※この作品はR-18です。

Magic Life   作:弩素人

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直毅と望兄妹の馴れ初めです。人物設定とか入れた方がいいのでしょうか?


真に美しきモノ

「美」とは普遍的、必然的、客観的、社会的に内的快感を引き起こすモノである。

だが現実として、本当の意味で"美しい"モノは未だに存在していない。それは言うまでも無く当然のことであり、だからこそ人はそれを追い続けるのだろう。

 

地下室で美女の人形達を片手で、操り人形の様に動かす"2人"もまた「美」を追い求める者達であり、また狂気に染まった人間でもある。

 

「彼を迎えるには邪魔ね、兄さん。」

 

『そうだね望。早く片付けてしまおうか。そして彼を迎える準備をしよう。』

 

「分かったわ、兄さん。」

 

彼女は黒い煤と白い粉にまみれた部屋の扉に手を向け滑らかに手を引き扉を開けると、操り人形達を部屋に向かわせ扉を閉める。そして彼女の姿が"彼"に変わる。彼が指を鳴したと同時に、人形の入った部屋は炎に包まれた。

 

『何度やっても上手くいかないものだね、望。』

 

「仕方ないわ兄さん。人形には美しくあろうとする意思が無いもの。」

 

『そうだね、今は彼に会えることだけを考えよう。』

 

否、人形達はまだ"生きていた"

 

凝固剤と防腐剤に塗りたくられているものの、彼女達が動けない理由は2人の術式の為であり、部屋の扉が閉じられた瞬間術式は解かれ、彼女達は皆扉に駆け寄り悲鳴をあげ助けを請う。

絹を引き裂くような悲鳴という比喩すら生温く感じられる彼女達の絶叫は、部屋の外に居る2人には届くことはない。

そして炎が部屋を包み彼女達を燃やし始め、その悲鳴はより大きくなる。

 

身が燃える痛みと言うよりも、奇しくも身体中に塗られた凝固剤と防腐剤が先に燃え、その後訪れる抗いようのない絶望感によるものと言った方がいいだろう。

何にしても、彼女達の身体は骨になるまで焼き尽くされ、もしこの場に正常な人間が(最も、何をもって正常とするかだが)居たなら、炎が消えてもなお響き渡る悲鳴を嫌でも聞いただろう。

 

『さて、そろそろ彼も眠っただろう。愛しい彼に招待状を届けてくれないか?望。』

 

「いいの?兄さん。ひと足早く彼に会っても。兄さんも早く会いたいでしょう?」

 

『あぁ、僕は彼を迎える準備をしておくよ。』

 

「ありがとう兄さん。」

 

鏡に映る彼女は彼に一礼し鏡から消え、その後彼の姿が鏡に映し出された。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それは、酷く懐かしさを覚える夢だった。

 

場所は夢の丘。星空の下、俺は頂上の大木の下にいた。

 

夢だと分かっていた為か、俺は草原に寝そべり夢の中で眠ろうとする。

 

「久しぶりね、直毅。」

 

突然名を呼ばれ頭上を見ると、白い肌に白い髪、黒いワンピースを着た少女が俺を笑顔で覗き込んでいた。

 

その姿に、俺は頭痛がするほどの懐かしさに襲われ、起き上がりながら彼女の名を絞り出した。

 

「君は…高嶺…高嶺 望か?」

 

「やっぱり覚えていてくれたのね。良かった。」

 

彼女…高嶺 望は俺が最後に見た幼い頃と全く同じ容姿で俺を笑顔で見つめていた。

 

「まさか、夢の中で会うとはな。いや、会いに来たのか?」

 

「えぇ、今日は直毅に招待状を渡しに来たの。」

 

「招待状?あぁ、現実で会う為にか。『望』はどうしたんだ?」

 

「兄さんは直毅を迎える準備をしてるわ。今すぐ抱きつきたい位だけど、楽しみは明日にとっておくことにしましょう。」

 

「そうか…ところで、その姿は昔のままなのか?」

 

「いくら直毅でも容姿の変わった私を思い出すのは大変だろうから、"直毅の記憶にあった頃の私"にしたの。」

 

望は滑らかにその場で回り、過ぎた年月相応の姿に身を変える。肌と髪は相変わらず美しい白。だがその顔には幼さは消え、魔性とも言える美女になっていた。

 

「それではまた明日、此処で会いましょう。」

 

「分かった。また明日な…」

 

望が手を振ると、俺の意識は闇の中へ、それこそ夢の中に落ちていった。(現実にと言った方が正しいだろうが)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私…藍原 茜にとって東條 直毅は親友であり、所謂想い人である。

 

「何やってるんだろ…私。」

 

湯船に浸かりならが呟いたその言葉は浴室に響き渡り、水面に映る自分の惚けた顔を見て顔にお湯をかけ波立たせた。

 

直毅に触れた唇を手で触ると、その時の感触を思い出し身体中が熱くなるのを感じる。

でもその感触に、私は酷く幸せな感情を覚えた。それこそ罪なほどに、

 

何時から直毅のことを意識し始めたのだろか。つい最近なのか、それとも始めからだったか、けど1つ言えるのは、私は彼の儚さに惹かれたということ。

 

直毅と関わって周囲から偏見の目で見られたことは数え切れないほどあり、直毅を引き出す餌にされたこともある。

その度に、直毅は私や裕也を守り続けた。自分の身が傷付くことなどお構いなしに、どれだけ相手が多くても必ず私達を守った。そしてその度に、直毅は私達を見て傷だらけの顔で微笑み呟くのだ。

 

「さぁ、早く帰ろうぜ。」と。

 

何回か、直毅が本気で怒ったことを見たことがある。その時の直毅は、冷たく鋭いナイフの様な目で相手を睨みつけ、決まって英語を話すのだ。

そうなってしまえば、私や裕也が静止の声を上げない限り止まらない。それこそ野獣の様に。

 

その後の直毅の表情には悲しみが見え、それでも直毅は気丈に振る舞って笑みを浮かべるのだ。

 

その姿に、私は何度も心を震わせた。雨に濡れた子犬…いや、傷だらけの狼。そんな直毅の姿に、私は直毅を守ってあげたくなる。

 

「……よし!」

 

勢い良く湯船から上がり決意を固める。

悩むのは柄じゃない。この思いを伝えよう。 "好き"っていう、この純粋で強欲な気持ちを。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌朝、直毅は約束通り夢の丘に訪れた。

 

まだ望の姿は無く、彼は頂上の大木に寄りかかって地面に座り込み目を閉じると、高嶺 「望」と高嶺 『望』…彼にとって最初の友人に出会った時のことを思い出し始めた…

 

3人が出会ったのは、直毅がまだ茜と裕也に出会う前であった。その頃の彼は孤独な少年であり、誰とも関わろうとしなかった。

 

恐らくはその体質の為だろう。幼い頃から死を見つめる羽目になった彼にとって、そのことに後ろ指を指す者は皆目障りでしかなかった。

そんな彼がただあてもなく彷徨っていた時…いや、彷徨っていたというよりも、誰も居ない所を探していたと言った方がいいだろう。

 

その時、彼は夢の丘で、白い肌と白く長い髪の、黒いワンピースを着た少女と出会った。

風が草原と大木の葉を揺らす青空の下、少女は小さな白い花で花占いでもするかの様に散らしていく。

 

花弁が風に舞う中、直毅は大木の下に座る少女の姿に心を震わせる。誰が見てもその姿は絵になっていた。それほどその光景は幻想的であった。

 

無意識に少女の居る頂上まで来たところで、彼は我に返り少し離れた位置に座る。

頬を撫でる心地良い風が草原と大木の葉が揺らし、その音だけが静かに響き渡る。

すると、少女は直毅の前に立って彼を興味深そうに覗き込んでいた。

 

「隣に座ってもいい?」

 

少女の問いに直毅は黙って頷き、少女は笑みを浮かべ彼の隣…身体が触れる距離に座ると、彼の横顔を見つめて尋ねる。

 

「貴方がこの世で1番美しいと思うものを教えて?」

 

「…難しい質問だ。さっき君が散らした、風に舞う花弁は美しいと思ったよ。」

 

「それなら…咲いている花と散っている花ならどっちが美しい?」

 

「…咲いている時も、散っている時も、花は美しいと思うよ。むしろそうじゃなきゃ美しくない。最初から最後まで美しいものが本当に美しいものだと思う。」

 

その答えに少女は感激し直毅に抱きつき、彼の顔を真っ直ぐに見つめて尋ねた。

 

「貴方のお名前は?」

 

「…東條…東條 直毅。」

 

「直毅ね。直毅みたいな人に会えて私"達"幸せよ。ねぇ?"『望』兄さん"。」

 

抱きつかれた彼が戸惑いながら答えると、少女は誰も居ない虚空に向け声をかける。

次に少女が口を開くと、その声が少年の声に変わった。

 

『あぁ、そうだね。こんな人に出会えるなんて、僕達は幸せだ。そうだ、自己紹介をしないとね、「望」。』

 

「そうね兄さん。初めまして、直毅。私は高嶺 「望」。それと…」

 

「望」は直毅から1度離れその場でバレリーナの様に1回転すると、彼女の姿が白い肌に白い髪の、黒い礼服を着た少年に変わった。

 

『僕は高嶺 『望』。初めまして、直毅君。』

 

2人から自己紹介をされた直毅は、その異様な状況に言葉を失い、2人は心配そうに彼を見る。

 

「どうかしたの?直毅。具合でも悪いのかしら?」

 

『彼は驚いているんだよ、望。僕と望の関係は特殊だからね。』

 

「そうだったわね…でも嫌われたくないわ兄さん。こんなに素敵な人だもの。」

 

『それは僕だって同じだよ、望。どうかな、直毅君。僕と望の、最初の友達になってくれないかな?』

 

「望」の悲しそうな声に『望』も悲しそうに答え、直毅に懇願するように尋ねた。

 

その時直毅は察した。この2人は、その特異な関係で自分と同じように後ろ指を指されてきたのだろうと。

「いいよ、俺なんかで良ければ。俺も友達なんて関係の人は居ないから。」

直毅は立ち上がり少し微笑んで…雄治と優子以外の前で笑みを見せるのはこれが初めてだった…答えると、望は直毅の手をとって握手を交わし笑みを浮かべた。

 

『ありがとう、直毅君。良かったね、望。』

 

「えぇ。本当に良かったわ、兄さん。ありがとう、直毅。」

 

直毅が瞬きする間に『望』は「望」に姿を変え、彼女は勢い良く彼に抱きついた。

望の身体を支えきれず直毅は地面に倒れ込み、彼女は彼の上に覆いかぶさるような体勢になる。

そして彼の顔を真っ直ぐに見つめると、眼を閉じて口付けた。

「本当にありがとう、直毅。これはお礼よ。」

 

ほんのりと頬を赤らめて笑みを浮かべる彼女に、直毅は照れくさそうに頭を掻いた…

 

「…毅、直毅?」

 

「…ん?あぁ、「望」か。待ってる間に眠っちまったみたいだ。」

 

望の呼びかけで目を覚ました直毅は身体を伸ばしながら立ち上がる。

 

「ごめんなさい直毅、待たせてしまって。こんな早くから来てくれるとは思わなかったわ。」

 

「いいさ別に。それよりも…本当に久しぶりだな、望。」

 

「…えぇ、本当に。やっと会えた。」

 

彼女は押さえ込んでいた感情に堪え切れなくなると、直毅と出会った時と同じく勢い良く彼に抱きつく。彼が彼女を抱きとめられたこと以外は、何1つとして変わっていなかった。

 

直毅は胸に顔をうずめる望の頭を優しく撫で、彼女は両手で彼の頬を包み込みその顔を見つめると、眼を閉じて口付け、"何かを感じとった。"

始めは優しい、出会った時と同じ触れる程度の口付けが情熱を含んだものに変わるのに時間はかからず、直毅はされるがままに望を受け止める。

彼女は欲望のままに彼の唇を求め、ついには舌を入れ淫靡な音が響き渡る。

恐らく常人ならその快感に脳を狂わされてもおかしくない。だがこの男に限りそれはなかった。

 

「…どうしたの?直毅。もしかして、嫌だった…?」

 

直毅の様子を気にした望は口付けを止め心配そうに彼の表情を伺うと、直毅はまた照れくさそうに頭を掻き答える。

 

「いや、別に求められるのは嫌じゃないんだ。でもどう応えたらいいか分からなくてな…」

 

「直毅の好きなようにすればいいのよ。そうすれば私も嬉しいわ。」

 

「そうは言ってもなぁ…意識を伴わない行為に意味は無いだろ?"こういうこと"に関してはさ。」

 

「それじゃ直毅は、人の愛し方が分からないの?」

 

「そうかもしれないな。それ以前に、一体何が"愛"なのかってことが分からなきゃ、誰も本当の意味で愛せやしないだろうから。」

 

「そうなの…その考え方は直毅らしいわね。」

 

直毅の考えに共感する望に、彼は彼女の頭を撫でて応える。

実際、本当の意味で"愛"という言葉の意味を知る者は存在しないだろう。彼の考えは何も不自然なことではない。むしろ、意味を知らずに愛を語ることの方が不自然である。

 

「それじゃ行きましょう。兄さんも直毅に会いたがってるから。」

 

「『望』か…アイツとも久しぶりだ。」

 

懐かしがる直毅を他所に、望は彼の手を握り2人は夢の丘から風の様に消えた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あれ、直毅来てないの?裕也。」

 

決意のもとに登校した茜は、教室に居ない直毅を探し裕也に声をかける。

 

「あぁ。まだ体調が悪いんじゃないか?」

 

「そんなことないわよ。昨日会いに行った時はピンピンしてたんだから。」

 

「カッコつけて痩せ我慢でもしてたんじゃないのか?」

 

剣人がからかうように言い放つと、茜と裕也は怪訝そうな表情を一瞬浮かべるも、首元まで出かかった感情を押し殺した。

剣人の言うことは、側から見れば尤もらしい理由なのだ。英雄気取りの劣等生と言われても仕方がない。それだけのことを直毅は今の今までやってのけてきたのだから。

「連絡がないから一旦病院にでも行ってから遅れてくるとかじゃないか?茜。」

 

「そうね…そうだといいけど。」

 

最後の呟きは誰にも届くことはなく、その心配は不幸なことに当たっていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

直毅が望に連れられた場所は、彼女の肌と髪と同じ純白の部屋であった。部屋の真ん中には鏡が、その側に部屋の色とは対照的な黒の机が1つに椅子が2つ置かれている。

 

彼女が鏡の前に立つと、そこには成長した『望』の姿が映り、彼女は入れ替わる様に彼に姿を変えた。

 

『久しぶりだね直毅。何年振りかな。』

 

「そうだな…10年位か?なんにしても、また会うとは思わなかったな。」

 

直毅の眼に映る『望』の姿は、幼さの消えた「望」と違い少年のあどけなさが残っていた。

 

「それで、"探しモノ"は見つかったのか?2人とも。」

 

『いや、まだ見つからないよ。ねぇ?望。』

 

「えぇ、なかなか見つからないものよ。"真に美しい人"は。」

 

直毅の問いに2人は溜息交じりに答え、『望』と直毅は椅子に腰掛ける。

 

「それと…美女ばかりを狙った誘拐犯っての、2人がやってるんだろ?」

 

『そんな風に言われてるのか、僕と望は。世俗には興味が無くてね。』

 

「"まるで犯罪者の様な"言われ方ね。私と兄さんは美を追求しているだけなのに。」

 

「常人には分からないのさ、俺や2人みたいな考え方は。」

 

2人の語る"真に美しい人"とは、美しく死に又死して尚美しい人。そんな人間を探す為に、2人は美女ばかりを攫い、結果的に殺していったのだ。

 

2人の言い方からして、彼と彼女は罪の意識を感じていない。むしろ美女達を芸術品に仕立てる時、2人はその昇華に快感すら覚えている。直毅の言う通り、常人には考えられない発想と精神。たが直毅は、2人を認め共感すら覚えていた。

 

『ところで、直毅は何か見つけたかい?』

 

「俺か?そうだな…幾つか珍しい景色は見てきたな。紫色の空、虹の雲、春に降った雪とか。どれも綺麗だったぜ。」

 

「幻想的ねぇ。どんな風だったか話して頂戴。」

 

狂人達は取り止めもない話を始める。彼らが居るのは純白の部屋と言うよりも、カッコーの巣と言った方が正しいのかも知れない。

 




如何でしょうか?
カッコーの巣は精神病院の意です。もちろん映画『カッコーの巣の上で』から。流石にこんな狂人は出てきてないですけど。

それでは、また次回。
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