【GODEATER】 龍治 -A Ghost of Hero- 作:あとろふ
「うへぇ、あっついなー・・・」
熱を帯びた斜陽が差し込みわずかに蒸し暑い自室に着いた零は密度の濃い一日に疲れきって、力尽きたように頬からベッドに倒れ込んだ。窓から浴びる斜陽に頭の先から融けるような感覚、それと同時に、意識が瞼の裏の橙色に融け出していく。
「ーーーおっとあぶねぇ!」
両手をついて反り返り、思わず声を出す。洲との約束を忘れるところだった、二時間後だったか。
その日初めての、静かで手持ち無沙汰の時間ーーー飛び起きたせいで急に冷静になった零はふと、出撃時に喜鴉が言っていた近頃のアラガミの不可解な行動の事を思い出していた。重い膝を折り曲げてうつ伏せの体勢から立ち上がり、ターミナルに腕輪を差し込んだ。
使い方に慣れないながらもなんとかデータベースを開き、追記日時の近い項目を視線でなぞる。注意深く、それでいて急ぎ足でーーー
聖域に於けるオラクル細胞のーーー神機の定期メンテナンスの予定日ーーー東部居住区に於けるアラガミの襲撃件数のーーー、あった。
ーーー喜鴉の言ったとおり、どの襲撃についても感応種や新種のアラガミの反応は近辺に確認されていないみたいだな。しかし自然に発生したとしてはこの襲撃件数は異常だーーー
零は添付されていた他地域や過去との件数の比較グラフを見てそう思った。しかし、別段興味をそそられたわけでもなく、その項目を離れ、雑多な情報の中から気になる物を漁って目を通し始めた。神機の設計やオラクル細胞の性質ーー、多くの項目に興味を惹かれ食い入るように片端から読み漁る。そうしていると、
「こりゃなんだ、螺旋の木内部調査の・・・?なんだ、閲覧権限がない・・・か、ううんーーーっと!」
その中に隊長についてと思われる項目を見つけた。
「アラガミ化を利用した体組織蘇生療法の被験体のーーーこれって喜鴉姉が言ってた・・・?作成日時三年前・・・ってことはーーー」
早速項目を開いてみる。
「有瀬龍治の神機を媒介とした神機のオラクル細胞による侵喰・・・脳がコアに置換された・・・成る程、オラクル細胞が捕喰した物体の形質を模倣する事を応用してるのか・・・」
最後尾の追記欄には、つい数ヶ月ほど前に編集された記録のある項目があった。
「ーーー治療時に被験体から観測された固有波長の偏食波が感応種によるものと似た特徴を持つため、アラガミとして感応種に分類される可能性がある・・・?ついこの間の追記か、感応種が増え始めた頃だな・・・」
なんとなくそれを読んでいると、零は思わず隊長と初めて会った時のことを思い出した。
「隊長は感応種だったってことか・・・。てことはあん時に俺らが蛇に睨まれたみたいになっちまったのはそのせいかもな・・・んなわきゃない、かぁ・・・、ん? ってもうこんな時間じゃねえか!」
気が付くと画面の端の時刻表示が洲との約束の時間に迫っていた。窓に目をやるともう陽が落ちきって、部屋の明かりはターミナルの画面のみとなっていた。
「んんーっ、もう時間かー、ーーっ、ああーっ、イテテテテ、っしゃそろそろ行くかー」
暗い部屋でターミナルを見ていたせいで痛む目をこすり、大袈裟に瞬きしながら零は自室を後にした。