトラマンティガも来ないじゃないか!」

 

「!?」

 

ダイゴはハッとした。

確かに自分が奴に勝てる可能性は限りなく低い。

しかしそれでも、可能性は0ではない。

もし自分が諦めれば、そのなけなしの可能性も0になってしまう。

そうなれば、更に多くの悲しみを生んでしまい、多くの命を危険に曝してしまうのだ。

例えば、この少年のように………。

 

「………大丈夫。ティガは絶対に来る。だから君は安全な所にいるんだ。」

 

「………本当?」

 

「本当さ。だってティガは、巴里の光なんだから!」

 

まるで自分に言い聞かせるように、ダイゴは少年に笑顔を見せた。

すると、少年の顔も笑顔になる。

 

「うん………、そうだよね!僕、信じるよ!」

 

そう言ってその場を離れる少年。

その背中を見送り、ダイゴはスパークレンスに視線を移した。

 

「………巴里の光………か………。」

 

さっきは少年を元気づけるために言ったが、果たして自分は本当にそんな存在なのか。

ダイゴは小さく笑った後、スパークレンスを巴里の空に掲げ、光の名を叫んだ。

 

 

 

 

 

 

「ティガーーーーーッ!!」

 

 

 

 

 

 

「ええい、止めい!面白くも何ともないわ!」

 

ポーン達が巴里華撃団をたたきのめす様子を見ていたカルマールが、たまり兼ねたように叫んだ。

と、今まで大暴れしていたポーン達がピタリと大人しくなる。

 

「公爵様、こいつらにトドメは刺しませんの?」

 

意外そうに尋ねるナーデル。

すると、カルマールは笑って答えた。

 

「こやつらなど塵程度の存在。余と刃を交える資格はないわ!それに………、真に我等が討つべき者が現れおったぞ?」

 

その時だった。

巴里華撃団を守るように光の柱が現れ、中から巴里の守護神が姿を現したのだ。

 

「ティガっ!!」

 

沈黙した光武Fの中で、エリカが驚く。

炎に蒔かれて燃ゆるシャンゼリゼに今、ウルトラマンティガが降臨したのである。

 

「チャッ!」

 

「ヌハハハハ、現れおったなウルトラマンティガ………。」

 

不敵に笑うカルマールに、油断なく構えるティガ。

すると、カルマールは更に高笑いを上げた。

 

「面白い!裏切り者の分際で、我に勝負を挑むつもりか?」

 

「チャッ………。」

 

「ヌハハハハ!勇ましい事よのう。ならばその力、見せてみるが良い!」

 

言うや、カルマールが再び墨を吐き出した。

その量は先程サンフォニーを呼び出した時の倍近くある。

たちまち辺りの視界を遮る闇に、ティガは警戒を強めた。

すると、ティガの耳にカルマールの叫び声が聞こえて来た。

 

「来い、我がしもべ!超古代怪獣レイキュバスよ!!」

 

その声と共に墨が消え失せ、中からサンフォニーと同じくらいに巨大な大怪獣が現れた。

エビのような尻尾に、カニのようなハサミ。

そして赤く光った目は、さながら海の化け物を想起させる。

 

「あれが………、カルマールの操る怪獣なのか………?」

 

その巨体から溢れる力に、大神は思わず身震いした。

これまでティガが倒して来た怪獣とは格が違う。

そう感じさせる威厳が、レイキュバスにも感じられた。

 

「行けいレイキュバス!あの裏切り者を八つ裂きにしてしまえ!!」

 

「ギィーッ!!」

 

主の言葉に応えるように、レイキュバスはハサミを鳴らして咆哮を上げた。

そして、右手の大きなハサミをティガ目掛けて振り下ろす。

 

「チャッ!」

 

ティガはその一撃をバク転で避け、すぐさま反撃に移った。

 

「ハッ!」

 

突き出した右手からハンドスラッシュを放つ。

しかし、光弾は僅かに煙を上げた程度。

レイキュバスの外骨格には傷一つついていない。

 

「ギィーッ!!」

 

レイキュバスは徐に首を擡げると、口から火炎弾を吐き出して来た。

 

「ジュワッ!?」

 

咄嗟に右に飛んで避ける。

目標を見失った火炎弾は、その奥の建物を直撃した。

 

「チャッ!」

 

これ以上火炎弾を使わせる訳にはいかない。

ティガは不利だと分かりながらも、レイキュバス 相手に接近戦を挑んだ。

左右から襲ってくるハサミをかわし、その腹に渾身のストレートパンチを叩き込む。

 

「ギィーッ!」

 

しかし、レイキュバスの身体はティガのパンチを全く受け付けなかった。

 

「ジュワッ!?」

 

至近距離からハサミで殴り倒されるティガ。

そこに、レイキュバスが上からのしかかって来た。

 

「ギィーッ!!」

 

その凄まじい重量に押し潰されるティガ。

押し返そうとするが、レイキュバスはビクともしない。

 

「ヌハハハハ、巴里の守護神もぶざまよの。その程度の力で我等に刃向かうとは、身の程知らずめ!」

 

しかし、ティガも負けてばかりではなかった。

 

「ンゥゥゥ………ハッ!!」

 

ティガの額のクリスタルが赤く光り、ティガの身体が赤と銀に変わった。

パワータイプである。

 

「ギィーッ!」

 

お構いなしにハサミを振り下ろすレイキュバス。

しかし次の瞬間、そこにいる誰もが驚く事となる。

 

「ハッ。」

 

何と、ティガは先程まで苦しめられていたレイキュバスのハサミを、いとも簡単に掴んで押し戻したのである。

 

「チャーッ!!」

 

そして、がら空きになった腹部に再び右ストレートパンチを叩き込む。

 

「ギィッ!?」

 

その一撃で、レイキュバスは大きく後ろに吹き飛ばされる。

 

「ヌハハハハ、そうでなくては張り合いがないわ。」

 

部下のピンチにも関わらず、カルマールは楽しげに笑った。

まるで目の前で繰り広げられる死闘に、無上の喜びを見出だしているかの如く………。

 

「ギィーッ!」

 

レイキュバスが真正面からハサミを突き出した。

しかし、ティガはそれを片手で受け止め、巴投げの要領でレイキュバスを蹴飛ばした。

 

「チャーッ!」

 

「ギィッ!?」

 

土煙を上げて、地面にたたき付けられるレイキュバス。

最早形勢は、完全にティガに傾いた。

………かに見えた。

 

「ギィーッ!」

 

レイキュバスが再び火炎弾を吐き出してくる。

すると、ティガは両腕を胸の前で交差させて左右に広げ、赤い光の膜を生み出した。

ウルトラシールド………

敵の攻撃を光の膜で防御する回避技だ。

超高温の火炎弾は、ことごとくシールドに吸収される。

 

「ハァァァ………!」

 

そして、ティガはシールドを張ったまま、両腕を胸の前で交差させて外回りに回転させる。

すると、デラシウムのエネルギーが外側からシールドごと火炎弾を包み込んだ。

 

「ハッ!!」

 

高温の火炎弾を吸収した事により、圧縮されたエネルギーから炎がほとばしる。

その様は、まるで手の中に小さな太陽が輝いているかのようだ。

 

「チャーーーッ!!」

 

気合いの声と共に、太陽のごときデラシウム光流がレイキュバスに殺到する。

そして接触と同時に、太陽は肥大化してレイキュバスを包み込み、想像を絶する大爆発が起こった。

 

「や、やった………!」

 

爆音と黒煙に、ティガの勝利を確信する巴里華撃団。

しかし、その余韻は一瞬で消えた。

 

「ジュワッ!?」

 

黒煙から突如、青い煙のようなものが吹き出した。

たちまちに煙に蒔かれるティガ。

すると、何とティガの身体が手足を中心に凍りついてしまった。

 

「う、嘘………!どうして!?」

 

「馬鹿な!あの怪獣の能力は火炎弾のはず………。何故冷気が………?」

 

まさかレイキュバス以外に怪獣がいたというのか。

戦慄に震える大神達。

しかし幸か不幸か、その予想は外れた。

 

「ギィーッ!!」

 

煙の中から現れたのは、たった今デラシウム光流を喰らったレイキュバスだった。

 

「おいおい………、こいつは反則だろ?」

 

ロベリアが悪態をついた。

目の前の怪獣は、致命傷どころかかすり傷一つついていなかったからだ。

あのデラシウム光流すら通じない固さは、最早鎧と言う言葉が似合う。

しかし、驚くべきは他にあった。

 

「見て!怪獣の目が………!」

 

最初に気付いたコクリコが、レイキュバスの目を指差して叫んだ。

何と、最初は赤かったはずのレイキュバスの目が、青く光っていたのだ。

その色は、冷たい氷河を連想させる。

つまり………、

 

「そうか………、奴は火炎弾と冷気を使い分けているんだ!」

 

大神の言葉こそが真実だった。

レイキュバスはティガのデラシウム光流に対抗し、冷気を浴びせたのである。

 

「今頃気付いたか。さて、ウルトラマンティガ。そろそろ危ういのではないかな?」

 

カルマールがニヤリと笑った。

見ると、ティガのカラータイマーが赤く点滅を始めていた。

デラシウム光流の直後に冷気によるダメージを受け、エネルギーが急激に減少してしまったのだ。

 

「(くそっ………!!)」

 

完全に凍りついて動かない身体に、ティガは焦った。

既に時間がない。

しかし、これでは反撃のしようがない。

何とか動こうともがくティガを見捨てるように、カラータイマーの点滅が早いものへと変わっていく。

 

「(こうなったら………!!)」

 

ティガは体内に残る全てのエネルギーを集中した。

すると、ティガの身体を仄かな赤い光が包み込む。

 

「無駄な足掻きを………。レイキュバス!あの死に損ないを始末しろ!」

 

「ギィーッ!」

 

カルマールの命令を受け、レイキュバスはティガを完全に凍らせるべく再び冷気を吐き出す。

だが次の瞬間、カルマールは遂にその余裕が消える事になる。

何と絶対零度の凍てつく冷気がティガに触れた瞬間、音を立てて蒸発してしまったのだ。

 

「な、何!?まだそれ程の力が残っていたというのか!?」

 

ウルトラヒートハッグ………

全身のエネルギーを燃やし、身体を高熱に包むティガの切り札だ。

 

「ンゥゥゥ………、ハッ!!」

 

ティガは再度額のクリスタルを発光させ、マルチタイプにチェンジした。

その勢いで、全身の氷が粉砕される。

 

「ギィーッ!!」

 

尚もティガを氷付けにしようと冷気を吐き出すレイキュバス。

しかし、全身が高熱に包まれたティガには毛程にすら感じない。

 

「チャーッ!!」

 

ティガは冷気の真ん中を突っ切り、レイキュバスの顔面を思いっきり蹴りつけた。

 

「ギィッ!?」

 

その勢いで真後ろに吹き飛ばされるレイキュバス。

そして、ティガはレイキュバスを一点に見据え、両手を胸の前で合わせた。

そして左右に水平に伸ばし、光の筋を生み出してエネルギーを集約する。

マルチタイプの奥義にしてティガ最大の必殺技、ゼペリオン光線だ。

 

「ハッ!!」

 

L字に組まれた腕からまばゆい光線が発射され、レイキュバスに浴びせられた。

 

「ギィーッ!!」

 

凄まじいエネルギーを一点に受け、仰向けに倒れるレイキュバス。

そしてその直後、今度こそレイキュバスは粉々に大爆発した。

デラシウム光流に耐えたレイキュバスも、ティガ最大の必殺技には敵わなかったのだ。

 

「ほほう。まさか余の怪獣までも倒して見せるとは、中々楽しませてくれる。」

 

「チャッ………。」

 

カルマールに気付いて構え直すティガ。

しかし、激しいエネルギー消耗に耐えられず片膝をつく。

デラシウム光流にウルトラヒートハッグ、更に必殺技のゼペリオン光線まで使用したのだ。

既に戦いはおろか、立ち上がる事すら難しいのが現状だった。

 

「良かろう、ウルトラマンティガ。今回は退いてやるわ。貴様の処刑は次の楽しみにさせて貰うとしよう。ヌハハハハ………!」

 

「チャッ………!!」

 

そう言って魔法陣を出現させ、その場から消え去るカルマール以下怪人軍団。

ティガはゼペリオン光線を再び撃とうとしたが、その前に奴らは消え失せてしまった。

 

「ウルトラマンティガ、巴里華撃団の諸君、また巴里の戦場で会おうぞ!ヌハハハハ………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………負けたんですね。私達………。」

 

カルマールの笑い声が止んだ後、エリカがポツリと呟いた。

敗北。それも全く手も足も出ない完敗だ。

ティガの助けがなければ、命すらなかっただろう。

言わば自分達は、敵に負けた上に要らぬ情けをかけられたのだ。

 

「言うなっ!!」

 

「怒鳴ってどうする。事実なら仕方ないだろ?」

 

その事実を認めたくないのかグリシーヌが叫び、ロベリアがそれを窘める。

 

「ボク達………、ティガがいないと勝てないのかな………。」

 

コクリコがポツリと呟いた。

今まで自分達は、ティガがいたからこそ勝って来た。

逆を突けば、ティガなしで敵を倒した試しがないのだ。

無論、怪獣が自分達の手に余る存在である事は確かだが、今回に至ってはポーン一体すら倒せていない。

 

「………大神さん、何かおっしゃって下さい。」

 

たまり兼ねた花火までもが大神を見た。

大神もまた、今回の敗北に自身の失敗を痛感していた。

 

「みんな、済まない。今回の敗北は、全て隊長である俺の責任だ。」

 

今回の敗北の原因はチームワークの低さだ。

その事は以前から分かっていたにも関わらず、自分はそれを改善する事が出来なかった。

隊長として、それは恥ずべき事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無惨に破壊された光武Fと、悲しげに佇む巴里華撃団。

その様子を、屋根の上から見下ろす影があった。

白いスーツと茶髪のオールバック。

大神の親友、加山雄一だった。

 

「待っていろ、大神………。お前に必ず、希望の光を届けてやるからな。」

 

希望の光。

大神は程なくして、加山の呟いたこの言葉の驚くべき意味を知る事になる。

 

<続く>




《次回予告》

いよう大神ぃ!
あれが巴里を守る守護神、ウルトラマンティガか。
中々貫禄ある奴じゃないか?

ところで大神、希望の光は他にもあるぞ?
ほら、お前もよく知っているだろう。

次回、サクラ大戦3!

《花の都に桜舞う》

愛の御旗のもとに………

お久しぶりです、大神さん。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。