鈍感野郎じゃありませんよ、この主人公君は。
新たな命と新たな火種
「簡単に言うと、今の直毅の身体には、何にでも繋がる魔力回路のプラグがあるのよ。」
「その説明でもよく分からないですよ、風瀬さん。」
凛の工房で身体を診察もらっていた直毅は、上着を着ながら答えた。
ジョンとの戦いを終え自宅に戻り、何事も無かったかのように食事をとった彼だったが、 物に触れる度に奇妙な感覚を感じていたのだ。
「確かに、手で触れた物と繋がったような感覚はありますけど。」
「そう。魔力はあらゆる物に含まれているし、魔力回路も同じく構築されている。その魔力回路に接続出来るってこと。つまり、物に触れれば魔術も使えるようになったのよ、今の直毅は。」
古い木の机の上に乱雑に置かれた魔術書、得体の知れない薬ビンや本棚に囲まれた凛は、年季の入った椅子に座りながら煙草を吸っている。
「そう言われても、実感は湧きませんけどね。」
「なら試してみる?これで何か魔術を使ってみなさい。」
凛はポケットから、円柱に形成された虹色に輝く魔法石を直毅に向けて投げる。
それを受け取った直毅は、ジョンがM1911A1をカルカノM1938に変化させていたのを思い出した。
体内に魔力が流れるのを感じ、目を閉じてナイフをイメージすると、光と共に魔法石がナイフに変化した。
「へぇ。変質魔術なんて、珍しい魔術を知ってるのね。」
直毅が魔法石をナイフに変化させたのを見た凛は、目を丸くして驚いていた。
「変質魔術は物体を他の物体に変化させる魔術よ。直毅の今の状態を考えたら、使いやすい魔術ね。」
直毅は2、3度ナイフを軽く振り元の形をイメージするが、ナイフは元の魔法石に戻ることなく粉々に砕けた。
「変質魔術は変化させた物体の魔力を使い切ると自壊するわ。変化させる物体より余りにも質量の大きい物体には変化させられないのも欠点ね。それに変化した物体の質は術者のイメージの精密さに左右されるわ。って、どうしたのよ直毅。溜息なんて吐いて。」
凛の説明を聞いていた直毅だったが、彼は大きな溜息を吐いたのだ。
「昔、いや今でも、魔術の使えない劣等生と言われてきたのを思い出したんですよ。」
彼は幼少の頃からその体質の所為で、好奇や侮蔑の目で見られてきた。その為友人を作ることはなく、唯一彼と普通に、根気よく付き合った裕也と茜だけが彼にとっての親友となった。
直毅の言葉を聞いた凛は煙草の火を消し、新しい煙草を取り出す。
「直毅は元々十分力がある。その力は何かの為に使う事で始めて意味を成してきたんでしょうね。魔術が使えるようになっても、今まで通りの直毅でいればいいんじゃないの?」
「そうですね、俺は俺か。ありがとうございました、風瀬さん。」
直毅はその言葉に笑みを浮かべ、礼を言ってから工房を後にした。
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その夜、ジョンは約束通り、ベッドの上でベルに身体を求められていた。
彼女の、文字通り盛りのついた猫の様に快感を貪る姿と、彼の快感を与え続ける姿は動物的と言っていい。
やがてベルは糸が切れた様にジョンの胸に倒れこみ肩で息をして、満足そうに彼の顔を見つめる。
「凄く良かったよ♪ご主人。」
「そうかい、俺は疲れたよ。」
「もう、気持ちよくなかったの?ご主人。」
豊満な胸をグニグニと押し付けながら彼女が頬を膨らませると、彼は溜息を吐きながら彼女の猫耳を撫でる。
「別に悪かった訳じゃない。お前が満たされたならそれでいいさ。さぁ、満足したなら今日はこの辺りで寝よう。さっきも言った通り、もう疲れた。ただでさえ身体中穴だらけにされたからな。」
彼の言葉に少し名残惜しそうにしたベルであったが、やがて彼の胸の上で幸せそうな寝息を立て始めた。
「…求められて、与えて…そう単純に生きられるのか…俺なんかに。」
月明りだけが入る部屋の中、彼はそう呟いた。
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時に、学校にはある種の思いを伝えるのによく使われる場所が幾つか存在する。
屋上もその1つであり、大抵、その種の思いというのは好意でありまた、伝えられる側は胸躍らせるものである。
たが、この男の場合、その例には当てはまらないらしい。
「お、直毅。お客様だぜ。」
昼休み、屋上で昼食のパンを食べていた裕也は、フェンス越しに景色を見ていた直毅に声をかける。
直毅が振り返ると、1人の女子生徒が少し震えながら立っていた。
「俺に何か御用で?お嬢さん。」
誰が見ても、育ちの良い令嬢であることが分かる、まだ幼さの残る深い栗色のツインテールの髪をした女子生徒は、直毅の顔を見て頬を赤く染めている。
その顔を見た直毅は内心溜息を吐いていたが、表情は変えること無く目の前の女子生徒を見る。
「あのっ、私、1年A組の柊 奏といいます。その、良ければ、私と…」
彼女は顔を真っ赤にして、途切れ途切れになりながらも言葉を続けた。
「私と…その…付き合って、くれませんか…?」
ありったけの勇気を振り絞った告白だっただろう、女子生徒は目に涙を溜めている。
直毅はバツが悪そうな顔をしながら頭を掻くと、溜息交じりに答えた。
「俺みたいなロクデナシの劣等生なんて止めときな、お嬢さん。他に良い奴は幾らでもいる。」
「そんな。私、直毅さんのことが…」
「解らなかったならハッキリ言ってやる。俺はお嬢さんに興味が無いって言ったんだ。」
冷たい言葉を叩きつけられた彼女は、顔を手で覆って泣きながら走り去った。
「これで25人目だぜ直毅。完全試合まで後2人だ。」
裕也が笑いを堪えながら言うと、直毅は呆れ顔で答える。
「まだやってるのかその賭け。いい加減にしたらどうなんだ、全く。」
東條 直毅は初等科から今の高等科2年まで、25人の女子に告白され、全て断っている。
ある者は物珍しさから、ある者は自らへの過大評価から、またある者は本心から彼に告白し、断られてきた。
1種の賭けの対象となり、27人連続で断るか。というものになっていった。賭け率は恐ろしい事に、10:1で付き合わない方が大穴である。
「しかし、毎度冷たい断り方だよな。さっきの子だって泣きながら帰って行ったし。今回の子、中々良いと思ったんだけどな。」
「ならお前が狙えばいいだろ。今から慰めてやりゃ、案外簡単に落ちるかもよ?」
「冗談。しかし不思議だな、なんでそんなに告白されるかねぇ?」
直毅の言葉に裕也は笑いながら手を振って答える。それから程なくして屋上に茜が訪れ2人を見つけた。
「いたいた。直毅、また告白されたんでしょ?その子、泣いてたわよ?」
「なんだよ、今から追いかけて引き止めろってか?それこそ俺の柄じゃないこと位、2人は解ってるだろうに。」
「そりゃまぁな。」「それはね。」
直毅の問いかけに、「当然。」と言わんばかりの回答をする2人。
「だろ?」と言い返す直毅の顔は、家族にしか見せない自然な表情だ。
やがて3人は話し合いながら屋上を後にする。
この後、歯車が回り始めることを直毅はまだ知らない。
25人にも告白されて全員フってるんだから男女構わず敵だらけだと思ったら、超マンモス学園だからね、大丈夫でしょ(適当)
次回は戦闘導入編です。
それではまた。