ソロモンの独白
前半は比較的ギャグで後半はシリアス一直線です
アルマトランではいろいろあった。幸福も多く、同時に後悔や反省も多く。故にこそ、後を託したのが信頼すべき我が友ウーゴだというその事実は、何よりも俺を安心させた。
だんだんと意識が薄れ、ああ死んだのかと自覚し、永き眠りに就いて。さて、果たして幾許の年月が流れたのか。
俺は、見知らぬ赤子の体に、いた。
「(は?え、何これ、どこ?)」
ここはどこ俺は誰。いやいや落ち着け、俺はソロモンだ。
「おお、可愛らしい子たちではないか。よくやった玉艶」
誰だこの男。
「ええ、男女どちらとも、あなたに似て賢そうな子です」
誰だこの女……………あれ何かアルバに似てるぞコイツ!
とりあえず状況を整理して分かったのは、俺はどうやら、双子の片割れとして記憶を持ったまま転生してしまったらしく。しかも。
「こちらが女の子で白旺、そちらが男の子で白雄。うむ、良い名だ」
俺の器は女の子でした。
せめて男が良かった!!!!!
そんな葛藤より早くも3年が経つ頃(ちなみに赤子時代の屈辱は割愛させてもらう)。俺は、謎に気付いた。
俺がいるにも関わらず、器には別の精神が存在することに。「白旺」が存在することに。
「わたしの体だ、退け、出て行け」と訴えるみたいに俺を押し出そうとする弱い精神。未だ俺のほうが力は強い。それでも俺は、不思議に彼女が怖かった。彼女は、「練白旺」は、俺が表に出ている間ずっと呪いのように同じ言葉を繰り返し続ける。
消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!!!
さすがに弱り果てた俺は、ついに6歳になった折、彼女に体を返し自分は奥に引っ込んだ。あとは奥から彼女の成長を眺めている程度のつもりで。
しかし、俺はあるとき、見てしまった。10歳になった白旺が、ひとりぼっちで泣く姿を。
彼女は「ソロモン」の記憶のせいで、アルマトランの夢を頻繁に見る。そういう日には、片割れの白雄に頼っていた。
ただ、その片割れが攫われ助け出した日。彼女は誰にも縋らず、ひとりで泣いた。
人を殺すのが、血を見るのが怖くない、愉しいと感じた自分が恐ろしいと言って一晩中涙を流し続けた。大声を上げて泣き喚くでもなく、泣きじゃくるでもなく、ひたすら虚ろな瞳で。
それは、痛々しくて哀れで。あんなに怖いと思った小娘の、誰にも見せられない弱過ぎる姿だった。
………………以降15年以上、俺は、白旺の身体と精神を内側からサポートしている。あの涙を流す姿を見た日、俺は、彼女を放っておけなくなったのだ。元来片割れしかロクに頼らなかった白旺は、唯一の拠り所を失って、さらに弱音を吐かなくなった。
俺は、白旺の拠り所でいたいと考えている。何もかも失ったとして、最後に頼れる相手が俺であれば良いと。
我が息子アラジンと共に、アルマトランとこちらの世界を記憶で繋ぐ、美しい架け橋。
叩かなくても壊れる石橋は、見かけばかりを飾り立て、今日も世界を闊歩する。