【GODEATER】 龍治 -A Ghost of Hero- 作:あとろふ
構造的には人間でも、永音はアラガミだ、常に「自分は人間だ」って強い自我を持ってないとすぐにアラガミの本能に負けて喰って壊すだけの獣になる。回復直後のアイツがそんな風だったようにな。
親父の看病は献身的だった。ずっとアイツのそばに居て、様態が変化したらすぐさま意識をリンクして人間に呼び戻す・・・・そんな日々がしばらく続いた。端から見てても地獄だったよ。凶暴化した永音に親父が引っ掻かれたり噛みつかれたり・・・。何度神機を取ってぶった切りに行ってやろうかと思ったか。
看病の末、親父と永音は結婚した。後から分かったことだが、子供まで孕んだよ永音は。親父が母さんを捨てたことを、私は信じられなかった。親父はずっと母さんに一途だったから。母さんが死んでからもずっと。
でも、永音と結ばれた親父はもう後が長くなかった。永音の治療が一段落した後にサカキから聞かされたのは、
「適合率が高すぎてただでさえ余命の短かった親父は、永音の治療の課程で神機と深くリンクしすぎて更に適合率が上がって、侵喰の影響を逃れられなくなった。今後日常生活を送るにもオラクル細胞の力を借りなくてはいけなくなる、どうやっても1年は保たない」って事だった。そしてその事を伝えられたのは親父自身と娘の私、それと正虎のオッサンだけだった。
ーーーー親父は、戦いに死ぬことを選んだ。
襲撃の傷跡が癒えないアナグラに、アラガミ群の第二波が押し寄せた。私以外の神機使いは皆疲弊しきってた上に、資源も底を尽きかけてて、神機使いの戦闘に必要な偏食因子さえ満足に工面出来ない状況・・・・激戦区、強豪集いと言われるアナグラもこれまでかと皆が思ったさ。
そんな時、親父が単騎で出撃したって放送が流れた。
親父は偏食因子を持って行かなかった。行く前から生きて帰ってくることを諦めてたってことだ。敵は膨大な数のアラガミ、いくら最強の神機使いとはいえ、親父一人じゃ焼け石に水って奴だ。その事は親父も分かってたんだろう。
でも結果は違った。
ーーー私は、いや、アナグラの神機使い皆が、レーダーマップの親父の反応と、敵勢力の反応を祈るような気持ちで見てた。親父の反応が潰えそうになった時、突然、アナグラ全体のオラクル動力施設が停止した。レーダーモニターが予備電源で復活した時、レーダーを埋め尽くしてた敵性反応はまるで最初から無かったように、すっかり消えちまってた。
かわりに、親父が居た所に、未確認の反応を示すアラガミ個体が確認された。
・・・感応種だった。『世界で初めて観測された、感応種の個体』だった。親父は自我を保ったままアラガミになったーーーー
親父の意志の強さが、アラガミに新しい武器を与える事になっちまったんだ。
当時、ブラッドなんて居なかったし、親父の討伐方法は無かった。唯一、アラガミ化した親父と同個体である永音に捕喰させるってのを除いて。
親父は永音にあっけなく討伐された・・・・あっけなくってよりは、親父が永音に捕喰されに行った・・・ってほうが正しいかもな。本当にあっけなかったよ。永音が触れた途端に神機の捕喰口みたいなのが伸びて・・・・あっという間にな。涙も出ないくらい、本当に。
永音に吸収された後、親父の神機と、人間の形を残した頭だけが侵喰を受けずに残ってた。「四肢から最も遠く、神機とのリンクから最も影響を受けにくかった事・・・それと、アラガミ化した永音の脳が個体のコアとしての役割を果たしてる事実から、オラクル細胞がコアの重複を避けたために侵喰が遅れた事が仮説として考えられる」ってサカキが言ってたな・・・
それがあの部屋にある親父の頭だ。永音は「龍治さんの功績と悲劇は後の神機使いにも語り継がないといけないから」なんて随分と殊勝なこと抜かしてやがったが。
どうせ親父が死んだ事実を認めたくなかっただけだろうけどな。その証拠に、今でも夜になったらあの部屋に行っては何かぶつぶつ言ってるしよ・・・バレてないとでも思ってんのかね。
とまあ、私が知ってんのはこの辺だ。なんか関係ない事までウダウダ喋っちゃって悪かったな。聞きたくも無かっただろうに。