悲鳴と銃声が混じり、冷たい地面に崩れ落ちる一条。それを見たメティスはガックリと膝を地面に付き、アリスはワナワナと拳を震わせ、ブレードを展開し突っ込もうとする。
「おっと、悲劇のご対面は俺達を倒してからだ。」
雄治がアリスの足元に銃口を向け銃爪を引き、放たれた銃弾が地面に当たり彼女の動きを止める。ゆっくりとポケットから煙草を取り出し口に咥えて火をつけると、深々と紫煙を吐き出した。
「安心しな。たとえ俺達が倒せなくても、親父さんとは逢える。石碑に"Les Misérables(哀れな人々)"って刻んでやるよ。」
咥え煙草のまま直毅の隣に向かい、雄治は居ても立っても居られない様子で2丁の拳銃を握る。
「どうだ?キマってたか?直毅。」
「あぁ、"最悪"にキマってるよ。親父。」
M29に弾を込めながら直毅は呆れ顔で答え、泣き崩れているメティスを見て"役"に成りきる。
「何だ、泣いてるのか?んなことあるわけ無いよな?何てったって機械なんだから。泣く機能があったとしても、"本当の涙"は流せやしないよな!」
直毅の言葉にメティスはキッと彼を睨み付け、立ち上がり銀色のショットガンとロッドを展開する。
「いいね、その目だ。そそられる。壊す前にどんな声で"鳴く"のか聞いてみたいからな。」
「そいつはいい考えだ直毅。人形なんてそうそう味わえないからな。どっちを取るんだ?白か?黒か?」
「"白く汚せる"のは黒だ。黒にするさ。」
「なら俺は白だ。"染め易いし、汚し易い"からな。あぁ楽しみだ。早くおっ始めようぜ、直毅。」
「せっかちなのも早いのも嫌われるぜ?親父。まぁ、奴さん達も待ち切れないみたいだ。」
魔法石を2本引き抜き剣に変え銃をホルスターに収め、直毅はアリスに、雄治はメティスに向かって走り出す。直毅とアリスは互いの剣をぶつけ合い、メティスは近付いて来た雄治に向けロッドを力強く振り下ろし、雄治は腕をクロスさせ彼女の手首の辺りを受け止め、腹部に突きつけられるショットガンを避け、腕一本で彼女を投げ飛ばした。
ギリギリと音を立てる剣。縦に振られたブレードを横一文字に2本の剣を構え受け止める。アリスは瞳を怒りに染めブレードを押し込んでいく。わざと倒れて巴投げの様に直毅はアリスを宙に投げ、右手の剣を投げ捨て銃を抜き銃爪を引く。アリスは雄治の前例を警戒してか、銃弾をブレードで切り落とし駆け抜けざまに斬りかかり、身を投げ出し剣で受け止めて攻撃を躱す直毅は、再び銃を収め魔法石を引き抜くと、1度握ってから彼女に向け投げつけた。
「ドッグファイトといくか…」
アリスの後方に魔法石が行き、直毅は身構えて自分の胸に触れ上空に転移し素早く銃を構え銃爪を引く。振り向きざまに銃弾をブレードで弾き直毅に斬りかかるアリス。だが直毅は魔法石を上に投げ再び転移する。後を追うアリスをあしらうが如く、直毅は次々に魔法石を投げては転移し、アリスと空中戦を繰り広げる。
「やるなぁ!直毅のやつも。おっと!」
メティスのロッドを避けながら、雄治は直毅の姿を見て笑みを浮かべる。余裕綽々な彼の表情に怒りを覚えるメティスはショットガンを彼の腹部に向け衝撃波で雄治を吹き飛ばす。
「おぉ!面白いショットガンだな!」
吹き飛ばされた雄治は笑みを絶やさず、一回転しながら2丁の銃爪を引き、障壁に当たりメティスは仰け反って驚愕する。
「障壁減衰値、予想値を大幅にオーバー。回避行動を…」
一瞬彼女の瞳から感情が無くなる。しかし倒れる一条の姿を見て、最良の選択肢を彼女は無視し、瞳に再び感情を取り戻して真っ直ぐ雄治に向かって行く。
「ほぉ、逃げないで向かってくるか。いい子だ!」
紫煙をくゆらせ、雄治は向かって来る彼女を迎え撃つ。銃弾に擦りながらも彼女は近付き、感情を込めてロッドを振りかざした。
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ーーー
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「魔法石が幾つあっても足りないなこりゃ。」
落下しては上空に転移を繰り返し、アリスと空中戦をする直毅は落下しながらM29に弾を込める。ダミーとして1度の転移に数本の魔法石を投げるようにした為、マントにしまわれた魔法石は次々と無くなっていった。
(さて、何処にあるんだ?"排気ダクト"は…)
向かってくるアリスを見ながら次の魔法石を引き抜き投げようとする直毅に、彼女は急加速して魔法石を投げるより早く彼を横殴りに蹴り飛ばし、駐車場の3階に吹き飛ばす。不意を突かれた直毅は3階の中央辺りまで水を切る石の様に跳ねるネックレスが展開した障壁が彼を守ったが、衝撃に耐えかねて動きが止まると同時に宝石は砕け散った。
ふらつきながら直毅は立ち上がり頭を叩く。向かってくるアリスの姿がボヤけて二重三重に見えるなか、偶然にも彼が投げ捨てたM82が側に転がっていた。
(こんなの…見えないのと同じだろ…)
銃を取りスコープを覗き、弾倉が空になるまで銃爪を引く直毅。銃弾は当たることなく、アリスは直毅との距離を詰めていく。速度を落とさぬまま直毅に膝をぶつけ、銃を盾にし受け止めた彼は後方に吹き飛ばされ、銃は2つに折れた。
「ハッハッ…流石に挑発し過ぎたかね…」
ヨロヨロと立ち上がった直毅はゆっくりと近付いて来るアリスの姿を…ボヤけてハッキリとは見えないが…その姿を見て苦笑し銃を構える。当たらないことなど重々承知の上で。
(俺の予想が正しけりゃ"心"は胸の中にある…そのリミッターだけを撃ち抜けば…)
感情を後付けの抑制装置で抑え込んでいると考えた直毅。だが正確な位置も、そもそもそんなものがあるかも解らないのにも関わらず彼はその可能性に賭ける。
「1発勝負だ…!」
直毅はマントを投げ、互いの姿が隠される。眼を閉じて息を吐く。心臓の音と走り出したアリスの足音を暗闇の中で聞き、直毅は眼を見開き銃爪を引いた。
ーーーーー
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「おおっと危ねぇ!」
高速で飛んでくる"コンクリート片"を躱し、雄治は車の陰に身を隠して紫煙を吐き出す。次々に襲いかかるコンクリート片がガンガンと音を立て車体にぶつかり、雄治は再び別の車へと向かう。
「早くしてくれよ直毅。いつまでも持ち堪えられねぇからな…」
M500の空薬莢を出し弾を込めながら雄治は呟き、ショットガンを腰だめに構えるメティスの姿を伺う。
彼女はコンクリートの床に爪先を突き立て、"破片を蹴り上げ"ショットガンの衝撃波で吹き飛ばした。正しく散弾の様に飛んでくる破片は、散弾よりも破壊力があると言っていい。非殺傷目的の武器を殺傷武器にして雄治を襲うメティスの眼には怒りが溢れていた。車を衝撃波で飛ばし雄治の隠れる車にぶつけ、飛び出した彼に向け破片の散弾を撃ち込む。破片の一部が雄治の左肩に当たり、その衝撃で倒れ込んだ。
「なんとも…壊しちゃいけねぇってのは中々辛い。」
左肩を気にしながら立ち上がり、雄治はジリジリと近づいて来るメティスを見ながら苦笑し下がっていく。メティスは再びコンクリートを蹴り上げてショットガンで撃ち出し、雄治は腕をクロスさせ正面からコンクリート片を身体に受け止める。手足からは血が滲み、雄治は身体を震わせ痛みを堪えた。
「参ったなぁ…これじゃ俺の血か君の血か分からなくなっちまう。少女の血は最高に美味いんだがな。特に、"処女血"は格別なんだ。」
笑いながらそう呟く雄治に、メティスは地面を踏みつけてコンクリートを細く砕いてから蹴り上げて撃ち出す。雄治を痛め付ける為に砕かれたコンクリート片は雄治に次々と当たり、彼の服と皮膚を切り裂き血だらけにしていく。
「アァ、見た目によらずサディストだな…イイぜ、付き合ってやる。」
雄治は笑ったままでメティスを挑発し、彼女は怒りに任せてショットガンの銃爪を引き続ける。瞬く間にボロボロになり、雄治は遂に膝を折り肩で息をする。咥えた煙草を落とし、口元から血を流しなが、それでも彼は笑うのを止めず煙草を拾い紫煙を吐き出した。
「…どうしたよ?弾切れか?」
フラつきながらも立ち上がり、雄治はデザートイーグルを持った左手で手招きする。メティスはスパークを放つロッドを離して衝撃波で撃ち出す。矢のように放たれたロッドは雄治の胸に当たり、その衝撃と身体中に流された電撃で崩れ落ちた。
ようやく倒れた彼の姿にメティスは大きく息を吐き出し、苦悶の表情で倒れている一条の元へ向かおうと振り返る。しかし先にその眼に映ったのは、マントを羽織り歩いてくる直毅の姿であった。
「そんな…まさかアリスが、負けたの…?」
「あぁ、そのまさかだ。そら、その証拠だ。」
直毅は右手に握っていた"モノ"をメティスに向け投げ付け、転がってきたそれを見て彼女は絶叫する。
ボールの様に転がってきたのは、"アリスの頭"だった。
「流石は機械だったよ。頭引っこ抜かれるってのに悲鳴1つ上げなかった。"味も良かったしな"。」
「嘘……嘘………アリス……嫌………そんなの……」
アリスの頭を抱き締め、メティスは泣きながらうわ言の様に呟き続ける。直毅は腰からM29を引き抜き片手で構える。
「俺を殺したいだろ。"父親"も"妹"も奪った俺を。それとも死にたいか。好きにするといい。"機械らしく"俺を殺すか、"人間らしく"死ぬか。」
撃鉄を降ろし、直毅は冷たく言葉を吐き出す。メティスはアリスの頭をゆっくりと置き、直毅に飛び掛って馬乗りになり涙を流しながら両手で彼の首を絞める。
「…そうだ…それで……いい加減………この役も……君らを騙すのも…疲れた……」
ギチギチと音を立て首を絞められる直毅は全く抵抗せずメティスの眼を見つめる。その優しく、疲れ切った眼に見つめられた彼女は、一瞬力を緩める。騙されまいと頭を振り、首が折れるほど力を込めようとした刹那、1つの声が彼女を止めた。
「やめろメティス!彼を殺すんじゃない‼︎」
その声にメティスは顔を上げ声の主を見る。それは、"アリス"に肩を借りた一条の姿だった。
ーーーーー
ーーー
ー
「1発勝負だ…!」
放たれた銃弾はマントを貫きアリスの左胸に直撃し、胸に銃弾を受けたアリスは電源が切れたように崩れ落ちた。
「…成功したか…?」
銃を収め、直毅は倒れたアリスの元に向かう。しゃがんで彼女の顔を覗き込むと、身体が動かないのか、彼女はただ直毅を"感情のこもった"赤い眼で睨みつけた。
「お前は…お前だけは…」
「成功したみたいだな。動くなよ、今動けるようにしてやるから。」
アリスの左胸に食い込んだ銃弾を取り、銃弾の直径とほぼ同じ大きさで、壊れた小さなチップを引き抜いた。
「何を…」
「まさか、本当に当たるとはな。これが君の感情を抑え込んでた機械だ。動けるか?」
ゆっくりと起き上がったアリスは、警戒しながら直毅の人差し指と親指で摘まれたチップを見る。
「動けるみたいだな。そしたら悪いが顔をよく見せてくれ。まだ仕事が残ってるからな。」
「どうして…私を壊さない。」
「ん?ハナっから君らを"殺す"気なんてない。クライアントが無傷で無力化しろなんて無理難題言ってきたからな。」
「どういうことだ…?」
混乱するアリスを他所に、直毅はチップを握り潰して頭を掻く。
「顔を見せてくれりゃ答えてやる。だからじっとしててくれ。」
髪や眼、口、鼻等、細く彼女の顔を見ながら直毅は説明し始めた。
「その無理難題を言ってきたクライアントは君らを創った一条 護だ。何の間違いか俺達のターゲットになってたけどな。まぁ、大事な"娘"を手放したくない親の我が儘に付き合ったわけだ。それと、クライアントは死んじゃいないからな。殺しちゃ報酬が受け取れない。」
「博士が…私達を…」
「あぁ…よし、よく分かった。ゆっくり後から来てくれよ。クライアントも"空砲"を喰らって痛がってるだろうしな。」
アリスの顔を見終わり、直毅は立ち上がりマントを拾い上げ階段に向かおうとする。
「待ってくれ。」
「ん?歩けそうにないか?」
「いや…姉さん、メティスも救ってくれるのか?」
不安そうに尋ねたアリスに、直毅はマントを羽織りながら答える。
「あぁ、"姉貴"も救ってやる。それが依頼だからな。」
小さく笑いながら答え、直毅は階段に向かい左腕を引き抜きアリスの顔を思い出しながら彼女の頭に変え階段を登って行った。
ーーーーー
ーーー
ー
「博士⁈アリスも⁈」
驚いたメティスは首から手を離し、一条の元に駆け寄る。離された直毅は大きく息を吸い込んで咳き込んだ。
「博士、身体は…」
「かなり痛いが大丈夫だ。あの弾は空砲だったんだ。」
「空砲…でもアリス、胸に穴が…それに頭…」
「私も大丈夫。彼が助けてくれたから。」
混乱するメティスに、アリスはゆっくりと立ち上がり"アリスの頭"を右手で拾い上げる直毅の姿を見る。直毅はアリスの頭を左腕に変え元に戻した。
「偽物…でもどうして…」
「俺が頼んだんだ。メティスとアリスを救って欲しいって。」
「私とアリスを…?」
直毅は倒れたままの雄治の元に向かうと、頬を叩いて声をかける。
「終わったぜ親父。いつまでも寝てないで起きろ。」
「ん?そうか。いやーボロボロになっちまったな。」
なんともないように雄治は起き上がり、ボロボロになった服や傷付いた身体を見て苦笑した。
「よく分かったな直毅君。アリスに感情を抑制する装置があるのが。しかも、制御装置だけを破壊するなんて。どうして分かったんだ?」
「勘と偶然さ。確信は無かった。」
「フルトン魚雷で排気ダクトを狙うようなもんか。しっかし設計図無しで成功させるなんて、ちょっと都合が良すぎねぇか?直毅。」
雄治が新しい煙草を咥え直毅と肩を組んで尋ねると、直毅はアリスとメティスを見て小さく笑って答えた。
「いいだろう。きっと、"機械仕掛けの神様"が助けてくれたんだよ。」
「デウス・エクス・マキナか。まぁいいか、それで。俺達の演技に神が満足したならな。」
雄治は笑いながら紫煙を吐き出し、直毅は煙に少し咳き込む。
「そうだったんですか…そうしたら私達、お二人に酷い怪我を…」
「そうだ。幾ら博士を護衛する為とはいえ…」
傷付いた直毅と雄治の姿に、メティスとアリスは申し訳なさそうな声を上げる。しかし当の本人達は何ともない様子で答える。
「傷付くのは、俺達みたいなFUBAR(Fuck Up Beyond All Recognition,何から何までむちゃくちゃ)な奴らだけでいい。なぁ?親父。」
「あぁ。どっちかっていうと俺らはSNAFU(Situation Normal All Fucked Up,いつものように全てめちゃくちゃ)じゃないか?」
「まぁ、どっちにしても気にするなよ。謝るのは俺達の方だしな。演技とはいえ嫌な思いをさせた。」
「本当に演技かぁ?案外素なんじゃないグェ」
腹に肘を入れられカエルのような声を上げる雄治。直毅は大きく溜息を吐き、一条に寄り添う2人を見て笑ってみせる。
「馬鹿言ってないで、この状況を観てる糞野郎どもに言うことがあるだろう?親父。」
「そうだな。見えてるか?お偉いさん方。」
近くにあった車に付けられたカメラに近付き、雄治は手を振って喋り出す。
「安心しな。あんたらの命は俺がしっかり"脅かしといてやる"。それと、バディとエリー。後は頼んだぜ。」
そう言ってカメラを撃ち抜き雄治は銃をしまう。フラつきながら直毅は一条達の元に向かい、後から雄治も彼と肩を並べる。
「さて報酬だが、どうするよ直毅。」
「そうだな。本当は2人を貰う予定だったよな?」
「あぁ…約束だ。2人を、メティスとアリスを…」
直毅と雄治の言葉に、一条は名残惜しそうにアリスとメティスを見る。その眼を見たアリスとメティスは彼の腕を強く抱き締める。
「貰う予定だったが…一条さん、条件がある。」
「何だい、直毅君。」
「2人の"心"と"身体"に異常があると困る。本人達が異常を訴えたら検査して貰いたいな。無論何時でも。大きな"病気"や"怪我"は俺達は治せないからな。」
「どういうことだ?彼女達は…」
「それと、もし2人に大きな病気や怪我にあったら入院の用意もしてくれよ?"期間"はどれだけかかっても構わないから。」
「直毅君、君は2人を…」
「…大切な娘達だろ?なら親としての役目を果たせってことだ。嫌がる娘達が連れて行かれそうなら、何が何でも取り返せ。娘達が心から行きたいと言ったなら、笑顔で送ってやれ。」
一条を見て言葉を紡ぐ直毅に、彼は自分の顔を見上げる2人の顔を見つめてから、直毅を真っ直ぐに見た。
「…君は、2人を人間として見てくるか?」
「そうだな…アリスにメティスか。2人に1つ質問がある。」
直毅は2人に声をかけ、2人は真剣な面持ちの彼を見つめる。
「君達は、"自分を人間だと思うか?"」
その質問に、2人は互いの顔を見て小さく頷き、一条の腕を離し真っ直ぐに直毅を見て答えた。
「はい。私は一条博士の娘。そしてアリスの姉です。FXV-D12ではなく、博士が名付けたメティスという名の。」
「私も、姉さんと同じ。博士の娘でメティスの妹。FXV-A13じゃなくて、アリスという名の。たとえ私達の身体が人間と違っても、私達の心は人間。」
「なら、メティスにアリス。君達は人間だ。」
彼女達の答に、直毅は笑みを浮かべて言葉を返す。その言葉に一条と2人は眼を丸くした。
「君達が自分を人間だと思い、誰かが君達を人間だと思えば、君達は立派な人間だ。君達の父親が、2人を娘だと思い、君達が彼を父親だと思った時点で、君達はもう人間だ。なら俺の目の前に居る2人の女の子は人間に決まってるだろ。まだ2人の笑顔は見てないが、誰かの為に泣いたり怒ったり出来るんだ。人間じゃないと言われても信じないぜ、俺は。」
「…そうか。たとえそれが詭弁でも、信じよう。ありがとう、直毅君、雄治さん。」
再び一条の顔を見上げたメティスとアリスに、彼は笑顔で2人の頭を撫で、優しく背中を押した。
「行ってこい。メティス、アリス。何時でも帰って来ていいから。」
「はい。ありがとうございます。博士…いえ、お父様。」
「行ってきます。お父さん。」
メティスとアリスは初めて一条を父と呼んでから、2人揃って直毅の元に駆け寄り抱きついた。
「おっとと!勘弁してくれ2人共。フラフラだからな。」
フラつきながら2人を受け止め、直毅は悲鳴混じりに苦笑する。そんな彼らの姿を、雄治は一条の側に寄って紫煙をくゆらせながら小声で尋ねる。
「俺達の所に来ても構わないんだぜ?いいのか?」
「いいんだ。心からメティスとアリスを人間だと言ってくれたのは、彼が初めてだ。俺ですら、心の何処かで2人を機械として見ていた。それに…」
笑いあう3人の姿を見ながら、一条は満足げに呟く。
「2人が、あんな幸せそうに笑ってるんだ。」
娘達と息子の笑顔を見ながら、父親達は幸せを噛み締める。雄治は煙草を携帯灰皿にしまい、手を叩いて声を上げた。
「さてと!祝杯は朝食と一緒に挙げるか!新しい家族が増えた記念にな。なぁ?直毅。」
「あぁ。皆んなを起こさなきゃな。」
彼らは笑顔で駐車場を後にする。雄治と直毅に付けられた傷は、その幸せに比べば安いものだった。
ーーーーー
ーーー
ー
朝日が窓から差し込み、ユキはゆっくりと目を覚ます。
「お、起きたな。おはよう、ユキ。」
その声に彼女は起き上がり、ベッドの縁に座る直毅の姿を見て微笑み、彼の胸に抱きついた。
「おはよう、直毅。約束、守ってくれたのね。」
「あぁ、約束したからな。」
ユキの髪を撫で、直毅は彼女を抱き抱え部屋の扉に向かう。1階からは賑やかな声が聞こえている。アリスの姿を見た麗華をなだめたり、朝から酒に酔ってテンションの高いバーンズや雄治に絡まれたりと、休む暇のない彼ではあったが、その騒がしさすら心地良く感じていた。
家族が(ry 次回から当分ほのぼのさせたいと思います。