これから主人公君にはボロ雑巾の様になって貰います。
ロクデナシの劣等生
…今日は、雪が降るかもしれない…
ベッドから起き上がり、眠い目を擦りながらベランダに出た東條 直毅がそう思ったのも頷けるほど、春にしては妙に寒い日だった。
彼は乱切りの黒髪を掻きながら部屋に戻り、学園に向かう準備を始める。
彼の部屋は、誰が見ても生活感の欠片もない、殺風景な部屋である。
部屋に置かれている私物は木製の小さな丸いテーブル、それに合わせた木製の椅子に数冊の本しかなく、あとの物は備え付けと最低限の生活必需品を使っている。
正直、独房の方がまだ生活感がある。
「…なんか今、誰かに馬鹿にされた気がするな…」
制服である黒の学生服に着替えていた彼がくしゃみをし、鼻をすすりながら呟く。それは寒さと気のせいと言っておこう。
トースターに食パンを放り込みスイッチを入れ、湯沸し器に水を注ぎ台にセット。冷蔵庫から卵を1つ取り出し、フライパンに火をかけ温まったところで片手で卵を割り目玉焼きを作り始める。
狙いすましたかのようなタイミングで食パンが焼け、お湯が沸き、目玉焼きが半熟になる。1枚の皿に食パンを、その上に目玉焼きを乗せマグカップに安いインスタントコーヒーの粉を入れお湯を注ぐ。朝食を完成させた彼は5分とかからずそれを食べ終わり、食器を片付けて洗面所に向かう。
全ての用意を済ませバックを持ち靴を履いて出ていこうとした時、直毅は何気なく下駄箱の上に置かれた小さなスタンドミラーに映った自分の顔を見て、それからアパートを後にした。
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「よっ、直毅。相変わらず眠そうな顔だな。」
「ほっとけ裕也。俺はいつもこんな顔だよ。」
通学路の途中、直毅の肩を叩いて声をかけたのは、彼の数少ない親友であり幼馴染みの、蕨《わらび》裕也であった。
180cm前半ある直毅と比べると少し小さく、切り揃えられた濃い茶色の髪。顔は童顔で優しい印象を与える。
「それもそうだな。にしても、今日はやけに冷えるなぁ。もう春だってのに。」
裕也が白い息を吐き両手を擦りながら言うと、彼らの後ろで自転車のベルが鳴った。
「おはよー2人とも。今日は寒いわね。」
「おはよう、茜。」「おぅ、おはよう。」
2人は振り返り自転車に乗った藍原 茜に挨拶する。
彼女もまた直毅の数少ない親友であり幼馴染みである。ショートカットの薄い茶色の髪に明るい顔。そしてスポーティな身体つきは活発な印象を与える。
「それにしても直毅、あんた相変わらず眠そうな顔してるわね。」
茜が自転車から降りてそう言うと、裕也は直毅の顔を見ながら笑い、当の彼は白い息を溜息に変えながら呟いた。
「どうして朝から顔の文句を2人から聞かなきゃならないんだよ…」
3人は談笑しながら、学園へと続く通学路を進んでいく。
彼らが通う学園…国立第3総合学園は、下は幼稚園上は大学院という総合教育機関である。彼らは高等科2年あるが、この学園、恐ろしいほどのマンモス学園である。
高等科の学年1つとっても10クラスある上に1クラス50人近くはいる。
そんな中、直毅と裕也、茜の3人が今の今まで同じクラスでいるのは奇跡を超え、ある種腐れ縁である。
ここで、東條 直毅の体質について語っておこう。
誰もが魔術を使えるようになり、教育機関においても教育課程に魔術を学ぶというものが追加されたのだが、この男、魔術が1回しか使えない身体である。
つまり、魔術を1度使えば死ぬということだ。
そのため、直毅達のクラス…2年J組は今、使い魔の召喚実習を行っているが、その場に当然彼の姿はない。特例的に魔術関連の授業は座学のみ出席すればよいというのを学園側が容認しており、彼はいつも屋上で寝ながら時間を潰してしる。
尤も、今日は屋上に来たこと後悔していたが。
「はぁ、寒くて寝れたもんじゃないな。」
彼は溜息を吐きながらもベンチに座り、ふとフェンス越しに正門の方を見た。
「こんな早くから下校する金持ちの優等生でもいたか?」
黒塗りの高級車に、スーツを着た男が1人運転席のドアの前に立っており、青く長い髪の女子生徒と、彼女の側に付き添う小柄の男子生徒が車の所までやって来ていた。
男子生徒が後部座席のドアを開け、女子生徒が乗り込みその後に続いて彼も乗り込むと、運転席のドアの前に立っていた男も車に乗り込んで、その高級車は出発した。
その様子を何気なく見ていた直毅は、車が居なくなるとベンチに横になって眼を閉じ寝始める。
この時、数時間後にあの女子生徒と男子生徒に会うことになろうなど、彼は思いもせず、ましてやあの車にもう1人少女が乗っていたことなど、知る由もなかった。
2回目の投稿でした。
主人公のイメージは、色々な洋画の主人公達を足して全員で割った感じです。
次回は戦闘回です。
それでは、また次回。