※この作品はR-18です。

Magic Life   作:弩素人

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物語にも終わりが見えてきました。溜め込んだ主人公達の過去をようやっと書けます。


終わりを告げる鐘

唯一の救いは、失ったのが彼女の"身体"だけだったことだろう。彼が彼女の最後を見届けた時、彼女の意識を左腕に内包し、その左腕で彼女の新しい身体を作製したのだから、彼がどれだけ彼女を思っていたのかが伺える。尤も、彼女を辛うじて救ったところで、彼が罪の意識に苛まれるのに変わりは無いのだが。

 

赤黒い血に染まり血溜まりの地面を殴っていた彼を、駆けつけた凛達が制する。彼は一目散に胸に穴の空いた彼女の亡骸の元に駆け寄り、左腕を引き抜き彼女をしっかりと見つめた。

 

「さようなら、"俺が初めて愛した人"」

 

そう呟いてから、彼は彼女の右手と自分の左腕を重ね合わせ目を閉じる。すると、彼女の亡骸が徐々に左腕に取り込まれ、左腕から身体が生えていく。ただ左腕が白い事を除いて彼女の身体は再生し、ゆっくりと胸が上下し始めた。

 

「……凛さん、春音をお願いします。今の俺じゃ、触れることも出来ないですから。」

 

血だらけの直毅は春音を残して丘を下る。凛は彼女を抱き抱え、彼女達は悲しげに歩く彼の背中を見つめ続ける。誰も言葉をかけることはしない。家の前まで戻ってきた彼の姿は、"左腕を失った時"に酷似していた。だからこそ、ベランダにいたユキが彼の姿を見るなり駆け出して、汚れるのも構わず抱きついたのだ。

 

彼女も何も尋ねない。ただ彼を抱き締め、冷たい身体に温もりを与えようとする。それだけを頼りに、彼は血を洗い流すため歩を進めた。

 

ーーーーー

ーーー

ー

 

次に目を覚ました時、目に映ったのは最後に見た彼の姿では無く、淡い橙色の電灯と、照らされた木の天井であった。

 

ゆっくりと起き上がって辺りを見回しても彼の姿は無い。居たのは白衣を着た長い髪の女性だった。

 

「目が覚めたのね。身体の調子はどう?」

 

「はい…大丈夫です。貴女は?」

 

「私は風瀬 凛。直毅の親戚よ。初めまして、春音さん。」

彼の名を聞いてボヤけた意識が晴れていく。彼はどうしたのか、どうして私はまだ生きているのだろうか。

「あの、先輩…直毅さんは何処に居るんですか?」

 

「直毅なら自分の部屋に居るでしょうね。大丈夫よ、"怪我は"してないわ。でも、まずは貴女に起こった事を話しておかないと。」

 

煙草を咥え、彼女は真っ直ぐ私を見つめる。

 

「貴女の両親がどうなったかは、貴女自身も大体分かってるみたいね。」

 

「…………はい。私と、同じ顔の誰かが……」

 

「そう。貴女と瓜二つの誰か…いえ、"何か"と言うべきね。もうこの世には居ないから、何だったのかは分からないけれど。何にせよ、それは貴女の両親を殺して、貴女の中に取り付いていたの。」

 

淡々と続ける彼女の言葉の中に、微かに怒りが感じられる。

 

「それは貴女の身体を突き破って貴女の代わりになった。直毅の目の前で。そして彼の手で消し去られた。貴女の身体が無事なのも彼のおかげよ。左腕を見てみて。」

 

言われるがまま左腕を見る。肩の辺りから真っ白い腕がそこにはあった。

 

「これ…もしかして先輩の…」

 

「えぇ。直毅は自分の左腕…いえ、義腕を使って貴女の身体を再構築した。その左腕が人間で出来ていたからこそ出来た芸当ね。」

 

「先輩、私の為に大切な左腕を…」

 

そっと左腕を撫でる。堪らず、私はベッドから出て彼の元に向かおうとする。

 

「待ちなさい。まだ直毅には会わないで頂戴。」

 

「え…?どうしてですか?先輩は無事なんですよね?なら…」

 

「確かに外傷は無いわ。でもそれ以上に心が傷付いてる。直毅にとって、貴女は1度殺されている。それも貴女に瓜二つの何かによって。"彼は貴女は救えていない"。その意識が彼を蝕んでる。でも一方で、その意識が彼を支えているの。救えなかった自分への怒りが。」

 

煙草に火をつけ、彼女は深々と煙を吐き出す。

 

「ごめんなさい。貴女が直毅に会いたいのは十分分かっているつもりだけれど、私には貴女が、"直毅を苦しめる為に生まれてきたような気がしてならない"。悪意ある誰かの手によって。」

 

私から目を逸らし、彼女は虚空を見つめる。その瞳は彼によく似ている。全てを見通している様な、全てから目を背けている様な瞳が。

 

「…私に、貴女を止める権利なんて無いのにね。直毅…"あの子"に愛を教えてくれたのは貴女なのに。」

 

その声色と瞳は、深く彼を想っていなければ出来ないものだった。

 

「でも、あの子が愛の意味を理解することは決してない。それが"私達の"宿命だから。」

 

「そんなことありません。先輩は、確かに私を…」

 

「いいえ、あの子は愛を知らないわ。人が愛を知る為の条件を満たしていないのだから。」

 

「愛を、知る為の条件…?」

 

「そう。"人と人との愛で生を受けなければ、生まれた者に愛が宿ることはない"。あの子は、愛から生まれた子じゃない。強いて言えば、人の飽くなき欲望から、あの子は生まれた。」

 

「そんな……先輩は…一体どんな人なんですか?先輩の両親は…」

 

知りたくないと思いながら、私の口は勝手に動く。彼女は煙草を揉み消して、ゆっくりと口を開いた。

 

「あの子の名前はAngel's son."私"(Milky way)と雄治(Julius)"…東條 雄治の息子よ。」

 

 

 

 

 




次の作品の準備も進めながら、ゆっくり終わらせていきます。次は毛色を変えてSF物になりそうです。
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