※この作品はR-18です。

一色いろはは比企谷八幡を虜にしたい   作:暁英琉

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せんぱいとおべんきょです!

「せんぱ~い、やばいですやばいですやばいんです~……」

 今日は生徒会の手伝いもなくて奉仕部も依頼なし。放課後ティータイムな部室で読書をしていたわけだが、そんな平穏は一色によって壊された。

「なんだ? 緊急で生徒会の仕事でも入ったのか?」

「いえ、そういうわけじゃないんですけど~」

 生徒会の仕事じゃなかったらなんなのだろうか。あと泣きまねやめるの早くね? ポケットから目薬が飛び出ているのは深い意味ないですよね? ……ないよね?

「もうすぐ期末試験じゃないですか~」

「そうだな」

「それで~、せんぱいに勉強教えてもらいたくって~」

 ほう……。

 いや、俺も同じ時期に期末あるんですけど? 自分の勉強したいんですけど?

 そもそも試験だから勉強教えて、って言いに来るのが遅すぎなんだよな。なんでもっと早く言いに来ないのか。「まだ全然余裕あるし平気平気」とか言って締切直前に修羅場になる同人作家かな?

 まあしかし、俺自身後は授業の内容軽く復習するだけだし(理数科目は復習しても分からんし)、彼女の頼みは聞かんわけにはいくまい。

「で、何を教えてほしいんだ?」

「文系全部で!」

 …………。

 たらぁっと冷汗が顔を伝う。なにか嫌な予感がして、少し質問を変える。

「時に一色。お前前回の実力テストの成績、どうだったんだ?」

 人に物を教えるときは相手の実力の把握が重要である。テストとは本来生徒の理解度を教師が把握するものであり、できる教師はそこから生徒に合った教え方に切り替える。雪ノ下のように超難関大専門の勉強にも突いていける生徒がいる一方で、由比ヶ浜のように小学校の授業にもついていけるか怪しい生徒もいるので、相手の実力を測るのは急務であった。ほんとよくうちに入ってこれたな由比ヶ浜。

「えっと~、こんな感じですね~」

 一色は鞄に入っていた成績表を手渡してくる。緊張に汗し、喉を鳴らし、恐る恐るそれを見る……。

「……よかった、由比ヶ浜より全然いい」

「なんでそこで私引き合いに出されてるの!?」

 バンッと机を鳴らして由比ヶ浜が抗議してくる。あ、いたのかガハマさん。静かだったからいつのまにかトイレにでも行ったのかと思ってたよ。

 実際一色の成績はさほど悪いわけではない。飛び抜けて良い教科があるわけではなく、大体平均的な点数を取っていた。英語が少し低めなくらいだろうか。恐らく基礎はできているがちょっとひねった問題や応用問題で引っかかっているのだろう。

「つか、文系だけでいいのか?」

「だってせんぱい文系しかできないじゃないですか~」

 いや、俺達の向かい側に全教科トップの化物がいるからそいつに教えてもらえばいいと思うが……。まあ、雪ノ下の教え方って基本スパルタだし嫌だよな。

「今何か失礼なことを考えていなかったかしら? 文系谷君」

「それは全然悪口じゃないからな? 別に失礼なことなんて考えてねえよ」

 今のが失礼なことなら事実=失礼という恐ろしい方程式が成り立ってしまう。

「まあ、お前が文系だけでいいって言うならそれでいいけど」

「じゃあ教えてくれるんですね! やった~!」

 勉強を教えるだけでそんなに喜んでもらえるなら悪い気はしない。とりあえずは一色が一番苦手そうな英語から取りかかることにするとしよう。

 

 

*   *   *

 

 

 結論から言うと一色は飲み込みのいい方だった

 ただ、文章での説明を理解するのが苦手なようで、俺達の受けている授業だと理解力が追いついていないようだ。飲み込みのよさ割にあまり成績がよくなのも、基礎を本当の意味で理解できていないからだろう。だから、簡単な絵(棒人間)を使った説明を交えてみると、思った以上に理解が追いついたようだ。

「せんぱいって教えるのうまいですね。塾のバイトでもしてたんですか?」

「いや、お前の理解力とかが小町に近かったから小町に対する教え方にうまくはまっただけだよ」

 実際文章での説明で理解できないのは普段あまり本を読まないからだろう。小町も全然本読まないもんな。やっぱこいつら似てるわ。

「む~、なんか妹みたいって言われてるようでちょっと複雑です」

「いや言ってないから。妹じゃなくて彼女だろ?」

 正論を言っただけなのに一色は「そ、そうですね……」と赤くなってしまった。真っ赤になりすぎてリンゴみたい。いろはすリンゴ味、おいしいよね。

 その後も英語のを教えていたわけだが……。

「じゃあ、この場合は“for”を使えばいいんですね~」

 なんか一色がどんどん近付いてきている気がするんだが。いや、近づいてきている。thinkではなくconclude。なんかすっごいいい匂いするんだけど、なんでこの子いっつもいい匂いなの? 芳香剤~いろはすの香り~なの? 俺にすっごい売れそう。

「そ、そうそう。この単語は後ろに続く“for”と“to”で意味が全然違ってくるから要注意だぞ」

「うへぇ、めんどくさいですね……」

 いや、俺にとっては英単語より今の君の方がめんどくさいからね。なんなの? なんかさっきから腕に柔らかいのが当たってるのは不可抗力なの? わざとなの? エロはすなの?

 あ、わざとですね。目が完全にエロはすだもん、エロはすってるもん。

 エロはす:名詞:一色がエロいこと。またはエロい一色。

 エロはする:動詞:一色がエロいことをしている様子。

 やめて! なんか小刻みにすり当てないで! 柔らかいのは分かったから許して!

「せ~んぱい、どうしたんですか?」

 あぁ、こいつは本当に……。

 もう勉強を教えるどころではない。右手が自然と一色の背中に伸びて……。

「今日はそろそろ終わりにしましょうか」

 ぱたんと本を閉じる音と共に発せられた声にハッと我に返る。危なかった……雪ノ下や由比ヶ浜のいる部室で危うく発情するところだった。

「……チッ」

 一色さん? なんか今聞こえた気がするけど気のせいかな? 気のせいだよね?

「じゃ、じゃあ帰るか」

「分かりました~。それじゃあ結衣先輩、雪乃先輩、さよならです~」

「えぇ、さようなら……」

「ば、ばいばーい……」

気恥かしさのせいで足早になってしまったが、一色はしっかりついて来てくれた。というか、教える度にこんなことになっていたら理性が持たなくて最終的に保健の実技授業になりかねないんですが……。今更ながら引きうけるべきじゃなかったかもと軽く後悔している自分がいた。

 

 

*   *   *

 

 

「……由比ヶ浜さん」

「……なに、ゆきのん?」

「あなたに勉強を教えることにするわ」

「え?」

「前に勉強を教えたときはあまり成績が上がらなかったけど、大丈夫よ。人間どんなに無理なことでも、やり続ければ無理じゃなくなるんだから」

「待ってゆきのん! なんか私憂さ晴らしに使われてない?」

「気のせいよ。さあ、行きましょう」

「待ってええぇ! たあああすううううけえええてええええええええ!!!」

 

 

*   *   *

 

 

「そういえば、なんでいきなり勉強教えてほしくなったんだ?」

 帰り道隣の一色に質問を投げかけてみる。少し前までは多少勉強のできない私かわいいみたいなことを言っていた記憶がするが。生徒会長として、生徒の規範になる自覚が出てきたのだろうか。

 俺の質問にしばしキョトンとした一色は、にっこり微笑みかけてくる。

「そんなの決まってるじゃないですか。私はせんぱいと同じ大学に行きたいだけですよ」

「……え?」

「なんですか~? 私と同じ大学は不満ですか?」

 ……いや、正直すげえ嬉しい。俺の志望は文系教科だけだが結構高得点を取る必要があるため、今の一色にはかなり厳しいレベルだ。きっと一色自身それは理解している。それでも諦めるのではなく努力をしてくれるという彼女がとても愛おしく、その決意が、嬉しかった。

「そっか、それじゃあ頑張って教えないとな」

「はい。頑張って教わります」

 二人で笑いながら帰るこの時をもう少しだけ続けるために。

 

 

*   *   *

 

 

 後日談というか、今回のオチ。

「せんぱいせんぱ~い!」

 放課後部室に飛び込んできた一色はやけに元気だった。いろはすエナジードリンクって感じ。

「どうした一色」

「見てくださいよ! 今回のテスト結構いい成績だったんですよ!」

 ばっと差し出されたテスト用紙にはおよそ前回の試験では見られなかった数字が並んでいた。まあ、ここ二週間くらいずっと頑張ってたもんな。

 感慨深い思いに浸っていると、視界からテスト用紙が外れて、何やらもじもじしている一色が見える。ちらちらこちらを見てくるのすげえかわいいんですけど。……まあ、言わんとしていることはわかるので――

「よくがんばったな、一色」

 優しく頭を撫でてやる。一瞬身体を硬くしたがすぐに弛緩して俺の手の動きに身を委ねてくる。

「えへへぇ……」

 なにそのひだまりみたいな笑顔。ずっと見ていたいんだけど。

「これからもがんばんないとな」

「そうですね! がんばります!」

 とまあ、超ポジティブテンションな俺達の横で。

「ゆきのん……」

「なにかしら……」

「もうゆきのんに勉強教わらない……」

「そういうわけにはいかないわ。私が部長を務める部の部員にこんな成績を取らせ続けるわけにはいかないもの。今日も部活が終わったら特訓よ」

「やだああああ勉強やだああああああ」

 全教科赤点という酷い結果を叩きだした由比ヶ浜が完全にお通夜状態だった。哀れ、由比ヶ浜は爆発四散! いや、爆発四散しちゃダメだろ、怖い!

 雪ノ下も相変わらず教えるの下手なのね。優秀ゆえの苦手分野というやつだろうか。というか、苦手分野に負けず嫌いが合わさって最凶に見える。由比ヶ浜が本当に爆発四散しそうだが、俺にはどうすることもできないので考えることをやめていっしきとたわむれることにした。

「せ~んぱい! ふふっ」

 




勉強は一人でやるもの(ぼっち感


なんかこのシリーズガハマさんに厳しい気がする
まあ、一色の話だし多少はね?


しかし、危うくほんとうに保険の実技授業が始まるところだった
いや、たぶんそろそろR-18展開にしてしまう予感があるんですがね
そろそろエロはすを抑えることは無理そうです エロはす強すぎ

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