私のいない世界はとても素敵で私は少し羨ましかった。
※描写が多過ぎてすみません。
彼女の瞳は揺らいでいた。動揺と焦りといろいろあったのだろうエメラルドの瞳は大きく開かれる。彼女の事を知っている、と言葉に出してしまったのは些か変な話だろうと自分にも理解できる。それでも、何故だか彼女といてとても嬉しいのだ。まるで自分が彼女に恋をしているかのように。
「あの、私、」
上手く言葉にできないとでも言うように口をパクパクさせていた。不思議なことは昔から経験してきたが感情の波には本当に驚く。
「混乱なさるのも分かります。でも私も分からないのです。今は熱を下げることにしましょう?この話はあなたが元気になってからですよ」
菊さんは眉を下げながら、寝かしつけてくれた。私はまた眠りについた。悪夢に怯えながら。
そんな悪夢などなくバラの庭園でアーサーとティータイムをしている夢を見たのだ。こんなことは一度もなかったのに。青い空には雲一つなく暖かい日差しが私たちを照らす。向かい合って座るアーサーは嬉しそうに紅茶を飲んでいる。幸せ、を感じた記憶には邪魔なものはなく純粋に綺麗な世界が広がる。私は綺麗に咲いたバラの姿を見る。純粋な花たちはこれからどうなるのだろう、咲き誇る姿から枯れてまた次の花を咲かせて。また、アーサーがこの花を育てて。
「そのバラ、お前にやるよ」
綺麗に笑うアーサーは私のそばまで来てそう言った。
「え、でも。アーサーの大切な」
「大切に育てた花だからこそお前には持っていて欲しい」
バラの刺を払い危険がなくなったバラを私の頭にと付けてくれた。アーサーは、似合っている、と告げると二人で笑ってしまった。なんて素敵な世界なのだろう。と。
「お前は…今幸せなのか?」
ふと夕日の世界と重なる。顔を上げると兄の姿はなく私一人残されていた。その言葉がずっしりと心に重くもたれかかる。アーサーのいない世界など私には不幸せだよ。
白い空間には記憶の扉がいくつも出てきた。物心ついた時、初めて友人ができた時、といろいろな記憶が私にまた思い出してと言ってるように思えた。
「見つけて。もう一度」
貴方自身の記憶を取り戻して。
菊side
眠ってしまった彼女の汗をタオルで拭いまた新しい水を取り替えるために一度部屋を出る。台所で水を流し新しい水を入れる。その時呼び出し音が鳴り、誰かが来たことを知らせる。蛇口をきつくしめて玄関へと急ぎ足で行き引き扉を開けた。
「よお、日本。仕事で近くまで来てなついでに寄ったんだからな!疲れてた体を癒しに来ただけで日本に会いに来たとかじゃないからな!俺のためだからな!」
「あ、あのちょっとお静かに。お客様が今寝ていらっしゃるので」
ふふ、と笑う暇がないのだ。彼女のことが私の中では最優先となってしまっているのだから。八橋にくるまずぽんっと本音を出してしまった菊は、ぽかんとしているイギリスは日本が珍しく自分の言葉を無視したことに対して驚きと焦りが出たのだ。もしや、別の新しい友達ができたんじゃないだろうかと。
「そ、そうか。邪魔して悪かったな…」
彼女side
人の声がしてふと目が覚めた。夢の内容を覚えていないが何かとても大切なことだったように思えた。菊さんのお客さんが来ているのだろう、意識がはっきりしてくるとその声の主も誰か分かる。元義兄と元義弟の声だ。この世界では私とは何ら関係のない国たちだ。そう、私には関係ないと言い聞かせても蘇る思い出は残酷である。自然と涙が溢れ嗚咽を漏らす。
「…っ!」
手で口を押さえなんとか声にならずにいた。今、彼らに声をかけても私のことなど知らない。私のことで罪の意識に囚われてしまった彼とはまた違う彼なのだ。でも見てみたい、もう一度笑う姿をこの目で。
「…てくだ…!あ…さ…!!」
「DDDDDD!!」
自分の事で精一杯だった私は外側で起こっていたことに気付かず、襖を蹴破られ無残な姿へと変わってしまったものを横目に彼、アメリカは笑顔で近寄ってきた。違う世界とは言っても彼は変わらないらしい。後ろから青ざめた表情の菊さんに、アメリカに文句を言うイギリスの姿が。
「君が菊のお客かい?…ん?」
「どうしたんだ?アメ…」
私の顔を見たアメリカは笑顔が顔から消えた。疑問を口にしたアメリカを気にしたイギリスもこちらをのぞき込む。私の記憶にフラッシュバックしないように願うばかりだ。