※この作品はR-18です。

Magic Life   作:弩素人

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Drive My Changer 12

「直毅、あれ歌ってくれよ。"Power of love"」

 

「この車に雷が直撃でもしたら歌うかもしれないな。」

 

「そしたら歌は"Johnny.B.Goode"にしなきゃな。でも1.21"ギガ"ワットは勘弁して欲しいな。時速140キロ出すのも。」

 

「なら大人しくタイムマシンに乗ってくれ。1.21"ジゴ"ワットの電力も、時速"88"マイルも出す必要もない。」

 

「おいおい、ウェルズか?そいつは今時のタイムマシンじゃないな。」

 

「何で今からターミネーターの相手をしに行くってのにこんな話してるんだ…命懸けだってのに。」

 

「そいつは相手の出方次第だ。運が"悪けりゃ"何事もなく終わるぜ?そういや、そのターミネーターもどきはサングラスはかけてたか?」

 

「顔は見えなかったし"I'll be back"とも言わなかった。それに機械的な女の声で喋ってたよ。」

 

「なんだよ拍子抜けだな…まぁいいか。気楽にいこうぜ、直毅。」

 

「はぁ…あいよ。親父。」

 

直毅と雄治は窓を開けた車内で他愛のない会話を交わす。運転席に座る雄治は"Power of love"を流し、助手席の直毅は窓の縁に腕を乗せ、歌詞を思い出しながら歌を歌う。

 

「そうこなくっちゃな。」

 

直毅の声を聞いた雄治は笑みを浮かべ、彼と共に歌い始めた。

 

ーーーーー

ーーー

ー

「戦争でも始めるのかって位あるな…」

 

「実際それ位の用意はしていいだろう。そこの弾薬箱を取ってくれ。」

 

屋敷の階段裏から行ける地下室には、所狭しと銃や弾薬等が並べられ、雄治は火の付いていない煙草を咥えマガジンに弾を込めながら呆れる直毅に声をかける。

 

「お前は何を使うんだ?M4?それともAKか?」

 

「親父みたいにゴチャゴチャしたアサルトライフル持って走り回るのは勘弁。身軽な方がいい。それに俺には"2人"がついてる。その方が親父も動きやすいだろ?」

 

直毅は左腕を撫で、壁に掛かる銃を眺めて答える。

 

「まぁな。でもマグナム一丁じゃ心許ないだろ?」

 

「サブマシンガンでいい。9mmのコップ・キラーとかさ。」

 

「そんな銃があったら俺が使いたい位だ。」

 

2人が談笑していると、バーンズが大きな箱を抱えて入ってきた。

 

「持ってきたぜジョー。」

 

「おぉ。サンキュー、バディ。」

 

バーンズから箱を受け取り、雄治は中から手榴弾や弾薬の類いを次々と取り出していく。バーンズは銃を眺める直毅の隣に立つと、M4を手に取り尋ねる。

 

「"ジュニア"は何を使うんだ?」

 

「P90辺りを。それと、そのジュニアって呼び方どうにかなりませんか?バーンズさん。」

 

「ジョーJrじゃしっくりこないんだ。なら"ジョージ"はどうだ?」

 

「あぁ…もうそれでいいです…」

 

直毅は溜息を吐き、火薬の匂いが漂うコンクリート剥き出しの地下室の机の上に腰掛ける。彼は何故だか、一種の安らぎを感じていた。

 

「懐かしいなジョー。海軍にいた頃、弾薬庫で上官からくすねてきたスピリットを一緒に飲んだのを思い出すぜ。」

 

「そうだな。覚えてるか?次の日の上官の顔。」

 

「あぁ、"魂"が抜けたみたいな顔だっな。笑いを堪えるので必死だった。」

 

笑い声を上げる雄治とバーンズの姿を見て、直毅は2人の関係の強さを感じ、もう1度左腕を見つめる。

その時、ほんの少し左腕に痛みが走り、彼は優しく左腕を撫でた。

 

ーーーーー

ーーー

ー

 

「直毅?ちょうどよかった。これを身に付けて貰える?」

 

「何です?これ。」

 

地下室を後にし、魔法石を貰いに凛の部屋に向かった直毅。中に入ると、白衣を着た凛とエニエスが作業台に材料を並べており、訪れた彼に凛は緑色に輝く小さな宝石の付いたネックレスを手渡した。

 

「直毅用の守護石…お守りよ。障壁魔術を自動で展開するの。」

 

「それは…親父が持ってた方が良いんじゃないですか?」

 

「雄治はあらゆる魔術的干渉を受けないの。それが自分に有益であってもね。」

 

「どういう事ですか?」

 

「ん〜。エリー、説明してくれない?」

 

よく分からないといった直毅に、凛は髪を掻き椅子に座って煙草を取り出すと、道具を片付けていたエニエスに声をかけた。

 

「はぁ。分かりました、ウィン。「Magic・killer」Mr.東條がそう呼ばれている所以はご存知ですね?」

 

エニエスは1つ溜息を吐き、道具を置いて机の上に腰掛けて直毅に視線を向けた。

 

「魔法使いを初めて殺した人間だから、ですか。」

 

「えぇ。尤も、その事を知っている者は余り多くはありません。彼の名前を知る魔術師の大半は、彼の事を良くは知らない。知りたくないと言っていいでしょう。忌み嫌われていますから、彼の名は。」

 

「それで、親父が魔術的干渉を受けないっていうのは、一体…」

 

「それは、彼が魔力を持たない身体だからです。魔術は、術を使用する術者と、その対象となるモノ両方に魔力があって初めて効果を発揮します。鍵に対する鍵穴と言ったところでしょうか。彼にはその鍵穴がない。この世で魔力を持たず存在している人間…いえ、"モノ"は彼以外に存在しません。」

 

「そういうこと。だから雄治には意味が無いの。そのお守りも、術者の魔力に繋がっていないと効果が発揮されないから。」

 

「成る程…分かりました。有難く受け取っときます。」

 

直毅は礼を言ってその守護石を首に掛け、宝石のように輝く小さなその石を見つめる。

 

「魔法石を取りに来たんでしょう?ついでにマントも渡しておくわ。」

 

チョークの様に魔法石が詰まった箱と、対抗戦で直毅が身に付けたのと同じマントを取り、凛は煙草を咥えながら彼に渡す。

 

「ありがとうございます。」

 

「……大丈夫?直毅。」

 

灰皿に煙草を置き、紫煙を吐き出した凛は静かに尋ねる。

 

「大丈夫ですよ。死にかけはしましたけど、なんとか生きてますから。」

 

「そう……ならいいわ。雄治の面倒、ちゃんと見てあげてね。」

 

「本当ですよ。俺が居なきゃ、親父の奴何しでかすかわかったもんじゃない。」

 

直毅は苦笑して凛の部屋を後にする。その姿を見送った凛は、煙草を咥え溜息を吐いた。

 

「……抱き締めて頭でも撫でればよかった。大丈夫なはずないのに……」

 

「それは、"母親"として?」

 

「………さぁ。私に愛の感情があれば何も言わずに抱き締めてた。私も雄治も、直毅にもそれは分からないから。」

哀しげに紫煙を燻らせ、凛はそう呟いて目を閉じた。

 

ーーーーー

ーーー

ー

「どうなんだ?学園の様子は。」

 

「当分の間休校よ。警察が1日中調べてるわ。教員は保護者と警察の対応でてんてこ舞い。」

 

「だろうな。俺の名前は挙がってたか?」

 

「いいえ。これ以上事態を複雑にしたくないようね。"埃"を隠すのに忙しいみたいで。」

 

「あんの屑共…まぁいいか。ありがとな、薫。」

 

「なんて事ないわ。それじゃ、直毅。」

 

リビングの電話で薫に学園の様子を聞き礼を言って直毅は受話器を置き、小さく溜息を吐く。

 

「あんまり溜息ばかり吐いてると幸せが逃げるよ?直毅君。」

 

「もとより、吐き出す程の幸福も無いと思うぜ?翔。」

 

珍しくリビングには直毅と翔の2人しか居らず、翔は椅子に座って本を読みながら彼の言葉に笑みを浮かべる。

 

「そうかもね。ところで直毅君。お嬢様に何かした?」

 

「様子が変なのか?麗華。」

「うん。ちょっとだけ落ち込んでるというか、そんな感じ。」

「そうか…いや、"何もしてないぜ"。それが悪かったんだろうが。」

 

「そうみたいだね。僕も直毅君も、人の想いに応えるのは苦手だから。」

 

翔は微笑を崩さぬまま直毅の顔を見る。その表情は、直毅に自分と同じ若干の狂気を感じさせた。

 

「他人の為に生きるのも難しいね。特に僕や直毅君みたいに、誰かを守る為に生きる生き方は。」

 

「生粋の従者が言うと重みが違うな。どうなんだ?主人から想われた事はあるのか?」

 

「特に感じたことはないなぁ。僕が鈍感なだけかもしれないけど。」

 

「近過ぎて見えないって訳だ。実際、俺や翔にとっては大して重要じゃないのかもな。守る"モノ"の客観的価値は。」

 

「うーん。そうかもしれないや。僕等は自分をチェスのポーン位にしか思ってないけど、相手は僕等をポーンだと思ってないからね。」

 

「ポーンか…確かに。自分を大切に出来ないっていうのも、不器用なもんだよな…そうでなきゃ守れないからなんだが。」

 

「そう。主人は我が儘と相場が決まってるから。」

 

直毅は翔の言葉に同意しながら苦笑し、翔も変わらない笑みを返した。

 

ーーーーー

ーーー

ー

 

自らを1度空にしなければ他者を理解することなど出来ない。理解出来ない事の塊が他者であるから。理解不能の考えを受け入れたくないが為に、人は相対的な間違いの判を他者に押す。その行為は恐らく、"私"の席から見える何者かが(無意識や理性といった奴ら)ほくそ笑みながら糸を引いているのだろう。

 

どうも、この舞台を観ている者の大半は、彼の言葉を借りるなら、余程趣味がいいらしい。"私"はうんざりして溜息を吐くと、"私"の隣に黒い影の様な者が座り、同じく溜息を吐いた。

 

"いい加減、この舞台を観るのも飽きた"

 

「だが、君にはいつも最後の場面に仕事があるだろう。」

 

"なら、誰か別の者に代わって貰おう"

 

「君の代わりが務まる者がいるのか?」

 

"あぁ、心当たりなら『腐る程』いる。"

 

そう告げた"彼"は嫌々席を立ち、"彼"に背を向ける者の隣に座った。

 

ーーーーー

ーーー

ー

 

私…沙波 麗華は、彼を、東條 直毅という者を理解出来るのだろうか。

 

今の私の頭を支配していたのは、ただこの一言。

 

当然、私は彼を理解"したい"。初めて抱いた恋愛感情、それに従うのは当然だろう。(初恋とは、恋に恋することだと言ったのは誰だったか)

 

けど、今の私には彼が理解"出来ない"。いや、"したくない"と言っていい。彼に関わった者は皆そうなると確信出来る程に。むしろ、彼の事をよく"知っている"が為に、私は余計理解出来ないのだろう。

 

「あら、どうしたの?麗華ちゃん。溜息なんか吐いて。」

 

「…え、あぁ。優子さん。」

 

気分を変えようと自分で淹れた紅茶が冷めていることにも気が付かず、私は優子さんに生返事で答えて紅茶を飲む。

 

やはり、彼が淹れた紅茶の方が美味しい。

 

「何かあったの?悩みごとかしら。」

 

「…えぇ。直毅の事で…」

 

この心の重しを無くしたい一心で、私は優子さんに思いを打ち明けることにした。

 

「……そう。直毅が好きなのね。昔の私を見てるみたい。」

 

「なら、私の気持ちも分かりますか?大切な人が理解出来ない辛さも…」

 

「えぇ。私も、雄治さんが理解出来なかった。昔の雄治さんは今の直毅そっくりで、何度傷付いても、何度死にそうになっても、私に笑ってみせた。私を傷付けまいとして。多分、今でも私は雄治さんも、直毅の事も理解はしていないと思うわ。雄治さんも直毅も"普通"の人じゃないから。」

 

「でも、優子さんは直毅を、母親として愛していますよね?なら、なんで直毅を止めないんですか…?殺されかけた相手の所に自分から行くなんて…!」

 

「私だって止めたいわ。けど直毅は私の子である前に、雄治さんの息子よ。その意味が、貴女にはわかるでしょう?」

「それは…」

 

「私達に出来るのは、愛する人を見守り支える事だけかもしれない。愛を求めても、あの人達は私達を、壊れない位優しい愛しか返せないの。愛も愛し方も知らないから。それが分かっていても、貴女は愛を求めているだけ。それは仕方ないことよ。私達とあの人達は違うから。」

 

「私達とは違う…だから"彼女"は…」

 

私はその時、"彼女"を思い出し理解した。私と彼が、本当に理解し合えない事を。

 

「…なら、変えてみせます。直毅の心を。」

 

私はそう覚悟を決めて優子さんに告げ、彼女は1度驚き、優しく笑ってみせた。

 

「私も、そうなる事を願うわ。」

 

彼を愛するのには相当な覚悟がいる。だだ好きだなんて気持ちだけでは足りない。もしそうなら壊れてしまう。自分の心が。

 

私は冷たい紅茶を飲み干して席を立ち、リビングを後にした。

 

「支える人に変える人。直毅はどっちを選ぶかしら。それとも…」

 

麗華が去った後、優子はそう呟いた。

 

 

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