※この作品はR-18です。

Magic Life   作:弩素人

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間を空ける事なく次の厄介事に巻き込まれる主人公君。
日常パートとは当分の間お別れかな


安らぎ無きは戦士の定

「なんだ…あれ。」

 

対抗戦の会場から帰ろうとした直毅は、アナログな立て看板のある入り口前に止まる黒塗りのハマーと、同じく黒塗りのクーペを見て呟いた。正確に言えば、その2台の車の前で口論している2人の姿に呟いた。

 

「だから、俺が送って行くから先に行けって。」

 

「そちらこそ、先に行ったらどうです?"彼"に用はないでしょう。」

 

迷彩服を着た男性とスーツを着た女性。酷くアンバランスな2人の様子に、直毅は面倒事の空気を感じ取りそそくさと立ち去ろうとする。だが…

 

「あっ…」

 

不幸にも2人と目が合い、2人は咳払いして直毅に向かって来た。

 

「見事な戦いぶりでした、東條 直毅。」

「えぇ?あぁ、そりゃどうも。」

 

先手を取ったのはスーツを着た女性。社交辞令の様な賛辞を送り、直毅は呆気にとられながら答えた。

 

「疲れてるだろ。"俺が"家まで送ってくぜ。」

 

「は?いや、大丈夫です。」

 

突拍子もない男の提案を退けると、女性は当然といった様子で男に告げる。

 

「彼もこう言っています。第一貴方の姿は人を萎縮させるだけです。"私が"送ります。さぁ、此方へ。」

 

「いや、怪しさならどっちもどっちだから。一体何の用なんです?」

 

直毅の言葉に2人は目を合わせ、彼は頭を掻きながら笑い声を上げ、彼女は額を押さえる。

 

「そりゃそうだな。こいつは一本取られた。俺はバーンズ・ディート。ジョー…君の親父さん、東條 雄治の友人だ。よろしくな。」

 

サングラスを外し、青い目で直毅に笑みを見せたバーンズは手を差し出し、握手を交わす。

 

「自己紹介とは、貴方にしては社交的ですね。私はエニエス・リーン。ウィン…いえ「Ms.wind」風瀬 凛の…知り合いと言っておきましょう。以後、お見知りおきを。」

 

エニエスからも握手を交わし、直毅は多少警戒を解く。尤も、左腕を銃に変える用意だけは解かなかったが。

 

「さて、自己紹介も済んだ。問題は、どっちが送っていくかだな。」

 

「俺が1人で帰る選択肢は無いのか…」

 

「どう決めましょうか。どんな方法でも構いませんよ。私が送る事に変わりはありませんから。」

 

バチバチと火花を散らす2人に直毅は溜息を吐くと、100円玉を取り出して声を上げた。

 

「コイントスで決めよう。表が出たらハマーで、裏が出たらクーペで送って貰おう。」

 

「そいつはいい。確率は平等だからな。」

 

「いいでしょう。」

 

双方が了承し、直毅はコインを親指で弾き手の甲に落とし手をかざす。コインは裏を向いていた。

 

「Sit!裏かよ。」

 

「運も味方してくれましたね。それでは行きましょう。」

 

バーンズは悔しげな声を上げながらも、潔くハマーに1人で向かい先に会場を後にする。スーツ姿の運転手が後部座席の扉を開け、先にエニエスが乗り込み、続いて直毅が乗り込むと、ドアが閉められた。

 

「運転手さん。途中でコンビニに寄って貰っていいですか?」

 

直毅は少し身を乗り出し運転手の肩に手を伸ばしながら尋ね、運転手が頷こうとした瞬間、直毅の手が肩に触れ、バーンズが運転席に座っていた。

 

「あれ?一体どうなってんだ?」

 

ハマーを運転していたバーンズは状況が理解出来ず、振り向いて直毅とエニエスの姿を見て驚き、彼の姿を見てエニエスも驚く。

 

「これは…転移魔術ね。いつの間に…」

 

「さっき握手をした時さ。家に着く前に、2人から話を聞きたかったからな。」

 

「流石ジョーの息子だな。それじゃ出発するか!」

 

バーンズは笑い声を上げエンジンキーを回し、3人を乗せたクーペは会場を後にした。

 

ーーーーー

ーーー

ー

 

「…ジョーとは長い付き合いだ。最初、俺はジョーの監視役だったんだ。イエロー(黄色人種)が軍に入るのは異例だからな。陸海空、海兵隊、果ては特殊部隊。色んな部隊を転々としてた。どの部隊でも重宝されてた。今でも声がかかるくらいだからな。」

 

「私も彼と同じく、Ms.windの監視役でした。オックスフォード大学を首席で卒業、最年少で魔法使いの称号を与えられました。私と彼がこの国に来たのも、ある依頼をする為です。」

 

「依頼ねぇ…しかし親父も凛さんも、イカれた経歴だなぁ。」

 

他人事のように呟く直毅。その様子に若干引っかかった2人だったが、バーンズはバックミラーを一度見て続ける。

 

「一応依頼は直毅にも関係あるからな、先に話しておくか?」

 

「俺にも関係が?」

 

その言葉に直毅は大きな溜息を吐き、座席に深く座って脱力する。また面倒事が始まるかと思い、彼は憂鬱になった。

 

「詳しい説明は彼女にしてもらうか。頼む。」

 

「分かりました。N.E.T社をご存知ですか?」

 

彼の要求を受け、エニエスはうなだれる直毅を見て尋ね、直毅は目を瞑ったまま答える。

 

「あぁ。"Never End Terminal" 世界に名だたる国際大企業。最近新型のアンドロイドの開発に成功したって聞いた。」

 

「えぇ。依頼はその新型アンドロイドについてです。N.E.T社は各国の首脳や大企業の経営者に新型アンドロイドを先行して提供、販売しています。表向きは機能テストです。ですが、裏である用意を進めているようなのです。」

 

タブレット端末を取り出し、彼女は直毅に画面を向け、彼は嫌々覗き込む。

 

「最近、企業の経営者や政府関係者を狙った暗殺未遂事件が各国で起きています。その実行犯と思われる者の写真です。」

 

「随分と画像が荒い。SISの諜報部でも苦戦する相手らしい。」

 

モザイク混じりの写真に映る、空を飛ぶ黒い人影を見ながら直毅がそう呟くと、エニエスは驚いて尋ねる。

 

「どうして私がSISだと?」

 

「説明が載った書類のサインが"C"だけだからさ。」

 

直毅の指摘に彼女は舌を巻き、バーンズは笑い声を上げる。

 

「"ぬけてる"様に見えて博識だな、直毅。」

 

「煽てるのはやめてくれ。で?この殺し屋が何だってんです?」

 

「えぇ。この暗殺犯、コードネーム "Schwarz"は、N.E.T社のアンドロイドという情報が出ているのです。」

 

「成る程ね…大体察したよ。所でバーンズさん。銃は持ってるかい?」

 

体勢を直し声のトーンを変えずに直毅が尋ねると、今度はバーンズが舌を巻いて再び笑い声を上げる。

 

「それもお見通しとは、やっぱりジョーの息子だな。ほらよ。」

 

バーンズは上着の下からコルトガバメントを引き抜いて直毅に差し出し、直毅は「どうも。」と礼を言ってから銃を受け取り、安全装置を外して窓を開けた。

 

「何をする気です⁈」

 

慌てるエニエスを他所に、直毅は落ち着いた様子で、バーンズは笑ったままアクセルを踏む。

「つけられてるんだ。気が付かなかったかい?」

 

「荒事は不得手なんだよ直毅。ボンド・ガールじゃあるまいし。」

 

「全く…随分と物騒になったもんだ、この国も。」

 

銃を握り締め溜息を吐いた直毅は、サイドブレーキを引きパワースライドの様に左折した車内から2回銃爪を引き、後ろにいた黒塗りのベンツの前輪を両方撃ち抜き、ベンツはスピンして電柱にぶつかった。

 

「いい腕だぜ全く!」

 

「まーた面倒事に巻き込まれるのか…」

 

銃を返し、窓を閉めて座席を倒した直毅は、これから起こる事に大きく溜息を吐いて目を閉じた。

 

ーーーーー

ーーー

ー

 

「ただいまー。親父、凛さん。お客様だよ。」

 

直毅は気の抜けた声を出しながら家の扉を開け、その声を聞いた雄治と凛が部屋から出てくる。直毅の背後にいるバーンズとエニエスの姿をそれぞれ見た2人は懐かしそうに声を上げた。

 

「バディ!(相棒)久しぶりだな!」

 

「エリー?調和会議以来ね。」

 

2人ともあだ名で友人を呼び、エニエスは眼鏡を外し、バーンズは雄治と力強く握手を交わす。

 

「変わらないな、ジョー。」

 

「貴女が時計塔から居なくなった時は大変でしたよ。ウィン。」

 

4人が懐かしさに包まれ始めると、後からユキが2階から降りてくる。その姿を見た直毅はようやく緊張を解き、大きな欠伸をして彼女のもとに歩いて行く。

 

「おかえり。直毅。」

 

「あぁ、ただいま。ユキ。」

 

ユキの髪を優しく撫でて応えると、直毅は彼女を抱き抱えて自室に向かう。

 

「晩飯まで寝てるよ。」

 

「あぁ。後で話を聞かせてくれ。」

 

短く雄治と会話して、直毅はゆっくりと自室へ入る。その2人の姿を、バーンズとエニエスは静かに見つめ、4人はリビングへ入った。

 

「ちょっと疲れたから寝るけど、ユキはどうする?」

 

自室に入り、ユキを下ろして上着を脱ぎ服を着替える直毅が尋ねると、彼女は当然の様にベッドに腰掛ける。

 

「そうか…ありがとな。」

 

2人はベッドに入り、ユキは直毅の腕を枕にし、直毅はユキの肩を抱く。

 

「暖かいな。これなら良く寝れそうだ…」

 

直毅はその暖かさに意識を落とし、ゆっくりと寝息を立て始める。ユキは直毅の顔を見つめながら、彼の鼓動を聞いて眠りについた。

 

ーーーーー

ーーー

ー

 

「…成る程。大胆なマーケティングだな。"顧客の命を狙う"宣伝とは。」

 

リビングでコーヒーと紅茶を飲む4人。雄治はエニエスから渡されたタブレットをテーブルに置き呟いた。

 

「それで?俺に何を頼む気なんだ?まぁ、大体想像はつくがな。そのアンドロイドを破壊してほしいんだろ?」

 

コーヒーを一口飲み、雄治は胸ポケットから煙草を取り出し口に咥え、隣にいる凛にも1本差し出す。それを受け取った凛は指を鳴らして雄治と自分の煙草に火をつけ、紫煙を吐き出した。

 

「端的に言えばそういうことになる。引き受けて貰えるか?ジョー。」

 

真剣な表情でバーンズが言うと、雄治は紫煙を虚空に吐き出した。

 

「分かった。相棒の頼みだ、断る理由も無い。それに、放っときゃ家族にも危険がありそうだ。」

 

「感謝します。Mr.東條。報酬は…」

 

「いらねぇよ。大企業を狙った破壊工作だ。"揉み消し"て貰うだけでいい。それに、こいつは"相棒からの頼み"だからな。2人共、帰ったらお偉いさんに伝えとけ。"殺し屋に護衛を頼むとは、いいジョークだ"ってな。」

 

その言葉にバーンズは笑い声を上げ、エニエスは内心肝を冷やす。

 

「さて、仕事の話が済んだなら、酒でも呑みながら昔話といくか。優子、少し早いが夕食にしよう。」

 

「分かりました。雄治さん。」

 

台所で既に準備を進めていた優子がにこやかに答え、彼らは談笑を交わし始めた。

 

その後、騒がしさに目を覚ました直毅達がリビングに訪れた時には、酔っ払った4人の姿があったという。




如何でしょうか?

この作品の日本物騒だなぁ…(他人事)

それではまた。
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