※この作品はR-18です。

嘘つきな僕らの世界   作:鯖になりたい人

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鬱展開注意!


第二話「あなたのことを知ってます」

1人だと思っていたはずだった。私のことを知らない世界は寂しい。一人だと思っていた私を救ったのは日本と呼ばれる島国のおじいちゃんでした。人の子として生まれた私には親が存在せず兄の存在もなく天涯孤独の身でした。そんな、私を拾ったのが本田菊、雨が降る梅雨の季節。

いつも私に関連があるのは雨か梅雨でした。私がいた世界では、物心も自分がどういう存在なのかも知ったのが雨、元義兄と友達という関係になったのも雨、…私の赤い血でまみれた兄の姿も梅雨の日の夕方。

何がなんでも神様は私を雨と関連させるのがお好みのようだ。

路頭に迷い地面と人生を語り合っている私のそばを誰かが通りかかった。赤い色の番傘に着物を付けたその人の顔を良く知っていた。

大分前くらい兄が友達を作ろうとしてことごとく失敗し最終的に選んだ人が日本さん。日本さんもイギリスと仲良くしたかったらしくて二人はとても仲良くなった。妹としても友達としても私も、同じくらい嬉しくて喜ばしいことだった。そんな日本さん、もとい菊さんは私にも優しくしてくれた。年の離れた兄とも言えず母親みたいでとても楽しかった。そんな彼はこの世界と私のいた世界とは関係のない彼であり、それでも彼は横目で私を見て心配した顔を向けた。

「どうなさいました!?」

あわあわ、と焦る彼に返事もできる気力もなく人とはこんなにもろい生き物なのかと再確認した。瞬きを繰り返すうちに菊さんの顔が良く見えなくって意識を失った。

「しっかり…してくだ…!!!」

遠く離れたように聞こえる声はこだましながら消えた。

 

菊side

 

アメリカさんへとストックしていた食品が無くなってしまったので買い足しついでにいつも通らない道を通った。なぜそこを通ったのか自分でもわからない、ただこちらの道から呼ばれた気がしたのだ。なんだか懐かしいような思いと切ない何かの感情が心を押しつぶそうとしている気がする。なんだか変だと思いながらも道を進むと、小柄な少女が倒れているのだ。素通りするわけにも行かず、一応声をかけようとしたところ開いた目が私を見た。綺麗な緑の瞳には濁ることのない純粋な夕日が見えた。雨が降っているのにもかかわらず夕日が見えたのだ。その瞳にどうしてか声をかけずにはいられなかった。

「どうなさいました!?」

焦りながら心配した声に自分自身も驚く。彼女は瞳をうるませそのまま意識を失ってしまったのか目を伏せた。このままでは危ない、彼女を抱き起こし家へと急いだ。何故だか彼女には懐かしい想いがよぎる。なんだろうか、本当に変だ。

 

彼女side

 

夕日の世界はいつも残酷なわたし達を映し出す。赤い色に染まった彼の手は夕日なのか私の血なのかも分からないほど赤黒く染まっていた。この悪夢ほど早く目を覚ましたいと思えば思うほど覚めなかった。アーサーは涙をこぼしながら私に謝罪の言葉を述べる。それはいつもの夢と同じ記憶をたどる世界。ただ、1つ異変があった。ここでいつもアーサーはずっと涙だけをこぼし両手で拭い去るだけだったのに、そこで一言セリフが紛れたのだ。

「ほら、また笑ってくれよ。…なあ」

アーサーは涙を堪えながら私に微笑みかけたのだ。私の都合のいい夢に改変しようとしている、という結論に落ち着き私は目を閉じる。夢の中でも目を閉じるなんて不思議なことだがこの記憶のループは数えられないくらい繰り返されているからもう、不思議だとも思わない。淡い夕日の空と共に赤黒く染まる服に私の血と夕日が混ざり合い変色していく。アーサー、あなたには罪がないの。泣かなくてもいいんだ。だからずっと笑っていて欲しい。そんな夢を見た。

 

手を伸ばし彼を抱きしめたのが空を切る。はっと、意識がはっきりした時私は意識を失う前の記憶を思い出した。菊さんに出会えたことを。天井や周りを眺めると、ここは菊さんの家だとわかる。私が存在しない世界でもあなたは変わらない。なんだか、寂しいような嬉しいような微妙な気分に陥る。ふと、そんなことを思い始めた時に菊さんが来た。

「気が付きましたか?あ、起き上がらないで下さい。まだ熱が下がっていませんので。」

桶に入った水を持ってきてくれた菊さんはタオルを水に浸し私の額に乗せてくれた。起き上がる私には大丈夫、だと言うように手を握ってくれた。この菊さんの優しさが十分に分かる。

「ありがとうございます。あの…」

礼を述べると彼は嬉しいような切ないふとした感情に胸を痛ませた。その瞬間を私は見逃さなかった。菊さんは何かに気付いているのだろうと。

「実は、あなたのことを知っています。と断定してよろしいのか私にはまだ確証がありません。でもあなたのことをずっと見ていた気がするんです」

菊さんは私の目をしっかり見つめてそう言ったのだ。私のいない世界の菊さんが私を知っているなど矛盾だらけだ。理屈じゃ説明できない話で、でもとても嬉しかったのだ。どうしてと私の冷静な考えは消え去りただ嬉しいその言葉がわたしの頭を支配する。この間隔は遠い昔に知っている気がした。まだ、兄との面識もなかったあの頃を。…と思い出す前に私の口から言葉が漏れ出していた。

 

「ありがとう」と。

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