※この作品はR-18です。

Magic Life   作:弩素人

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投稿ペースが明らかに落ちている…
書くたびにネタを思いついて文にするのが大変です。



ダイヤモンドの心

直毅と望達の悲しい死闘に幕が落ちた頃、茜は直毅の屋敷の前で雨にうたれ、祈りながら彼を待っていた。

 

やがて、直毅が左肩にボロボロになった制服を掛け、右腕で『望』を、2人3脚の様な体勢で支えながらゆっくりと歩いて来る姿を捉えると、彼女は涙を浮かべて彼のもとに走り寄る。

血だらけの直毅と眠った様に動かない望の姿に途中で足を止めた茜に、直毅はほんの少しだけ笑みを見せ、枯れた声で呟いた。

 

「……茜……俺…約束……守れたよな…?」

 

直毅の問いに茜が涙を拭って頷くと、彼はもう1度ほんの少しだけ満足そうな笑みを浮かべ、膝から崩れ落ちそうになる。

茜が咄嗟に手を差し出し直毅を左側から支えようとすると、掛けられた制服が落ち、彼女は彼の左腕が無い事に気が付いて悲鳴を上げ口元を覆った。

 

「…親父達を……呼んできて、くれないか…?」

 

望をゆっくりと地面に寝かせ、落ちた制服を左肩に掛けながら直毅が呟くと、茜は半ば放心状態で屋敷へ向け走りだし屋敷の扉を勢いよく開け、力の限り叫んだ。

 

「雄治さん!優子さん!直毅…直毅が‼︎」

 

屋敷の中で各々過ごしていた者は皆彼女の叫び声に驚き、そして皆部屋から飛び出して玄関前に集まる。

 

「どうした⁉︎一体‼︎」

 

真っ先に飛び出して来た雄治が茜に尋ねると、彼女は両手で顔を覆って泣き崩れる。

開かれた扉から、跪く直毅の姿を認めた雄治は彼のもとに駆け寄り、その身体の状態に息を飲み、直毅は泣きそうな顔で雄治を力無く見上げる。

 

「……親父……俺………」

 

「今は何も喋るな。」

 

後から来た優子と凛は直毅の姿を見て屋敷に蜻蛉帰りし、麗華と翔は彼のもとに駆け寄りただその様子に圧倒され、最後に彼のもとに辿り着いたユキは、彼の姿を見て服が血で汚れるのも構わず抱きついた。

 

「直毅…どうして怪我してるの…?直毅…?」

 

「……ごめんな、ユキ……俺……また心配させちゃったな……」

 

残された右手で、泣きじゃくるユキの髪を撫でながら力無く呟くと、横たわる望の姿を1度見るて、ゆっくりと雄治の方を向いた。

「親父……望も…彼奴も連れて行ってくれ…」

 

直毅の必死の頼みに頷いた雄治は望を抱き抱え、彼はユキに横から抱きつかれたまま足を引きずりながらも、最後の力を振り絞り屋敷の中へ、泣き崩れた茜のもとまで来る。

 

「……茜……俺を、叱るのは……後に……」

 

言葉を紡ぎ終わる直前、直毅はボクサーの様に崩れ落ちる。その時茜やユキが直毅の名を叫んだのを、彼は薄れゆく意識の中遥か遠くで聞いていた。

 

ーーーーー

ーーー

ー

 

直毅が次に目を覚ましたのは翌日の夕方であり、彼は凛の工房に置かれたベッドの上にいた。

 

「目が覚めたみたいね、直毅。」

 

「…凛さん…俺…」

 

「大体の話は茜から聞いたわ。…大変だったみたいね…」

 

凛は彼のもとに近寄り、その髪を撫でながら静かに呟く。直毅はゆっくりと起き上がり自らの身体を確かめると、傷だらけだった身体は元通りになっていた…失くした左腕を除いて。

失くした左腕を見つめる直毅の様子に、凛は申し訳無さそうに俯く。

「ごめんなさい直毅。左腕を元通りに出来なくて…魔法使いが聞いて呆れるわね…」

 

「謝らないで下さい、凛さん。それに、もしこの左腕が元通りになってたら、俺はもう1度左腕を切り落としてましたから。」

 

「どういうこと?それは。」

 

直毅の言葉に驚いた凛が顔を上げると、直毅は作業台の上に寝かされた望の姿を見ながら答える。

 

「凛さん、頼みがあるんです。「望」と『望』を…変質魔術で義腕に変えられませんか?」

 

「あの子を、直毅の左腕に?」

 

「はい。それが、俺に出来る2人への償いですから。」

 

直毅の静かな言葉と視線に釣られ、凛も望の姿を見て呟いた。

 

「…あの子の身体を調べてみた限り、あの子の身体は変質魔術の素材として最適よ。まだ身体の中に魔力が十分に残っているし、何よりあの子には"決まった形"が無いわ。」

 

「決まった形が無い?」

 

「えぇ。直毅の連れてきたあの子…高嶺 「望」と『望』は、その気になれば誰にでもなれる身体よ。」

 

「それじゃ、この姿も、望達の本当の姿じゃ無いわけか…」

 

ベッドから起き上がり、横たわる望の頭を撫でながら呟く直毅の声には悲しみが含まれている。

その亡骸は酷く冷たく、それでいて美しい。

 

「…そうか…2人が探していた答えは、望達自身のことだったんだな…」

 

2人が追い求めていた、死して尚美しい人。それが2人自身だったことに気が付いた直毅は凛の方を向く。

 

「凛さん。お願いします。」

 

「……分かったわ。」

 

彼の決意を認め、望の左腕を掴んだ凛は目を瞑り、大きく息を吐いた。

それと同時に白い光が望の身体を包み込み、彼と彼女の身体が見えなくなる寸前、直毅は2人が微笑んだように感じた。

 

「……出来たわよ。直毅。」

 

光が消え去ると、作業台の上には無機質なまでに白い左腕が置かれていた。

直毅はその義腕を取り、失った左腕の切断面に重ねると、針が刺す程度の小さな痛みを感じる。義腕がピッタリと切断面に重なり合い、左腕の感覚を取り戻した。

ゆっくりと指を開閉し動きを確かめる。失った腕となんら変わりなく動く義腕を見つめ、凛の方を向く。

 

「この義腕は、どうすれば取り外せますか?」

 

「接着面に指を入れれば取れるわ。その義腕の感覚を覚えおいて。その義腕は変質魔術の素材に使っても、その義腕をイメージすれば元に戻るから。」

 

義腕を取り外し、ストックを切り落としたソードオフタイプのウィンチェスターM1887をイメージし義腕を変化させ、元の義腕をイメージしなおす。

 

「…ありがとうございます。凛さん。」

 

義腕を取り付け、左腕の感覚を確かめて凛に礼をし、彼女は椅子に座って煙草を口に咥えた。

 

「お礼は皆んなにして上げて。特に優子さんとユキにはね。身体の大半を2人が治して、つきっきりで直毅の看病をしてたんだから。」

 

「母さんとユキが…道理で傷が綺麗に消えてるわけだ。そう言えば…茜はどうしてます?」

 

「彼女なら自分の家に戻ったわ。気が付いてないかもしれないけど、1日眠ってたのよ?直毅は。」

 

「それじゃ、後で会いに行かなきゃな。分かりました。」

 

もう1度自分の身体を確かめ、直毅は部屋を後にする前に尋ね、凛は煙草に火を点け紫煙を吐き出して答えると、彼はもう1度礼をして部屋を後にし自室に向かう。

 

部屋に入ると、ユキが直毅のベッドで寝息を立ていた。その姿を見た彼はベッドの縁に腰掛け、右手で、彼女の髪を撫でる。

「ん……直…毅…?」

 

「あぁ、起こしちゃったか。」

 

ユキは直毅の姿を認めるなり彼に抱き、その左腕を見つめる。

 

「直毅…その腕…」

 

「…あぁ、凛さんに作って貰ったんだ。ごめんな、ユキ。心配させて。」

 

胸に顔を埋めるユキの髪を撫で続け、直毅が申し訳無さそうに呟くと、彼女は彼の頬を両手で包み、目を閉じて彼に口付けた。

 

「直毅…無茶しないで…直毅が居なくなったら、私…」

 

「……ごめんな……本当に。………ユキ…頼みがあるんだ。……もう少しだけ、こうしていてくれないか…?」

 

直毅が静かに尋ねると、ユキはその返答に彼の身体を、その小さな身体で抱き締め、彼も彼女を抱き締め返し声を殺して涙を流す。

 

どれだけ死を見つめていようとも、彼も1人の人間であることに変わりない。気丈に振る舞う自らの弱さを、彼自身が最も良く知っていた。

他者を想う人間にとって何より恐ろしいのは、自らの死よりも他者の死だ。彼も"そういう"人間であるから、異常なまでに自らの命を軽視し、異常なまでに他者の命を重視する。"最も人間らしくない人間"。それが、"観客達"に歓声を浴びる原因なのだろう。

 

ーーーーー

ーーー

ー

 

 

そこで1度舞台は小休止、司会の男が幕の下りた舞台に立ち"観客達"に一礼し口を開いた。

 

「皆様、如何お楽しみでしょうか?ここで1度、舞台の場面を移し、我等が処女公演の主役と、1910回目のヒロインに視線を集めたいと思います。皆様方、我等が2人の、"演者としての"成長ぶりをご覧下さい。」

 

男はもう1度礼をし、指を鳴らして幕を上げる。

 

自らを"演者"と悟った者は、その台本と操り糸から放たれた時、自らをどう"演じるのだろうか?"




如何でしょうか?
主人公君辛いね、主人公だから仕方ないね。
次回はジョンとジェーンの物語。

それではまた。

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