※この作品はR-18です。

一色いろはは比企谷八幡を虜にしたい   作:暁英琉

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せんぱいとキスしたい!

 一色いろはは悩んでいます。

 

 二週間前、せんぱいと恋人になりました。二人とも泣いちゃってロマンチックもあったもんじゃなかったですが、ようやくせんぱいに想いを伝えることができました。

 けど、それから二週間、全然進展がありません。せんぱいとお昼を食べたりだとかデートしたりだとか恋人らしいことはしているのですが、そんなの告白前にとっくに済ませた後です。そういうのじゃなくて、AとかBとCとか……そういうのがないんです。キスも告白の時にしたっきりです。

 私の知ってる男子って言うのは皆狼なはずです。さわやかを装ってる彼とか、奥手そうな彼とかも、頭の中はいやらしいことでいっぱいで、彼女ができたらすぐにけだものになって食べちゃうはずです。ティーンズ雑誌の読みすぎですか、そうですか。

 いや、それでもここまで進展がないなんて高校生男子としてありえないはずです。一応、私も美少女としての自負があるんです。最初は我慢をしているんだと思ったんですが……ひょっとしたら、私に女としての魅力がないのでしょうか……。

 

 

*   *   *

 

 

「それで、それは自慢か何かかしら?」

 いやほんとおっしゃるとおりです雪乃先輩。

 今私は奉仕部に来ています。せんぱいは女の子だけの話ということで、図書館に行ってもらっています。私の目の前には、もはやイライラを隠し切れていない雪乃先輩と話の途中から口から白い何かを出している結衣先輩がいます。系統は違ってもどちらも美少女。正直、作り込んでようやく愛される私とはレベルが違います。そして、二人とも想いはせんぱいに向いている。二人からしてみれば、私はまさに泥棒猫そのものでしょう。

「それは違うわ、一色さん。確かに、私たちは彼のことが好き。だけど、今告白したところで、彼はどちらにもなびかないでしょう。いえ、たとえ今じゃなくても、一色さんと付き合う前でも、彼の心はあなただけに向いていたのよ。だから、あなたは誇りこそすれ、負い目を感じることはないのよ」

「そうだよ! 私は、告白を止められた後、あの背中を追い掛けることはできなかった。いろはちゃんの勇気が、ヒッキーから本当の想いを引き出させたんだから。堂々とヒッキーの隣に立っていればいいんだよ?」

 本当に、この人達には敵わない。遅れて比企谷八幡争奪戦に入ってきて、見事にターゲットをかっさらっていってしまった私に対して、こんなに優しくしてくれる。

「けど、恋敵相手に惚気るのはやめてもらえないかしら。あんまりデートとかお昼にいちゃいちゃしている話を聞かされると、ついエルサと同じ能力がついてしまいそうだから」

「私もヒッキーとデートしたかった……デート……ハニトー……」

 未練たらたらじゃないですか。私の感動返して。

「んんっ! まあ、その話は置いておくとして、なぜ比企谷君があなたに……その、性的もしくはそれに準ずる接触をしないかということよね」

「んー、いろはちゃんに魅力がないっていうのは違うと思うな。ヒッキーいろはちゃんにドキドキしてたこと結構あったし」

 そうなんですよね。せんぱいは結構ちょろ……純情なところがあります。普段あんなに達観している様子なのに、ちょっと接近しただけで赤くなったりキョドったりしますから、意識していないわけではないはずです。

「じゃあ、やっぱり理性で意図的にセーブをかけてるとかですかね?」

「まあ、確かにその可能性はあるわね。今までセーブしすぎて自分では外せない、とかかしら」

「あー、ヒッキー変なところで頑固だからね」

 けど、先輩の理性は一般的な男子高校生のそれをはるかに上回ってるんですよね。そんな先輩の理性を崩すとかちょっと無理ゲーが過ぎる気がするんですが。泣き落とし? けど、せんぱいに対して嘘泣きはいやですね。

「あら、簡単よ一色さん」

 頭を抱える私に雪乃先輩からの救いの手が伸ばされました。女神の降臨かと思わず掴んでしまった手の先の彼女はいつもせんぱいを罵る時の、楽しそうな悪魔の笑顔だったわけですが。

「理性の及ばない方法を取ってしまえばいいのよ」

 

 

*   *   *

 

 

「せ~んぱい!」

「よう、一色」

 翌日、放課後に奉仕部に向かうとせんぱいが優しく笑いかけてくれます。恋人関係そのものに不満はないんです。というか、せんぱい恋人に優しすぎです。こんなやさしい笑顔を向けられるのは世界で私と妹さんくらいのものなのではないでしょうか。初めてこの笑顔を見せられた時は心臓が止まったのかと思いました。せんぱいスマイル、これがむやみやたらに振りまかれるものじゃなくて良かった。

「手伝いが必要?」

「あ、はい。時間があればお願いしたいなーと」

「分かった。じゃあ行ってくるわ。依頼が来たら連絡してくれ。あ、しなくてもいいぞ」

 特に文句も言わずに――いや奉仕部の方には今までどおりでしたけど――私について来てくれます。時々、帰りたいとかいままでどおり嫌味とか言ってくることはありますが、それも時々です。せんぱいは独占欲が強いと告白の時言いましたけど、合法的に私といられるなら、最優先で私を選んでしまうみたい。

 扉を閉めるとき、ちらりと中をのぞくと、雪乃先輩と結衣先輩が目線でエールを送ってきました。そう、今日は雪乃先輩達と相談した案を決行するのです。

 せんぱいの少し後ろを歩きながら、小さく気合を入れるのでした。

 

 

*   *   *

 

 

「一色、今日の仕事どれくらいあるんだ?」

「今日はそこまで多くないですよ。二人でやればすぐ終わると思います。あと、せんぱい。私のこといろはって呼んでくださいよ~」

「それは前も話したろ?」

 あの日、せんぱいは私のことを『いろは』と呼んでくれた。けれど、帰るときにはまた『一色』に戻っていました。なんでか聞いてみるとせんぱいは照れくさそうに頬を掻いて

「大事な時だけ名前呼んだ方が特別感あるじゃん」

とか言ってきました。絶対場の空気がないと恥ずかしくて呼べないんですね~。せんぱい、せんぱいなのにかわいすぎます。

生徒会室に入ると無人。いえ、なんかいつも生徒会仕事してないなって思われそうですけど、先輩が手伝ってくれるおかげで書類関係の処理は結構余裕があるんです。だから、他の役員には校内見回りとか、部活の御用聞きとか別の仕事に行ってもらっているだけなんです。

 先輩はいつもの席、私の隣に座ってさっそく作業に取り掛かろうとします。やると決めたら行動が早すぎます。超スピードですよ。

「あ、せんぱい。今日はゲーム感覚で仕事やってみませんか?」

「ゲーム感覚?」

 頭にはてなマークが飛んでますよせんぱい。まあ、せんぱいにとって仕事って「考えるのをやめてひたすら機械的にこなすもの」ですからね。遊び要素を入れるというのが理解できないのでしょう。

「同じ分量の仕事を同時に始めて、負けたら罰ゲームって感じで!」

「ほーん、なるほど。競争感覚でやれば仕事も早く終わりそうだな」

「はい。で、罰ゲームの内容はこの箱から選ぶ感じで」

 棚の上に置いてあった箱を持ってくる。中には罰ゲームのお題が入っています。「用意がいいな!」というせんぱいの苦笑交じりのツッコミはこの際無視です。その中の一つをおもむろに、おもむろに引き、内容を見ます。

「たとえばこんな感じで~『購買まで飲み物を買ってくる』とかが入ってます」

「ふむ、勝負内容は理解した。じゃあ、早速始めるか」

「はい!」

 お互い自分の分の書類を取って、位置につきました。いつもの仕事と違って勝負事とあって、せんぱいもやる気モードみたいです。きりっとした目かっこいいなー。

 ハッ! いけないいけない。今は仕事に勝負に集中しないと。

「それじゃあ、よーい、はじめ!」

 勝負が始まりました。と言っても、実はこの勝負イカサマなんですけど、書類の分量自体は同じなんですが、私の方の書類は実は半分くらいすでに終わらせているものなんですよね。終わっていない書類をやりつつ、少しずつ終わった書類を流していけば、せんぱいにはばれません。完璧な作戦、さすが雪乃先輩です。あくど……戦略的です。

 これだけのハンデがあれば確実にせんぱいに勝つことができます。後は罰ゲームでせんぱいにあれを引かせて……って、せんぱいはや!? なんですかそのスピード、千手観音にでもなるつもりですか!?

 勝負事になった時のせんぱいがやばすぎます予想外です。ちょっとほんとなんでこんな本気で仕事こなしてるんですか。いつもの三倍くらい早くないですか赤い彗星なんですか! ヒィィッ無駄口叩いてると逃げ切れないいいぃぃぃぃぃぃ。

 

 

 結果だけをいうなら勝てました。“無事に”ではなく“なんとか”でしたけど。二倍のハンデがあったはずなのに最後は書類一枚分くらいの差しかなかったです。せんぱい本気出した平岡さんみたいな動きしてましたよ。平岡さんアニメに夢持って!

「あー負けたかー。書類処理も結構量こなせるようになったじゃないか一色。がんばってるんだな」

 頭をぽんぽんとなでられました。あうぅぅ、ズルをしているから罪悪感が半端ないです……。

 しかし、これでようやく本題に入れます。正直、仕事なんて前座です。今日は全てこの時のために頑張ってきたんです。あ、これ学校の皆には内緒だよ?

「この箱からお題を引くんだっけ?」

「はい! どうぞ!」

 最初に見せたお題がいかにもパシリな罰ゲームだったから、せんぱいも完全に油断しているみたいです。実はあれ分かりやすいところに一つだけ引っかけておいた奴なんですよね。今日の私はズルばっかりです。けどせんぱい、恋は戦争なんですよ?

 だいぶ油断した表情で先輩は箱から折りたたまれた神を取り出し、開いて、固まってしまった。

「せんぱ~い。どうしたんですか~?」

 さすがにわざとらしすぎるかもしれませんが、演技とか無理です。にやにやが抑えきれません。せんぱいの後ろに回り込んで肩越しにのぞき込んでみます。固まった先輩の手元には、

『キス』

 の文字の書かれた紙。実は箱の中の残りも全部同じものです。作るのに苦労しました。

 ふふ、せんぱいってばさっきまでの優しかったり、まじめだったりする表情から一気に余裕がなくなっちゃったみたいで、耳まで赤くなってます。

「せんぱぁい、キスですよ。キ・ス。もちろん、ほっぺとかじゃなくて唇ですよ。まうすとぅーまうすですよ」

「え……と、一色……?」

「あ、引き直しとかもダメですからね? 罰ゲームなんですから、しっかり実行してくださいね?」

 まだ状況がつかめていないらしいせんぱいの耳元で囁く。せんぱいは耳が結構弱いみたい。囁いてあげるだけで、背筋が伸びてふるふる震えちゃってます。試しに「はあ」っと熱っぽい吐息を耳に当ててあげると、「ひぅっ」と大きく跳ねました。かわいいですお、せんぱい。当初の計画を無視して私が先輩を襲っちゃいたいくらいです。

「せんぱぁい、キス、したくないですか? いろはと、おくちとおくちの求愛行動、したく、ないですか?」

「ぁ……ぅ……」

 おずおずとせんぱいが振り向き、腰に手が回される。ふふふ、せんぱい。呼吸が荒くなってけだものさんみたいですよ? やっぱりせんぱいも男の子なんですね。

 荒い呼吸をしつつも、先輩は割れモノでも扱うようにゆっくりと近づいてきて。

「ん……」

 優しく唇が触れる。

 あぁ、せんぱいとの二週間ぶりのキス。唇から先輩の熱が、鼓動が、興奮が伝わってきて、私にまで伝播しちゃうっ。唇同士が触れ合ってるだけなのに、気持ちいい。いつまででも味わいたくなっちゃう。

 ぁ……先輩の唇が離れちゃぅ。もっと、もっとしたい。上目遣いで先輩を見ると、何か迷っているような、何かを抑えているようなそんな表情をしていた。

「いいんですよ、せんぱい。我慢しなくても、遠慮しなくても。いろはは、せんぱいのものなんですから」

「っ! いろは!」

 ぁぅっ。ここで名前は反則ですよせんぱい。そんなことされたら、私の全部、先輩にあげたくなっちゃいますよぉ。

 上唇をついばまれるようなキス。ついばみながら唇で私の唇がなぞられ、感じたことのない満足感と快感が溢れてくる。

「後悔……するなよ……」

 何が、とは聞けませんでした。再び触れあった唇はさっきまでよりも強く押し当てられ、空気を求めて自然と口が開いていましました。そこに、

「んんっ!? んちゅっ、ぁん、ちゅる、ひぇんふぁぃ……ちゅ、れる、ん、んん……」

 薄く開いた口内にぬるぬるとしたせんぱいの舌が入ってきて、私の口の中を暴れまわります。私の舌を見つけると、まるでそうするのが当然かのように激しくからめてきました。

 なにこれ。なにこれ、なにこれ、なにこれなにこれなにこれなにこれ! こんなの知らない。こんな気持ちいいこと知っちゃったらダメになっちゃう。せんぱいなしじゃ生きていけないダメな子になっちゃう。

「ぁん、ぁむ、ん……んぁ、んん、ぬむっ、ちゅ、ちゅ、ちゅるっ、ぁむ、んん……」

「ひぇんふぁぃ……ん、んにゅ、んちゅ、しょこ、ん、りゃめぇ、んん、んむ……」

 もう、いろはのおくちぜんぶせんぱいのものだぁ。せんぱいにぜんぶあげちゃぅ。だから、もっときもちいいことしてぇ。

「ん、ちぃぅ、んぁ……んんんんっっ!?」

 あぁぁ、せんぱいに舌吸われてるぅ。いろはの舌、食べられちゃってるぅ。いいの、いろはの舌せんぱいにあげちゃぅからぁ。

「んんんぁぁぁぁ……えぐっ、えぁぁぅぅぅ……」

 吸われすぎて、思わずえずいてしまう。目にはいつの間にか涙がたまっているけど、つらくはなくて、むしろ、苦しいのが気持ちよくて……。ひょっとしたら、私はMなのかもしれないと思いつつ、先輩にすべてを委ねます。

 唇の裏や歯茎をまさぐられたかと思うと、また舌を吸われ、唇をついばまれたかと思うと、舌を絡ませてくる。先輩がこんなにも私を求めてくれていると思うと、全て受け入れてしまいました。

「れるっ、ぴちゃ、んむぁむっ、ちゅ、ん、ぁうっ、んんぁっっ、ぁ、ぁ、ぁっぁっぁっ」

 永続的に迫ってくる快感のせいで呼吸もまともにできない。その酸欠の苦しさすら快感に変わってしまいました。

「ぁ、ぁん、ぅむ……ぷはっ……」

 ようやくせんぱいの唇が離れたときには酸欠と快感で頭がぼーっとしてしまっていました。焦点が合わない目で先輩を見ると、先輩も肩を荒げていました。ふふ、せんぱいも気持ち良かったんですよね? それなら、私も満足です。

 けど、大変ですよ……。大人のキス、こんなにすごいなんて、こんなエッチな気分になるなんて知りませんでしたもん……。

 

 

*   *   *

 

 

「え? せんぱいずっと我慢してたんですか?」

 私の質問にせんぱいは目を泳がせながら小さくうなずきました。

 先輩曰く、「あまり積極的にやりすぎて嫌われたら嫌だし、かといって一度始めたら歯止めが気かなそうだったから」だそうです。たしかに、がっつくのを嫌う女の子もいますからね。気持ちは分からなくもないです。

 それにしても、ほんとに先輩はいつもは自信満々なのに、こと恋愛事には慎重というか、臆病というか。ま、そういうところもかわいいんですけどね!

「せんぱい」

「ん?」

 まだ、さっきの余韻があるのか気だるげなせんぱい。普段は見れないそんな先輩がかわいくて、愛おしくて。

「したくなったらいつでもしてあげますからね?」

 私は悪戯っぽく微笑むのでした。

 

 

*   *   *

 

 

「ねえ、ゆきのん」

「なにかしら、由比ヶ浜さん?」

「これ、見ない方がよかったんじゃないかな……?」

「けど、一応奉仕部の活動結果確認をしなくてはいけないわけだし……」

「うん、そうなんだよね……」

「ええ、そうよ……」

「「はぁ……」」

 




八幡って性欲強そうだから、一回たがが外れるとすごそう(小並感

ただひたすらキスだけが書きたかった
前話がちょっと重めの話だったから対比をつけたくていちゃいちゃさせた
たぶん今後重めの話はない(たぶん

ところでR指定の基準とかがよくわかってないのですよ
これR15じゃね? とか思ったら気軽に教えてください
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