※この作品はR-18です。

【GODEATER】 龍治 -A Ghost of Hero-   作:あとろふ

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第十八回

10年前、新人オペレーターとして研修を受けていた時、その頃以来のアナグラの管制室で、僕は龍治さんの支援にあたった。龍治さんが対応したのは防壁より少し離れた平原地帯で、敵の頭数も少なく、あの人にとっては少々物足りないかと思われる任務ーーー龍治さんのアナグラでの信用は無いに等しかったようなので、仕方のない事ですがーーーの筈だった。

中型種が数体、大型種は荷電性のボルグ・カムラン種が一体。厄介といえば厄介ですが、龍治さんにとっては大した軍勢ではなく、中型種の反応は作戦区域への到達のついでに消失し、残る大型種との交戦になった。でも、交戦を始めた龍治さんをモニタリングしていると、胸騒ぎか、気味の悪い違和感を感じた。

ーーー動きがおかしい。

長い間あの人の専属オペレーターをしていた僕にはすぐに解った。あの人にしては動きが少ない、それも、反応を見る限りではそれらは敵の行動にハッとして慌てて避けた、といった動きにも見える。

考え過ぎか。慣れない機材でのオペレーションだからか、直前にあんなことがあったからか。気分を落ち着けよう、そうしたらきっといつも通りの龍治さんの動きだと分かるはずだーーー

半ば祈るようにそう考えた。刹那、

『うッ・・・、あああぁぁッ・・!』

龍治さんの叫び声が僕の鼓膜を殴りつけた。ーーー何だ?鼻の奥、舌の根に鉛の塊を押しこまれた様な圧迫感を感じ、呼気は乾き掠れて上下の歯の隙から冷たく溢れる。こめかみに尖らない杭を打たれたような感覚は、両の眼は見るべき所ーーー朧な視線の着地点の細かい調節螺子ではなく、その隣、赤く明滅するバイタルサインへと視点を動かせなくなる。周囲合切の音は遥か遠くに、検閲され輪郭を引き剥がし奪われたように聴こえ。僕の意識は、身体をその景色に縫い止めたままに何やら別の次元・別の空間へと、音もなく重さもなく吹き飛ばされてしまったーーー

僕が酷く混乱したのも無理はなかった。少なくとも、僕があの人のオペレーターになってから、あの人が被弾したところには遭遇したことがなかった。龍治さんは僕の中で不敗の象徴であり、絶対の勝利であり、敗北の二文字に最も近い世界に立ち、以て最も遠くに跳躍した存在になっていた。

10年前の僕であれば、きっと拘置所で龍治さんと再開した時のままの僕であれば、きっと何も出来なかったのだろうーーー冷静を取り返せずとも我に返った僕は、動けますか、とにかく敵の視界から逃走して下さい、と声をかけた。返事の余裕のない龍治さんの無線から甲高い破裂音が聴こえ、土が擦れる音とともに敵性反応と遠ざかる龍治さんの反応をレーダーに確認した。

閃光弾は1つしか携行してないーーー今のがそれだ、次に見つかったら恐らく”その時”だ。ーーー龍治さんは弱く擦れた声でそう言った。龍治さんのいる平原地帯は中心に鋭い丘を抱いたドーナツ状の平地、敵がどちらへ動こうと、次また見つかってしまうまでに時間はかからない。救護班を向かわせるにも、ヘリが降り立つのを敵が見逃すわけもなく、徒に新たな犠牲のリスクを生む訳にはいかないーーー何か、何かないか、龍治さんを救える方法ーーー

ーーー兄貴は?

漆黒の中を目まぐるしい捷さで転回する僕の思考に一筋の光が差した。アラガミの襲撃で移動を見合わせている正虎さんを向かわせれば、すぐさま無線を切り替えて呼びかける。

「正虎さん、聞こえますか、応答願います!」

返答は直ぐに帰ってきた。低い声に懐かしさを感じる暇はない。

「今から北の平原地帯まで移動してどれくらいかかりますか、龍治さんがそこで負傷しています、救援を要請したいのですが、そちらから最速でどれくらいの時間を要しますか」

30分。 駄目だ。敵に見つかってしまうまでは保って半分と言ったところだ。それでも可能性はゼロではない、僕は正虎さんに救援を要請した。

なんとか、他に救う方法は。他の部隊は防壁の防衛で手詰まりで、アナグラには神機使いは一人もーーー

一人も?

一人。

 

ーーーいや、危険過ぎる。それに、これ以上”彼女”に犠牲を強いるのはーーー

犠牲?

そうなると決めているのは僕じゃないのか。いやしかし、それなら僕が再び神機をーーー

駄目だ。他のオペレーターは他部隊の支援でこちらも手詰まり、やはり彼女しかーーー

 

僕の思考はそこで停止した。僕はーーー

無線のチャンネルを彼女に合わせた。

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