※この作品はR-18です。

【GODEATER】 龍治 -A Ghost of Hero-   作:あとろふ

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第十一回

僕は神機使いになってからずっと、ただあの人を目指して、あの人みたいになりたくて訓練や実地経験を積んだ。

ーーーでも、僕はあの人じゃない。

歪んだ夢を抱いた僕を待っていたのは、鋭く突き刺さる現実ーーー悪夢でした。任務エリアに突如ヴァジュラ神族の大型種が乱入、たったその一体で僕の所属していた部隊は半壊、僕も軽々とふき飛ばされて頭を強く打って。他隊員の援護によって辛うじて命はとりとめましたが、左半身に弱い麻痺が残りました。

あの人ならちょっとすれ違うだけで討伐出来てしまう個体です。

ーーー悔しかった。無力な自分が憎くて仕方がなかった。それと同時に、僕を軽々とあしらったアラガミも。

僕は麻痺する身体を打ち付けるように、神機をアラガミに叩きつけるようになった。動け、動けよ、って。

アラガミを殴ることで自分を殴り、アラガミを喰いちぎることでこの言うことを聞かない左側を喰いちぎるようになった。なんで、なんで動かないんだよ、って。

狂ったようにアラガミを討伐し続けているうち、僕は僕が分からなくなった。僕が何のためにアラガミを喰らうのか、何のためにこの身体を無理やりにでも動かすのか。やがてーーー僕の髪は色を失い、僕の姿は生気を失い、僕は死人か死神のような風貌になった。 今のような、ね。

 

ーーーそんな矢先です。龍治さんと同時期に神機使いになった美月の姐さん、その訃報、それと龍治さんの不祥事の報が舞い込んできたのは。僕の唯一の支え・・・祈るような気持ちで拘置所に向かった僕が見たのは、変わり果てた龍治さんの姿だった。コンクリート壁に背中を押し付けて小さくしゃがみ込みながら床か壁かを見ているその目はあの時の輝きを失い、僕と同じようなくすんだ顔になっていた。

「ーーー俺に用か。」

龍治さんは僕を見ずに云った。その光を失った声・・・10年振りだった。10年前と何も変わってない、懐かしい声のはずなのに・・・まるで別人のように変わってしまったその声が、僕の肺の、まだほんの少し生きていた所を貫いて僕はしばらく声が出せなかった。冷えきった鉄柵を掴んで崩れ落ちそうになるのを何とか耐え、額を打ち付け擦り付け、錆びた匂いの中、やっとの事で呻き声のような声を出した。

「どうして・・・?」

自分にはどうしようもない無力感、妄信的に憧れていたものをいきなり奪われた絶望感、支えを失った心が自由落下する虚無感・・・冷たく湿った廊下や独房に響いた、幾千の涙よりも悲痛なその呻き声を聞いた龍治さんは、力なくも苦々しい顔で、

「もう、やめてくれ」

と乱れた髪に爪を立てながら小さく嘆いた。何のことかは分かりませんでしたが、ただ、僕は目の前にいるのが自分が憧れ続けた人間だと信じられなかった。信じたくなかった。

「僕を見てください、龍治さん」

詰まって息苦しい喉から自然と流れ出たそれを聞いた龍治さんは驚いた顔で僕を見た。

「お前・・・まさか」

「そうです、洲ですよ、龍治さん。」

なんとか、あの頃のような元気な姿を見せて欲しくて、縋り付くように、懇願するように名前を呼びました。

龍治さんは少しだけ明るくなった声で

「懐かしい名前だ、10年くらい経ったか、ーーーどうしたんだその姿は」

と僕に訊きました。

『あなたに憧れて』ーーー喉まで出かけたその言葉を何とか飲み込んで

「神機使いになったんですけど、任務中にちょっと怪我しちゃいましてね。」

とだけ、気丈を繕って答えました。龍治さんの表情は少し怖くなった。

「知らなかった、お前が神機使いになっていた事も、怪我させられていた事も・・・。俺は何を見てきたんだ・・・」

「”させられて”いた・・・?」

僕は龍治さんの言葉に違和感を感じました。

「ああ、多分お前は本来そこで死ぬ予定だったんだろうーーー美月みたいに」

「それ、どういう・・・」

龍治さんの口から重々しく出た答えは、衝撃的なものでした。

「美月の部隊はハナから無茶な遠征に行かされて、偏食因子が尽きてほぼ全員アラガミ化した。俺と正虎はソイツらの討伐に向かわされた。それが美月たちだって事を知らされずにな・・・。」

美月の姐さんの訃報、それは龍治さん自身が彼女を手に掛けたという事だった。

「そうと知らずに美月の姐さんをーーーまって下さい、アラガミ化した神機使いの討伐はーーー!」

そう、アラガミ化した神機使いは神機と同じだけの偏食因子を持っていて、通常は討伐が困難もしくは無理なはず。

「ああその通りだ。だが俺らの神機はいつもどおり、ソイツらを・・・美月を・・・喰い破った。ーーーおかしい話だろ。俺らの神機だけに特別な偏食因子があったにせよ、美月たちのに本来あるはずの偏食因子が組み込まれてなかったにせよ、それは美月の部隊がアラガミ化して俺らに討伐されることを見越してのことだ。」

つまりそれは。 龍治さんが自分の手で美月の姐さんを殺すことになったのはーーー何者かによって企てられた”人為的な”ものだったという事にーーー

「その遠征と討伐任務の発行者は・・・」

龍治さんはより険しい表情で

「支部長・・・ヨハネスの野郎だ。」

と答えて、

「何の気かは知らねえが、俺らの存在が邪魔になった、ってこったろ、俺らをアラガミに殺させる事が困難なもんで、より非力な美月や・・・お前を消して、俺が立ち直れなくなるように図った・・・順当に考えりゃエイジス計画絡みだ。ーーーもう、そんな事はどうだっていいが。」

と再び顔を伏せました。 僕のそれまでの無力感も自己嫌悪感もその衝撃に吹き飛ばされ、僕はしばらく黙りこんでしまった。

 

ーーーその静寂を破ったのは、初めて聞く低い声だった。

「おい。」 と呼ばれて目を向けた先に居たのは、上空から見た双璧の片割れーーーそう、正虎さんだった。

「お前が龍治の舎弟だったって言う洲か。」

「えっ・・・は、はい。」

上空から見た時には分からなかったその体格の大きさに萎縮してしまいました。

「話がある、ちょっと来てくれ」

正虎さんはそうとだけ言って、返事を待たずに僕に背を向けて歩き始めました。

僕は再び動かなくなった龍治さんに軽く挨拶をして正虎さんについていきました。

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