※この作品はR-18です。

Magic Life   作:弩素人

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Gan boys and Blade girls

立体駐車場には銃声と、その音にかき消され薬莢が地面を叩く美しい音が響いていた。

 

「Jeans Fuckin' Christ!!」

 

いや、正確に言えば直毅の罵声も響いていた。銃弾が奏でる二重奏を汚す雑音でしかないが、彼の目に映る光景の所為とすれば、それも仕方ないことだろう。

 

直毅を襲うメティスの左手に握られたショットガンは、銃弾ではなく衝撃波を放っていた。非殺傷武器と言えば聞こえはいいが、その衝撃波の威力は車を吹き飛ばすほどの威力である。その為、彼のいる階では車が軽々と横転する光景があった。

 

衝撃波を受け、直毅はワゴン車のドアに叩きつけられる。ドアが凹むほどの衝撃に顔を歪める直毅に、容赦無くメティスはスパークするロッドを持ち振りかざし、直毅は間一髪魔法石の剣で受け止め眼前に迫るロッドから顔を逸らす。メティスは動けない直毅の腹に強烈な蹴りを入れ、水泳のターンの様に空中で回転し、蹴られた直毅は車ごと壁際まで吹き飛ばされ、ドアは大きくひしゃげた。

 

「ア゛ァ゛ッ…ゴホッ…」

 

その衝撃に声を漏らして咳き込みながらも、直毅はドアにめり込んだ身体を引き剥がし銃を構える。

 

(厄介だな…あの"空気砲")

 

着地したメティスの持つ銀色のショットガン。何よりその銃の利点は、衝撃波が"不可視"である点である。人間が認識能力を視覚情報に頼っている為に、見えないというのは大きな恐怖となる。またその衝撃波の威力は、彼のよく使う"物体と自分の位置を入れ替える"という戦術を封じていた。

 

「さぁて、どうすっかな…」

 

圧倒的に不利な状況。だが、いや当然と言うべきか、東條 直毅という青年はこの状況を楽しんでいる。東條 雄治同様、戦闘狂の面を持つ彼は、メティスに向け銃爪を引いた。

 

ーーーーー

ーーー

ー

 

直毅とメティスが闘う下の階は、文字通り戦場と化していた。

 

爆発と銃声が響き、雄治とアリスは絶え間無く銃爪を引き続ける。壁や床に当たる銃弾がコンクリートを削り、アリスの振るうブレードが車体を切り裂く。M4でブレードを受け止めると銃身に亀裂が走り、雄治は銃を投げ捨て脇のホルスターからデザートイーグルとS&W M500を引き抜く。ほぼ同時に2丁の銃爪を引き、アリスが障壁を貼り身構える。本来ならあらぬ方向へ弾かれる2つの銃弾は、障壁にぶつかりアリスを"仰け反らせた"。

 

「どうやら効くみたいだな。えぇ?人形さんよ。」

 

雄治はクルクルと銃を回し笑いながらアリスを見据え、アリスは体勢を立て直す。

 

「障壁減衰、回避行動を優先。」

 

雄治の持つ2つの銃を警戒し、アリスは距離をとり高速で空中を移動し。しかし彼は背後に回った彼女に、左手に握られたデザートイーグルを振り向かずに向け銃爪を引き、再び彼女を仰け反らせる。

 

「運がいいな俺は。"狙わなくても当たっちまった"。」

 

わざとらしくデザートイーグルの銃口に息を吐き、雄治は悠々と振り返ってアリスを見る。そんな彼の様子を、N.E.T社に居る者達は、ある者は憎らしげに、ある者は畏敬の目で観ていた。

 

「"銀の弾丸"…初めて見ました。」

 

エニエスが食い入る様にモニターを観る隣で、バーンズは腕組みし得意げに話す。

 

「ジョーにしか使えない魔法の弾丸だ。まぁそれ以上に、ジョーの動体視力や運動能力の方が凄いけどな。」

 

銀は古来から魔を祓う金属として知られている。魔術師にとって絶対的な脅威であるこの金属で作られた弾丸。だがその希少性上大量生産出来ないこと以前に、この金属には奇妙な性質があった。魔を祓うという性質が祟り、魔力を持つモノに影響を与えるのだ。例えば、銀のナイフや銀の弾丸を込めた銃で殺人を企てた者が実行寸前で卒倒したり、銃が暴発するなど、生命に危害を加えるとなると、この金属は意志があるかのように作用するのだ。伝承としての意味を引用した銀の弾など無い(No Silver Bullet)という言葉が、その言葉通りに作用する。ある者を除いて。

 

「だが…どうして今の弾丸は障壁を突破しなかったんだ…?」

 

バーンズはふと疑問に気がつき、アリスに向かっていく雄治の姿を観ながら考える。

 

(ジョー、一体何を考えてるんだ…)

 

彼の疑問を他所に、雄治は笑みを浮かべたまま後退するアリスに向かっていき、高速で回避行動をとる彼女の障壁に確実に銃弾を当てていく。障壁に亀裂が走り、雄治は弾切れになったM500をホルスターにしまい、腰から銀色に輝くのナイフを引き抜いてアリスに斬りかかった。

 

「防御シールドは剥がれたか?」

 

その一撃で障壁はガラスの様に割れ、雄治はナイフをしまいデザートイーグルのマガジンとM500の弾を込め始める。

 

「障壁用ジェネレーター、オーバーヒート。」

 

「さぁ、逃げ回ってちゃ勝てないぜ?攻めてこないと手足をもがれるぞ、人形さんよ。」

 

ケタケタと笑いながら雄治は銃を構え、アリスは両腕からブレードを、背中からはブースターを展開して身構える。

 

「近接戦闘に移行します。」

 

「その意気だ。直毅を蜂の巣にしたんだ、この程度じゃ終わらないだろうな!」

 

デザートイーグルをしまい、左手にナイフを握った雄治は突っ込んでくるアリスに向かっていった。

 

ーーーーー

ーーー

ー

 

「クソッタレめ…近づけやしねぇ…」

 

転げ回りながら衝撃波を避け、直毅は柱の影に身を潜める。P90の弾は尽き、腰のホルスターからM29を抜き肩で息をする。一方のメティスは距離を詰めることなく一条の側で直毅を警戒していた。

 

「お怪我はありませんか?博士。」

 

「あぁ、大丈夫だ。」

 

再び感情の無くなった声で尋ねらた一条は、柱に隠れる直毅を見て考える。

 

(やはり、彼には無理があったか…)

 

彼の目に映る限り、直毅に勝ち目があるようには見えない。正面きってメティスを相手にしなければ、少なからず直毅に勝ち目はある。だが一条自身が頼んだ条件が彼を苦しめている状況に、一条は良心を痛めていた。

 

「直毅君!武器を捨てて投降してくれ!君に勝ち目が無いのは俺が1番よく知ってる!」

 

駐車場に一条の声が木霊する。直毅はその声にわざと声を荒げて答えた。

 

「ふざけんじゃねぇ!俺は諦めが悪いんだ、誰が人形如きに負けるかよ!」

 

それは一条に対する罵声には、諦めるなという思いが乗せられている。M29の銃弾を1発取り出し、強く握り締め元に戻し、やけくそ気味に銃爪を引く。一条の頭上の天井に当たった弾は彼の背後に落ち、直毅は魔法石を1本引き抜きナイフに変え、自分の胸に手を当てて一条の背後に転移し、彼の首元にナイフを当てメティスに向け銃を向ける。

 

「動くなよ…"キレたら"一巻の終わりだからな…」

 

直毅を睨み付けて身構えるメティスから、直毅は一条を連れ少しずつ離れていく。下の階で雄治と斬り合っていたアリスは突如として雄治から離れると、全速力で上の階に飛んでいき、目の色を変えて直毅の背中に斬りかかった。

 

「博士を、離せ!」

 

(殺気!)

 

一条を突き飛ばして振り返り、間一髪ブレードをナイフで受け止める。怒りに満ち溢れたアリスの瞳を見た直毅は、必死に彼女を押し返した。

 

「やっぱり、まるっきりターミネーターってわけじゃなさそうだ。」

 

ナイフを握る左手を引き、銃を構える右手の手首の下にクロスさせ、直毅はアリスと対峙する。殺気をそのままにブレードを構える彼女と背後にいるメティスを警戒する直毅に、一条はもう1度声を上げた。

 

「直毅君、武器を捨ててくれ。俺が悪かったんだ。君達に無理難題を押し付けて…」

 

「そうだな…諦めた方が無難だな、こんな奴ら相手にしてたら命が幾らあっても足りねぇ。」

 

駐車場に直毅の声が響く。降参の意思を示すのか、彼は両手をゆっくりと上げる。

 

「けどな、"少女2人"も救えないほど、俺はまだ落ちぶれちゃいないんだよ!」

 

ナイフを剣に変え、直毅は両手を広げ、アリスに剣をメティスと一条に銃を向ける。一条の目を真っ直ぐに見て、彼は静かに呟く。

 

「1度願ったんだ、どれだけ強欲な願いでも願い続けろ。Greed,for lack of better word, is good(言葉は悪いかもしれないが、強欲は善だ。)」

 

その言葉をエンジン音がかき消し、雄治が灰色のオープンカーに乗って彼らのいる場所に突っ込んでいく。メティスが一条に手を伸ばすより早く彼を掴んだ直毅は、突っ込んでくるオープンカーの後部座席に飛び乗った。

 

「ジャストタイミングだぜ、親父!」

 

「クラッパーボードの音がしたからな!」

 

互いに笑みを見せ、直毅は後ろから猛然と飛んでくるアリスとメティスにM29を向けて銃爪を引き、弾切れするなりホルスターに素早く銃を収めて左腕を引き抜いてウィンチェスターに変えてスピンコックして銃爪を引き、弾が切れれば別の銃に変え絶え間無く銃弾を浴びせる。雄治は車体を滑らせながら屋上へとひた走り、アリスとメティスは一条を人質に取られ迂闊に手が出せないでいた。

 

「彼奴らの弱点は分かったか⁈直毅!」

 

「あぁ!俺の考えが正しけりゃな!!」

 

座席の下に押し込まれた一条はその言葉に驚き、身体を上げて直毅に叫んだ。

 

「本当に2人を救えるのか⁈」

 

「多分な!それにはアンタの覚悟が要る!"命を賭ける覚悟"がな!それがアンタに有るか⁈」

 

銃爪を引き続ける直毅は1度一条を見て尋ね、彼は決意を固めて直毅の目を見て答えた。

 

「あぁ、勿論だ!」

 

その言葉に直毅は小さく笑い、彼らを乗せた車は屋上に辿り着き、だだっ広い屋上の中心に止まると、直毅は一条を連れ車を降りる。

 

「動くな、大事な博士を失いたくないならな。」

 

雄治と共に一条に銃を向け、直毅はアリスとメティスを牽制する。最早彼女達は感情のない瞳をせず、メティスは心配そうに一条を、アリスは怒りを込めて直毅達を睨み付けている。

 

直毅は左腕を元に戻し、M29と魔法石を1本引き抜き前に出ると、魔法石を銃弾に変え腕に擦り付けてシリンダーを回した。

 

「さて、このまま人質を殺して俺達の勝ちってのもありだが、それじゃあつまらない。"感情のある"君達を倒してこそだ。なぁ?親父。」

 

「あぁ、まだ楽しみ足りないからな。でもどうやって感情を引き出すんだ?」

 

戯けた口調で直毅に尋ねる雄治。直毅はわざとらしく撃鉄を降ろすと、振り返って一条に銃口を向けた。

 

「こうするのさ。」

 

直毅は躊躇いなく銃爪を引き、放たれた銃弾が一条に命中すると、彼は苦痛にくぐもった声を上げ、メティスとアリスの悲鳴が木霊した。

 

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