レアンを仲間に加えた俺達は飛去ったガーゴイルと魔女を追うべく奴らが飛んでいった方向へ向かった。
「王子、少しいいか?」
後ろを歩いていたレアンが話しかけてくる。ちなみにいま彼女は鎧を着ていない。戦の前に装着するらしい。 まあ、日常的にゴツい鎧を付けるのは不便だろう。
「さっきの戦いの中見たんだが、あの白い魔女様子が変だった」
「そりゃ、操られてるんだから変だろ?」
「そうじゃない。むしろ逆だ。 無理矢理腕を押さえて王子達に杖を向けないようにしていたんだ。 多分少しだけ自我があるのかもしれない。」
言われてみれば確かにおかしい。 ゴブリンと戦っている間、一回たりとも魔法攻撃は飛んで来なかった。 あれはあの魔女がわずかながらも自我があったからなのか?
「ならなおさら助けないとな」
無理矢理操られている以上助けないという選択肢はない!!
奴らが飛んでいった方向へ歩くこと丸1日、小さな村にたどり着いた。どうやらここは魔物の襲撃を受けていないようだが…
「誰だ!!」
村に入ろうとした瞬間鎧を纏った三人の男たちにとめられたら。
「あの化け物共の仲間か!?」
違う、ここも魔物の襲撃を受けたらしい。
「王子ここはお任せください。」
誤解を解こうと口を開きかけたとたんケイティに止められる。 何をする気だ?
「こちらにおられる方をどなたと心得る!! ログレス王国王子、アーサーペンドラゴン二十一世であられます!! 頭が高い!!」
ケイティの一喝で男達はは慌てて刀を置き低頭する。
「まさか王子様であられるとは…どうかご無礼をお許しくださいませ!!」
リーダー格の男が土下座をする。
「いやいや、頭をあげてください。 急に来た俺達もあれなので…」
この後暫く三人の土下座が続いて痺れを切らしたレアンが三人を(物理的に 主に拳骨で)黙らせたのは無かったことにしよう。
「白い山羊の魔物!?」
「はい、昨日の夕方頃でした。農作業から帰ってきた俺達が村の外れの洞窟で見たんですよ。山羊の頭に巨大な人の体をした、巨大な斬馬刀を持った魔物を!! その中に白い魔女もいたんです!!」
どうやらここで当たりらしい。
「その魔女の人は魔物に操られています。 あなたがたも操られる危険があるので私達が討伐するまでは近寄らないようにしてください。」
ケイティの忠告には、私達がその魔物を討伐するおいう意味の方が大きいのだろう。
「ありがとうございます。ありがとうございます。」
村人達は一斉に頭を下げた。 そこへ厳つい顔のおっちゃんが近づいてきた。
「どうかこれを使ってくだせぇ。 特別上等な物ではありませんがこの村で一番良い武器です。」
彼の手には立派な薄茶色の弓が握られていた。 彼の後ろに控えていた若い男の人達の手には鋭い光を放つダガーや銀色に輝くレイピアが握られていた。
「俺達に出来ることがあれば何でも言ってくだせぇ。」
「ありがとうございます。 これだけで十分です!!」
こうなったら何がなんでも魔女を救い出して魔物を討つ。
次の日の早朝、俺達は村はずれの洞窟近くに来た。 どうやらここに奴らがいるらしい。
「昨日村の図書館にあった古い文献を調べたところどうやら山羊の魔物はバフォメットと言うそうです。」
昨日遅くまで何かしていると思っていたがまさか調べていたのか。
「バフォメットは高い耐久力を誇り 火力もかなりのものです。」
「なら私の出番だ。 私がバフォメットを引き受けよう。セシリー、その間にウィークポイントを見つけて暗殺を頼めるか?」
あろうことかレアンがひとりでバフォメットの攻撃を捌くと言うのだ。
「そう心配そうな顔をするな。 やばいときはなんとか逃げるからさ。」
「なら私も全力で仕留めよう。」
赤いフードのセシリーも不敵に笑う。
「ならば私とキャリーさんとキュテリでゴブリンは引き受けます。 その間に王子は魔女の女性をお願いします。」
いま魔女救出の火蓋は切られた。
「行きます!!」
最初に仕掛けたのはキャリーだった。 愛馬と共に戦場を駆け、ゴブリンを蹴散らしていく。 ケイティとキュテリも負けじとゴブリンを仕留め道を作る。
戦いが始まり暫くすると、
「グォォォォ!!」
例の山羊の頭の魔物 バフォメットが現れた。
「はあっ!!」
ガキンッ!! ガキンッ!!と鋭い音が辺りに響き渡る。 なんと本当にレアンはバフォメットの攻撃を捌いているのだ。
今のうちに!! 俺は駆け出して洞窟へ侵入する。幸い殆どのゴブリンが表に出ており、中には数匹しかおらず、背後からの奇襲で楽に葬った。
そしてひときわ大きい場所に彼女はいた。
目は以前にも増して虚ろで先の襲撃時のように自我は感じられない。 洗脳がきつくなったらしい。
アイギス様曰わく 強い衝撃を与えれば正気に戻るらしい。 兎に角至近距離まで近かなければ元も子もない。
俺の姿を認識したのか、ゆらり、と魔女が立ち上がる。そのまま杖を俺の方に向けて……ってまじかよ!!
慌てて横に飛び退くと、先ほどまで俺が立っていた場所は凍りついていた。 モロにくらうとやばい!
しかし連発はできないようだ。すぐには次弾が来ない。 ならばよけて進むしか道はない。
走っては避け、走っては避けを繰り返しようやく後三メートルほどだ。次の一回で決める!!
横に避けると一気に距離を詰める。 後二メートル。 魔女が杖を構える。 後一メートル。
「届け!!」
数十センチの距離をタックルで詰め、そのまま魔女に体当たりをかます。 そのまま二人とも倒れ込んでしまう。
「…うん? この柔らかいのは……ってうわっ!!」
タックルの勢いのまま彼女を押し倒し、あまつさえ右手は豊かな膨らみに…
「大丈夫、誰も見てない。 つまり何もなかった!!」
意識を失った魔女を負ぶうと、洞窟の出口へと向かう。
外に出ると魔物は一匹もおらずバフォメットでさえことぎれていた。 バフォメットに暗殺を決めたセシリーもすごいが耐えきったレアンもさすがだ。
しかし俺達はとんでもない見落としをしていた。 彼女をここまで運んできたのは…
「キェェェ!」
洞窟から飛び出してきたのは例の赤いガーゴイルだった。
そのままやつは飛び立とうとする。 逃げるのか?
「まずいです!! このままでは援軍を呼ばれてしまいます!!」
ケイティの叫び声を聞き事の重大さを把握する。
幸い大きなケガはないものの全員疲労困憊だ。援軍を呼ばれるとひとたまりもない。
「撃ちます!!」
ソーマちゃんが慌てて射抜こうとするもやはり矢をはじかれてしまう。 くそっ!このままじゃあ…
「私が必要だなんて…一人じゃ戦えないのかい?」
背後から聞き慣れない声が聞こえたと思うと、ガーゴイルは一瞬で凍てつき地に落ちた。
「まあ、私を助けてくれたからね」
白き魔女は杖をおろすと俺の方へくる。
「あんたが王子か…」
「そうだけーうぐっ!」
俺の言葉は彼女に唇を奪われ強引に途切れさせられた。
「私を押し倒して胸まで揉んだんだ。責任はとって貰うよ。」
クスリ と笑いながら言うのだ。
「王子、いまのはどういう事ですか?」
「く、詳しくなはしてもらいます!」
「逃がさない!」
ケイティ、ソーマちゃん、キュテリが詰め寄ってくる。
…もしかしたら魔物より恐ろしいかも。
こうして白き魔女 クロリスが仲間になった。