【GODEATER】 龍治 -A Ghost of Hero- 作:あとろふ
女は自身を
零は有瀬という苗字にどこか聞いた事があるような、そのような感覚がした。この女は知り合いの親戚なのかも知れない、とその事を別段気に留めることは無かったが。
永音は早速に、現状の配給物資などフェンリル側の対応の問題点は何であるかを尋ねたが、どうやらかれの話によると青龍分支部の管轄地区と極東支部の管轄地区はそれぞれ独立して統治が
見当違いの所へ殴りこみをかけた恥ずかしさと気まずさを感じた零は、それを紛らわせるように支部長室に零らが支給されている物と同じ配給物資しかない理由を尋ねた。フェンリルから多大な報酬を受けているはずの彼らにはおおよそ似つかわしくない。永音はその質問に対し、青龍分支部の人間は少人数で困難な任務に当たることが多く、実際に本部から個人単位では消費しきれない額の報酬を受けているが、必要最低限額を残し全て管轄地区の配給物資の製造、発注に寄付している、と答えた。
その答えを聞いて更に自らを恥ずかしく感じた零らは赤面し完全に黙りこくってしまった。永音はそれを見て、あなた達の判断は間違ってはいない、と彼らを引き立て、それに続いて話題を切り返すように彼らに「神機使いになる気はないか」と
彼らは予想もしなかった問いに驚き、顔を上げぽかんと間抜けっ面を
これ以上その場にいることが
永音と大男は彼らを支部の入り口まで見送った。彼らの姿が見えなくなると、永音は独り事のように「勧誘失敗かあ」と冗談ぽく笑ってみせた。大男は「隊員にでもしようとしたか?あんな奴らをか?」と眉間に
自身らを恥じ、口数少なくして帰ってきた零らに、彼らの帰還を心待ちにしていた拠点の仲間たちは成果はどうだった、明日から少しは楽になるか、と雑然として訊いた。零らは威勢を失ったまま、いいや、俺達は軽率すぎたんだと返した。どういうことだと
解散後も、零は永音に言われた「神機使いにならないか」という台詞をずっと胸に引っ掛けていた。そしてその漠然とした思いは次第に輪郭を
あの日同行した零の仲間もどうやら同じ思いだったようだ。フェンリルに偏食因子の適合試験の参加要請を済ませた零らは熱気を失った廃屋の彼らにそれを説明し別れを告げた。仲間たちは各々多かれ少なかれフェンリル側の人間に敵対心を抱いていたものが多かったので、良い反応は返ってこないだろうと零らは思っていたが、彼らは意外にも快くそれを認めてくれた。仲間たちの心遣いに感謝し零らは一応の別れとなる廃屋を後にした。
後日彼らはアナグラの支部長室に招集された。志願した者全員が招集されたわけではなく、ここに呼ばれなかった仲間達の元には非適合通知が発送されるらしい。
初めて見る思っていたよりも大きく物々しい神機とそれに繋がるように設置された赤い腕輪の物言わぬ存在感に威圧され、腕の置かれるであろう位置の拘束具とその真上の天井から吊り下がる人体に使うとは到底思えないドリルのような機材に物怖じしてしまう。部屋の隅に取り付けられたスピーカーから劣化して聞こえる、上の観察室から見守る榊博士の「なあに、怖がることはない」という言葉はただ胡散臭く感じ、より彼の恐怖を駆り立てるのみだ。とはいえここまで来てやっぱり怖いので帰ります、等というのはまかり通らないと感じ、恐怖に
しばらくして横から蒸気機関のような音が聞こえ出し、機械が駆動し始めるのが分かった。駆動音は次第にぐわんぐわんと大きくなり、それにつられて心拍は早くなり、頭もまた緊張でぐわんぐわんと真っ白になっていく。榊博士に「じゃあ、神機に手を掛けてくれ」と言われた時には、もうそれを戸惑う余裕もなかった。極度の緊張に目が廻るなか言われるがままに神機のグリップ部分に右手をかけると、手首の近くで機械の動く気配がした後、突如突き刺されるような、または内側から炙られるような激痛が右腕全体に襲いかかり、彼は反射的に怒鳴り声のような叫び声を挙げてしまった。あまりの痛さに自らの叫び声は全く聞こえず、喉元が叫び声で弾ける感覚と右腕の猛烈な痛みのみが頭のなかで暴れ廻る。
気が付くと彼の身体はベッドから落ち、ひんやりと油ぎった床に横たわっていた。先ほどの猛烈な痛みを思い出しふと右手が本当に残っているのかが気になり目線を落とすと、いつもどおりの右腕に神機は相変わらず握られていて、さっきまでは無かったごつごつとした腕輪は見たことのある赤色ではなく、黒と金の豪華な金具をあてがわれていた。右腕からはもう痛みは感じず、黒色の煙が腕輪から立ち昇っている。
床の油にへばり付き放心状態のまま右腕からの煙を眺めていると、少しずつ冷静さを取り戻し始めた。煙が薄くなるのにしたがい体の感覚が戻り始め、それにつれて最初に感じ始めたのは全身に
神機を整備士に預けた後、右腕の異物感に慣れないまま、歩く度にぎこちなく腰骨に腕輪をぶつけてしまう零が向かわされた先は博士の研究室だった。部屋に入ると博士は机上に設置された多数のディスプレイ上で
「やあ!お疲れさま」と眼鏡を降ろした博士が唐突に口を開き、黒い腕輪に向けられた仲間たちの視線が再び博士に戻る。「ひとまずはおめでとう、君たちは全員問題なく適合したようだね。たった今君たちの配属される部隊が決まったところだ。」と、改まってデスクに肘をつき顎の前で白手袋の指を組んだ博士が言うと、零らの顔持ちがより
「君たちの希望配属部隊は全員青龍分支部だったね。…うん、結論から言うと、青龍分支部に配属となるのは刹城君、君だけみたいだ。」
自分だけ?と零は不思議に感じたが、博士は彼らの返事を待たずに理由を述べ始めた。
「
別段青龍分支部でなければいけない、といったことも無かった彼らは特にショックを受けることもなく、その日は神機使いとしての簡単な諸説明を受けた後に零以外のメンバーはアナグラの自室の利用の説明に連れられ、零は客人用の寝室を充てられ翌日の青龍分支部への移動を待つように言われて解散となった。
第二回(終)
あとがき
どうも、著者のあとろふです。第一回に続き第二回を読んで頂きありがとうございます。今回は少々雑音のある環境下で執筆したため、文体が希薄になっているかもしれません。ご了承ください。
次回以降の修正時に不適な点を修正していくつもりです。