※この作品はR-18です。

超古代の星   作:サマエル

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拝啓ウルトラマン様

シャノワール防衛から三日。

ダイゴを含めた巴里華撃団のメンバーは、揃って作戦司令室に顔を揃えていた。

 

「おエライさん方から決定が下ったよ。」

 

緊張の空気に包まれる中、グラン・マが厳かに告げた。

 

「準備が完了し次第、巴里華撃団はシテ島に出撃。ノートルダムに総攻撃を開始する。」

 

怪人の首領、カルマールがノートルダムに潜んでいる事を突き止めてすぐ、攻撃という訳にはいかなかった。

帝都でもそうだったように、巴里にも賢人機関が存在する。

巴里華撃団の出撃も、賢人機関の許可が降りて初めて可能になるのだ。

ならば何故、この決定に三日も要したか。

それは、一部の軍部による攻撃作戦が先に行われていたからである。

しかし、いくら実戦を積んだ特殊部隊といえ、霊力のない人間が束になってかかった所で勝ち目はない。

結果、三日という無駄な時間をかけて巴里華撃団に主導権が移ったのである。

 

「いよいよ決戦か………。」

 

大神が神妙な面持ちで呟く。

すると、奥に座るグリシーヌが拳を握り締めた。

 

「ついにカルマールと決着をつける時が来たのだな。相手にとって不足はない!」

 

「少しは慎重になれよ。前はコテンパンだっただろ?」

 

血気盛んなグリシーヌに、ロベリアが呆れた表情でツッコミを入れる。

確かにそうだ。

以前シャンゼリゼで相対した時は、こちらは全く手も足も出なかった。

力をつけたからと言って、その二の舞にならないと何故断言できよう。

 

「そうでしたね………、前回は一矢報いる事も………。」

 

「ボク達………、きっと勝てるよね………?」

 

ロベリアの言葉に不安げな表情を見せる花火とコクリコ。

すると、ここでダイゴが口を開いた。

 

「きっと大丈夫だよ。いろんな特訓をして、強くなったんでしょう?」

 

「ああ。ダイゴの言う通りだ。今の俺達には、チームワークと光武F2がある。自信を持つんだ。」

 

前回の戦いから、巴里華撃団は様々な形で強化を計った。

加山の助けで帝国華撃団に来仏してもらい、チームワークと基礎訓練、更に光武F2を加えて飛躍的な進化を遂げている。

その力は、今や帝国華撃団と遜色ないものになりつつあった。

 

「それに、ヤバくなったらエリカとダイゴが、前みたいに大活躍してくれるさ。なあ?」

 

「ま、まあね………。」

 

「は、はい………、任せておいて下さい………。」

 

ロベリアに急に言われたためか、やや遅れて返事をする二人。

すると、グラン・マが話をしめた。

 

「よし。既に巴里全域に避難命令が発令されてある。アンタ達はまだ街に人が残ってないか、見回りに行っておくれ。」

 

許可が降りた時点で、巴里華撃団の出撃は決定的となった。

当然決戦はノートルダム寺院のあるシテ島になるのだが、実は巴里華撃団の前座としてカルマールと交戦した特殊部隊から気になる情報が寄せられていた。

 

『敵は地下の巨大な兵器を用い、巴里殲滅を狙っている』

 

確実な内容ではないが、事実であれば巴里市街が戦場となり、一般市民に夥しい犠牲者をだす可能性がある。

それを避けるべく、政府は巴里全域に避難命令を発令したのである。

最も、それが怪人によるものと公表する事は出来ないので、大地震が来るとしているのだが。

 

「さて………。」

 

大神達が全員作戦司令室を後にしたのを見届け、グラン・マは独り言のように呟いた。

 

「………という訳だ。頃合いを見て接触しておくれ。」

 

「分かりました。」

 

すると、グラン・マの独り言に別の声が答えた。

グラン・マはその声に驚く事もなくモニターに写った巴里の街を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

避難命令が出され、人の消えた巴里の街は沈黙に包まれていた。

 

「人がいなくなると、こうも静かになるものか。」

 

大神は改めて、普段の巴里の良さというものを感じた。

花の都と呼ばれる巴里も、そこに人がいなければ寂れた街と何ら変わりない。

この街に再びかつての賑やかさを取り戻せるかは、自分達巴里華撃団にかかっていた。

 

「そこにいるのは隊長か?」

 

ふと声がして振り返ると、グリシーヌの姿があった。

 

「グリシーヌ、逃げ遅れた人はいなかったかい?」

 

大地震が来ると避難命令を出したからと言って、すぐに誰もが避難できる訳ではない。

荷物の準備に時間がかかったり、身体の不自由な人は、まだ巴里市内に残っている可能性があった。

 

「ああ。この一帯は無人だ。教会の方にも、エリカが向かっている。」

 

グリシーヌは大神を安心させるように答え、続けて尋ねた。

 

「隊長。貴公は巴里を、この街をどう思う?」

 

「巴里を?」

 

「そうだ。私はブルーメール家の名において、巴里を守る。私の子達も、同様に守り続けていく。しかし、異邦人である貴公にとって、巴里とは何だ?」

 

人には誰も、生まれ育った故郷がある。

大神なら日本。グリシーヌなら巴里という具合に。

故郷は不思議とその人の心を和ませ、離れる事を拒ませる。

そして、自分が死ぬまでは平和であり続けて欲しいと願うものだ。

グリシーヌにとって、巴里は先祖代々栄えたブルーメール家の街だ。

これまでの歴代の先祖達がそうだったように、命を懸けて守り抜く事を決意するのも当然である。

しかし、大神は巴里に来て半年にもならない異邦人。

決して長いとは言えない期間で、この巴里の街を愛せるのだろうか。

すると、大神はハッキリと答えた。

 

「巴里は、俺の第二の故郷だ。日本だけじゃない。この巴里も、俺は大好きだ。」

 

「そうか………。貴公なら、やはりそう言ってくれると思っていた。」

 

大神の答えに、グリシーヌは思わず笑みをこぼした。

僅か半年だというのに、命すら躊躇わない大神。

そこに見えるサムライ気質は、不思議とグリシーヌを安心させた。

 

「ならば隊長。私と共に誓いを立ててはくれまいか。必ず勝ち、巴里を守り抜くと………。」

 

「ああ、分かった。」

 

間を置かずに頷き、大神はグリシーヌの動きを真似て、太刀を構えた。

 

「グリシーヌ・ブルーメール………、この斧に誓い、巴里の街を守り抜く。」

 

「大神一郎………、この剣に誓い、巴里の街を守り抜く。」

 

それぞれ今まで共に戦ってくれた戦友を手に、改めて来たる戦いへの勝利を誓う。

儀式と言えばそれまでだが、二人にはまるで今まで巴里を守って来たいくつもの魂が、武器を伝えに自分を祝福しているように感じられた。

 

「………礼を言うぞ、隊長。シャノワールで会おう。」

 

そう言って、グリシーヌはその場を立ち去る。

大神はその背中が、今まで以上に頼もしく見えた。

 

「おい君、避難命令を聞いていないのか?早く避難所に向かいなさい。」

 

背後からそう声がかけられたのは、その時だった。

 

「エビヤン警部。警部も見回りを?」

 

振り向いた大神の目に写ったのは、厳しい表情でこちらを見るエビヤン警部の姿だった。

 

「何だ、大神君じゃないか。君も見回りをしてくれていたんだね。」

 

向こうもこちらに気付き、表情を緩める。

大神は、無難な程度でそれに答えた。

 

「はい。これから俺も避難所に向かう所です。」

 

「そうか、分かった。本官も後から合流しよう。」

 

大神の言葉に安心したらしく、エビヤン警部は笑顔を見せる。

 

「それでは失敬。………サフィールさんに、よろしくな。」

 

そう言って、エビヤン警部は町外れの方へ走り出す。

あの美術館騒ぎの一件で、エビヤン警部は少なからずロベリア紛する踊り子のサフィールを意識していた。

ロベリアからすると迷惑千万らしいが。

 

「さて、俺も見回りに戻るか。」

 

教会の方はエリカが向かったという。

エビヤン警部が来た方角からして、警察署や大神のアパルトメント周辺は大丈夫だろう。

 

「そうだな………、シルク・ド・ユーロに向かってみるか。」

 

サーカスで一躍巴里の人気者となったシルク・ド・ユーロ。

しかし、今回の避難でテントを畳み、動物達を連れて避難しなければならない。

それが気になった大神は、シルク・ド・ユーロに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ダイゴの姿は教会の前にあった。

逃げ遅れた人がいないか確かめる事もあるが、もう一つ理由がある。

それは、この戦いに生きて勝てるよう、祈りを捧げるためだった。

シャンゼリゼで感じたカルマールの力は、自分達を遥かに凌駕している。

たとえ力をつけた自分達でも、勝てる保障はない。

 

「………ん?」

 

ふと入口で、ダイゴの足が止まった。

見ると、中では赤い服のシスターが一人、祈りを捧げていた。

 

「主よ………、私達はこの街を守るため、大いなる戦いに挑みます。命を賭した戦いになるでしょう………。」

 

「………。」

 

「でも、これは私の使命。逃げる訳には参りません。主よ、どうか罪深き我らを、お守り下さい………。」

 

泣く事もなく、取り乱す事もなく、穏やかな表情で祈りを捧げるエリカ。

ダイゴはその背中に、不安と戦う彼女の心を見た。

 

「エリカさん………、不安なんだね?」

 

「………、ダイゴさん!」

 

突然の声に驚き、エリカが後ろを振り返る。

ダイゴは、優しい微笑みでエリカを見た。

すると、エリカは不安な表情で告白した。

 

「はい………。私、怖いんです。本当に勝てるのか………。」

 

「大丈夫さ。正義のために戦う僕らを、神様は見捨てたりしないよ。前だって、ピンチを切り抜けられたでしょ?」

 

不安がるエリカに、ダイゴは自信を持って答えた。

確かにカルマールの力は脅威だ。

ダイゴも不安ではないと言えば、嘘になるだろう。

しかし自分達は、これまで何度もピンチを乗り越えて来た。

大丈夫。今度もきっと勝てる。

だが、エリカが不安に思うのはそれだけではなかった。

 

「いいえ………、私は、その力も怖いんです………。」

 

「え?」

 

怪訝な顔を見せるダイゴ。

エリカはそんなダイゴに、不安の正体を打ち明けた。

 

「私が怖いのは、私が持ってる力なんです。」

 

「力?もしかして、前の戦いの時の………?」

 

前回のシャノワールでの戦いで、エリカが目覚めさせた真の力。

その力は、巴里華撃団はおろかティガにも匹敵し、コルボーやガゾートⅡに凄まじいダメージを与えた。

 

「私みたいなドジに………、こんな凄い力は使いこなせません。もしまた失敗して、みんなを危険に曝したらと思うと………。」

 

力が強いという事は、それだけ代償が大きいという事。

怪獣すら苦しめたあの力、一歩でも使い道を誤れば、甚大な被害を仲間や巴里にもたらす恐れがある。

エリカが恐れていたのは、その力の暴走だった。

 

「大丈夫だよ、エリカさん………。」

 

そう言って、ダイゴはエリカの前に立ち、その両手を自分の両手で包み込んだ。

 

「えっ!?あ、あの………、ダイゴさん!?」

 

突然の行為に、耳まで真っ赤になるエリカ。

すると、ダイゴは赤い顔でエリカを見つめて言った。

 

「大丈夫だよ………。エリカさんは、僕が守るから………!」

 

「ダイゴさん………。」

 

一瞬か、それとももっと短い時間だったか。

二人は全てを忘れ、互いに見つめ合っていた。

 

「あ………、ご、ごめん!恥ずかしがったでしょ!?」

 

羞恥に気付き、先に離れたのはダイゴだった。

 

「じ………、じゃあまた後でね!」

 

いたたまれなくなったダイゴは、エリカを置いて教会を後にする。

するとその様子がおかしかったのか、エリカは赤い顔のまま笑った。

 

「アハハ、ダイゴさんったら………。」

 

いつになく積極的だったダイゴの仕草を思い出し、エリカは笑った。

その胸中に、先程までの不安は消え失せたようだった。

 

 

 

 

 

 

その頃、大神はシルク・ド・ユーロからシャノワールへ続く大きな通りを歩いていた。

既にシルク・ド・ユーロの人達は、動物達を含めて避難を完了していた。

これで残る箇所は、墓地に続く花屋とグリシーヌ邸。

そして、この公園になる。

 

「流石に、ここは誰もいないか………。」

 

歩いて来た町並み同様、人気のない公園。

すると、大神の後ろから声がした。

 

「相変わらず、アンタは仕事熱心だね。」

 

それは、ロベリアだった。

何をするでもなく、公園の真ん中にある池の柵に腰を降ろしている。

 

「ロベリア。ここの避難状況は?」

 

「見ての通りさ。金目のものもなくなって、アタシには退屈だよ。」

 

「そ、そうか………。」

 

何ともロベリアらしい答えに、思わず納得する大神。

すると、ロベリアがふと遠くを見た。

 

「本当なら、アタシはまだ刑務所の中。1000年の懲役だったはず………。そのアタシが巴里のために戦ってると思うと、自分の人生に驚かされるぜ。」

 

かつて巴里の悪魔と恐れられ、今もそう恐れられているロベリア。

常識的に考えて最も正義に掛け離れた彼女が、こうして巴里華撃団として戦うのは、運命の悪戯と言うべきだろうかと、大神は思った。

 

「刑務所は暇でね。色んな事を考えてたよ。壁の向こうと壁のこっち、どっちが外かってな。」

 

「刑務所の方が中じゃないか?」

 

常識的な判断で答える大神。

すると、いつもは不快な顔をするロベリアが真顔で答えた。

 

「地球ってのは丸いだろ?なら、囲いの中が狭いが広いかで、違いはない。」

 

それは、1000年という長い時を過ごそうとしていた時の、ロベリアなりの考え方だった。

どんな場所にいようと、地球という星の中にいる事は変わらない。

だから場所を、ましてやそこにいる期間を気にする必要はない。

今日も明日も、中の自分も外の誰かも、この星で生きているのだから関係ない。

しかし、今のロベリアにその考え方はもうなかった。

 

「でも、今はもう駄目だ。こっちの世界に、大事なものができちまったからな。」

 

「ロベリア………。」

 

いつになくアンニュイな様子のロベリアに、一瞬目を奪われる大神。

すると、ロベリアは途端にいつもの調子に戻った。

 

「なんてな。じゃアタシは、金目のものでも探してくるよ。」

 

「ま、待てロベリア!泥棒は………!」

 

慌ててロベリアを捕まえようとする大神。

しかし、逆にロベリアに羽交い締めにされてしまった。

 

「それなら、アタシをしっかり捕まえておきな。アンタだけだよ、そんな事出来るのは………。」

 

「ど、どういう事だ………?」

 

言葉の意味が分からず、首を傾げる大神。

すると、ロベリアは大神の耳元で囁くように言った。

 

「でもね、隊長。アタシも捕まるより、捕まえる方が性に合ってるみたいだ。………覚悟しておけよ?」

 

そこまで口にして、大神を掴む力が急に弱まった。

振り返ると、もうそこにロベリアの姿はなかった。

 

「ロベリアも変わったな………。素直になったというか………。」

 

口調や態度は相変わらずだが、随所に彼女なりの愛着が見受けられる。

その一番の理由が自分にある事を、大神はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムッシュ。避難状況はどうだい?」

 

シャノワール前に戻った大神に、入口でジャンと待っていたグラン・マが尋ねた。

 

「まだ半分ですが、ほぼ完了しています。あと30分程で全てかと。」

 

「そうか。………何だか巴里が別の街みてぇだな。静かになっちまってよ。」

 

大神の報告に、ジャンがため息と共に呟いた。

まるで死んだように静かな巴里。

それが僅かな一時か、永遠に続くかは、自分達にかかっている。

そう思い重圧を感じる大神の肩に、グラン・マが手を置いた。

 

「ムッシュ、怪人の被害で一番大きいのは建物なんかじゃない。被害に遭った人の心だよ。」

 

「隊長さんなら分かるよな?一番守るべきは、巴里の人達だ。これ以上、悲しませる訳には行かねぇ。」

 

グラン・マに続いてジャンが言った。

人の心は脆い。

たった一度の悲しみが、時に一生をかけても癒せないものもある。

あの血も涙もない怪人などのために、巴里を悲しみに脅かす事は、許されなかった。

 

「司令、班長、俺達で巴里の未来を作りましょう。巴里華撃団なら絶対に出来ます!」

 

「そうだね、ムッシュ。アンタの言葉、信じるよ。」

 

「光武F2は完璧に整備しておいてやるぜ。頼んだぜ、隊長さん。」

 

大神の強い言葉に勇気づけられ、グラン・マとジャンの表情から緊張が消える。

不安になればなる程、その不安は現実になる。

それを止めるには、自信を持つ。

則ち、信じる事だった。

巴里華撃団との絆か、これまでの戦いの経験からか、大神は仲間達の力に揺るぎない自信を持ち、信頼していた。

そこには、何物も恐れぬサムライ気質があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に大神が向かったのは、花屋の隣にある墓地だった。

流石に誰もいないとは思うが、場所が場所だけにどうしても気になるのだ。

 

「あ、大神さん………。」

 

来て見ると、案の定花火の姿があった。

おそらくフィリップに挨拶に来たのだろう。

その手には、お供え用の花束が抱えられていた。

 

「ご苦労様です。すみません、見回りの最中に………。」

 

「構わないさ。フィリップさんのお墓参りだろう?」

 

「はい………、最後のお別れにと思いまして………。」

 

大神が尋ねると、花火はやや陰りのある表情で答えた。

やはり花火も、この戦いに不安を感じているのだろう。

フィリップの死から立ち直ったとはいえ、その心は大神程強いものではない。

それを知る大神は、勇気づけるように言った。

 

「最後じゃないよ、花火くん。俺達は帰って来るさ。勝って、笑顔で帰って来るんだ。」

 

「そうでしたね………。みんなで、生きて帰って来るんでしたね。」

 

僅かだが勇気を取り戻す花火。

大神は、厳しい表情を緩めた。

 

「それじゃあ、俺もフィリップさんに挨拶させてもらえるかな?」

 

「はい、お願いします。フィリップも喜んでくれますわ。」

 

快く了承してくれた花火に礼を述べ、大神はフィリップの眠る墓の前に立った。

 

「フィリップさん、俺達は巴里を守り、生きて帰ってきます。どうか見守って下さい。」

 

「フィリップ………、また来ますね。」

 

両手を合わせて目を閉じ、冥福を祈る。

すると、ふと花火が尋ねた。

 

「そういえば大神さん。日本では約束の時、指切りをすると………。」

 

「ああ、そうだよ。小指を出してごらん。」

 

怖ず怖ずと差し出された花火の右手の小指に、大神は自分の小指を絡める。

 

「大神さん、生きて帰って来ましょうね。みんなでまた、笑えるように………。」

 

「ああ、約束する。みんなで生きて帰る。そして、巴里の平和を祝おう。」

 

そして、二人は声を揃えて言った。

 

「「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます、指切った。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花火との指切りを済ませ、大神は最後にグリシーヌ邸の方に向かった。

その途中の市場を通り掛かった時、コクリコの声が聞こえて来た。

 

「あ、イチロー。見回りご苦労様。」

 

「コクリコ。この辺の避難状況は?」

 

「うん。もうこの辺りには、誰もいないみたいだよ?」

 

大神に聞かれ、周りを見渡して答えるコクリコ。

その時、コクリコの目に黒い影が写った。

 

「あ、イチロー!あそこに猫がいるよ。」

 

近寄るコクリコについて行くと、赤い首輪をつけた子猫が市場の影に隠れていた。

大きさはグラン・マの飼っているナポレオンの半分くらい。

まだ人間で言えばコクリコくらいの年齢だ。

 

「どうしたの?飼い主とはぐれたの?」

 

優しく抱き寄せ、コクリコが話しかけた。

抵抗がない事から、人間に慣れている事が分かる。

つまり野良猫ではなく、コクリコの言う通り飼い主とはぐれたのだろう。

 

「ねぇイチロー。この子猫、飼い主が見つかるまで預かっていいかな?」

 

「飼い主が見つかるまでだよ?きっと探していると思うから。」

 

この子猫とはぐれた事で、飼い主を糾弾するつもりはない。

何しろ大地震の避難で、大忙しだ。

そのどさくさでペットとはぐれる事は、十分有り得る話だった。

あくまで飼い主が見つかるまでという事で、大神はコクリコの提案を受け入れた。

 

「やった!名前はどうしようかな?」

 

「とりあえず、コクリコの好きな名前でいいんじゃないか?」

 

どうせ長く一緒にいる訳ではないし、深く考える必要もない。

大神のアドバイスに、コクリコは決めた。

 

「分かった。一番好きな人の名前をつけるよ。」

 

その時、子猫がコクリコの腕をすり抜けて地面に落ちた。

 

「あっ!コラ、イチロー!じっとしてなきゃ!」

 

慌てて考えたばかりの名前を叫び、子猫を抱き抱えるコクリコ。

しかし、今の一言に反応する人物がいた。

イチローこと、大神である。

 

「え?今、俺の名前………。」

 

「え?………ハッ!そ、それじゃ、ボクもう行くね!!」

 

大神に言われて気がついたコクリコは、顔を真っ赤にして市場を走り去った。

その後ろ姿を見ている内、大神は思わず微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迫水大使、こちらでしたか。」

 

久しぶりに足を運んだ日本大使館で、大神は入口に立つ迫水に話しかけた。

 

「大神君か。既に一帯の避難は完了したよ、安心したまえ。」

 

「そうですか。では、大使も………。」

 

以前と変わらぬ笑顔で応える迫水に安心し、笑顔を返す大神。

しかし次の瞬間、迫水の顔から笑顔が消えた。

 

「強いな、君は。決戦を前に、平常心を保てるなんて………。」

 

「大使………?」

 

「僕は自分が情けないよ。戦うのは大神君達だというのに………。」

 

それは、迫水が五十数年の人生で初めて見せた不安であった。

かつて政治界において無敵を誇った『鉄壁の迫水』。

その分厚い壁が、恐怖の重圧を潰されかかっていた。

 

「大使、俺達を信じて下さい。そうでなくては、俺達は安心して戦えません。」

 

「そう………だね、ありがとう大神君。やはり君を巴里華撃団の隊長に推薦して良かったよ。」

 

大神の励ましに心を救われ、迫水は礼を述べた。

あの迫水大使すら不安にさせる程の強大な力。

大神は、先の帝都の戦いを超える死闘が待っている事を予感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その帰り道、大神はグリシーヌ邸の玄関で信じられない光景を目にした。

 

「タ、タレブーさん!」

 

何と、メイド長のタレブーが一人、中庭の掃除をしていたのである。

大神は慌ててタレブーの所に走った。

 

「タレブーさん!避難命令が出ているのに、何をしているんですか!」

 

「これはオオガミ。見ての通り掃除ざます。」

 

タレブーは平然と言った。

 

「お嬢様は大いなる使命のもと、勇者ティガと共に戦おうとしているざます。ならば私の使命は、屋敷を守り、お嬢様のお帰りを待つ事ざます。」

 

「しかし、タレブーさんも危ないかもしれないんですよ!?」

 

「いくらオオガミの頼みでも、こればかりは聞けないざます。」

 

頑なにメイド長の務めを果たそうとするタレブー。

そんな彼女に、大神は必死に訴えかけた。

 

「グリシーヌが心配します。彼女なら屋敷より、タレブーさんを心配するはずです。」

 

「確かに………、お嬢様はお優しい方ざますから。」

 

グリシーヌは生まれて数年で、両親が他界している。

そんな彼女にとって、先代から仕えているタレブーは育ての親と言うべき存在だった。

グリシーヌにとってタレブーを失う事は、正に親を無くすと同じ事。

そんな不安を、戦いを前にグリシーヌにさせる訳にはいかなかった。

 

「タレブーさん。グリシーヌの思いを察して下さい。彼女なら何て言うか………。」

 

大神に言われ、タレブーは一瞬考えた。

ここにもしグリシーヌがいれば、自分に何て言うか。

答えは、簡単に出て来た。

 

「………分かったざます、オオガミ。お嬢様を悲しませる訳には、いかないざますからね。」

 

「タレブーさん、ありがとうございます。」

 

「礼を言うのは私ざます。オオガミ、お嬢様をお頼みするざます。」

 

それはメイドとしてというより、立派な母の顔だった。

そのタレブーに、大神はグリシーヌを絶対に守る事を誓った。

 

「よし、これで街の見回りも終わりだな………。」

 

避難所に向かったタレブーを見送り、シャノワールの方に歩き出す大神。

その時、携帯キネマトロンに通信が入った。

 

「何だ?………、何だと!?」

 

『ノートルダムに異常発生』。

携帯キネマトロンには、そう書かれていた。

もしや怪人が先手を打って動き始めたのか。

嫌な想像をする大神の耳に鐘の音が聞こえて来たのは、その時だった。

 

「くそっ!一体何をするつもりだ………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、巴里の街を覆う黒雲の中から現れた。

巨大な怪物の姿をした兵器が、雲を割って巴里上空を飛来する。

巴里を狙うように下を向いたいくつもの突起。

刹那、その突起の先端から凄まじい魔力が放出された。

魔力は炎となり、瞬く間に巴里の街を焼き尽くす。

更に間髪入れずに、突起の先が接点となって巨大な円を描き出す。

すると、円は凍てつく衝撃波となって巴里の街に牙を向いた。

燃え盛る炎から一転、氷に包まれた巴里の街。

もし避難命令がなければと思うと、大神はゾッとした。

 

「あれが、カルマールの武器なのか………。」

 

空に消えていく兵器に、大神は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「都市に満ちるエネルギーを利用した空中砲台オプスキュール………、これ程の威力とは!」

 

先程巴里の一部を半壊させた兵器に、怪人最期の生き残り、レオンが感嘆の声を上げた。

しかし、カルマールは軽く笑った。

 

「今のは単なる余興。小僧の驚く顔が見たくてな。」

 

「では、まだオプスキュールの攻撃力は上がるのですな!」

 

今のが余興とするならば、一体どれ程の力を秘めているというのか。

驚きの表情を浮かべるレオンに、カルマールは笑って宣言した。

 

「いかにも。次の攻撃を以ってすれば、小僧共や裏切り者はおろか巴里そのものが蒸発してしまうわ。」

 

今の余興でこの威力である。

次の発射が、巴里華撃団の、そしてウルトラマンティガの最期を意味していた。

 

「カルマール公、その次の発射は、いつ行う予定なのですか?」

 

レオンが尋ねると、カルマールは顎に手を置いて考えるそぶりを見せた。

 

「エネルギーの吸収にはしばらく時間がかかる。早くて明日の日の出だろう。」

 

オプスキュールは、巴里という都市に満ちる負の感情をエネルギーとする。

絶大な威力を発揮できる反面、一発の発射に時間がかかるデメリットがあった。

次の発射までおよそ一日。

それまで巴里華撃団とウルトラマンティガの攻撃を妨害する必要があった。

 

「レオンよ。定刻まで小僧共の足止めをしろ。」

 

「お任せあれ。裏切り者の首を、公爵様に捧げましょう。」

 

従順な態度を見せるレオン。

しかし、彼らは気づかなかった。

その会話を盗み聞きする二つの影の存在に。

 

「………会話の内容は、全て記憶した。」

 

「フフン、思い上がるのも今の内で~す!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オプスキュールが巴里に齎した被害は、甚大過ぎるものだった。

モンマルトルを中心に四つの地域が壊滅し、シャノワール周辺もかなりの被害を受けた。

幸い避難が終了していた事もあって怪我人はいなかったが、このままでは巴里が全滅するのも時間の問題だった。

 

「さて、ムッシュ。この状況をどう判断する?」

 

グラン・マに聞かれ、大神は即答した。

 

「情報を集めましょう。あの兵器にも、何らかの弱点があるはずです。」

 

「そうだよね!イチロー頭いい!」

 

「確かに、下手に攻撃されても返り討ちですから。」

 

大神の考えに、コクリコと花火が賛同する。

その時、入口から聞き覚えのある二つの声が聞こえて来た。

 

「その通りで~す!情報収集はメチャ重要で~す!流石分かってますね!」

 

「正確な情報を収集し、的確な分析を行い、確実な作戦を立てれば、」

 

「勝利なんてイージーで~す!!」

 

「こ、この声はまさか………!!」

 

やたらハイテンションな声とコンピューターみたいな無感情の声。

この二つの声に、大神は聞き覚えがあった。

振り向くと、そこには懐かしい二人の仲間の姿があった。

 

「お久しぶりです、中尉サン!はるばる帝都から参上した、ソレッタ・織姫で~す!」

 

「レニ・ミルヒシュトラーセ、一五四○到着。隊長、久しぶりだね。」

 

それは、元欧州星組にして現帝国華撃団隊員、織姫とレニだった。

巴里華撃団決戦の報を聞き、帝都最後の助っ人として駆け付けたのである。

 

「織姫くん!レニ!君達も来てくれたのか!」

 

頼もしい仲間の到着に、笑顔がこぼれる大神。

すると、二人は相変わらずの返事を返した。

 

「当然で~す。困った時はお互い様ですよ、中尉サン。」

 

「隊長が守るものを、ボク達も守りたいから。」

 

心温まる言葉を返す二人。

しかし、ここで当人の大神以上に興奮する者がいた。

言わずと知れた、エリカである。

 

「キャ~~~!!織姫さんにレニさ~~~ん!!」

 

「エリカさん!エリカさん、落ち着いてってば!!」

 

「巴里華撃団花組、エリカ・フォンティーヌです!!よろしくお願いします!!」

 

ダイゴに止められながらも、身を乗り出して自己紹介するエリカ。

その様子に、織姫もレニも度肝を抜かれた。

 

「そ………、そですか………。近所のおバカが飛んで来たと思ったで~す………。」

 

これまでの六人同様ドン引きする織姫。

一方、レニは無言のままエリカを見つめていた。

 

「あら?レニさん聞こえませんでした?」

 

「聞こえている。………呆れていただけ。」

 

いつものペースのエリカをバッサリ切り捨てるレニ。

すると、グラン・マが口を開いた。

 

「ムッシュ加山に手配してもらってね。敵の情報収集を依頼してたんだよ。………早速、教えてくれるかい?」

 

グラン・マに言われ、織姫とレニは報告を開始した。

 

「昼間に現れた兵器は、空中砲台オプスキュールというらしいで~す。しかも、あの空中砲台は明日の日の出と同時に巴里を総攻撃しま~す。」

 

「何だと!?それは真か!!」

 

織姫の第一声に、早くもグリシーヌが反応した。

昼間の攻撃だけで巴里の五分の一が消えたのだ。

何としても、二回目の発射を阻止しなければならない。

 

「でも、どうやってそんな情報を集めたんですか?」

 

誰もが気になる疑問を、エリカがぶつけた。

確かに二人が齎した情報はかなり有力だ。

これだけで次の発射がいつで、それまでに攻撃を仕掛ける必要がある事が分かる。

 

「双眼鏡で読唇術を使い、怪人カルマールの会話をキャッチした。難しい事じゃない。」

 

エリカの質問に答えたのはレニだった。

二人はノートルダム近くに潜伏し、カルマールとレオンの会話を盗み聞きしていたのである。

 

「ありがとう、二人共。助かったよ。」

 

「何をウォーターくさい事言ってるですか、中尉サン?まだこれは序の口で~す。」

 

礼を述べる大神に、織姫は顔の前で人差し指を動かして笑った。

 

「私達はこれからシテ島に潜入して、更に情報収集を続ける予定で~す。」

 

「な、何を言うんだ!シテ島は敵の本拠地なんだぞ!?」

 

グラン・マの話では、シテ島はカルマールによって難攻不落の要塞と化している。

その固さは、フランス軍部の特殊部隊を敗走させた程だ。

そんな危険な場所に仲間を行かせる訳にはいかない。

しかし、レニはキッパリと言った。

 

「情報不足は敗北の原因に繋がる。ここは危険を冒してでも、勝利を優先すべきだ。」

 

「私達は帝国華撃団で~す!心配ありませ~ん!」

 

「隊長、命令を。」

 

レニの言葉に大神は一瞬迷う。

しかし、やがて決心したように二人を見て言った。

 

「………分かった。織姫くん、レニ、シテ島の偵察任務を命じる。気をつけるんだぞ?」

 

「任せて下さ~い!」

 

「了解。」

 

危険なミッションにも関わらず、織姫とレニは表情を変える事なく答えた。

次の発射である日の出は13時間後。

それまで準備を整える必要があった。

 

「よし、二人の連絡が届くまで、みんなは身体を休めてくれ。」

 

「「了解。」」

 

危険を冒してまで情報収集に向かう二人のためにも、必ずカルマールを倒し、オプスキュールを止める。

巴里華撃団は、そう決意を新たにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間に僅かに余裕が出来た事もあり、大神は織姫の向かった楽屋に足を運んだ。

これから彼女は命懸けのミッションに挑む。

みんなの前では強がっていたが、本当は不安があるはず。

織姫がそういう人間である事を、大神は知っていた。

しかし、そんな考えは楽屋の中に入るや一瞬で消えうせてしまった。

何故なら………、

 

「あら、中尉サン。いい所に来たで~すね。一緒にどうですか?」

 

呑気な織姫に、大神は驚いて返す言葉が見つからなかった。

何故なら織姫が、グリシーヌや花火を交えて何やら奇怪なダンスを踊っていたからである。

 

「な………、何をしてるんだ?」

 

大神が尋ねると、グリシーヌが意外な顔で答えた。

 

「何を言うのだ隊長。これは日本の伝統的なダンスであろう?」

 

織姫の動きを真似て、奇怪な動きをしながら答えるグリシーヌ。

すると、横にいる花火が説明してくれた。

 

「てんてこ舞いというそうです。私もちっとも知りませんでした。」

 

まだまだ勉強が足りないという表情の花火だが、知らなくて当然だ。

何故なら………、

 

「あの、二人共。てんてこ舞いはダンスじゃなくて、忙しい事を表す言い回しなんだけど………。」

 

「なっ、何っ!?織姫!!この私を謀ったな!!」

 

大神に真実を伝えられるや、真っ赤な顔で斧を構えるグリシーヌ。

すると、織姫は悪びれもせずに大神の腕にしがみついた。

 

「いや~ん、このタコみたいに真っ赤っかのブルーメールの娘を何とかして下さ~い。私怖いで~す。」

 

「何を言うか!この女の仕出かした事、万死に値する!」

 

「グリシーヌ、何もそこまで驚かなくても………。」

 

流石に凄い剣幕のグリシーヌを見て、花火も止めに入る。

しかし、グリシーヌは大神に叫んだ。

 

「隊長!そいつを引き渡せ。貴公が巴里華撃団の隊長ならば、断れぬはずだ!」

 

「残念でしたね~。中尉サンは、帝国華撃団の隊長で~す。さ、中尉サン。行くで~す。」

 

「待て織姫!逃げるつもりか!!」

 

吠えるグリシーヌを尻目に、織姫は大神を引っ張って楽屋を出た。

 

「あはは、面白かったで~す。あのブルーメールの娘の顔、傑作で~す。」

 

「………織姫くん、人を騙しておちょくるのは良くないぞ?」

 

相変わらずの織姫を嗜める大神。

すると、織姫は一転して素直な態度を取った。

 

「ごめんなさいで~す。中尉サンが仲良くしてるから、ヤキモチ焼いたで~す。」

 

「織姫くん………、俺は今巴里華撃団の隊長だ。でも、君達を忘れた事はないよ。」

 

大神は織姫を元気づけるように言った。

よくは分からないが、好きな人物が他の誰かと仲良くしてるのは面白くないのだろう。

かつてのダイゴがそうだったように………。

 

「中尉サンが言うなら安心で~す。………じゃ、あのグリシーヌに謝って来ますね。」

 

そう言って、織姫は楽屋にとって返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

織姫と別れた後、大神は道具室で準備をしているレニの手伝いに向かった。

織姫同様レニも不安があるはず。

そう思って道具室に入る大神だったが、やはり一瞬でその考えは消えた。

何故なら………、

 

「レニさ~ん、このロープどうしますか?」

 

「この袋の中。きちんと纏めてね。」

 

「この電灯は?同じ袋でいいの?」

 

「それは、このカバンの中。出しやすいように、上に置いて。」

 

エリカやコクリコの手伝いで、着々と準備を進めるレニ。

しかし、その光景に不釣り合いな人物がいた。

 

「隊長、どうしたんだい?」

 

大神に気付いたレニが声をかける。

すると、大神はその驚きを口にした。

 

「………、何でロベリアまで手伝ってるんだ?悪いものでも食べたか?」

 

何と、あの合理主義のロベリアまでもがレニの手伝いをしているのだ。

すると、ロベリアはウンザリした表情で言った。

 

「アタシの事はどうだっていいだろ!?アンタも手伝いな!」

 

その反応は、怒ったというより痛い所を突かれた時のそれである。

すると、コクリコがニヤニヤと笑って説明した。

 

「ロベリアはね………、レニとの勝負に負けて手伝わされているんだ。」

 

何の勝負をしたかは、敢えて聞かないでおく。

すると、レニが作業を進めつつ、ロベリアの評価を出した。

 

「筋は良かった。だが、動きに無駄が多い。」

 

「マリアといい、コイツといい、帝国華撃団はバケモン揃いだな。」

 

余程負けた事が悔しいのか、ロベリアはため息を吐く。

その間に、準備は全て完了した。

 

「協力に感謝する。予想以上に準備時間が短縮出来た。」

 

相変わらずの事務的な言葉で礼を述べるレニ。

しかし、一瞬ばつが悪そうな顔で、レニが大神を見る。

 

「あの………、隊長も、ありがとう。」

 

「俺こそ、ありがとう。わざわざ帝都から来てくれて、嬉しいよ。」

 

シャノワールで初めて笑顔を見せるレニに、大神も笑顔を返す。

すると、初めてレニの笑顔を見る三人が驚きの声を上げた。

 

「わあ!レニさんって、笑うとキュートなんですね!」

 

「本当だ!とっても可愛いよ!」

 

「へぇ………、中々のタマだね。気に入ったよ。」

 

「………いや、その………。」

 

三人からまじまじと見られ、赤面するレニ。

すると、レニはそれを微笑ましく見ていた大神に声をかけた。

 

「隊長………、ちょっと来て。話があるんだ。」

 

そう言って、大神を道具室の外に連れ出すレニ。

すると、レニは厳しい表情に戻って言った。

 

「今度の戦い、絶対に気を抜いては駄目だ。あの敵は危険過ぎる。おそらくティガの助けがあっても、厳しい戦いを強いられるはずだ。」

 

カルマールは誰もが恐れる強敵。

それは、大神も分かっていた。

 

「織姫も強がっていたけど、本当は心配している。だから………、」

 

「分かっているさ、レニ。俺達は絶対に負けない。今までがそうだったように………。」

 

レニの不安を払拭するように、大神は断言した。

すると、レニもようやく笑顔を取り戻す。

 

「今のボクにはこんな事しか言えないけど………、頑張って………。」

 

「ああ。レニ、俺達は必ず勝つ。約束するよ。」

 

たとえ強敵だろうと、正義のもとに打ち勝ってみせる。

懐かしい仲間の笑顔に、大神は誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………。」

 

その頃、ダイゴはシャノワールの外に出ていた。

周りにはオプスキュールにやられた無残な街の姿がある。

その恐ろしさは、発射から数時間が経った今でも震えが来た。

 

「カルマール………、何て恐ろしい………。」

 

ふと、ダイゴは懐のスパークレンスを手にとった。

左右の二つの羽根に包まれたクリスタルは、輝く時を待っている。

ウルトラマンティガ。

かつて巴里の守護神とされた伝説の光の巨人。

しかし、今度ばかりはその巨人の力を以ってしても、奴らに勝てる自信はなかった。

カルマールは桁違いの魔力を持つし、配下のレイキュバスには自分も苦戦した。

これまでを踏まえて、その強敵と再び相見える事がないと、何故言えようか。

 

「ティガ………。」

 

ダイゴがふと、巨人の名前を口にした。

 

「勝てるかな………?僕は、この戦いに………。」

 

尋ねるように、スパークレンスに語りかけるダイゴ。

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「それは………、貴方次第ですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

「えっ!?」

 

突然の背後からの声に肩を震わせ、ダイゴは恐る恐る後ろを振り向いた。

すると、そこには大神と同じくらいの歳の青年がダイゴを優しい目つきで見ていた。

初対面だというのに、何やら懐かしい感じがする。

会った事もないのに、何故だろう。

すると、そんなダイゴの思いに応えるように、スパークレンスのクリスタルが仄かな優しい光を放った。

 

「こ、これは………!?」

 

突然の出来事に驚くダイゴ。

すると、青年はそのクリスタルの光に目を細めた。

 

「やはり………、貴方ですね?我が光を受け継ぐ者は………。」

 

「え………?」

 

青年の発した言葉の意味が分からず、ダイゴは呆然と青年を見た。

そして、恐る恐る尋ねた。

 

「あ、貴方は一体………!?」

 

すると、青年はようやく自己紹介をしていない事に気付いた。

 

「これは失礼、申し遅れました。」

 

そして、青年は自らの名前を名乗った。

 

「帝国華撃団・花組、御剣 秀介。またの名を、ウルトラマンジャック。」

 

「ウ、ウルトラマン!?」

 

その言葉に、ダイゴは驚愕の余り目を見張って叫んだ。

目の前の青年、御剣 秀介は、自身をウルトラマンと名乗ったのである。

 

「先日のここ、シャノワール前における戦いは見事でした。私も一部始終を拝見しましたが、あの窮地を脱しきれる者はそうはいません。」

 

先日の戦い。

それは、ガゾートⅡやイーヴィルティガと交戦した、あの戦いである。

あの時イーヴィルに川に落とされたダイゴを助けたのは、秀介だったのである。

 

「光を継ぐ者、ダイゴ モロボシ………。今一人の巨人、ウルトラマンティガ。貴方は、私の光を受け継ぐに相応しい。」

 

「貴方の光を………!?」

 

秀介の言葉の意味が分からず、ダイゴが尋ねる。

すると、秀介は徐に左手を顔の横に持って来た。

僅かに袖がずり落ち、金色の鮮やかなブレスレットが見える。

ウルトラブレスレット。

秀介がジャックに変身する時に使用する、ウルトラの宝具の一つだ。

見ると、その黄金の腕輪に、赤いきらびやかな十字架があった。

 

「さあ、貴方の光の証を………。」

 

秀介に言われ、ダイゴは懐のスパークレンスを取り出した。

秀介の光を感じたのか、スパークレンスもまた光を強めている。

すると、ブレスレットとスパークレンスは、共鳴するかのように明滅を始めた。

 

「これは………、光が共鳴している!?」

 

今まで見た事のない程に強く眩しい光。

それは見る見る内に激しいものに変わり、凄まじい閃光となった。

 

「うっ………!!」

 

その余りの眩しさに、ダイゴは一瞬目を閉じる。

そしてその目を再び開いた時、ダイゴの顔は驚きに変わった。

 

「!!スパークレンスが………!!」

 

何と、秀介のブレスレットにあった十字架が、スパークレンスのクリスタルを包むように形を変えていたのである。

 

「秀介さん………、これは一体………?」

 

ダイゴが恐る恐る尋ねると、秀介はそのままの表情で答えた。

 

「『プラズマ・オーブ』。ウルトラの星に伝わる、『受け継がれる光』です。」

 

「ウルトラの星………?」

 

おうむ返しに聞くと、秀介は夜空を指差す。

その先を追うようにしゃくり上げると、夜空に一際暖かい光を放つ星があった。

 

「あれが、ウルトラの星………。」

 

「はい。あれは私の、そして貴方の故郷です。」

 

ダイゴにも見えたウルトラの星。

ティガの光を継いだためか、その光はダイゴに懐かしい印象を与えた。

 

「でも、何で僕にこんな凄いものを?」

 

プラズマ・オーブの力が凄まじいものである事は、ダイゴにもハッキリ分かった。

スパークレンスを通じて、熱い光の奔流が身体の中を駆け巡るのだ。

しかし、分からない。

何故秀介は、そんな凄い代物を自分に継がせるのか。

すると、秀介は小さく笑った。

 

「ダイゴ………。貴方はかつての私によく似ています。」

 

「秀介さんに………?」

 

「ええ。………かつて、私は初めての任務で地球に来ました。誰もが認める美しいこの星を守る守護神になる………。そう思っていました。」

 

思っていましたという事は、今は違うのだろうか。

そう考えるダイゴに気付いているのかいないのか、秀介は続けた。

 

「しかし、戦いの中で、帝国華撃団の皆さんとの関わりの中で、私はそれより大切な事に気付きました。………何だか分かりますか?」

 

「大切な事………?ううん、一体何?」

 

分からず聞き返すダイゴ。

すると、秀介はやはりと頷いた。

 

「それが分かれば、貴方も、きっと強くなれますよ。」

 

「え………?」

 

言葉の意味が分からず、目を丸くするダイゴ。

しかし、秀介は答えを教えてはくれなかった。

 

「貴方は答えを見つけている。ただ、それに気付いていないだけです。」

 

そう呟き、秀介はダイゴに背を向けた。

 

「あ、秀介さん………!」

 

ダイゴが慌てて呼び止めるが、秀介は夜の闇に消えて見えなくなった。

 

「………。」

 

ダイゴはもう一度、スパークレンスを見た。

クリスタルを包む赤いオーブ。

その秘められた力に、ダイゴはただ圧倒されるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………もう、何を言っても無駄みたいだね。」

 

露骨に落胆の色を浮かべ、ピエロが言った。

 

「何!?どういう事だ!?」

 

「あの時、道を間違えてさえいなければ………。」

 

ピエロは大神の声には答えず、蔑んだ表情で大神を見る。

その時だった。

 

「!?」

 

何もない世界は、突然巴里上空に姿を変えた。

そこには、街を次々と破壊していくオプスキュールの姿が見える。

 

「チャッ!!」

 

下から声がした。

見ると巴里の守護神、ウルトラマンティガがオプスキュールと対峙しているではないか。

ティガはオプスキュールを一点に見据え、両腕を胸の前で合わせて左右に広げる。

すると、オプスキュールも突起の一つにエネルギーを集中させた。

そして………、

 

「ハッ!!」

 

 

ティガの腕からゼペリオン光線が発射されると同時に、オプスキュールもエネルギーを発射して来た。

激しくぶつかる二つの力。

しかし、程なくしてティガのゼペリオン光線が破られた。

 

「ジュワッ!?」

 

凄まじいエネルギーの直撃を受け、ティガは仰向けに倒れ動かなくなる。

その時、まるでティガの魂を弔うように、ノートルダムの鐘が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

「止めろぉぉぉ………!!」

 

 

 

 

 

 

そう叫んだ時、大神の目に映る景色が一転した。

 

「大神さん、どうされました?」

 

見ると、不安な表情のメルが大神の顔を覗き込んでいた。

その事から、ここが巴里上空ではなく作戦司令室と分かる。

 

「メルくん………。良かった、夢か………。」

 

決戦を前に、何とも不吉な夢を見たものだ。

大神はかぶりを振って、隊長の顔になった。

 

「シーくん、織姫くん達からの連絡は?」

 

「それがまだですぅ。もう時間まで4時間くらいしかないのにぃ。」

 

大神が仮眠をとったのが13時間前。

つまり二人は、少なく見積もっても7時間はシテ島にいる事になる。

 

「ムッシュ、ちょっといいかい?」

 

その時、グラン・マが再び作戦司令室に顔を出した。

 

「司令、如何しました?」

 

「実はね、あの娘達の中から副隊長を選んで欲しいんだよ。」

 

いつになく神妙な面持ちで、グラン・マが言った。確かに決戦の時は目の前に迫っている。

いくら歴戦の猛者である大神といえども、今度の敵を己の判断力のみで対抗しうるかと問われれば自信はない。

そこで彼を補佐するポスト、則ち副隊長の任命を、グラン・マは提案したのである。

 

「万が一、ムッシュが倒れた時の事も踏まえてね。頼めるかい?」

 

「確かに、そうですね。」

 

無論この戦いで倒れるつもりなどない。

しかし、もしもの為のセーフティーネットは欲しい所だった。

 

「誰にするかはムッシュに一任する。それと………、」

 

グラン・マは一瞬躊躇うそぶりを見せるが、すぐに続けた。

 

「ムッシュはいずれ、帝都に帰る。その時は副隊長が隊長代行を務める事になるからね。」

 

「………分かりました。」

 

帝都に帰るという事に、大神は一瞬辛い顔を見せる。

無理もない。

今まで巴里で出会った人達との触れ合いは大神に帝都にない感動を与えた。

最早自分にとって第二の故郷となった巴里。

そこを離れる事は、大神の胸を締め付けた。

 

「本人にはムッシュから言っておくれ。じゃ、頼んだよ。」

 

そう言って作戦司令室を後にするグラン・マ。

ああ言ってはいたが、大神自身、答えはもう決まっていた。

 

「おい二人共、あの派手コンビからの連絡はまだなのか?」

 

ロベリアが作戦司令室に現れたのは、ちょうどその時だった。

 

「ロベリア………、いい所に来てくれた。」

 

「あん?何だよ。」

 

「話があるんだ………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大神はロベリアを、誰もいないシャノワールのポーチに連れて来た。

ここなら、他の誰かに聞かれる事もないだろう。

 

「話って何だよ。出撃前で苛ついてんだから。」

 

これから伝えられる内容も知らず、ロベリアが悪態をつく。

大神は、そんな彼女の顔を見つめ、ハッキリと告げた。

 

「ロベリア………、実は君を巴里華撃団の副隊長に任命したいんだ。」

 

「………はあ!?」

 

数秒の間を置いて、ロベリアの表情が驚きに変わった。

無理もない。

協調性のカケラもない自分に管理職など任せたら、巴里華撃団が崩壊してしまう。

そんな事が分からない大神ではない。

しかし、大神の口から出た言葉は同じだった。

 

「もう一度言う。君を巴里華撃団の副隊長に任命したい。」

 

「ア、アンタ気は確かか!?アタシに副隊長なんて………!言っただろ?巴里の平和に興味なんかないって!」

 

いつもの調子で言い返しているつもりだろうが、動揺しているのはバレバレである。

 

「大体アンタ、アタシの戦いの目的知ってんだろ?それとも、特別手当でもつくのかい?」

 

自分はあくまで自由のために戦うのであって、平和の為ではない。

1000年の懲役をチャラにすれば、こんな所とは縁を切る。

そう言うロベリアだが、大神はその態度に見える僅かな変化に気付いていた。

 

「俺も知らないが、大した金額じゃないだろう。」

 

「だったらノンだ。そんな面倒な事できるか。」

 

ロベリアは即答し、シャノワールに戻ろうとする。

しかし、次に大神が発した一言で、その足は止まる事になる。

 

「ロベリア、俺が最も信頼しているのは君だ。パートナーになってくれないか。」

 

「ほう、相棒ね………。」

 

その一言が嬉しかったか、ロベリアはフッと笑顔を見せた。

最初なら炎を浴びせてでも断っただろうロベリアには、なかった笑顔だ。

 

「分かったよ隊長。それなら引き受けてやるよ。」

 

根負けした様子で、ロベリアが肩を竦めた。

 

「でもアタシを任命したからには、アタシの失敗はカバーしてくれるよね?」

 

「ああ。君の事は、俺がサポートする。」

 

「覚悟しろよ?ずっと、苦労をかけてやる。」

 

大神の返事に、ロベリアは笑顔を向ける。

しかし大神はその途端、暗い表情になって答えた。

 

「………それは、出来ない。俺はいつか帝都に戻る時が来る。君を副隊長に任命するのは、その後の巴里華撃団を任せたいからだ。」

 

すると、ロベリアは一瞬ショックとも取れる表情を見せたが、すぐにそれを呆れ顔で隠した。

 

「そうか、帰るのか………。まあ、こんなガラクタ部隊よか、帝都の方がやりやすいよな。」

 

「そんな事はない。済まないロベリア………、分かってくれ。」

 

ロベリアが傷ついたと思い、謝罪を口にする大神。

すると、ロベリアは再び笑顔で大神を見た。

今まで見た事がない、優しい笑顔だ。

 

「気にするな、隊長。帰る事くらい分かってたさ。でも………、今すぐじゃないんだろ?」

 

「ああ。少なくとも巴里に平和を取り戻すまでは、ロベリアと一緒にいる。」

 

そう言うと、ロベリアは大神の肩に手を置き、頬に触れた。

別れを惜しむ恋人のように………。

 

「いいよ、それで。巴里にいる間だけは、アタシをしっかり捕まえててくれよ。」

 

「もちろんだよ、ロベリア。」

 

そう答えた時だった。

大神の携帯キネマトロンに、緊急の通信が入ったのである。

それは、織姫とレニからの連絡によるものだった。

 

「ロベリア、作戦司令室に戻るぞ!」

 

「フッ、了解だよ!」

 

不敵な笑みで、ロベリアは笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちら織姫、敵のアジトが判明しましたで~す!」

 

作戦司令室に、織姫の通信が聞こえて来た。

 

「アジトはノートルダムの真下。地下深くに位置していま~す!」

 

「分かった。織姫くん達はシテ島を脱出してくれ。」

 

報告に礼を述べつつ、大神が言った。

しかし、二人はそれを一蹴した。

 

「それは出来ない。作戦をより有利に展開するためには、情報が少な過ぎる。」

 

「中尉サン、心配し過ぎで~す。私達だってそんなにおバカじゃないで~す。」

 

「駄目だ!脱出してくれ!!」

 

大神は叫ぶが、レニに強引に通信を切られてしまい、連絡はつかなくなってしまった。

確かに場所は特定出来たが、敵の戦力やオプスキュールのメカニズムなど、不明な点は数多く存在する。

しかし、今はあの二人の身が心配だった。

 

「よし、ムッシュ。こっちも動いた方が良さそうだよ?例の話を。」

 

グラン・マに言われ、大神は席から立ち上がった。

 

「実は、決戦にあたってロベリアを副隊長に任命した。みんな、よろしく頼むぞ!」

 

「どうしてもって言うもんでね。そこんとこよろしくな。」

 

熱意に溢れる大神とは逆に、やる気のない様子で肩を回すロベリア。

しかし、隊員達の受けは意外と良かった。

 

「はい!隊長、副隊長!ガツンといきましょう!」

 

「我らが宿敵、カルマール………。この手で成敗してくれよう。」

 

「この戦いに勝てば、街は平和になるんだよね!?」

 

「はい。必ず、笑顔の溢れる巴里を取り戻しましょう。」

 

「さて、稼ぎに行くか。隊長、出撃命令だ。」

 

口々に決意を述べる隊員達。

その決意に勝利を決意しつつ、大神は出撃命令を出した。

 

「巴里華撃団・花組、出撃!!目標地点、ノートルダム!みんな、行くぞ!!」

 

「「了解!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シテ島、ノートルダム寺院。

周囲をセーヌ河に囲まれたそこは、巴里市内に位置していながら、難攻不落の要塞となっていた。

先の特殊部隊との戦闘の跡が生々しく残る寺院前を、我が物顔でのし歩くポーン達。

そこに、六機の光が現れた。

 

「巴里華撃団、参上!!」

 

言わずと知れた巴里華撃団である。

すると、ノートルダム寺院の上から声が聞こえて来た。

 

「現れたな、巴里華撃団。お前達の無謀さを後悔させてやろう。」

 

それは、復活した怪人最後の生き残り、レオンだった。

以前のふてぶてしい態度はそのままに、レオンは大神達の前にその姿を現す。

 

「戯言を!そのような言葉に怖じけづく巴里華撃団ではないぞ!」

 

前回煮え湯を飲まされかけた事からか、グリシーヌが言い返す。

すると、レオンは高笑いを上げた。

 

「ワハハハハ!その台詞、これを見ても言えるか?」

 

「あ、あれは!?」

 

その時ノートルダム寺院の頂上、レオンの真ん前に、異様な形をした二つの十字架が現れた。

二つを結ぶ赤い球からは、何やら怪しいエネルギーを感じる。

しかし、大神が驚いたのはそんな事ではなかった。

 

「レニ!織姫くん!大丈夫か!?」

 

何と、十字架にはシテ島に潜入した織姫とレニが捕われていたのだ。

 

「巴里壊滅の余興だ。貴様の大事な仲間が死んでいく様を見せてやろう。」

 

「そうはさせない!みんな、先に二人を救出するぞ!」

 

「「了解!」」

 

一刻も早くオプスキュールを止めなければならないが、二人を見捨ててはおけない。

大神の思いを汲み取り、隊員達が一斉に動き出す。

しかし、それで簡単に助けさせる程、レオンは甘い相手ではなかった。

 

「馬鹿め。貴様らとて罠に嵌まっているのだぞ?」

 

レオンが右手を上げ、不気味に笑った。

その時、巴里華撃団の周囲を取り囲むように巨大な魔法陣が出現し、リングのようなバリケードが張り巡らされた。

等間隔に配置された柱を結ぶ青い線からは、凄まじい魔力を感じる。

 

「チッ、準備のいいこって。」

 

「貴様らにはそこで、オプスキュールの姿を楽しんで貰うぞ。最もその時が、貴様らの最期だがな。」

 

吐き捨てるロベリアに、レオンが勝ち誇った様子で笑う。

すると、大神の耳に別の声が聞こえて来た。

 

「中尉サン、大丈夫で~す………。そのバリケードは間に合わせ………、意外と、脆いで~す………。」

 

「な、何!?まだ喋れるというのか!」

 

どうやら余程痛め付けていたらしく、レオンの表情が驚きに変わる。

すると、それを尻目にレニが口を開いた。

 

「バリケードの弱点は、その支柱………。光が支柱を通過する時に攻撃すれば………。」

 

見ると、バリケードは一定の速度で光が時計周りに動いている。

それこそ支柱を結ぶ青い線のエネルギーであり、これを維持しなければバリケードはたちまちに消えてしまうのだ。

どんなに追い詰められた状況にあっても、有利な情報を最大限伝達する。

二人の強い心に、大神は奮い立った。

 

「余計な事を!今すぐ殺してやる!!」

 

言うや、レオンが右手を上げた。

刹那、目に見える程の雷が球からほとばしり、二人に襲い掛かる。

 

「あああああ………!!」

 

「うっ………、くうっ!!」

 

傷ついた身体への容赦ない攻撃に、苦悶の声を上げる二人。

それを見て、大神は直ちに指示を出した。

 

「みんな!一刻も早くバリケードを破壊して、二人を救出するぞ!」

 

「「了解!」」

 

巴里の命運を賭けた決戦。

その前哨戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、シャノワールの格納庫でもう一人慌てる者がいた。

ダイゴである。

紅蘭の発明した『流星F』が完成したという事で、ダイゴだけはエクレールに入れず、現地合流となってしまったのだ。

それだけではない。

出発前になって、ジャンがとんでもない事を口にしたのだ。

 

「言っとくがダイゴ。こいつは俺の新しい子供のようなもんだ。壊しやがったらただじゃおかねぇぞ!!」

 

「壊すなって言われても………。」

 

それがジャンの挨拶のようなものと知らないダイゴは、ジャンの言葉を真に受けながらノートルダム寺院を目指す。

すると、程なくしてレーダーに魔力の反応が見られた。

 

「ん?………、あれは!!」

 

前方を注視したダイゴは驚きの声を上げた。

何故ならそこには、十字架に捕われた織姫とレニ。

更にバリケードに囲まれた状態で敵と交戦する巴里華撃団の姿があった。

 

「よし、僕も………!」

 

大神達を加勢するべく、ダイゴは流星Fのハンドルを大きくきる。

しかしその時、何か凄まじい衝撃が流星Fを襲った。

 

「うわあっ!!な、何だ………!?」

 

ハンドルをいくら操作してもいう事をきかない。

それどころか、流星Fは煙を上げて落下し始めた。

 

「くっ………!!」

 

ダイゴはハンドルを目一杯に引き、機体の体勢を元に戻す。

そして落下の勢いを利用し、水上を滑走する形でノートルダム寺院に向かった。

 

「みんな、大丈夫!?」

 

シテ島の淵に流星Fを停止させ、ダイゴが声を張り上げる。

すると、レオンがニヤリと笑った。

 

「来たかティガ。ならば隠しておく必要もあるまい。」

 

レオンは三度、右手を上に掲げた。

すると、シテ島の周りを流れるセーヌ河の中から、黒い化け物が現れた。

 

「ギィー!!」

 

いや、化け物ではない。

かつてシャンゼリゼでティガに倒された、超古代怪獣レイキュバスである。

 

「あ、あれ、レイキュバス!?」

 

思い出したようにコクリコが叫んだ。

大神を始め、他の隊員達も同様に驚いている。

先程ダイゴの流星Fを撃ち落としたのは、レイキュバスだったのである。

すると、レオンは大神達の表情に笑った。

 

「驚くのはまだ早い。いでよ、我がしもべ!髑髏怪獣レッドキングⅡ!」

 

刹那、ノートルダム寺院前の地面が熱気に包まれた。

それと同時に何やら地中を掘り進む音が聞こえて来る。

 

「ま、まさか………!!」

 

唯一レッドキングを知るダイゴが叫んだ。

すると、寺院前の地面から赤い火柱が上がる。

そして、その中に光る二つの赤い目を、ダイゴは見た。

 

「あ、あれは………!?」

 

ポーンを切り伏せつつ、大神が叫んだ。

時折赤く発光する黒い凸凹の皮膚と、以前の三倍近くに膨れ上がった二本の腕。

まるで煮えたぎる溶岩のごときその身体からは、万物を溶かす程の高熱が発せられている。

その熱さ、足元の地面が赤く変色する程だ。

 

「ガハハハハ!巴里華撃団、カルマール様の力で強化された我がしもべになぶり殺されるがいい!」

 

「ガオオオオッ!!」

 

「ギィーッ!!」

 

二大怪獣が同時に咆哮を上げ、島を揺るがした。

ダイゴは怪獣を見据えながら、生まれ変わったスパークレンスを空に掲げた。

 

 

 

 

「ティガーーーーーッ!!」

 

 

 

 

 

「チャッ!!」

 

光の柱から出現したティガは、バリケードに包囲されたままの大神達を守るように、二大怪獣の前に立った。

その胸には、カラータイマーを守るように赤いサークルが見える。

 

「現れたなウルトラマンティガ。」

 

獲物を見つけた肉食動物のように、レオンがティガを睨んだ。

その両脇にはレイキュバスⅡとレッドキングⅡが控えている。

 

「行け、しもべ達よ!あの裏切り者を今度こそ始末するのだ!!」

 

その声と共に、二大怪獣が一斉にティガに襲い掛かって来た。

 

「ハッ!」

 

その剛腕とハサミがぶつかる寸前、ティガは空中高くに飛び上がった。

更に海面スレスレに急降下し、パンチの姿勢で飛び込む。

 

「チャーッ!!」

 

疾風のごとき勢いで、ティガはレイキュバスⅡに激突した。

その勢い、レイキュバスⅡの巨体が大きく後ろに飛ばされた程である。

 

「ガオオオオッ!!」

 

「チャッ!」

 

ティガは間髪入れずに、襲い来るレッドキングⅡに視線を向けた。

体当たりで迫るレッドキングⅡの巨体をかわし、すれ違い様に背中にチョップを打ち込む。

 

「ガオオオオッ!」

 

レッドキングⅡはそれだけで巨大な腕で裏拳を打ち込む。

ティガはそれを屈んでかわし、脇腹を蹴りつけた。

 

「ギィーッ!!」

 

「チャッ!」

 

そこに、先程ティガのパンチで吹っ飛ばされたレイキュバスⅡが襲い掛かって来た。

ティガはすかさずレッドキングⅡを投げ飛ばし、もう一体の怪獣に振り向く。

 

「ハッ!」

 

突き出されたハサミを両腕を使って左右に弾き、顔面に膝をたたき付ける。

更に怯んだレイキュバスⅡの腹に、ティガは重い蹴りを喰らわせた。

 

「何!?まさかこれ程まで戦えるとは………!」

 

ティガの戦い振りを見て、レオンは驚きの表情を見せた。

自分のレッドキングⅡはカルマール自身が最高傑作を自称する程の生物兵器であるし、レイキュバスⅡも元々高い戦闘力がより一層強化されている。

しかし現在、その怪獣を二体同時に相手していながら、ティガは優勢を保っている。

それには、ティガ自身も驚いていた。

 

「(まさか、これがプラズマオーブの力………!?)」

 

全身に漲るエネルギーと、相手が遅く見えるくらいのスピード。

更にかなりの重量を誇っているはずのレッドキングⅡをやすやすと投げ飛ばせる程のパワー。

秀介から受け継いだプラズマオーブは、初戦からその力をまざまざと見せ付けた。

 

「ハッ!」

 

ティガはバク転で二大怪獣から距離をとり、大神達を囲む九つの柱目掛けてハンドスラッシュを発射した。

青白い光弾が全ての柱に命中し、たちまちにして炎上する。

すると、柱と柱を結ぶバリケードが消滅した。

 

「ありがとう、ダイゴ!」

 

「よし、織姫くん達を救出するぞ!」

 

窮地を脱してくれたティガに礼を述べながら、二人を助けようとする大神。

しかし、ここでレオンがそれを阻んだ。

 

「動くな!こいつらを見殺しにするつもりか?」

 

言うや、レオンは蒸気獣マルシュを召喚し、赤く燃える拳を二人に突き付ける。

 

「くっ………!レオン、卑怯だぞ!!」

 

「フン、この偉大な私が何故人間ごときに手段を選ばねばならん。」

 

大神の叫びに、レオンは嘲笑を返した。

織姫とレニを捕われている以上、形勢は絶対にこちらが不利だ。

更にレオンは、人質を盾に恐るべき要求を突き付けてきた。

 

「よし、大神一郎。武器を置いてこちらへ来い。」

 

「くっ………!!」

 

罠である事は見え見えだ。

しかし、行かなければ二人の命が危ない。

大神は数秒躊躇ったが、やがて二刀を地面に刺して歩き出した。

 

「お、大神さん………!」

 

止めようとするエリカを押し退け、マルシュの前に立つ大神。

すると、レオンは勝ち誇った様子で笑った。

 

「ガハハハハ、馬鹿な奴め。お前の仲間がやられる様を見ているがいい!」

 

言うや、レオンは燃える拳を突き出し、炎の塊を発射した。

しかし、炎は大神ではなく、何と二大怪獣と戦っていたティガを直撃した。

 

「ジュワッ!?」

 

レッドキングⅡにパンチを浴びせようとしていたティガは、その一撃を胸に受けて吹き飛ばされる。

そこに、二大怪獣が反撃を仕掛けて来た。

 

「ガオオオオッ!!」

 

レッドキングⅡがお返しとばかりに巨大な腕で殴り掛かる。

ティガは起き上がる間もなく、その一撃で地面にたたき付けられた。

 

「ジュワッ!!」

 

その凄まじい衝撃で、地面が大きく凹む。

更にレイキュバスⅡに火炎放射を浴びせられティガのカラータイマーが点滅を始めた。

 

「ダイゴさん!!」

 

思わずエリカが叫ぶが、織姫達を人質に取られたこの状況では助けに行く事も出来ない。

最早これまでか………。

誰もがそう思った時、不思議な事が起こった。

何と、織姫とレニに捕らえていた赤い球が真っ二つに切断されたのだ。

 

「何!?一体何事だ!?」

 

突然の出来事に狼狽するレオン。

見るとノートルダム寺院の入り口に、織姫とレニともう一人、大神のよく知る人物の姿があった。

左手のブレスレットから伸ばした金色の剣。

それを見た大神は、驚愕に目を見張った。

 

「……遅くなりましたね、大神隊長。」

 

「秀介!秀介じゃないか!!」

 

何と、そこにいたのは帝国華撃団最後のメンバー、御剣 秀介だったのだ。

彼もまた、大神のピンチに宇宙から駆け付けたのである。

それに驚いたのはレオンだった。

 

「ば、馬鹿な!あの呪縛を生身の人間に破れるはずが………!!」

 

自分の封印術には絶対の自信を持っていただけに、動揺を隠しきれないレオン。

すると、秀介は不敵に笑って見せた。

 

「今に分かりますよ。」

 

言うや、秀介は左手のスパークソードを解除し、天に掲げる。

すると、ブレスレットが俄かに発光を始めた。

 

 

「ジャーーーーーック!!」

 

 

秀介が叫んだ。

刹那、冷たい巴里の夜空に、ウルトラの星が輝いた。

 

 

 

 

 

 

 

大神を始め、その場にいる誰もが驚いた表情で固まっていた。

秀介のブレスレットが光を放った次の瞬間、秀介の姿が消え、代わりにティガによく似た巨人が立っていたからである。

 

「ウルトラマン………、ジャック………!!」

 

大神が巨人の名を呟いた。

かつて遥か東の帝都を守った光の巨人。

その彼が、実に3年の月日を経て、この巴里に帰ってきたのである。

 

「シュワッ!」

 

3年前と変わらぬ声で、ジャックは二大怪獣に飛び掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンジャック。

遥か東の地の勇者の助太刀に、レオンの運命はほぼ決まった。

レイキュバスⅡとレッドキングⅡの力を以ってすればティガもろとも巴里華撃団を全滅出来ると踏んでいたし、織姫とレニを人質にとればそれこそ確実と考えていた。

しかし、ウルトラマンジャックという全くの計算外の敵に、二大怪獣は早くも敗北の色を見せ始めていた。

 

「(くっ………!まさかもう一人の巨人が現れるとは………!)」

 

レオンは悔しげにジャックを見た。

ティガとはまた違った神々しさを持つ光の巨人。

数多の怪物から宇宙を守り抜いて来た彼には、既に救世主としての貫禄がつきつつあった。

しかし、ここで退く訳にはいかない。

カルマールがオプスキュールを発動させ、巴里を壊滅させるために戦わなくてはならないのだ。

レオンは負けると分かっていながら、マルシュを起動させた。

 

 

 

 

 

 

 

「大神さん、ノートルダム寺院の妖力反応が上昇しています!」

 

メルから通信が入って来たのは、その時だった。

 

「隊長、この敵は私に任せて下さい。足止めを喰っては間に合いません。」

 

すると、ジャックが大神達を守るように叫んだ。

二大怪獣と対峙しながらも、ノートルダム寺院への道を確保している。

確かにジャックの言う通りだ。

このままカルマールにオプスキュール発動を許してしまったら、全てが無駄になってしまう。

大神は、ジャックの言葉に従って指示を出した。

 

「よし、今の内にオプスキュール発動を阻止する!秀介、ダイゴ、この場は頼んだぞ!!」

 

「分かった!!」

 

「了解です!!」

 

二人の返事に頷き、寺院内に急ぐ巴里華撃団。

すると、レオンがそれを阻止しようと動いた。

 

「させるか!カルマール様には近づかせん!!」

 

物凄いスピードで疾駆し、大神達の前に立ちはだかるレオン。

しかし、そこに横からティガが飛び蹴りを放って来た。

 

「チャッ!!」

 

完全に大神達に注意が向いていたレオンは、そのまま奥に吹っ飛ばされる。

すると、ティガが叫んだ。

 

「みんな、奴を倒したらすぐに合流するからね!」

 

「ありがとう、ダイゴ!!」

 

ティガのフォローもあって、ノートルダム寺院内に潜入する巴里華撃団。

それを見て、レオンは烈火の如く怒った。

 

「グオッ!許さん!許さんぞ、ウルトラマンティガ!!」

 

「ガオオオオッ!!」

 

「ギィーッ!!」

 

レオンに続いて二大怪獣が雄叫びを上げる。

二人の巨人は、ノートルダム寺院を守るように並んで立つと、互いに頷き合った。

 

「チャッ!」

 

「シュワッ!」

 

襲い掛かって来るレイキュバスⅡとレッドキングⅡ。

ティガとジャックはそれぞれ一体ずつと戦い、敵のチームワークを打ち消す作戦に出た。

こうして一対一の状況を作り出す事で、個々の戦闘力に勝る自分達を有利にするためだ。

結果、それは功を成し、二大怪獣は先程までの勢いが嘘のように、ウルトラマンに歯が立たなかった。

 

「ハッ!」

 

パワータイプになっていないにも関わらず、ティガはレイキュバスⅡを高々と持ち上げ、地面にたたき付けた。

一方、ジャックもレッドキングⅡを相手に優勢を保っていた。

 

「ガオオオオッ!」

 

「ヘッ!」

 

熱さのあまり溶岩と化した岩石を投げつけて来るレッドキングⅡ。

ジャックは宙返りで溶岩をかわし、流星キックを放った。

 

「ヘアァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノートルダム寺院の地下深く。

大神達はレオン率いる二大怪獣をティガとジャックの二人に任せ、カルマールが潜む地下神殿に突入した。

地下に進むにつれ、入り口でも感じた妖力がますます高まるのが分かる。

 

「来おったか小僧。レオンも使えぬ奴よのう。」

 

野太い声が辺りに響いた。

その悪意に満ちた声、聞き違えるはずがない。

 

「カルマール!」

 

二刀を手に、大神が叫んだ。

目の前の悪趣味な祭壇には、パイプの煙を蒸す仇敵の姿がある。

 

「見るが良い。これぞ我が究極の破壊兵器、オプスキュールだ!」

 

カルマールが叫んだ。

すると、目の前に巨大な魔法陣が描かれ、閃光を放った。

 

「こ、これは………!?」

 

目の前に広がる光景に、大神達は仰天した。

地下神殿にいたはずの自分達が、オプスキュール毎巴里上空にワープしてしまったのだ。

見ると、ノートルダム寺院前では二人のウルトラマンが二大怪獣と激戦を繰り広げている。

 

「ヌハハハハ!諸君らにはこの巴里が灰に変わる様を見届けてもらうとしよう。」

 

奥の方からカルマールの笑い声が聞こえて来た。

見ると、既に召喚した蒸気獣『サンフォニー』がこちらに睨みを効かせている。

 

「そんな事はさせるか!みんな、何としてでもオプスキュールを止めるんだ!!」

 

「「了解!!」」

 

大神の声を合図に、巴里華撃団は一斉に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルマールが召喚した空中砲台オプスキュールで戦う両者に、地上で戦うティガもすぐに気が付いた。

 

「あれは!」

 

「オプスキュール………。幸い発射には至ってないようですが。」

 

上空に浮かぶ怪物を象った兵器に目を向ける二人。

すると、レオンが誇らしげに笑った。

 

「クックックッ………。驚いたか?カルマール様の力を以ってすれば、奴らなど一ひねりだ。」

 

レオンの言う事もあながち否定出来ない。

以前のシャンゼリゼの戦いでは、巴里華撃団は惨敗している。

確かにその頃とは比べものにならない強さではあるが、オプスキュールから感じるカルマールの魔力は大神達のそれにも全くヒケをとっていない。

負けるとは思わないが、苦戦は免れないはずだ。

 

「もう間もなくオプスキュールのエネルギーは満タンになる。遅かれ早かれ貴様らはおしまいだ。」

 

「それを許す私達と思いますか?」

 

レオンの言葉を遮るように、ジャックが口を開いた。

 

「ティガ、ここは私が。貴方は隊長のもとへ向かって下さい。」

 

「え!?で、でも………。」

 

確かにカルマールは大神達にも手に余る強敵だ。

おそらく自分達の助けがなければ厳しい相手だろう。

しかし、こちらもレオンを含め三体の怪獣を相手にしている。

いくら歴戦のジャックと言えども、この数の差を覆すのは至難の業だ。

しかし、ジャックはハッキリと告げた。

 

「御安心下さい。私は負けません。」

 

「え?」

 

「私は………、ウルトラマンですから。」

 

その重みのある言葉に、ティガは言葉を止めた。

この人なら勝てる。

根拠は何一つないが、彼のその言葉は、不思議とティガをその気にさせた。

 

「さあ、早く。」

 

ジャックの言葉に頷き、ティガは額のクリスタルに両腕を交差させた。

 

「ンゥゥゥ………、ハッ!!」

 

クリスタルが発光し、ティガはマルチタイプからスカイタイプにチェンジする。

そしてティガは、オプスキュール目指して飛び立った。

 

「チャッ!」

 

「ムッ、逃がすものか!やれ、レイキュバスⅡ!!」

 

レオンの指示を受け、レイキュバスⅡが先程流星Fを撃墜した火炎弾を発射した。

いくつもの火球が、凄まじいスピードでティガを追う。

しかし、その火炎弾が命中する事はなかった。

何故なら、それを光弾で打ち消したものがいたからだ。

 

「………貴方達の相手は私です。」

 

ウルトラショットを放ったままの姿勢で、ジャックが冷ややかに口を開く。

すると、レオンは殺気を剥き出しにしてジャックを睨んだ。

 

「おのれ、ウルトラマンジャック!!貴様だけは生かしてはおかん!!」

 

「そんな大口叩ける立場ですか?」

 

迫り来る二大怪獣を前に平然と言葉を返し、ジャックは構えを取った。

 

「シュワッ!」

 

華麗な身のこなしで、レイキュバスⅡの頭上を越えて背後を奪う。

 

「ヘッ!」

 

ジャックはそのままレイキュバスⅡの尻尾を掴み、ジャイアントスイングの要領で投げ飛ばした。

 

「ヘアァッ!!」

 

更にレッドキングⅡのパンチを軽くかわしそのまま腕を掴んで投げ飛ばす。

その時、青い目に変わったレイキュバスⅡが口から冷気を吐き出して来た。

 

「ヘッ!」

 

素早く横に飛んでかわすジャック。

すると、先程までジャックのいた地面がみるみる内に凍り付いてしまった。

 

「(なるほど。それなら………。)」

 

今の攻撃から何かヒントを得たのか、ジャックは心の中でほくそ笑んだ。

そして、不思議な事にレイキュバスⅡの前に立ったのだ。

 

「馬鹿め!やれ、レイキュバスⅡ!」

 

勝ち誇った顔でレオンが命令を出し、レイキュバスⅡは再び冷気を吐き出す。

しかし、これこそがジャックの狙いだった。

 

「ヘッ!」

 

ジャックはブレスレットを盾に変形させ、冷気を受け止めた。

ウルトラディフェンダー………ブレスレットを盾にして相手の攻撃を防ぐ、ジャックの必殺技の一つだ。

 

「シュワッ!」

 

そして、ジャックはディフェンダーをそのままレッドキングⅡに向けた。

すると、驚くべき事が起こった。

ディフェンダーから、先程受け止めた冷気がレッドキングⅡ目掛けて発射されたのである。

 

「ガオオッ!?」

 

全身に凍てつく冷気を浴びせられ、凍りつくレッドキングⅡ。

ジャックはすかさずディフェンダーを光の刃に変形させた。

ウルトラスパーク………ブレスレットを光の刃に変えて敵を切り裂く、ジャックの必殺技だ。

 

「ヘアァッ!!」

 

裂帛の気合いと共に、ブレスレットが放たれた。

刃はレッドキングⅡの両腕と首を切り落とし、ジャックの左腕に戻る。

それと同時にレッドキングⅡの腕と首が地面にたたきつけられ、震動が来た。

この事態に慌てたのは、レオンである。

 

「何!?我がしもべ、レッドキングⅡが、敗れたというのか!!」

 

真に貴族たる自分に忠実で、自ら怪獣の王と定めたレッドキングⅡ。

それが、異国の巨人にやすやすと倒されるなど、到底信じられない事であった。

 

「小賢しい真似を!レイキュバスⅡ、奴を真っ二つにしろ!!」

 

いきり立ったレオンの命令を受け、レイキュバスⅡがハサミを突き出してくる。

すると、ジャックはそれを宙返りでかわし、レイキュバスの顔面を派手に蹴りつけた。

 

「シュワッ!!」

 

「ギィッ!?」

 

更にジャックは、仰向けに倒れるレイキュバスⅡを持ち上げ、セーヌ河に投げ飛ばした。

 

「ヘッ!」

 

そして、水面で悶えるレイキュバスⅡを狙って両腕を十字に組んだ。

スペシウム光線………数多の敵を撃破して来た、ジャック最大の必殺技である。

 

「ヘアァッ!!」

 

十字に組まれた両腕から、青白い光線が発射された。

電光石火の光線がレイキュバスⅡの顔面を正確に狙い撃つ。

 

「ギィーッ!!」

 

全身を火花を包まれたレイキュバスⅡはそのままセーヌ河に沈み、大爆発を遂げた。

 

「ば、馬鹿な!!この私の力を以ってしても、奴らを止められんというのか!?」

 

驚愕の表情でレオンが叫んだ。

織姫とレニを人質にとり、巴里華撃団をバリケードに閉じ込め、更にウルトラマンティガを迎え撃つべく差し向けた二大怪獣。

その全てが尽く、あの銀色の巨人によって阻まれてしまった。

 

「ありえない………!高が人間ごときにこの私が………!!」

 

現状を信じられずに喚くレオン。

しかし、それがレオンの敗因になった。

 

「!?」

 

ジャックに殴り掛かろうとした時、レオンの立つ地面が大きく揺れた。

そして、みるみる内に亀裂が走っていく。

 

「先程から戦いの様子は見ていました。」

 

ジャックが背中を向けたまま言った。

そこはレッドキングⅡが現れた場所であり、レイキュバスⅡが冷気を浴びせた場所。

つまり、高温に熱せられたものが急激に冷たくなった場所である。

高温になった地面は溶岩のような液体と化す。

それが地面に戻ったのは、冷気で固体の温度にまで冷やされたから。

つまりここで再び地面を熱すると………。

 

「カ、カルマール公!!オプスキュールで………、巴里を灰燼に帰して下されぇぇぇ………!!」

 

最期の叫びと共に、レオンは奈落の底へ沈む。

そして地面は再び崩れ、奈落の穴を埋め尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴里の町並みを眼下に見下ろすオプスキュールでの決戦。

激しい風が吹き荒れる中、カルマールとのリターンマッチの火蓋が切って落とされた。

帝国華撃団との関わりの中で多くを学び、打倒カルマールに意気込む巴里華撃団であったが、それだけで勝たせてくれる程敵も甘くはなかった。

 

サンフォニーを守るように左右に三本ずつ備え付けられた小型兵器、フレイムアローとフリーズアローから光弾が発射され、大神達の行く手を遮っているのである。

 

「ヌハハハハ!どうした小僧共。グズグズしていてはオプスキュールが発射されてしまうぞ?」

 

六つの兵器に翻弄される大神達の様子を眺め、楽しげに笑うカルマール。

しかし、ここでカルマールはある事に気付いた。

 

「む?四人しかいないとはどういう訳だ?」

 

よく見ると、六つのアローに攻撃されている光武F2は四機だけで、残る二つがない。

一体何処に消えたのかと辺りを見渡すが、それらしい姿は何処にもない。

 

「ええい、臆病者め。隠れてないで出てこい!」

 

痺れを切らしてカルマールが吠える。

すると、返事は案外近くから上がった。

 

「ほう、いいのかい?アタシにそんな大口叩いて。」

 

その声と共に、サンフォニーの前の地面からロベリアと大神が現れた。

ロベリアの地面に溶け込む能力を使い、二人はアローの射程を抜けて来たのである。

 

「行くぞ、ロベリア!」

 

「いちいち叫ぶなよ………!」

 

いつもの掛け合いを交えつつ、二人は動いた。

ロベリアが目の前に巨大な炎を生み出し、大神は二刀を大きく振りかぶる。

そして、二人は同時に叫んだ。

 

「「コンブスティオーネ!!」」

 

ロベリアの炎に大神が二刀をたたき付ける。

すると、炎が大神の霊力で拡散し、たちまちにして六つのアローを焼き尽くした。

二人はカルマールより先に兵器を破壊し、敵を孤立させる事にしたのである。

 

「どうだカルマール!これで兵器は使えないぞ!」

 

「ほほう、腕を上げたものだのう。余と互角に戦うだけの力はあるようだ。」

 

状況的には追い詰められたはずのカルマールは未だに余裕を崩さない。

それが力から来る余裕か、ハッタリかは分からないが、今はそんな事を気にしている場合ではない。

 

「ならば来るがよい、巴里華撃団!この余自らが潰してくれようぞ!!」

 

「望む所だ!みんな行くぞ!カルマールを倒すんだ!!」

 

「「了解!!」」

 

しかし今正に攻撃を仕掛けようとしたその時、大神達の立つ位置が俄かに揺れた。

 

「?」

 

何事かと立ち止まる大神達。

すると、地面を突き破って触手が現れた。

カルマールの操る捕獲ユニットである。

 

「し、しまった………!!」

 

気が付いた時には既に遅く、大神とロベリアの光武F2が二本の捕獲ユニットに捕らえられてしまった。

 

「ヌハハハハ!油断大敵とはこの事よの、小僧。」

 

「くっ………!!」

 

悔しげに顔を歪める大神。

まさかサンフォニーにこんな能力があったとは、思いもしなかった。

 

「大神さん!!」

 

カルマールが余裕の笑いを見せる中、エリカが助けようと飛び出したのはその時だった。

 

「………!!エリカくん、駄目だ!来るんじゃない!!」

 

大神が何かに気付いて叫んだ時だった。

地面からもう一本の触手が現れ、エリカの光武F2を弾き飛ばしたのである。

 

「きゃあぁぁっ!!」

 

突然の不意打ちに吹き飛ばされるエリカ。

その瞬間、誰もが顔面蒼白になった。

何とエリカの光武F2が宙を舞い、オプスキュールから転落したではないか。

 

「エリカッ!!」

 

「エリカさん!!」

 

「エリカくん!!」

 

口々に名前を呼ぶ大神達。

この高さから地面に落ちたら一たまりもない。

誰もがエリカの死を想起する。

しかし、そこに一つの巨大な影が現れた。

 

「あ………!!」

 

「あれは!」

 

「遅いんだよ、バカが………。」

 

途端に笑顔を取り戻す大神達。

それに対し、カルマールは不機嫌な表情に変わった。

何故ならそこにいたのは、巴里華撃団と共に戦うもう一つの光だったからである。

 

「チャッ………。」

 

オプスキュール甲板に降り立ち、ティガは腕に抱えていたエリカを優しく下に下ろす。

ティガはこちらに向かう途中、オプスキュールから転落するエリカを発見。

間一髪で救出に成功したのである。

 

「ありがとうございます、ダイゴさん………。」

 

助けてくれたティガに赤い顔で礼を述べるエリカ。

ティガは無言で頷くと、両腕を左右に広げて頭上で重ねた。

すると、青白いエネルギーがティガの手中に発生する。

 

「ハァァァ………!!」

 

「させるか、馬鹿者め!!」

 

ティガを妨害するべく、サンフォニーの触手がティガに襲い掛かる。

しかしティガは上空にジャンプしてそれを回避し頭上の両腕を左腰に添え、右手を突き出した。

 

「ジュッ!!」

 

ティガの右手から二本のランバルト光弾が発射された。

ランバルト光弾は大神とロベリアを束縛していた二本の捕獲ユニットに命中し、二人を解放させる。

 

「チャッ!」

 

ティガはそれを確認すると、サンフォニーの前に降り立った。

目の前のカルマールは、強敵を前にしての武者震いを感じたか、ニヤリと不敵な笑いを見せた。

 

「来たか、ウルトラマンティガ。貴様と相見える時を、余も楽しみにしていたぞ。」

 

「カルマール、貴様の企みもそこまでだ!!」

 

カルマールの言葉には答えず、ティガが叫ぶ。

すると、それに合わせて大神も指示を出した。

 

「みんな、準備はいいな?蒸気獣サンフォニーを撃破するんだ!!」

 

「「了解!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

ティガを交えてのカルマールとの決戦は、これまでになく激しいものとなった。

甲板から現れる捕獲ユニットは神出鬼没で倒してもキリがなく、攻撃の手は自然と緩む。

そうなった巴里華撃団はカルマールにとって、絶好の標的だった。

 

「闇に閉ざされし冥界の門よ、我が前に開け!シャティマン・ドゥ・ディウー!!」

 

カルマールが魔力を集中させた。

すると、サンフォニーの前から津波が発生し、大神達に襲い掛かって来た。

 

「ハッ!!」

 

ティガは両腕を胸の前で交差させ、ウルトラシールドを張る。

しかしその直後、左右から現れた二本の捕獲ユニットが一斉にティガを捕らえた。

 

「ジュワッ!?」

 

引っ張られるようにして両腕の自由を奪われるティガ。

すると、カルマールが高笑いを上げた。

 

「ヌハハハハ!かかったなティガ。余の触手に捕われたが最後、貴様の力を根こそぎ吸い付くしてくれようぞ!!」

 

「ジュワッ………!!」

 

抵抗するティガの首に、更に三本目の捕獲ユニットが絡み付いた。

これでは抵抗はおろか、呼吸もままならない。

たちまちエネルギーを吸収され、ティガのカラータイマーが点滅を始めた。

 

「ンゥゥゥ………、ハッ!!」

 

ティガは再び額のクリスタルを発光させ、パワータイプにチェンジした。

プラズマオーブの力で飛躍させた怪力で、三本の触手を引き千切る。

しかし、かなりのエネルギーを奪われたティガはよろめきながら片膝をついた。

 

「ヌハハハハ!これで更にオプスキュール発射は早まったな。どうする小僧、時間はないぞ?」

 

挑発するようにカルマールが笑う。

確かにタイムリミットの日の出まで残り僅か。

もう時間がなかった。

 

「オプスキュールは俺達が止める!ここまで来て諦めてたまるか!!」

 

言うや、大神の二刀が光った。

 

「この一撃で仕留める!みんな、援護を頼む!!」

 

「「了解!!」」

 

隊員達の返事に頷き、大神は勢い良く飛び出した。

 

「馬鹿め、貴様も触手の餌食にしてくれる!」

 

真正面から飛び込んで来る大神を鼻で笑い、カルマールは捕獲ユニットを出現させる。

しかし、今の巴里華撃団にそれは通用しなかった。

 

「そこです!!」

 

花火の光武F2から、いくつもの矢が放たれた。

矢は一寸の狂いなく、捕獲ユニットを射抜く。

その捕獲ユニットに、今度はエリカのマシンガンが浴びせられた。

たちまちにして粉々に吹き飛ぶ捕獲ユニット。

すると、続けざまにコクリコが子猫を次々に呼び出した。

 

「行っけぇ!!」

 

「むむっ!?」

 

無数の子猫に引っ掻き回され、よろめくサンフォニー。

そこに、グリシーヌが猛然と切り掛かった。

 

「砕けろっ!!」

 

気合いと共にバトルアクスを袈裟掛けに一閃させ、サンフォニーに深々とと傷痕をつける。

その直後、今度は背後から声が聞こえて来た。

 

「このアタシが何もなしに済ますと思ったか?イカ野郎。」

 

言うや、ロベリアの鈎爪がサンフォニーの全身を切り刻む。

灼熱の爪は、その身体にかなりの傷を負わせた。

 

「今だ隊長!やっちまえ!!」

 

グリシーヌの傷痕と対角線になるように最後の一撃を与え、ロベリアが叫んだ。

その真上から、猛スピードで大神が突っ込んで来る。

 

「狼虎滅却………古今無双!!」

 

まるで隕石の如く、二刀を交差させた状態の大神がグリシーヌとロベリアの傷痕をなぞるように二刀をたたきつけた。

その凄まじい一撃に、サンフォニーは遂に煙を上げ始めた。

 

「まさか、これ程までとは………!あの時諸君らを見逃したのは、間違いであったのか………!?」

 

自身の敗北が信じられず、カルマールが叫ぶ。

シャンゼリゼでは歯牙にもかけなかったはずの大神達に遅れを取り、ましてや敗北するなど有り得なかった。

 

「しかし………、オプスキュールの妖力は最大でなくとも臨界点に到達しておる!諸君らも道連れだ!!」

 

「そんな事、させてたまるか!!」

 

その時、大神が叫んで飛び込んだ。

二刀を突き立て、猛然と殺到する。

だがその刀が届く寸前、サンフォニーの周囲に出現したバリアがそれを阻んだ。

 

「くっ………!ここまで来て、諦めてたまるか!!」

 

「ヌハハハハ!見るが良い!巴里の最期だ!!」

 

大神を嘲笑い、カルマールがオプスキュールのスイッチを作動させた。

そして、無常にも怪物の顔を象った発射口から漆黒の光線が発射される。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、それを許さぬ光のメシアがいた。

 

「シュワッ!!」

 

何と、それはウルトラマンジャックだった。

ジャックはオプスキュールの光線を、ディフェンダーで防いでいるのだ。

 

「隊長、今ならまだ間に合います!!」

 

「秀介、恩にきるぞ!!」

 

しかし、そこに立ち上がったのはジャックだけではなかった。

 

「ンゥゥゥ………、ハッ!!」

 

ティガが徐に立ち上がり、パワータイプからマルチタイプへチェンジする。

そして両腕を胸の前で合わせ、残り少ないエネルギーの全てを、胸のカラータイマーに集中した。

 

「大神さん!!」

 

「ティガの攻撃をカルマールに貫通させる!バリアを破壊できる力を………、巴里を守りたいという想いを、俺にくれ!!」

 

大神が叫んだ。

すると、五人の隊員達は自らの霊力を大神に分け与えた。

 

「隊長!勝利を掴むのだ!!」

 

勇猛果敢、切り込み役のグリシーヌ。

 

「イチロー!ダイゴ!やっちゃえ!!」

 

巴里華撃団最年少だが、才気に溢れたコクリコ。

 

「大神さん!巴里に光を!!」

 

静かにして猛者、流麗なる花火。

 

「私達の想いを、届けて!!」

 

ダイゴが愛した巴里の天使、エリカ。

 

「隊長!テメェの底力、見せてみろ!!」

 

そして、大神のパートナーにして副隊長のロベリア。

ティガが両腕を水平に広げてエネルギーを集約する中、大神の光武F2に全ての霊力が集まった。

 

「これで終わりだ!!」

 

大神の叫びと共に、バリアに亀裂が入った。

亀裂は瞬く間にバリア全体に広がり、跡形もなく崩れ去る。

最早カルマールを守るものは、何も無くなった。

 

「チャァァァッ!!」

 

そこに、ティガの渾身の必殺技、ゼペリオン光線が撃ち込まれた。

まばゆい閃光が、一直線にサンフォニーを直撃する。

 

「まさか………!この余が、ただの人間如きに敗北するというのか………!?」

 

閃光に包まれるサンフォニーの中、カルマールが叫んだ。

 

「このままで済むと………、思うな………!!ウルトラマンティガァァァ………!!」

 

最期の言葉と共に、カルマールはオプスキュール諸とも炎の中に消えた。

それと時を同じくして、巴里の空に朝日が昇る。

まるで、戦いに勝利した大神達を祝福するかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大神さん!やりましたね!!」

 

ノートルダム寺院に凱旋した大神達を、メルとシーの二人が出迎えた。

見ると、その後ろにはジャン班長やグラン・マの姿もある。

巴里華撃団の勝利を労うべく、ノートルダム寺院まで駆け付けたのだ。

 

「あんた達、よくやってくれたね。」

 

「支配人、巴里華撃団、全員無事帰還いたしました。」

 

改めて勝利を報告する大神。

すると、エリカが不意に口を開いた。

 

「それじゃあアレ、みんなでやりましょうよ。」

 

「そうか?じゃあ行くぞ………!」

 

 

 

 

 

「勝利のポーズ、決め!」

 

 

 

 

 

 

 

「秀介サン、何で私達はナシですか~?久しぶりに勝利のポーズしたかったで~す!」

 

「あくまで巴里華撃団が主役ですよ。彼らに貢献出来てよかったじゃないですか。」

 

「そうだね………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、シャノワールはいつにも増して大盛況になった。

それもそのはず。

織姫とレニの二人が、今宵一夜限りのショーを披露してくれたからである。

 

「わあ、カッコイイね!」

 

客席から二人を眺め、コクリコが瞳を輝かせた。

自分が主役と主張せんばかりの織姫と、それを笑顔でフォローするレニ。

欧州星組時代から相棒だった二人だからこそ出来る、正に阿吽の呼吸というものだった。

 

「ところで、隊長はどうしたのだ?」

 

「そう言えば、ダイゴさんもいらっしゃいませんね………。」

 

ふと気付いたように、グリシーヌと花火が辺りを見渡した。

大神とロベリア、更にエリカとダイゴの姿がない。

せっかくの織姫達のレビューというのに、一体何処に行ったというのか。

すると、グラン・マが意味ありげに笑った。

 

「二人共、そいつは聞くだけヤボってもんさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴里は情熱的な街だ。

活気の戻った夜の巴里を並んで歩くのは、やはりカップルが多い。

その街中を、仲良く寄り添って歩く一組のカップルがあった。

 

「ねぇ、ダイゴさん………。」

 

ふと、エリカが隣に立つダイゴに話し掛けた。

気のせいか、その顔はいつになく赤いように見える。

 

「なんだか夢みたいです………。巴里にこうして、平和が戻るなんて………。」

 

「そうだね………。僕達が、この平和を守ったんだよね………。今でも実感できないよ………。」

 

賑やかな町並みを見渡し、ダイゴが呟いた。

一度は破滅の危機に陥った巴里を自分達の力で守り抜いた事に、ダイゴは不思議な余韻を感じていた。

もしカルマールを倒せなければ、今の幸せな一時を過ごす事も叶わなかっただろう。

ダイゴは改めて、ティガと秀介、そして大神達に感謝した。

 

「ダイゴさん、私幸せです………。」

 

ふと、エリカがダイゴの手を握った。

その突然の行為に、ダイゴの顔が途端に紅潮する。

 

「だって………、これからもずっと二人でいられるでしょう?」

 

「エリカさん………。」

 

耳まで赤くなるのを感じながら、ダイゴがエリカを見る。

エリカもまた、真っ赤な顔でダイゴを見つめていた。

 

「これからもずっと………、側にいて下さいね。」

 

「うん………。僕はずっと、エリカさんから離れないよ………。」

 

互いに背中に手を回し、囁き合う。

そんな至福の一時に、二人は勝利の余韻を感じていた。

この平和が今度こそ永遠に続けば………。

二人はそう願わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

地下に埋もれたノートルダム寺院の地下神殿。

そこに、一つの影が浮かんだ。

 

「パリシィの御霊よ。その役務を果たし、一時の眠りにつくがいい………。」

 

影が口を開いた。

 

「遥かなる時の流れに逆らう愚かな裏切り者………。闇に覆われた都市と共に、大いなる裁きを………。」

 

<続く>




《次回予告》

我らが勇者、ティガ。

巴里の守護神、ティガ。

哀れな裏切り者、ティガ。

次回、サクラ大戦3。

《翼の紋章》

愛の御旗のもとに………

パリシィの子供達よ………、ゆっくりとお休み………。
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