<三十六>
ラウラの嫁宣言がクラス中を
――これは、あれか。想像が現実に……。
一夏に告白され、そのままベッドインするという与太話が現実に起こる予兆だろうか。
箒は護身のために持参した日本刀を強く握りしめた。
「一夏、こんな遅くにどうしたんだ」
「箒……」
彼は深刻な表情で振り返った。
「頼みがある。箒じゃないとダメなんだ」
いわれて、箒はドキリと胸を高鳴らせる。恥じらいを表情に出すまいと突き放した物言いになった。
「一夏の頼みだ。聞こう」
「今日、俺の部屋で寝てくれないか。俺のベッドで」
一夏が
――ついに、ついに、一夏が男に……!
「シャ、シャルロット・デュノアに頼めばよいではないか。彼……彼女……どっちだっけ? がいるだろう」
ラウラの嫁宣言の直前、シャルル・デュノアが実は女だったというドッキリをやってのけていた。前日にゴシップ誌がシャルル・デュノア=シャルロット・デュノアだと記事を書いたのだが、誰もが一笑に付していた。シャルルの巨砲を目の当たりにすれば眉唾だと思うのは当然だろう。
「ダメなんだ。最近夜になると千冬ねえの部屋に入り浸って何をしてるのかさっぱり。補習みたいなことを言ってたけど」
「千冬さんと?」
口づけを交わす千冬とシャルルの姿がよみがえる。千冬が服を脱ぎ、シャルルの巨根を
箒は二つ返事で了承し、剣道で鍛え上げた肢体を幼なじみのベッドに横たえたのである。
蒲団のなかで日本刀を抱く。
「電気を消すからな」
――待てぇ! 告白はどうした!? いきなりだとう!?
<三十七>
夕方になってラウラは焦れていた。
「日本では気に入った相手を『嫁にする』というのが一般的な習わしだと聞いた。故にお前を私の嫁にする」
と宣言したまではよかった。だが、殊恋愛においては、計画立案能力が致命的なまでに欠如している。
優秀な参謀――シュヴァルツェ・ハーゼ隊副官の作戦計画立案を待たねばならなかった。
一夏を法的に嫁にするためには既成事実が必要である。ドイツでは男女ともに十八歳から結婚できる。所有物として宣言したまではよいが、ラウラはその年齢に達していなかった。
夕食後になってようやくメールが届いた。ドイツ語で計画が記述されている。
「ほう……初夜、とはな」
ラウラは腕組みしてうなずき、首をかしげた。
初夜とは何か。
作戦の詳細に目を通すと、男と一緒に寝ることだと説明がある。
全裸、もしくは半裸で一晩をすごす。
翌朝、他の寮生に男の部屋から出る姿を目撃される。そうすれば作戦計画達成である。
「私生活は
時間はすでに十時を回りつつあった。
護身具としてナイフを携え、男の部屋に侵入する。
「こんなこともあろうかと侵入経路は確認済みだ」
眼帯を外して、暗視装置代わりに越界の瞳を発動した。
シャルルはおらず、一夏がシーツを頭までかぶって眠っている。
息を殺し、衣服を脱ぐ。ナイフを置き、たたんで一カ所に固めた。
胸を高鳴らせ、周囲を警戒しながらベッドに片膝をついた。
一夏は寝息を立てながら、寝返りを打つ。
越界の瞳で彼の隅々までも観察し、睡眠状態だと判定する。
ラウラは感慨を込めてため息をついた。シーツをめくって彼の隣に身体を横たえて背を向けた。
副官曰く、「必要なことは男が教えてくれる」そうだ。
織斑一夏の本能に身を任せればよい。そうすれば素敵な初夜を迎えることができる、と副官は見識を述べた。
しかし、無垢なる魂は汚れるしかなかったのである。
いきなり後ろから抱きすくめられ、ラウラは目を白黒させた。
腰を撫でられて背筋を震わせる。
一夏は眠っていなかったのだ。越界の瞳を欺瞞するとはやるな……とラウラは羞恥心に耐えながら思った。
緊張で汗ばんだ肌に舌を這わせ、シーツをかぶったまま身体を入れ替えて、足裏をしゃぶる。
指の股に鼻を割り込ませて足のにおいを心ゆくまでかいでから、つま先にしゃぶりついた。
「……そんなところまで」
ラウラは指先を丸め、声を押し殺した。
「うう……!」
指の間に舌が割り込む。
汗と脂をすくい取られ、両方の足指までもが一夏の唾液でまみれた。
くるぶしから脚の内側へ進む。
うめきながら、ラウラは初夜とはこのようなものか、と自分を納得させる。痛さと恥ずかしさを超えたところに女としての悦びがあるのだ。電話で副官が強調していた。
一夏は股間に顔を埋めて熱気と湿り気を堪能する。
愛撫であふれた蜜汁が形が整った陰唇を濡らす。柔肉をなでるとヌルヌルと潤っていた。
指で広げて、膣口の襞を舌先でたどる。指の腹で尿道口の位置を確かめ、陰核まで伝った。
包皮にくるまれた陰核は小ぶりながらツンと立っている。
一夏は舌で丁寧にねぶっていく。鼻をこすりつけて、少女のうめき声を堪能してから再び舌をとがらせて唾液を垂らした。
美少女の甘ったるい体臭を貪ると、陰唇に舌を挿入して膣口をクチュクチュとねぶった。
淡い酸味が舌の上に広がる。
奥からあふれ出た蜜汁で肉襞が湿り、舌の動きがなめらかになっていった。
「アア……」
ラウラが背を弓なりにのけぞらせた。細くしなやかな腰と太ももが蠢き、両側から彼の頭を締め付ける。
一夏は腰を抱え込んで、動きをおさえこむ。
執拗に陰核を刺激し、舌で剥かなくとも包皮が露出するまで続けた。
全身に快感が広がるにつれ、緊張もとけていった。男に股間を舐められるのがとても気持ちよいとは誰も教えてくれなかった。
自分の新たな一面を見つけたとき、不意に股間から違和感が生じて、ヌルリと肉棒が侵入を果たしていた。
<三十八>
――あれ? いつもと感触が違うぞ?
先日セカンド幼なじみを抱いたときよりも入り口が狭い。膣の奥も狭かった。ふんわりとすべてを包み込んでくれるはずが、頑なに門を閉ざして侵入を拒んでいる。
一夏は身体を起こし、ベッド下に隠していたローションを手にする。
十分に濡らしたつもりだったが足りなかったのだろうか。女体をシーツで隠したまま肉棒にローションをまとわりつかせる。
「ンン……」
そのまま打ち込むと、幹をキュッキュッと締め付けてきた。下半身を丸出しにさせ、腰の下に枕を差し入れる。
太ももを閉じさせ、肉棒を上から下へ押し込むと悩ましげなドイツ語が響いた。
「あああっ……男とは……男とは……初夜とはこれほどまで良いものなのか……私は!」
――声が違う! っていうか誰なんだ!?
シーツをはぎとると、金色と赤色の瞳が目に入った。
上体を硬直させたが驚愕のあまり腹の奥からこみあげた射精感に流される。
「くっ!」
ドクンドクン……とラウラ・ボーデヴィッヒの膣奥に精を
肉棒全体がきつく締め付けられ、最後の一滴まで絞り出してしまった。
一夏は子種を放出した満足感よりも困惑のほうが勝っている。ときどき鈴音が夜這いしてくるので求めに応じて肌を重ねていたせいか、ほとんど反射で挿入までしてしまった。
闇になれた瞳は竿の根元にまとわりついた液体を目撃する。
――赤い。俺は……犯っちまったのか? ラウラを?
女と二人きりになると無意識でセックスするような見境なしになり果ててしまったのか。
ラウラを抱き寄せると、彼女は目尻に涙を浮かべたまま両手を首の後ろに回してしがみついてきた。
どう声をかけてよいのかわからない。かといって騒がれても困る。千冬の教え子と腕っぷしで競えばどうなるか。
「その……大丈夫か」
戦々恐々としながらラウラと唇を重ねた。
「ンン……」
舌を差し入れると、ラウラが目を見開く。熱く鼻を鳴らしてたどたどしく舌同士を触れ合わせた。
ネットリと舌を絡め合い、生暖かな唾液を交換しあう。
ラウラは落ち着いてきたのか興奮が高まって口腔内のなめらかさが増したようだ。
長い口づけを終えると、名残惜しそうにラウラが舌を出したまま見つめ返してきた。
「これが男とのキスか……」
ラウラがうっとりとした口調で言い、より密着度を高めようと座り直す。
「ううう……アッ」
再び硬さを増した肉棒が奥深く刺さった。
「……痛くないか」
涙を浮かべたままラウラは首を振った。
肩が揺れるたびに、ぴったりと肉棒をくわえ込んだ膣がうごめいて一夏にたまらない刺激を与えた。
どろどろになった蜜壷は先ほどまで処女であったことを忘れているようだ。
美しい瞳がとろけていた。
「動いてくれ……嫁を感じたい」
対面座位で抱き合ったまま恥骨同士をこすりつける。
「あう……いいっ……」
――大丈夫そうだな。
指先を陰核の側にもっていくと大量の蜜が噴き出しているのがわかった。
グチャッグチャッ……と結合部から湿った淫らな音を奏でた。
次第に律動を速めると、ラウラは首に回した手の力を込めて、より強く抱きついてきた。
下からズンズンと腰を突き上げてやると、ラウラの声から今までになく色づいていく。
「アア……これは……どういうことなんだ……変な気分だ……ううう……頭が真っ白に……あんっバカになってしまう」
「そういうときはイクって言うんだ」
「そうか……イクか。私はイクんだなっ」
――うおっ、締め付けが強くなってきた……。
もう我慢できず、腰をつかんで肉棒を奥深く突き刺す。二度目の射精に向けて股間をぶつけるように動かし、そのまま昇り詰めてしまった。
「く……!」
快感に抗うことなく、ありったけの精液を勢いよく子宮口に流し込んだ。
「イクぞ、イクぞ、イクぞっ……あああああああッ……!」
膣の奥で精を感じた途端、ラウラも声をうわずらせ、狂おしく痙攣しながら初めての絶頂に飲み込まれてしまった。
だらしなく頬は緩み、涙を浮かべて口からよだれが垂れる。
快楽に身を委ねた姿を目にするや一夏は安心して出し尽くした。
満足して動きを止めたが、ラウラは抱きついたまま悩ましげな吐息を漏らし続けた。
<三十九>
「まだ中に何か入っているみたいだ」
ラウラが股間を広げて言う。一夏は興奮してのぞきこみ、ほとんど毛の生えていない膣口に舌を這わせた。
「嫁っ……」
ラウラが腰をよじった。
一夏はシャワーの湯をあてながら、奥に残った血と精液をかきだす。
ローションを使って滑りをよくしたおかげかほとんど裂けていないように思えた。
「嫁にばかり舐めさせるのはよくないな」
かがみ込んで、ラウラは肉棒に触れた。
「うう……」
鈴口をなめると、ムクムクと肉棒が硬さを取り戻した。
「教えてくれ。どうすればいい?」
「そのまま舐めてくれ……」
一夏が指差すと、ラウラはすぐにも顔を埋めた。陰嚢を丸く包み込んで舌の上で転がした。
愛撫で熱い息がこもった。
次に竿を指差す。
舌先が裏筋を伝って亀頭に達すると、鈴口からにじむ粘液をチロチロと舐めとる。口を大きく開けてぱっくりとしゃぶりついた。
「うおおお……教えてないのに……」
一夏が喘ぐと、ラウラはさらに喉奥まで呑み込んだ。
朱色の唇を大きく開けて精一杯頬張る。
幹を締め付けて、ネットリと舌を絡みつける。時折歯が軽く当たった。
――ヤバイっ……出すなら
「ラウラっ!」
ラウラが口を放して身を起こした。
「ま、待ってくれ。まだするのか……」
彼女の腰を抱きかかえ、少しもためらわずに突き入れる。
張り詰めた亀頭が潜り込み、重みとヌメリで一気に奥までたどりついた。
「まだだ」
一夏がそのまま立ち上がったので、ラウラはとっさに首の後ろに手を回して脚を腰に絡みつけた。
彼女の背中を抱き寄せて鏡の前に立つ。
腕に力を込めて、美少女の身体を揺すりつづけた。
<四十>
軽く寝入った後、誰かの重みでベッドが軋んだ。
――ん、一夏……?
足のほうからもぐりこまれ、足裏を嬲られるたびにゾワゾワとした感覚が走った。身体をまさぐられ、否が応でも期待感が高まる。
先ほどの夢のように――ラウラと一夏がまぐわうなどあってはならなかったが――セックスから始まる恋もあるかもしれない、と期待した。目を閉じたまま唇を奪われた。
――よしっ! よしっ! 私の大勝利!
間近で彼を見ようと目蓋を開けたとき、箒は驚愕のあまり声を失う。
蒲団をはねあげ、起き上がりざま居合を抜いた。必勝必殺の剣閃は甲高い金属音と共に遮られる。
ぼんやりとナイフの影を目にした。
「む……嫁ではないな」
「その声はボーデヴィッヒ」
箒は手の甲で口元を執拗にぬぐう。だが、唇の感触が生々しく残っている。
――今のは事故だ! なかったことだ! そうに決まっている!
「……寝込みを襲うとは何のつもりだ」
「こっちのセリフだ。嫁と初夜をいたすつもりで忍び込んでみれば……ベッドを占拠されているとはな。……嫁をどこにやった」
「知るか」
舌打ちし、ラウラが低い姿勢で飛びかかってきた。
ベッドの上で組んずほぐれつ絡み合い、互いの髪や衣服が乱れた。ふたりとも疲れ果て、荒い息をつきながらベッドの上に大の字になる。
「やるな……」
「貴様もな」
女装したシャルル・デュノアが戻ってきたのはちょうど互いに見つめ合い、実力を褒め称え合っていたタイミングだった。
「一夏のベッドでナニをしていたのかなあ……
身じろぐと、襟がはだけて若い乳房がこぼれ落ちたので、とっさに手で覆う。
隣で寝そべっているラウラは全裸だった。
――何ってボーデヴィッヒと戦っていたのだが。ん? そういえば初夜とか宣っていたな。
(終)
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